行政DXの案件はどこにあるか|発注元と領域の見取り図

📘 この記事でわかること
- 重点計画の理念・原則にAIの徹底活用が挙げられていることと、それが行政DX案件全体の前提になっている位置づけ
- 国は基盤整備、自治体は移行と検証という取組の分かれ方と、自分の経験をどちらの言葉に寄せて語れるかという視点
- 分野ごとに並ぶ暮らし側の取組と、データ連携・安全性という横断の軸を、経験の言葉に変換する4つの層の整理
公共分野のデジタル化に関わる案件は、範囲が広く見えて、どこから手をつければよいか分かりにくいものです。けれど国の重点計画を開くと、取組の見出しがそのまま案件の地図になっています。
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1. 地図は公開されている
重点計画は本文自体がかなりの分量ですが、案件を探す立場で必要なのは全文を読み込むことではなく、見出しの並びを地図として捉えることです。
細部の予算や数値を追いかけるより、見出しという骨組みを先につかんでおくほうが、案件を選ぶときの手戻りは少なくなります。この記事でも、扱うのは見出しの並びとその読み方です。
見出しの一覧が、そのまま案件の入り口になる
「行政DXの案件」と一括りにされると、扱う範囲が漠然として感じられます。ところが2026年7月21日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」1を開くと、取組がいくつもの見出しに分けて並んでいます。
見出しの一覧は、政策の説明文というより目次に近い体裁です。理念・原則、課題、取組という段に分かれ、それぞれの段にさらに項目が並びます。
見出しを起点にすると、個別の案件をひとつずつ眺めて範囲を推測するよりも、先に地図を広げてから自分の位置を探すほうが、遠回りをせずに済みます。地図の段の名前を覚えておくだけでも、案件を見る目線は変わってきます。
理念・原則の段に、AIの徹底活用が置かれている
理念・原則の段には、デジタル社会形成のための基本原則、AIの徹底活用、その他の重要な理念・原則という3つが挙げられています2。技術の各論ではなく、全体の前提を示す段にAIが並んでいる点が読みどころです。
個々の分野の取組よりも上の段に位置づけられているということは、AIを扱う経験が特定分野に限られた強みではなく、行政DXの案件全体に効く前提として扱われているとも読めます。専門分野を1つ持つよりも、前提の変化に応じられる経験のほうが、案件をまたいで生きてきます。
この段を読む前と読んだあとでは、AIに関する経験の説明の仕方も変わってきます。特定の案件のための道具として語るのではなく、行政DX全体を貫く前提として語ったほうが、読み手への伝わり方が変わります。
出典:デジタル社会の実現に向けた重点計画(デジタル庁、2026年7月21日閣議決定)をもとに作成
地図の全体像を押さえたところで、次はその中でも需要が生まれている場所、つまり課題の段に目を向けます。
2. 需要の出どころは、課題の段に書かれている
地図の理念・原則の段を見たあとは、なぜいま取組が動いているのかという理由の段、つまり課題に目を移します。
自治体の事情が、課題の一番手に挙げられている
課題として最初に挙げられているのは、自治体におけるリソースのひっ迫です3。人手が足りているかどうかという話ではなく、限られた体制で対応できる範囲を超えつつある、という制約の話として読むと、案件が生まれる理由がつかみやすくなります。
自治体という組織側の制約として書かれているのがポイントです。個人の働き方の話ではなく、体制側の事情として需要が生まれているため、依頼される仕事も、標準化や効率化に関わるものが中心になりやすいと読めます。
この読み方に立つと、自治体の事情を体制側の悩みとして眺めるだけでなく、自分がどの制約に応えられる経験を持っているかを点検する材料にできます。
生成AIとリスクの高まりが、そのあとに続く
課題にはもう一つ、生成AI・AIエージェント等の急速な進展が挙げられています3。理念・原則の段でAIの活用が置かれていたことと重ねると、AIを扱う経験は一時的な流行ではなく、課題の段からも裏づけられた継続的なテーマだと分かります。
さらに、課題にはリスク要因の高まりも挙げられています3。個別の中身に立ち入るというより、行政のシステムに関わる以上、リスクを意識した設計や運用が前提になっている、という段階の話として受け止めておくくらいがちょうどよい距離感です。
