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    案件の発注書には何が書かれるのか?書面とチャットの扱いの違いを解説

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「案件の発注書と明示」を示す図です。書面/電磁的方法を並べています。強調しているのは電磁的方法です。選ぶのは発注側と添えています。

    📘 この記事でわかること

    • 業務委託をしたら直ちに明示する決まりがあることと、方法を書面か電磁的方法かから発注する側が選べること
    • 電磁的方法で受け取っても書面を求められれば交付される決まりがあることと、メッセージが消える場合への備え方
    • 記載例に挙がる項目と、URLの記載や添付でも認められる形、決まっていない項目がある場合の明示の進め方

    案件の発注がメッセージアプリのやり取りだけで進み、書面を見ないまま作業が始まる場面が増えています。取引条件をいつ、どんな形で伝えるかは、発注する側が好きに決められることではありません。フリーランス・事業者間取引適正化等法には、業務委託をした場合の明示についての定めがあります。この記事では、明示の方法の選び方と、受け取る側が確かめられる点を整理します。

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    1. 業務委託をしたら直ちに明示する決まりがある

    明示の義務は発注する事業者に課されている

    発注書という名前の書類が届くかどうかより先に、「いつ」「どんな形で」条件が伝えられることになっているのかを見ておくと、手元に届いたものが明示に当たるのかを判断しやすくなります。

    フリーランス・事業者間取引適正化等法は、業務委託をした場合、直ちに、取引条件を書面または電磁的方法により明示しなければならないと定めています1。発注した瞬間に、条件を伝える動きが始まる仕組みです。

    「あとでまとめて伝える」「作業が進んでから条件を詰める」という進め方は、この決まりが想定するタイミングとは異なります。発注と同時に、条件を言葉にする作業も動き出します。

    フリーランス同士の取引でも義務は課される

    発注する側も個人で活動しているフリーランスだった場合、義務は消えるのでしょうか。制度はここに明確な答えを置いています。

    取引条件の明示義務は、フリーランス同士の取引も対象であるため、発注事業者がフリーランスである場合にも義務が課されるとされています2。発注する側の規模ではなく、業務委託という関係そのものに義務がついてきます。

    個人から個人への発注が増えている働き方だからこそ、この範囲の広さは知っておきたい前提です。発注する相手が誰であっても、明示の場面は同じように訪れます。

    2. 方法を選ぶのは発注側で、書面でも電磁的方法でもよい

    書面か電磁的方法か、選ぶのは発注する事業者

    明示の中身が決まったとして、次に気になるのは伝え方です。紙の書類でなければいけないのか、という疑問を持つ場面もあります。

    明示する方法は書面か電磁的方法が認められ、どちらの方法とするかは発注事業者が選択できるとされています3。紙にこだわる決まりではなく、選択の幅が用意されています。

    選ぶのは受け取る側ではなく発注する側という点は、押さえておきたい要点です。方法をどちらにするかは、発注のタイミングで発注側が決めています。

    つまり「紙で出してほしい」と最初から選ぶことはできません。ただし受け取る側にできることが無いわけではなく、電磁的方法で明示を受けた後に書面の交付を求める道が別に用意されています。この2つは順番が違うだけで、どちらも案内に書かれている形です。次の章で見ていきます。

    電磁的方法にはメールやチャットも含まれる

    電磁的方法という言葉だけでは、範囲がつかみにくいと感じることもあります。

    電磁的方法とは、電子メール、SNSのメッセージ、チャットツールなどであるとされています4。日常的にやり取りしている連絡手段の多くが、この範囲に含まれます。

    紙の書類よりも電磁的方法のほうが、日々のやり取りの延長で条件を残しやすいと感じる場面もあります。形式よりも、条件がきちんと伝わっているかどうかが軸になります。

    図1:明示の2つの方法
    明示の2つの方法 書面 紙の書類として交付する 電磁的方法 メールやチャットなどで送る 選ぶのは発注する事業者

    図の作成:Remogu編集部。明示の方法の関係を整理したもので、統計データではありません

    3. 電磁的方法で受け取っても書面を求められる

    書面の交付を求めれば、遅滞なく交付される

    メッセージで明示を受け取ったあと、紙の書類も欲しくなる場面があります。ここにも受け取る側が動ける仕組みがあります。

    電磁的方法で明示した場合であっても、フリーランスから書面の交付を求められたときは、遅滞なく、書面を交付しなければならないとされています5。求めれば書面が用意される決まりです。

