水道インフラDXの案件は台帳から始まる|電子化と標準化の順番

📘 この記事でわかること
- 管路情報の電子化は進んでいることと、メンテナンスへの技術導入はまだそこに追いついていないという現状のずれ
- 案件が「新しく作る」仕事ではなく、用語の統一や標準仕様書の改訂という「そろえる」仕事から始まること
- 全国共通の業務への技術展開の方向性と、外から入るエンジニアの経験がどこで活きるのかということ
水道管の更新やメンテナンスの現場は、紙の記録と経験に頼る仕事だと考えられてきました。ところが実態を数字で見ると、管路情報を電子媒体で管理している水道事業者は67%に達しています3。それでもメンテナンスにDX技術を導入している水道事業者は34%にとどまり1、電子化と実際の運用のあいだにずれが残っています。このずれこそが、外から入るエンジニアの案件が生まれる場所です。
1. 水道インフラのDXは、どこまで進んでいるのか
電子化率と導入率、二つの数字を分けて見る
水道インフラのDXと聞くと、これから電子化に着手する段階を思い浮かべるかもしれません。しかし公表されている現状の数字を見ると、様子はかなり違って見えてきます。
この現状を知らずに案件を探すと、まだ何も整っていない現場を思い浮かべてしまいがちです。実際には、電子化という土台の上に、次の仕事を積み上げていく案件が中心になります。
水道事業者のうち、すべての管路情報を電子媒体で管理している割合は67%に達しています3。下水道事業を実施している自治体でも、同じ指標は71%まで進んでいます4。器としての電子化は、すでに事業の半数をこえて広がっている段階です。
一方で、メンテナンスに関する上下水道DX技術の導入率を見ると、水道は34%1、下水道は21%2にとどまります。管路の情報を電子的に持っていることと、それを日々の維持管理の道具として使いこなせていることは、別の話だと分かります。
この二つの数字の差は、データが「存在する」ことと「使える」ことの境目をそのまま映し出しています。電子化そのものは、事業の半数をこえる水準まで進んでいます。残っているのは、その先の運用にどう橋を架けるかという段階であり、外から入るエンジニアが担うのは、まさにこの境目を埋める仕事だと言えます。
KPIの現状を一覧で見る
国土交通省が示した最終とりまとめでは、水道と下水道それぞれについて、電子媒体での管理割合とDX技術の導入率が対の形で示されています。数字を表にすると、次のようになります。
| 指標 | 水道 | 下水道 |
|---|---|---|
| すべての管路情報を電子媒体で管理している割合 | 67%3 | 71%4 |
| メンテナンスに関する上下水道DX技術の導入率 | 34%1 | 21%2 |
| 対象となる事業者・自治体の規模 | 約1,400事業者1 | 約1,500自治体2 |
電子媒体での管理と、DX技術の導入とでは、進み方が違います。前者は器を整える段階、後者はその器を日々の判断に使う段階です。数字が離れているのは、電子化そのものにつまずいているからではなく、そこから先の段階にまだ届いていないからだと読めます。
表からも分かるとおり、電子媒体での管理が進んでいる事業ほど、次の段階である運用の整備に取り組みやすい環境にあります。器をすでに持っている事業体から、案件が動き出しやすい理由はここにあります。
この距離がどこから生まれているのかは、次の章で扱う理由と重なります。用語の統一や台帳の整備が進んでいない事業体ほど、電子化と運用の差が大きく開いている構造です。
2. 電子化は進んだのに、データが共有できない理由
台帳システムへの登録が、まだ整っていません
電子媒体で管理しているなら、共有もすぐにできそうに思えます。ところが実務ではそうなっていません。上下水道の管路施設情報は、台帳システムへの登録などが途上であり、施設情報を他事業者とデータで共有できない状態にあります5。
これは災害時の対応や広域連携を進めるうえでの課題として、資料の中で位置づけられています5。電子データがあることと、それを他の事業者が使える形で持っていることは、まったく別の条件だと分かります。
広域連携の推進も、この情報共有が前提になっています5。一つの事業体だけで管理を完結させるのではなく、地域全体で同じ形の情報を持つことが、次の段階に進む条件になっています。
維持管理は人の手に大きく依存しています
