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    技術負債の案件|投資判断に変える説明の組み立て方

    「同じ言葉で範囲を確かめる」を示す図です。一部が残る/半分が残る/ほとんど残るを並べています。強調しているのは一部が残るです。合わせる場所と添えています。

    📘 この記事でわかること

    • 「大きな足かせ」と答えた割合が2割以下にとどまっていることと、社内で評価が割れている理由
    • 「レガシーシステムはない」という回答と「ほとんど」「わからない」がともに最も高いという二極化の実態と、段階の言葉で現状を確かめる方法
    • 古い仕組みと新しい仕組みが同居する現場の姿と、影響を相手の言葉に翻訳して伝える組み立て方

    技術負債を返済する案件に触れると、まずコードや設計の古さに目が向きます。改修する範囲を洗い出し、リスクを減らしていく仕事だと捉える方が多いはずです。しかし実際に参画してみると、技術面の課題よりも先に立ちはだかるのは、社内でその負債がどう受け止められているかという温度差です。この記事では、その温度差をどう見分け、どう相手の言葉に翻訳して伝えるかを整理します。

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    1. 技術負債の案件で最初に効くのは、技術ではない

    IPAの調査では、老朽化した既存ITシステムをレガシーシステムと呼び1、企業がそれをどう位置づけているかを尋ねています。ここで示されているのは負債の量そのものではなく、社内でその負債がどんな言葉で語られているか、という受け止め方の分布です。まず押さえておきたいのは、この分布のほうが、技術的な難しさより案件の進め方を左右するという点です。

    「大きな足かせ」という回答は2割以下にとどまっている

    残っているレガシーシステムが「DX推進に対する大きな足かせとなっている」と答えた割合は、3か国とも2割以下にとどまっています5。負債は社内の共通認識としては、それほど大きな問題として扱われていないということです。危機感を前提に提案を組み立てると、相手の実感とずれてしまいます。

    さらに日本と米国では、「大きな足かせ」以外の選択肢も同じような割合に分かれています6。一つの答えに偏っていないということは、社内でも見方が一致していないという意味です。技術の古さより、評価の割れ方のほうが、案件に入る前に見ておきたい情報です。

    図1:残っているレガシーシステムへの評価の割れ方
    残っているレガシーシステムへの評価の割れ方 大きな足かせと 感じている 3か国とも2割以下 それ以外の受け止め方 同じような割合に分散

    出典:IPA「DX動向2025」をもとに作成

    評価が割れているから、共通の言葉になっていない

    評価が割れているのは、負債という言葉が指す範囲が人によって違うからです。経営層は投資対効果で見て、現場は保守のしやすさで見て、外部から参画する立場は引き継ぎのしやすさで見ています。同じ「負債」という言葉を使っていても、指している中身がそろっていません。

    だからこそ、参画前に確かめたいのは「危ないかどうか」ではなく、「どの段階にあるか」です。次に見るのは、日本の現場がどんな分布になっているか、という統計の形です。

    2. 日本の現場は二極に分かれている

    前の章で見た評価の割れ方は、日本のレガシーシステムの分布そのものにも表れています。ここでは、その分布を国ごとの回答から見ていきます。

    「レガシーシステムはない」という回答は、日本が最も高い

    日本企業に「レガシーシステムはない」かどうかを尋ねると、その回答割合は各国の中で日本が最も高くなっています2。数字だけを見ると、日本は既存システムの刷新が最も進んでいる国のように映ります。

    一つの指標だけを見て「進んでいる」「そうではない」と判断すると、案件で出会う現場と食い違います。実際にどちら側の現場に当たるのかは、国全体の平均ではなく、その1社の回答を確かめないと分かりません。

    同時に「ほとんど」「わからない」も、日本が最も高い

    ところが同じ調査で、「ほとんどがレガシーシステムである」「わからない」と答えた割合も、日本がそれぞれ最も高くなっています3。刷新を終えた企業と、ほとんど手つかずの企業、そのどちらも日本に多いということです。

