案件のハラスメントの相談窓口はどこ?発注側に義務づけられた3つの措置を解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 業務委託のハラスメントが①から③までの要素をすべて満たすものと定義されていることと、配慮を求めた申出への言動も対象に含まれること
- 発注事業者に求められている3つの措置と、相談窓口が体制の整備として定められている位置づけ
- 相談した後に事実関係の把握から再発防止まで進む流れと、発注事業者の側に限らない対象の広さ
案件を通じて働くフリーランスにとって、発注事業者とのやり取りは日々の仕事そのものです。取引の力関係が対等に見えにくい業務委託だからこそ、優越的な立場を背景にした言動や、配慮を求めたことへの心ない対応が起こる場面もあります。公正取引委員会は、こうした場面に備えて発注事業者が整える体制を、フリーランス・事業者間取引適正化等法の枠組みの中で示しています。この記事では、対象になる言動の定義と、相談窓口をめぐって定められている仕組みを、公表されている資料に沿って整理します。
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1. 業務委託のハラスメントはどう定義されているか
発注事業者からの言動に違和感を覚えても、それがどこまでを指すのか分からず、もやもやしたまま案件を進めてしまうことは珍しくありません。個別の場面がどう扱われるかは行政の判断にゆだねられる領域ですが、まず言葉の定義そのものを確認しておくと、状況を整理する助けになります。
①から③までの要素で決まる定義
公正取引委員会の案内によると、業務委託におけるパワーハラスメントは、①取引上の優越的な関係を背景とした言動であって、②業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③フリーランスの就業環境が害されるもの、この①から③までの要素をすべて満たすものと定義されています1。
ここで見落としやすいのは「すべて満たす」という条件です。3つのうち1つだけが当てはまる場面でも、この定義に含まれるとは限りません。条文の言い回しを覚えることより、①②③という3つの軸で自分の状況を整理しておくことのほうが、後で事実関係を確かめるときに役立ちます。
図の作成:Remogu編集部。公正取引委員会の資料をもとに整理したもので、統計データではありません
精神的な攻撃として挙げられている例
精神的な攻撃の例としては、契約内容に基づき成果物を納品したにもかかわらず正当な理由なく報酬を支払わないことなどを、度を超して繰り返し示唆するまたは威圧的に迫ることが挙げられています2。一度きりの伝え方の強さだけでなく、繰り返しの有無や威圧の度合いが判断の材料になっている点がうかがえます。
この例が示しているのは、報酬の支払いをめぐるやり取りの中にも、ハラスメントとして扱われうる言動が含まれているということです。金額の交渉そのものではなく、伝え方や繰り返しの度合いに焦点が当たっていることを押さえておきます。
2. 配慮の申出をしたことへの言動も含まれる
ハラスメントの範囲というと、直接的な言葉の強さばかりが思い浮かびますが、公正取引委員会の案内はもう1つの型も挙げています。配慮を求めたこと自体をきっかけにした言動です。
配慮の申出を理由にした言動も対象に含まれる
配慮申出等への嫌がらせ型として、フリーランスが妊娠・出産に関して法第13条の配慮の申出をしたことなどに関する言動により就業環境が害されるものが挙げられています3。申出の中身そのものではなく、申出をしたという事実に対する反応が対象になっている点が特徴です。
この型で対象になっているのは、申出の中身への評価ではなく、申出をしたことへの反応です。案内は例として、申出をしないように言うなどの言動と、申出等のみを理由に不利益な取扱いを示唆する言動を挙げています。
申出を阻害する言動、不利益な取扱いを示唆する言動
具体的な例として、申出をしないように言うなど、配慮の申出を阻害するものが挙げられています4。加えて、配慮の申出等のみを理由として契約の解除その他の不利益な取扱いを示唆するものも挙げられています5。
配慮申出等への嫌がらせ型として挙げられている言動
次の表は、配慮の申出をきっかけにした言動として案内に挙げられている2つの型をまとめたものです。どちらも申出そのものではなく、申出をしたことへの反応が対象になっています。
| 言動の型 | 挙げられている内容 |
|---|---|
| 申出を阻害するもの | 申出をしないように言うなど、配慮の申出を阻害するもの4 |
| 不利益な取扱いを示唆するもの | 配慮の申出等のみを理由として契約の解除その他の不利益な取扱いを示唆するもの5 |
これらに該当する言動があったときは、業務委託におけるハラスメントに該当することがあるほか、期日における報酬支払義務や禁止行為の定めに違反する場合もあります6。1つの言動が複数の規定に触れる可能性がある、という広がりを持った整理です。
3. 発注側に義務づけられているのは3つの措置
言動の定義を確認したところで、次に気になるのは発注事業者の側にどんな備えが求められているかです。案内では、発注事業者に求められる措置として3つが挙げられています。
発注事業者に求められる3つの措置
1つ目として、ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化と、方針の周知・啓発が挙げられています7。2つ目として、相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備が挙げられています9。3つ目として、業務委託におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応が挙げられています11。
3つの措置は、方針を定める段階、相談を受け止める段階、事後に対応する段階という順番でつながっています。個々の言い回しを覚えるより、この3段階の流れとして押さえておくほうが全体像を見失いません。
