【案件と育児・介護】業務との両立を申し出る手順と配慮の中身を解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 一定期間以上の業務委託では配慮が義務になることと、6か月未満は同じ内容が努力義務にとどまるという期間の境目
- 配慮を求める申出は受ける側から行うものであることと、曜日の調整やオンラインへの変更など申出の具体例が示されていること
- 申出のあとに把握と検討という段階を経ることと、実施できるときとできないときで伝え方が変わるという手順の流れがあること
案件を受けて業務委託で稼働するフリーランスにも、育児や介護のために曜日や時間を見直したい場面は訪れます。公正取引委員会のパンフレットは、業務委託の期間によって配慮の重さが書き分けられていることと、申出から実施までの手順が定められていることを示しています。両立の話は、何を変えたいのかを言葉にして申し出るところから始まります。この記事では、その手順と配慮の中身を、公表されている資料に沿って整理します。
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1. 一定期間以上の委託では配慮が義務になる
案件を受けて業務委託で稼働する働き方では、休みや稼働時間の決まりが会社の規程ではなく、契約と話し合いで決まります。育児や介護の予定が変わったとき、何をどこまで調整してもらえるのかが曖昧なまま案件を続けている場合もあります。公正取引委員会が公表しているパンフレットは、この点について具体的な基準を示しています。
パンフレットは、一定期間以上の業務委託について、フリーランスが育児や介護等と業務を両立できるよう必要な配慮をしなければならないと定めています1。ここでいう配慮は、事業者側の任意の判断に委ねられるものではなく、パンフレットが明示している義務です。案件を依頼する事業者は、この基準を踏まえたうえで打診や契約の内容を組み立てることになります。
義務の重さは、案件の場面ごとの対応に表れる
この義務は、抽象的な理念ではなく、案件が進む中の具体的な場面で意味を持ちます。打ち合わせの曜日や時間、稼働の方法について申出があったとき、事業者側がどう応じるかという実務の話です。案件を選ぶ側にとっても、この基準を知っておくことは、条件を協議するときの土台になります。
一方で、この基準は業務委託の期間によって重さが変わります。すべての案件が同じ扱いを受けるわけではなく、期間の長さに応じて義務の強さが書き分けられているためです。自分が結ぼうとしている案件がどちらの扱いになるのかを知っておくと、申出のタイミングも判断しやすくなります。
案件を受ける側が知っておきたい前提
配慮の対象になるのは、育児や介護そのものの制度ではなく、業務委託の進め方に関する調整です。保育所の送迎で稼働時間を動かしたい、通院の付き添いで曜日を変えたいといった申出が、この枠組みの対象になります。
パンフレットが定めているのは、こうした申出があったときに事業者がどう対応するかという手順です。次の章からは、期間による違い、申出の起点、具体的な例、そして実施までの流れを順番に見ていきます。
2. 6か月未満は努力義務という書き分け
前の章で触れた配慮の義務には、もう一つ大事な条件があります。業務委託の期間が6か月に満たない場合は、扱いが変わるという点です。
パンフレットは、6か月未満の期間で行う業務委託については、必要な配慮をするよう努めなければならないと定めています2。「しなければならない」ではなく「努めなければならない」という言い方が使われている点が、期間が長い場合との違いです。
義務と努力義務は、求められる強さが違う
義務は、定められた行為を行うことそのものが求められます。努力義務は、行うように努めることが求められる基準で、結果まで約束されるものではありません。パンフレットはこの2つを明確に書き分けています。
期間の長さだけを見て「短い案件だから配慮の話は関係ない」と判断するのは早計です。努力義務であっても、パンフレットに定められた基準である以上、事業者側に検討そのものを求める根拠になります。
稼働の期間が6か月に届くかどうかは、契約時点で見通しが立たないこともあります。契約が更新されて結果的に6か月を超える場合もあるため、期間の見込みだけで配慮を諦める必要はありません。
期間による書き分けを図で整理すると、次のようになります。
出典:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月)をもとに作成
期間の長さによって基準の重さが変わるという前提を押さえたうえで、次の章では、この配慮がどこから始まるのか、その起点を見ていきます。
3. 起点は受ける側からの申出
配慮の義務や努力義務がいくら定められていても、それだけで自動的に手続きが始まるわけではありません。パンフレットは、起点がどこにあるかも明確にしています。
パンフレットは、発注する側は、フリーランスからの申出があった場合、配慮を行わなければならないと定めています3。つまり、最初の一歩は受ける側から起こすものとして位置づけられています。