    「ない」が最も高いという結果と、「ほとんど」「わからない」も最も高いという結果は、一見すると矛盾しています。しかしこれは二つの集団が混在しているために起きる現象です。刷新をやり切った企業群と、レガシーの状況を把握しきれていない企業群が、どちらも一定の厚みを持っているということです。平均値を見るより、その1社がどちらの集団に属しているかを見るほうが、案件選びでは実用的です。

    集団主な回答案件に入る前に確かめたいこと
    刷新を終えた企業群「レガシーシステムはない」新しい仕組みでも、運用のルールが独自になっていないか
    状況を把握しきれていない企業群「ほとんどがレガシーシステムである」「わからない」誰がどこまで把握しているか、引き継ぎ資料が残っているか

    この二極化がどのくらい続いているのか、年ごとの推移を見ると、もう一つの手がかりが見えてきます。

    3. 刷新は頭打ちになっている

    レガシーシステムの状況を年度ごとに比べると、2024年度と2023年度とで傾向がほとんど変わっていないという結果が示されています4。刷新の動きが頭打ちになっている様子がうかがえます。

    2024年度と2023年度で、傾向はほとんど変わっていない

    数字が大きく動いていないというのは、社内の状況が固まりつつあるとも読めます。刷新を終えた企業と、これから着手する企業の比率が、ここしばらく大きく動いていないということです。案件に入る前に「今年の傾向」を探しても、大きな変化は見つかりにくい状況です。

    傾向が変わらない理由を、数字だけから言い切ることはできません。ただ、刷新を検討する動機として「大きな足かせ」という切実さが2割以下にとどまっている以上5、社内の優先順位が急に上がりにくい構造があることは想像できます。

    図2:2023年度と2024年度の傾向比較
    2023年度と2024年度の傾向比較 2023年度 2024年度 傾向はほとんど変わっていません

    出典:IPA「DX動向2025」をもとに作成

    止まって見える背景

    負債が残っているのは、判断の積み重ねの結果であり、他に優先したい投資があったという経緯も背景にあります。状況の担当者を一方的に評価するような見方は、面談の空気を悪くするだけで、話を前に進めません。

    外部から参画する立場にとって大切なのは、なぜ止まっているかを詮索することより、今どの段階にあるかを正確に把握することです。危機感を前提にした提案より、現状に合わせた提案のほうが、話が前に進みやすくなります。次の章では、この「今どの段階にあるか」を確かめるための、共通の言葉を整理します。

    4. 段階の言葉をそろえる

    レガシーシステムの状況は、調査の中で「一部領域にレガシーシステムが残っている」「半分程度がレガシーシステムである」「ほとんどがレガシーシステムである」という3つの段階で尋ねられています7。この言葉をそのまま使うと、面談での確認が具体的になります。

    「一部領域」「半分程度」「ほとんど」という3段階

    「古いシステムがある」というだけの会話では、聞く側も答える側も、思い浮かべている範囲がずれがちです。「一部領域」なのか「半分程度」なのか「ほとんど」なのかを尋ねるだけで、参画後に扱う範囲のイメージがそろいます。

    段階を尋ねる質問は、相手を試す質問ではありません。むしろ、相手の状況を正確に理解しようとする姿勢として受け取られやすい問いかけです。曖昧な相づちより、具体的な段階を確かめる一言のほうが、面談の質を上げます。

    面談で使うと、認識のずれを防げる

    表2に、3つの段階と、それぞれで確かめておきたい内容を整理しました。面談の早い段階でこの言葉を使うと、参画後に「思っていたより範囲が広かった」という食い違いを防ぎやすくなります。

    段階の言葉意味面談で確かめたいこと
    一部領域にレガシーシステムが残っている刷新は一定程度進んでいるが、部分的に古い仕組みが残っている状態どの業務がその一部領域に当たるか
    半分程度がレガシーシステムである新旧の仕組みがおおむね同じくらいの比重で併存している状態新旧の境目をどう扱っているか
    ほとんどがレガシーシステムである刷新がこれから本格化する段階にある状態どこから着手する計画があるか