| 措置 | 挙げられている内容 |
|---|---|
| 方針の明確化と周知・啓発 | ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化と、方針の周知・啓発7 |
| 相談に応じる体制の整備 | 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備9 |
| 事後の迅速かつ適切な対応 | 業務委託におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応11 |
図の作成:Remogu編集部。公正取引委員会の資料をもとに整理したもので、統計データではありません
方針の明確化と周知・啓発の内容
1つ目の措置の内容として、発注事業者の方針等の明確化と、社内(業務委託に係る契約担当者等)へ周知・啓発することが挙げられています8。方針を定めるだけでなく、担当者にまで伝わっている状態が求められている、という点が読み取れます。
方針が担当者まで伝わっているかどうかは、やり取りの中で見えてくる部分です。Remoguで扱う案件は90%以上がフルリモート可能で、条件を確かめながら参画先を選べます。
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4. 相談窓口は「体制の整備」として定められている
3つの措置のうち、相談窓口に最も関わりが深いのは2つ目の措置です。ここでは「体制の整備」という言葉の中身を具体的に見ていきます。
相談窓口は「体制の整備」そのものが求められる措置
2つ目の措置として、相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備が挙げられています9。ここで求められているのは体制そのものであって、特定の様式や書類の作成が求められているわけではありません。
「苦情を含む」という言葉が添えられている点も見落とせません。改まった相談だけでなく、日々のやり取りの中で出てくる苦情も、この体制が受け止める対象に入っているという整理です。
マニュアルの作成は、体制を整える例の1つ
この体制を整える例として、担当者向けのマニュアルを作成し、マニュアルに基づき対応することが挙げられています10。ここで注意したいのは、マニュアルの作成そのものが義務として定められているわけではないという点です。
義務として求められているのは「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制」であり9、マニュアルの作成はその体制を整える例として挙げられているものです10。例と義務そのものを取り違えると、体制の中身を見誤ります。
形式そのものより、相談を受け止め、対応につなげる仕組みが実際に機能しているかどうかが、この措置の核心にあります。窓口の名称や書類の有無だけを確認するより、体制の中身を見ることのほうが実態に近づきます。
5. 相談した後に何が行われるのか
体制が整っているとして、相談した後に実際どんな流れで進むのかも、案内の中で示されています。ここでは事後対応として挙げられている段階を順に見ていきます。
事後対応に求められる迅速かつ適切な対応
3つ目の措置として、業務委託におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応が挙げられています11。相談を受けた後の動きも、体制の一部として位置づけられていることが分かります。
事実関係の把握から再発防止までの3段階
事後対応の内容としては、事案についての事実関係を迅速かつ正確に把握することが挙げられています12。事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に実施することが挙げられています13。
そのうえで、ハラスメントに関する方針の再周知・啓発などの再発防止に向けた措置を実施することも挙げられています14。把握、配慮、再発防止という3段階が、1つの流れとしてつながっている構成です。
| 段階 | 挙げられている内容 |
|---|---|
| 事実関係の把握 | 事案についての事実関係を迅速かつ正確に把握すること12 |
| 被害者への配慮 | 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に実施すること13 |
| 再発防止 | ハラスメントに関する方針の再周知・啓発などの再発防止に向けた措置を実施すること14 |
図の作成:Remogu編集部。公正取引委員会の資料をもとに整理したもので、統計データではありません
6. 発注側の人からの言動だけが対象ではない
ここまでは発注事業者の側の対応を中心に見てきましたが、対象になる範囲はそこだけにとどまりません。案内では、関わる相手の広がりについても触れられています。
対象になるのは発注事業者の側の者だけではない
セクシュアルハラスメントについては、発注事業者の側の者に限らず、業務委託に係る契約を進めるにあたり関係性が発生する者、例えば協力して業務を遂行する他の個人事業者や顧客等からの言動も対象になります15。
やり取りの相手が発注事業者の担当者に限られない案件では、この広がりが特に意味を持ちます。契約の直接の相手方だけを見ていては、対象になる言動の全体像を捉えきれません。
行為者が他の事業者などである場合の対応
性的な言動の行為者が他の事業者などである場合には、必要に応じて、他の事業者などに事実関係の確認や再発防止に向けた措置への協力を求めることも含まれます16。相手が契約の外にいる場合でも、対応の枠組みから外れるわけではないという整理です。
図の作成:Remogu編集部。公正取引委員会の資料をもとに整理したもので、統計データではありません
関わる相手が広いということは、体制を整える発注事業者の側にも、契約の外にいる相手への働きかけまで含めた備えが求められているということです。相談する側にとっては、対象を狭く思い込みすぎないことが、状況を正しく整理する第一歩になります。