背景にはもう一つの事情があります。上下水道事業の維持管理は人の手に大きく依存しており、効率的な事業運営を進めるうえでの課題になっています7。台帳の整備や用語の統一といった地道な作業に、時間を割く余地が事業体ごとに異なるということです。
地道な整備にどれだけ体制を割けるかは、事業体の規模によって差があります。だからこそ、外部の視点を持ち込む案件が、各地で立ち上がっている状況だと読み取れます。台帳や用語をそろえる仕事は、成果物が文書やデータという形で残ります。対面でのやり取りが少なくても、整理した内容がそのまま評価につながりやすい性質を持っています。
この構造を図にすると、電子化という器と、共有という機能の間にある段差が見えてきます。
図の作成:Remogu編集部。資料の記述をもとに整理したもので、統計データではありません
台帳がそろっていない状態を放置しても、電子化の数字は動きません。だからこそ次に必要なのは、新しい仕組みを作ることではなく、すでにある情報をそろえる仕事だと分かります。
この理由を知っておくと、案件の説明を読んだときに、何が期待されているかが具体的に見えてきます。「システムを作る」ではなく「情報を交換できる形にする」という言葉の意味が、資料の文脈でつながるからです。
3. だから案件は「そろえる」仕事から始まる
用語の統一と標準仕様書の改訂が対応方針です
台帳システムへの登録がそろっていない状態に対して、資料が示す対応方針ははっきりしています。台帳システムで管理する用語などの統一を進め、標準仕様書などの改訂を令和9年度までに実施する方針が示されています6。
新しいシステムを一から作る仕事ではありません。むしろ、事業体ごとにばらついている用語や項目の定義をそろえ、他の事業者とデータをやり取りできる仕様に置き換えていく仕事です。派手さはありませんが、この土台がないと次のどんな技術も乗りません。
この仕事は地味に見えるかもしれません。ですが台帳が整っていない状態のままでは、どれだけ高度な分析やAIの技術を持ち込んでも、その効果を他の事業者と共有できません。順番を守ることが、結果的に案件全体の近道になります。
案件で実際に触るのは、この実務です
外から入るエンジニアの立場で見ると、この方針は具体的な仕事の輪郭を持っています。既存の台帳データを棚卸しして用語を整理すること、標準仕様書に沿ってデータ項目を置き換えること、令和9年度という目安に向けて進み具合を確かめること、の3つです6。
この3つの実務を時系列で並べると、案件の入り口がどこにあるかが見えてきます。
図の作成:Remogu編集部。資料の記述をもとに整理したもので、統計データではありません
新しい機能を作る経験よりも、既存のデータをそろえて渡す経験のほうが、この段階では活きます。派手な実装よりも地道な整理を評価する案件だと捉えておくと、参画後の仕事のイメージが合いやすくなります。
参画の早い段階でこの土台に関われると、後続の横展開のフェーズでも声がかかりやすくなります。最初の案件で「そろえる」経験を積んでおく価値は、そこにあります。
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4. 全国で共通する業務に、共通の形を持ち込む
漏水調査や管路診断は、全国共通の業務です
台帳をそろえたあとに何が起きるかも、資料は示しています。水道管の漏水調査や管路診断など、全国の事業者において共通で実施されている業務について、AIや人工衛星を使う技術の横展開が方針として示されています8。
一つの事業体だけの改善にとどまらず、全国で同じ課題を抱える事業体に技術を広げていく発想です。約1,400の水道事業者1、約1,500の下水道自治体2という規模を考えると、共通の形で扱えることの価値は小さくありません。
自治体ごとの案件を個別に見ていくと、規模も体制もさまざまです。それでも課題の形が共通しているからこそ、一つの現場で身につけた整理の手順を、別の現場にそのまま応用できる場面が生まれます。
案件の前提になる、共通の参照物があります
この横展開を支える土台として、上下水道施設のメンテナンスに使えるデジタル技術をまとめた「上下水道DX技術カタログ」が2025年3月28日に公開されました9。年に1回程度、内容が更新される見込みの資料で、案件に入るときの共通言語として参照されます9。
このようなカタログのような参照資料が整っているのは、案件に入るときの共通言語がすでに用意されているという意味でもあります。ゼロから業界知識を積み上げなくても、案件の入り口に立てる仕組みです。