    段階を確かめたら、次に聞きたいのは「その範囲が業務のどこに関わっているか」です。一部領域であっても、そこが売上に直結する処理であれば、影響の大きさは「ほとんど」の場合と変わりません。段階の言葉は入口であり、影響の大きさは別に確かめる必要があります。段階が分かったら、次はその状態を相手の言葉にどう翻訳して伝えるかです。

    段階の言葉をそろえたら、次はそれを実際の打ち合わせでどう使うかという話になります。最初の打ち合わせで次の点を確かめておくと、参画後に「聞いていた話と違う」という食い違いを避けやすくなります。特に見立ての出どころと、業務への影響の大きさは、早い段階で言葉にしておきたいところです。

    • 今回対象となる範囲は、「一部領域」「半分程度」「ほとんど」のどの段階に当たるか
    • その見立ては誰の判断か。担当者個人の感覚なのか、複数人で確認した内容なのか
    • これまでに刷新を試みたことがあるか。あるとすれば、どこで止まっているか
    • 今、どの業務が止まると、社内で最も困るか
    • 段階の判断は、どのくらいの頻度で見直されているか

    この5点を最初にそろえておくと、後から段階の解釈がずれても、打ち合わせの記録に立ち返って確認できます。

    5. 影響を相手の言葉に翻訳する

    日本企業は、SaaSについて「全社的に活用している」と答えた割合が最も高くなっています8。新しい道具はすでに現場に入っているということです。負債は「古い塊が残っている」という単純な状態ではなく、新しい仕組みと古い仕組みが同居している状態として現れます。

    新しい道具と古い仕組みが同居している

    同居しているからこそ、境目で情報の受け渡しがずれたり、同じ内容を二重に入力する手間が生まれたりします。負債の影響は、システムの中だけでなく、新旧の間の段差として、日々の業務に表れています。

    「このシステムは古いので直したほうがいい」という説明は、社内ではすでに聞き慣れた言葉です。むしろ効くのは、「この段差によって、どの業務にどんな影響が出ているか」という具体的な言い方です。技術の古さより、業務への影響のほうが、社内の意思決定者には伝わりやすい言葉です。

    図3:新旧の仕組みが同居する現場のイメージ
    新旧の仕組みが同居する現場のイメージ 新しい仕組みSaaSなど 段差 古い仕組み既存システム

    図の作成:Remogu編集部。新旧の仕組みが同居する状況を整理したもので、統計データではありません

    「危ないから直す」ではなく、影響で語る

    影響を相手の言葉に翻訳するとは、たとえば「情報の反映に時間差があるため、確認の手間が発生している」「担当者しか手順を把握していないため、引き継ぎに時間がかかる」というように、業務側の言葉で言い直すことです。表3に、新旧が同居する場面と、確かめたい影響の例を整理しました。

    同居の場面起きやすいこと確かめたい影響
    基幹系の処理とSaaSの間情報の反映に時間差が生じるどの業務が反映待ちの影響を受けるか
    手順書と実際の運用の間担当者しか把握していない手順が残る引き継ぎにどれくらい時間がかかるか
    新しい画面と古い画面の併存同じ内容を二重に入力する手間が生まれる二重入力が発生する業務範囲

    この翻訳ができる人は、技術の知識だけでなく、業務の流れを理解している人です。参画前の面談で、段階の言葉と影響の翻訳の両方を示せると、任せられる範囲が広がりやすくなります。参画先を探す段階でも、この視点は生きます。Remoguは案件の90%以上がフルリモート可能です9。新旧が同居する現場の案件も含め、場所に縛られず、段階の言葉と影響の翻訳を携えて面談に臨むことができます。

    6. まとめ

    ここまで見てきたように、技術負債の案件で最初に効くのは、コードの新旧ではありません。社内での受け止め方が割れていること、そして刷新が二極化した状態で頭打ちになっていることを、まず理解しておきたいところです。