7. 事実の確かめ方と、回復されるもの
最後に、事実関係をどう確かめるのか、そして配慮としてどんなことが行われるのかを、もう少し具体的に見ていきます。案内には、それぞれの例が示されています。
事実関係はどう確かめられるか
事実関係の確認の例として、相談者と行為者の双方から事実関係を確認し、必要に応じて第三者からも事実関係を聴取することが挙げられています17。一方だけの話で判断するのではなく、双方の話をそろえて確認する進め方が想定されています。
被害者に対する配慮としてどんなことが行われるか
被害者に対する配慮の例として、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助や、被害者の取引条件上の不利益の回復などを行うことが挙げられています18。関係の立て直しと、条件面の立て直しの両方が、配慮の内容として並んでいます。
条番号や制度の名称を細かく覚えることより、定義・措置・事後対応という3つの柱を押さえておくことのほうが、案件を進める中で状況を整理する材料になります。案件情報や参画先を確認する段階でも、こうした体制の有無は1つの見方になります。
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①から③までのうち、1つだけ当てはまる場合も対象になりますか
業務委託におけるパワーハラスメントは、①取引上の優越的な関係を背景とした言動、②業務委託の遂行に必要かつ相当な範囲を超えた言動、③フリーランスの就業環境が害されるもの、この①から③までの要素をすべて満たすものと定義されています1。個別の場面がこの定義に当てはまるかどうかを判断するのは、行政の役割です。
相談窓口の対象は、発注事業者の担当者だけですか
セクシュアルハラスメントについては、発注事業者の側の者に限らず、契約を進める中で関係性が発生する他の個人事業者や顧客等からの言動も対象になります15。行為者が他の事業者などである場合には、必要に応じてその事業者に事実関係の確認や再発防止に向けた措置への協力を求めることも含まれます16。
相談した内容は、その後どのように扱われますか
事案についての事実関係を迅速かつ正確に把握することが、事後対応の最初の段階として挙げられています12。確認の進め方としては、相談者と行為者の双方から話を聞き、必要に応じて第三者からも事実関係を聴取することが例に挙げられています17。
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出典・参考情報
*1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パワハラの定義(2025年・2026年9月確認)
*2 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」精神的な攻撃の例(2025年・2026年9月確認)
*3 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」嫌がらせ型(2025年・2026年9月確認)
*4 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」申出を阻害する例(2025年・2026年9月確認)
*5 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」不利益な取扱いの示唆(2025年・2026年9月確認)
*6 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」他の義務との関係(2025年・2026年9月確認)
*7 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」措置1 方針の明確化(2025年・2026年9月確認)
*8 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」誰に周知するか(2025年・2026年9月確認)
*9 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」措置2 相談体制の整備(2025年・2026年9月確認)
*10 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」相談体制の例(2025年・2026年9月確認)
*11 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」措置3 事後対応(2025年・2026年9月確認)
*12 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」事実関係の把握(2025年・2026年9月確認)
*13 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」被害者への配慮(2025年・2026年9月確認)
*14 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」再発防止(2025年・2026年9月確認)
*15 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」セクハラの対象範囲(2025年・2026年9月確認)
*16 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」他の事業者への協力要請(2025年・2026年9月確認)
*17 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」双方からの確認(2025年・2026年9月確認)
*18 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」不利益の回復(2025年・2026年9月確認)