全国で共通して実施されている業務を整理すると、次の3つに分けられます。
| 業務 | 方針として示されている技術 | 案件で関わる内容 |
|---|---|---|
| 漏水調査 | 人工衛星を用いた検知手法8 | 検知結果の整理・判定基準の検証 |
| 管路診断 | AIを用いた診断技術8 | 診断モデルの検証・運用設計 |
| 技術の横展開 | DX技術カタログ9 | 導入事例の整理・仕様への落とし込み |
共通の業務に共通の形を持ち込む仕事は、一つの事業体だけを見ていては生まれません。複数の現場を横断して同じパターンを扱ってきた経験こそ、ここでの強みになります。
技術の中身よりも、共通のパターンを見抜く力のほうが、この領域では長く使えるスキルになります。案件をまたいで同じ視点を持ち込めることが、外から入るエンジニアの強みです。
では、その経験は具体的にどんな形で評価されるのでしょうか。次の章で、データ基盤やGISといった実務の経験がどこに効くのかを見ていきます。
5. 外から入るエンジニアの経験は、どこで効くのか
データ基盤やGISの経験は、台帳の再設計に効きます
ここまで見てきた「そろえる仕事」は、データ基盤の設計や運用に携わってきた経験と重なります。バラバラに存在する項目を統一されたスキーマに落とし込み、他システムと連携できる形に整える作業は、さまざまな現場で繰り返されてきた仕事だからです。
GIS、つまり地理情報システムを扱ってきた経験も、この領域では直接に活きます。管路情報は本来、位置を伴うデータです。空間データとしての整備や可視化の経験は、そのまま台帳の再設計に持ち込めます。
移行の経験は、台帳をそろえる仕事そのものです
システム移行やデータ移行のプロジェクトに関わった経験も見逃せません。旧い形式のデータを新しい仕様に置き換え、検証しながら本番へ移していく手順は、台帳を標準仕様書に合わせてそろえていく作業と、ほとんど同じ形をしています。
図の作成:Remogu編集部。資料の記述をもとに整理したもので、統計データではありません
個別の技術を知っているかどうかよりも、複数の現場で同じ種類の整備を経験してきたかどうかのほうが、ここでは重視されます。特定のツールの操作よりも、データを整える手順を持っていることが評価される領域です。
リモートで進める案件では、対面で細かくすり合わせる機会が少ない分、整理した内容を文書や図で残し、クライアントと協議しながら進める力が求められます。これはデータ基盤やGISの仕事で、すでに培われてきた力そのものです。
これまで培ってきた経験を、初めての領域でどう言葉にして伝えるかも、参画後の評価を左右します。台帳や用語整理の実務に沿った言葉で経験を語り直すと、面談でも伝わりやすくなります。
経験の領域と、この案件で求められる役割を対応させると、次のように整理できます。
| 経験の領域 | この案件でどう活きるか |
|---|---|
| データ基盤の設計・運用 | 台帳データの構造化、他システムとの連携設計 |
| GIS(地理情報システム) | 管路情報の空間データ整備、可視化 |
| システム移行・データ移行 | 用語統一後の既存データの検証・置き換え |
経験の翻訳がうまくいけば、水道という専門領域は障壁ではなくなります。むしろ、これまでの経験を新しい文脈で試す機会になります。
Remoguは、案件の90%以上がフルリモート可能です。場所に縛られず、これまで積み上げてきたデータ基盤やGISの経験を、公共インフラという新しい領域に持ち込める環境が整っています。
まずは自分の経験に近いリモート案件の条件を確かめる →
ここまでの流れを、参画してからの時間軸で整理すると、経験がどう積み上がっていくかが見えてきます。
図の作成:Remogu編集部。資料の記述をもとに整理したもので、統計データではありません
現状の把握からそろえる仕事、そして全国共通の業務展開へ。この順番を知っているだけで、参画してからの動き方はかなり具体的になります。
6. まとめ
水道インフラのDXは、電子化だけを見れば、水道67%3、下水道71%4という水準まで進んでいます。一方でメンテナンスへのDX技術の導入は、水道34%1、下水道21%2にとどまり、器と運用の間には距離が残っています。
この距離を埋める鍵は、新しい技術の導入そのものではなく、台帳システムへの登録5を進め、用語を統一していく地道な作業です6。