申出をしなければ、検討は始まらない
事情を抱えていても、それを言葉にして伝えなければ、事業者側には伝わりません。稼働を続けながら事情を一人で抱え込む状態と、申出をして検討の対象にしてもらう状態とでは、その後の展開がまったく違います。
曜日を変えることよりも、申出を言葉にすることのほうが、話を前に進めます。どんな配慮が望ましいかを事業者側が推測して用意する仕組みにはなっていないためです。
図の作成:Remogu編集部。申出の有無によって配慮の検討が始まるかどうかが分かれる流れを整理したもので、統計データではありません
図が示すとおり、申出をしないまま稼働を続けても、検討は始まりません。逆に、曜日の調整やオンラインへの変更を言葉にして伝えれば、次の段階に進みます。
オンラインでの稼働に変更できるかどうかは案件によって異なりますが、案件の90%以上がフルリモートで進められる環境であれば、事情に応じた働き方の候補を探しやすくなります。
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申出が起点になるという前提を踏まえたうえで、次の章では、実際にどのような申出が例として示されているのかを具体的に見ていきます。
4. 申出の例として示されているもの
申出が起点になるとはいえ、何をどう伝えればよいのか、具体的な形が浮かびにくいこともあります。パンフレットは、申出の例をいくつか挙げています。
一つは、介護のため打ち合わせの曜日を調整したいという申出です4。決まった曜日に打ち合わせが入っていると、通院の付き添いや介護サービスの利用と重なってしまう場面が想定されます。
もう一つは、育児があるのでオンラインでの業務に変更したいという申出です5。現場での稼働が前提になっている案件で、送迎や急な発熱への対応と両立させたい場合に当てはまります。
例は、伝え方の型として参考になる
これらの例に共通しているのは、変えたい内容が具体的に書かれている点です。事情があるので配慮してほしいという漠然とした伝え方ではなく、何を、どう変えたいのかという形になっています。
| 申出の例 | 内容 |
|---|---|
| 曜日の調整4 | 介護のため、打ち合わせの曜日を調整したいという申出 |
| オンラインへの変更5 | 育児があるので、オンラインでの業務に変更したいという申出 |
曜日の指定やオンラインへの変更は、あくまで例として挙げられているものです。実際の申出は、抱えている事情に応じて形が変わります。
伝える前に、内容を整理しておく
申出の効果を高めるには、伝える前に内容を整理しておくことが助けになります。次の図は、申出の前に整えておきたい観点を示したものです。
図の作成:Remogu編集部。申出の前に整理しておきたい観点を整理したもので、統計データではありません
変えたい内容、期間、代わりの進め方の3点を整理しておくと、申出そのものが具体的になり、次の段階である把握と検討にもつながりやすくなります。
5. 配慮の第1段階と第2段階
申出があったあと、事業者側がすぐに実施か不実施かを決めるわけではありません。パンフレットは、そこに至るまでの段階を示しています。
パンフレットは、配慮の第1段階を、申出の内容等の把握と位置づけています6。何を、どのような理由で、いつまで必要としているのかを、まず正確につかむ段階です。
第2段階は、取り得る選択肢の検討です7。把握した内容をもとに、どのような対応が可能かを事業者側が検討する段階に進みます。
把握と検討は、対話を重ねる段階
この2つの段階は、一度のやり取りで終わるとは限りません。把握の内容が曖昧なままだと、検討の的も絞りにくくなります。申出の際に、変えたい内容と期間を具体的に伝えておくことが、この段階を進めやすくします。
出典:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月)をもとに作成
図に示した3つの段階のうち、把握と検討がここまでの内容です。実施できるかどうかの判断と、その先の伝え方については、次の章で扱います。
検討の段階に進んだからといって、希望どおりの配慮がそのまま実施されるとは限りません。実施できる場合とできない場合があることも、パンフレットは示しています。
6. 実施できる場合とできない場合
把握と検討を経たあと、事業者側の対応は大きく二つに分かれます。実施できる場合と、実施できない場合です。
実施できる場合について、パンフレットは、配慮の内容の伝達と実施を挙げています8。検討した内容がそのまま形になり、稼働の進め方に反映されます。
一方、実施できない場合について、パンフレットは、配慮不実施の伝達と理由の説明を挙げています9。実施できないという結論だけでなく、その理由まで伝えることが定められている点が特徴です。
理由の説明があることが、書き分けの核心
実施できない場合に理由の説明が求められているのは、申出が形式的に処理されるだけで終わらないようにするためだと読み取れます。理由が分かれば、次にどのような条件なら実施できるかを考える手がかりにもなります。
| 状況 | 事業者が行うこと |
|---|---|
| 実施できる場合 | 配慮の内容の伝達と実施8 |