    参画前にできることは、「危ないかどうか」を判断することではなく、「一部領域」「半分程度」「ほとんど」という段階の言葉で現状を確かめ、その影響を相手の言葉に翻訳して示すことです。この2つができれば、面談は具体的になり、参画後の認識のずれも減らせます。

    技術力そのものより、段階を確かめる質問と、影響を翻訳する言葉のほうが、任せられる範囲を広げます。まずは自分の経験がどの段階の現場で活きるのか、実際の案件情報を確かめてみることから始めてみましょう。

    7. よくある質問

    技術負債を返済する案件とは、具体的にどんな仕事ですか

    老朽化した既存ITシステムを指すレガシーシステムを対象に1、新しい仕組みへの移行や、新旧の間の段差を整える作業を担う案件です。コードを書き換えるだけでなく、影響範囲を確かめ、関係者に段階を説明する役割も含まれます。

    案件によって、一部領域の置き換えなのか、半分程度の移行なのか、扱う範囲は大きく異なります7。面談で段階の言葉を確かめておくと、参画後の仕事量のイメージがつかみやすくなります。

    入る前に、何を見分ければよいですか

    まず確かめたいのは、レガシーシステムの状況が「一部領域」「半分程度」「ほとんど」のどの段階にあるかです7。次に、その段階が社内でどう受け止められているか、大きな足かせと感じられているのか、それとも切実さが低いのかを確かめます5

    段階と受け止め方の両方を確かめておくと、参画後に「思っていたより緊急度が低かった」「逆に対応が急がれていた」という食い違いを避けやすくなります。

    図4:段階を確認してから影響を翻訳するという2つの手順
    段階を確認してから影響を翻訳するという2つの手順 段階を確認する STEP 1 影響を翻訳して伝える STEP 2

    図の作成:Remogu編集部。案件に入る前の進め方を整理したもので、統計データではありません

    提案が社内で通らないときは、どう伝え方を変えればよいですか

    「危ないから直す」という伝え方は、大きな足かせと感じている割合が2割以下にとどまる社内では5、効きにくい言葉です。かわりに、新旧が同居することで生じている業務への影響を、具体的な言葉に翻訳して伝えるほうが、話が前に進みやすくなります。

    たとえば情報の反映に時間差があること、担当者しか手順を把握していないことなど、日々の業務で起きている具体的な場面を挙げると、経営層にも現場にも伝わりやすくなります。

    この記事の内容を、参画先を探すときにどう活かせますか

    段階の言葉と影響の翻訳は、案件を探す段階でも使えます。案件情報を見る際に、扱う範囲が「一部領域」なのか「ほとんど」なのかを意識しておくと、自分の経験と合っているかを判断しやすくなります。

    Remoguは案件の90%以上がフルリモート可能です9。新旧が同居する現場の案件を探すときも、まずは登録して、自分の経験に近い条件を確かめてみることから始められます。

    社内で負債の評価が割れているとき、誰の言葉に合わせればよいですか

    特定の誰かの言葉に合わせる必要はありません。経営層、現場、外部から参画する立場では、そもそも困りごとの単位が違うため、一つの意見に寄せようとすると話がかみ合わなくなります。かわりに、業務が止まる時間や、手作業をやり直す回数といった、共通の単位に置き換えて話すことをおすすめします。共通の単位があれば、立場が違っても同じ数字を見ながら会話でき、評価の割れを前提にした進め方がしやすくなります。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 IPA「DX動向2025」2.5 レガシーシステムの刷新状況(2025年)
    *2 IPA「DX動向2025」2.5 レガシーシステムの刷新状況(2025年)
    *3 IPA「DX動向2025」図表2-17(2025年)
    *4 IPA「DX動向2025」2.5 レガシーシステムの刷新状況(2025年)
    *5 IPA「DX動向2025」図表2-18(2025年)
    *6 IPA「DX動向2025」図表2-18(2025年)
    *7 IPA「DX動向2025」図表の対象条件(2025年)
    *8 IPA「DX動向2025」IT関連技術や仕組みの利活用状況(2025年)
    *9 Remoguサイト公開情報(フルリモート可能案件の割合)