そろえる仕事の先には、漏水調査や管路診断のような全国共通の業務に、AIや人工衛星の技術を横展開していく段階が控えています8。約1,400の水道事業者と約1,500の下水道自治体が同じ課題を抱えているからこそ、一度そろえた経験は横に運べます。
公共インフラの案件は、未経験の領域に見えるかもしれません。ですが最初に求められるのは水道特有の知識ではなく、これまで培ってきたデータ整理の力です。条件を確かめるところから、参画の一歩を踏み出せます。
データ基盤やGIS、システム移行で積み上げてきた経験は、ここでは特別な技術ではなく、そのまま活かせる土台になります。案件の90%以上がフルリモート可能な環境で、公共インフラという新しい領域に、まずは自分の経験がどう活きるかを確かめてみましょう。
7. よくある質問
水道インフラDXの案件は、未経験でも参画できますか
この領域で最初に求められるのは、水道特有の専門知識よりも、データを整理し他システムと連携できる形に整えてきた経験です。台帳システムへの登録5を進め、用語の統一や標準仕様書の改訂を令和9年度までに進めていく方針が示されているため6、データ基盤やGISの経験があれば、業界の実務経験がなくても参画の入り口に立てます。資料に示された方針の範囲で仕事の中身が明確なので、初めての領域でも取り組みやすい案件だと言えます。
自治体が発注する案件は、リモートで進められますか
案件ごとに条件は異なりますが、Remoguが扱う案件の90%以上がフルリモート可能です。データの整理や仕様の検討など、現地に常駐しなくても進めやすい実務が中心になる案件も見られます。参画条件は案件ごとに確かめておくと安心です。気になる場合は、登録の際に希望条件として伝えておくと、以降の案件情報を確かめやすくなります。
データ基盤やGISの経験は、どのように評価されますか
個別のツールの操作経験よりも、バラバラなデータを統一された形に整えてきた経験そのものが評価されます。システム移行やデータ移行のプロジェクトに携わってきた経験も、同じ理由で強みになります。案件によって重視する経験の組み合わせは異なるため、まず自分の経験がどう整理できるかを言葉にしておくと、参画時の話がスムーズに進みます。
この領域の案件は、いつ頃まで見込めますか
台帳の整備と標準仕様書の改訂は、令和9年度までに実施する方針が示されています6。この目安に向けて、そろえる仕事から横展開の仕事へと段階が移っていくため、当面はまとまった量の実務が続く見通しです。掲載されている案件の詳しい条件は、時期によって変わります。
参画後は、どのような順番で仕事が進みますか
案件はまず、既存の台帳やデータの現状を確認するところから始まります。次に用語や項目を標準仕様書に合わせて整理し6、その後に漏水調査や管路診断など全国共通の業務へ技術を横展開していく流れが中心です8。順番を踏まえて臨むと、参画初期の役割がつかみやすくなります。
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水道インフラのDXは、これから電子化する段階ではありません。まずは公共・データ基盤のリモート案件が、いまどんな条件で並んでいるかを見てみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 国土交通省「最終とりまとめ(概要版)」上下水道DX推進に向けたロードマップ及びKPI(2025年)
*2 国土交通省「最終とりまとめ(概要版)」上下水道DX推進に向けたロードマップ及びKPI(2025年)
*3 国土交通省「最終とりまとめ(概要版)」上下水道DX推進に向けたロードマップ及びKPI(2025年)
*4 国土交通省「最終とりまとめ(概要版)」上下水道DX推進に向けたロードマップ及びKPI(2025年)
*5 国土交通省「最終とりまとめ(概要版)」テーマ2 情報整備・管理の標準化(2025年)
*6 国土交通省「最終とりまとめ(概要版)」テーマ2 情報整備・管理の標準化(2025年)
*7 国土交通省「最終とりまとめ(概要版)」テーマ1 業務の共通化(2025年)
*8 国土交通省「最終とりまとめ(概要版)」テーマ1 業務の共通化(2025年)
*9 国土交通省「最終とりまとめ(概要版)」テーマ3 DX技術の普及促進(2025年)
*10 国土交通省「上下水道DX 技術カタログを公開します」報道発表資料(2025年3月28日)
*11 Remoguサイト公開情報(フルリモート可能案件の割合)