| 実施できない場合 | 配慮不実施の伝達と理由の説明9 |
表に整理したとおり、どちらの場合でも、事業者側には伝える行為が求められています。何も伝えずに終わるという扱いは、パンフレットが示す枠組みには含まれていません。
配慮の内容よりも、伝え方の有無のほうが、申出をした側にとって次の判断材料になります。実施できない結論であっても、理由が示されれば、別の進め方を考える土台になるためです。
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実施できるかできないかという結論と、その伝え方までを押さえたうえで、次の章では、実施できないときの説明の例と、そのときに確かめておきたい項目を見ていきます。
7. できないときの説明の例と、確かめる項目
実施できない場合に理由を説明するとはいえ、実際にどのような言い方が想定されているのか、具体的な形が分かりにくいこともあります。パンフレットは、その例も挙げています。
実施できない場合の説明の例として、今回は現場の作業が必須なのでオンラインへの変更は難しいという伝え方が挙げられています10。稼働の内容そのものに理由が結びついている点が特徴です。
理由を受け取ったあとに、確かめておきたいこと
理由の説明を受けたとき、そこで終わらせずに確かめておきたい項目があります。理由の中身、実施できない範囲、そしてやり取りを残しておく方法です。
| 確かめておきたい項目 | 目的 |
|---|---|
| 説明された理由の内容 | 次にどんな条件なら実施できるかを考える手がかりになります |
| 実施できない範囲 | 案件全体ではなく、どの部分が対象かを区別できます |
| やり取りを残しておく方法 | 申出と回答の内容をあとから振り返れるようにします |
これらを整理しておくと、今の案件で難しい配慮が、別の案件や別の時期であれば実施できる可能性があるのかどうかも見えてきます。
ここからは、この記事のテーマについて浮かびやすい疑問に触れます。
週3日の案件でも、配慮の対象になりますか
パンフレットが示す基準は、業務委託の期間の長さに基づくものです。稼働する日数の多さや少なさによって区分されているという記載はありません。期間が基準に当てはまるかどうかで考えます。
副業として受ける案件でも、対象になりますか
パンフレットの記載は、業務委託の期間に基づく基準であり、本業か副業かという区分けは示されていません。期間の条件に当てはまるかどうかを確かめることが手がかりになります。
地方に住んでいても、申出はできますか
パンフレットが示す枠組みは、居住している地域によって区分されているものではありません。オンラインでの業務への変更という申出の例も示されており5、稼働の場所にかかわらず申出そのものは行えます。
経験がまだ少ない案件でも、対象になりますか
パンフレットが示す基準は、業務委託の期間についてのものです。経験の長さによって対象から外れるという記載はありません。申出を行うかどうかは、経験の長短にかかわらず検討できます。
曜日の調整やオンラインへの変更など、伝え方の形はすでに示されています。次の一歩は、その事情に合う案件がどのようなものかを、実際に確かめてみることかもしれません。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」配慮の義務(2026年7月・2026年9月確認)
*2 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」短い期間の扱い(2026年7月・2026年9月確認)
*3 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」申出が起点(2026年7月・2026年9月確認)
*4 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」申出の例1(2026年7月・2026年9月確認)
*5 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」申出の例2(2026年7月・2026年9月確認)
*6 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」第1段階(2026年7月・2026年9月確認)
*7 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」第2段階(2026年7月・2026年9月確認)
*8 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」実施できるとき(2026年7月・2026年9月確認)
*9 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」実施できないとき(2026年7月・2026年9月確認)
*10 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」説明の例(2026年7月・2026年9月確認)