    電磁的方法で受け取ったからといって、書面を諦める必要はありません。求めるかどうかは、受け取った側の判断に委ねられています。

    書面の交付までは求められない場合もある

    ただし、この決まりにも幅があります。あらゆる場面で書面が必要になるわけではありません。

    フリーランスの保護に支障を生ずることがない場合には、書面の交付までは求められない場合があるとされています6。求めればいつも書面になる、というわけではありません。

    どちらの場合に当たるかを含めて、明示された方法を確かめておくと、あとから条件を振り返るときに迷いが減ります。

    4. 記載例に並んでいる項目

    記載例に挙げられている7つの項目

    明示する条件の中身を、具体的にイメージしたい場面もあります。案内はそのための記載例を示しています。

    明示事項の記載例として、発注日、発注内容、納期、納品場所、検査完了日、報酬額、支払期日が挙げられているとされています7。案件のやり取りで見覚えのある項目が並びます。

    これらは義務の全部を示したものではなく、記載例に挙げられている項目です。明示の中身を言葉にするときの手がかりとして読み進めるとよいでしょう。

    案件のやり取りに当てはめると、発注内容は何をどれだけ作るのかという範囲の話で、納期と検査完了日は時間の区切りの話です。納品場所は成果物をどこへ渡すのかを示し、報酬額と支払期日はお金の話にあたります。発注日は、この明示がいつの時点のものかを示す起点です。範囲・時間・受け渡し・お金・起点という5つの側面に分けて眺めると、届いた明示のどこが埋まっていて、どこが空いているのかが見えやすくなります。

    記載例と義務を混同しないで読む

    記載例に並ぶ7項目だけを満たせば十分、と読み替えたくなる場面もありますが、そこは注意したい点です。

    案内が示しているのはあくまで記載例であり、これが明示事項の全部として定められているわけではありません。届いた明示にこの7項目以外の内容が含まれていても、不自然なことではありません。

    受け取った明示に何が書かれているかを、この記載例と照らして眺めてみると、抜けている点に気づきやすくなります。

    項目記載例が示す内容
    発注日案件を発注した日
    発注内容依頼する作業の内容
    納期成果物の納品を求める期日
    納品場所成果物を届ける場所
    検査完了日検収を終える日の目安
    報酬額支払う報酬の額
    支払期日報酬を支払う期日
    図2:記載例に並ぶ項目
    記載例に並ぶ項目 記載例に挙げられている項目 発注日 発注内容 納期 納品場所 検査完了日 報酬額 支払期日 個々の案件でどこまで書かれるかは記載例をもとにした目安です

    出典:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2025年)をもとに作成

    5. メッセージのURLや添付でも認められる

    本文への記載だけが電磁的方法ではない

    電磁的方法と聞くと、メッセージの本文に条件をすべて書き込む場面を思い浮かべがちです。実際にはもう少し幅があります。

    メッセージの本文に明示事項を記載する方法だけではなく、明示事項が掲載されたウェブページのURLをメッセージに記載する方法や、メッセージにPDF等の電子ファイルを添付して送る方法も認められるとされています8

    短いメッセージにリンクや添付ファイルが添えられているだけでも、明示として成り立つ場面があるということです。

    受け取った形を確かめておく

    URLや添付ファイルという形は便利な一方、あとから見返しにくいという面もあります。

    送られてきたリンク先のページや添付ファイルが明示の内容そのものを担っている場合、そのページやファイルが見られなくなれば内容も追えなくなります。届いた形を、受け取った時点で確かめておく意味があります。

    どの形で明示を受け取ったかを把握しておくと、あとで条件を照らし合わせたいときに落ち着いて対応できます。

    確かめておきたいのは3点です。1つ目は、条件がメッセージの本文にあるのか、リンク先や添付ファイルにあるのか。2つ目は、リンク先の場合、そのページが後から書き換えられる形なのか。3つ目は、添付ファイルの場合、自分の手元に残る形で受け取れているのか。どれも受け取った直後なら数秒で確かめられますが、時間が経つほど分からなくなります。

    認められる形具体的な送り方
    メッセージ本文への記載明示事項を文章としてメッセージに書く
    ウェブページのURLの記載明示事項が載ったページのリンクを送る
    電子ファイルの添付PDFなどのファイルを添付して送る
    図3:電磁的方法で認められる形
    電磁的方法で認められる形 メッセージ本文 明示事項を文章で書く ウェブページのURL 明示事項が載ったリンク 電子ファイルの添付 PDFなどを送る いずれの形も電磁的方法として認められています

    出典:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2025年)をもとに作成

    6. メッセージは消えることがあるので残し方を決める

    SNSやチャットのメッセージは消える可能性がある

    リモートでのやり取りが中心の案件では、明示もメッセージ上で完結する場面が多くなります。ここで意識しておきたいのが、メッセージという形の弱さです。

    SNSのメッセージ等を利用する場合は、メッセージが削除されたり、閲覧ができなくなる可能性もあるとされています9。届いた時点では読めても、後から確認できなくなる場合があります。

    顔を合わせずに進む案件では、メッセージが唯一の記録になる場面もあります。Remoguで扱う案件は90%以上がフルリモート可能なので、やり取りが文字で残る形になることは前提として考えておけます。

    対応を事前に決め、保存を行う

    この可能性に対して、案内は具体的な備え方を示しています。

    発注事業者とフリーランスの双方で、その場合の対応を事前に決めておいたり、スクリーンショット等で明示された内容の保存を行うとよいとされています9。強い義務としてではなく、望ましい進め方として示されています。

    明示を受け取った直後に一手間かけて残しておく習慣が、あとから条件を振り返るときの支えになります。

    7. 決まっていない項目があるときの明示

    当初の明示で示す3つの内容

    発注の時点で、報酬額や納期がまだ固まっていない案件もあります。そうした場合の明示にも決まりがあります。

    取引条件のうち内容が定められない未定事項がある場合の当初の明示では、未定事項以外の明示事項、未定事項の内容が定められない理由、未定事項の内容を定めることとなる予定期日を明示するとされています10。決まっていないこと自体は明示を後回しにする理由にならず、決まっていない理由と、いつ決まる見込みなのかまでを示す形になっています。受け取る側からすると、空欄のまま置かれているのか、後から埋まる予定のものとして扱われているのかを、この記載で読み分けられます。

    未定事項が決まったら直ちに補充の明示をする

    未定だった項目は、決まらないまま放置されるわけではありません。

    未定事項が決まったら、直ちに補充の明示をする必要があり、その際、当初の明示との関連性が分かるようにする必要があるとされています11。当初の明示と補充の明示は、別々の場面として扱われます。

    場面明示する内容
    当初の明示未定事項以外の明示事項、決まらない理由、定める予定の期日
    補充の明示決まった未定事項の内容と、当初の明示との関連性
    図4:当初の明示と補充の明示
    当初の明示と補充の明示 当初の明示 未定事項以外の明示事項 決まらない理由 定める予定の期日 決まったら直ちに 補充の明示 決まった未定事項の内容 当初の明示との関連性 2つの明示は別の場面として扱われます

    図の作成:Remogu編集部。明示が2段階で行われる流れを整理したもので、統計データではありません

    案件を初めて受けるとき、明示のタイミングを自分から尋ねてもよいか

    明示する方法を選ぶのは発注する事業者ですが3、いつ、どの方法で明示されるのかを尋ねることまで妨げられるわけではありません。発注を受けた直後に、明示の有無を確かめる進め方は自然な流れです。

    副業として受ける案件も、明示の対象になるか

    取引条件の明示義務は、フリーランス同士の取引も対象になるとされています2。専業か副業かという働き方の違いは、明示の対象から外れる理由にはなりません。

    チャットでのやり取りだけで明示を受けた場合、何を残しておくとよいか

    メッセージが消える可能性を踏まえて、スクリーンショット等で明示された内容の保存を行うとよいとされています9。地方に住んでいてオンラインのやり取りが中心になる場面でも、残し方の考え方は変わりません。

    報酬額など一部の条件が決まっていない案件では、明示はどう進むか

    当初の明示で未定事項以外の内容と、決まっていない理由、定める予定の期日が示され10、決まった時点で補充の明示が行われます11。一度の明示で終わらず、二段階に分けて条件が伝えられる仕組みです。

    明示は、発注された瞬間から動き出す仕組みです。書面か電磁的方法か、記載例のどの項目が入っているか、メッセージなら残し方をどう決めるか。受け取った明示を、今日のうちに一度確かめてみましょう。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」明示の義務(2025年・2026年9月確認)
    *2 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」誰に義務があるか(2025年・2026年9月確認)
    *3 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」方法の選び方(2025年・2026年9月確認)
    *4 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」電磁的方法の例(2025年・2026年9月確認)
    *5 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」書面を求めたとき(2025年・2026年9月確認)
    *6 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」例外がある場合(2025年・2026年9月確認)
    *7 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」記載例に並ぶ項目(2025年・2026年9月確認)
    *8 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」URLや添付でもよい(2025年・2026年9月確認)
    *9 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」残し方の注意(2025年・2026年9月確認)
    *10 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」決まっていない項目がある場合(2025年・2026年9月確認)
    *11 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」後から補う明示(2025年・2026年9月確認)