3つの課題を並べて眺めると、体制の制約・AIの進展・リスクへの備えという、性格の異なる事情が同じ段に同居していることが分かります。どれか1つに強い経験よりも、3つのつながりを説明できる経験のほうが、この段全体には効いてきます。
課題の並びを見ると、目先の効率化よりも、AIとリスクの両方を踏まえた設計のほうが、これからの行政DX案件で効いてくる経験だと見えてきます。
自分の経験を、課題の見出しに当てはめてみる
ここまでの3つの課題は、いずれも抽象的な言葉で書かれています。抽象的なままでは案件選びに使えないため、それぞれの見出しを、自分がこれまで携わってきた仕事に照らして読み替える作業が必要になります。
| 課題の見出し | 読み替える問い | 経験の例(切り口) |
|---|---|---|
| 自治体におけるリソースのひっ迫3 | 定型的な作業を仕組み化した経験があるか | 業務効率化・自動化・標準化の実務 |
| 生成AI・AIエージェント等の急速な進展3 | 生成AIを組み込んだ開発に関わったか | プロンプト設計・AI機能の実装・評価の仕組みづくり |
| リスク要因の高まり3 | リスクを踏まえた設計に関わったか | 権限管理・監査対応・可用性を意識した設計の経験 |
リソースの制約やAI活用に強みが生きる案件を、一覧で確かめる →
課題の段から需要の出どころをつかんだところで、次は取組そのものが、国と自治体でどう役割分担されているかを見ていきます。
3. 国の側は基盤、自治体の側は移行と検証
課題の段で需要の出どころを確認したら、次はその需要に応える取組が、国と自治体でどう分かれているかを見ていきます。
国は、データの土台を整える側に回る
国の側の取組としては、AX/DX基盤の高度化・強靱化の中に、ベース・レジストリの整備・利活用促進が含まれています4。個々のサービスをつくるというより、その土台となるデータの整備に関わる位置づけです。
土台側の仕事は目立ちにくい一方、複数の分野から参照される基盤であるほど、設計の正しさが後々まで効いてきます。表に出る画面をつくる経験よりも、データの参照のされ方を設計してきた経験のほうが、この段には近い経験だといえます。
自治体は、移行と振り返りの両方を担う
自治体の側は、地方公共団体情報システムの統一・標準化とガバメントクラウド移行の推進が挙げられています5。複数の自治体で仕様をそろえ、共通の基盤に載せ替えていく取組です。
同じ段にはもう一つ、これまでの取組の課題の把握・検証も挙げられています5。前に進める取組だけでなく、過去に進めてきたことを振り返って検証する項目が、同じ並びに立っている点が読みどころです。
さらに、国・地方ネットワークの将来像の実現や、国・地方デジタル共通基盤の整備・推進も自治体側の取組に含まれています6。移行の実務だけでなく、共通の基盤を国と地方の双方でどう支えるかという設計にも仕事が寄っていくと読めます。
移行を請け負う経験と、検証を担う経験は、似ているようで求められる視点が異なります。動かす経験だけでなく、振り返って検証する経験のほうも、自治体側の並びにはきちんと立っています。
出典:デジタル社会の実現に向けた重点計画(デジタル庁、2026年7月21日閣議決定)をもとに作成
「進める」取組だけでなく「振り返る」取組が並んでいることは、移行を一度実施して終わりにするのではなく、検証を担える経験もあわせて生きることを示しています。国の基盤と自治体の移行・検証は別の仕事に見えて、同じデータをどちらの立場から支えるかという違いに近いものです。
4. 暮らしの側は、分野ごとに並んでいる
国と自治体という担い手の整理をしたところで、今度は暮らしに近い側、つまり利用者から見える分野の並びを確認します。
個人にも法人にも、入り口が用意されている
国民の暮らしに関わる取組としては、マイナンバーカードの普及・利用拡大及びマイナポータルの利便性向上等、Gビズポータルの構築及び機能拡充等、医療DXの推進、こども・子育て・教育DXの推進、防災DXの推進などが挙げられています7。
個人向けの窓口と法人向けの窓口が並び、そのあとに医療・子育てと教育・防災という分野別の取組が続く構成です。分野の名前を眺めるだけでも、行政DXが一つの窓口に収れんしていく話ではなく、分野ごとに入り口が分かれていく話だと分かります。
1つの分野を極めることだけを目指すよりも、複数の分野に共通する経験を持ち寄れるほうが、暮らしの側の並びでは動きやすくなります。分野の壁は見出しの上だけの話で、経験の中身は重なっていることが多いためです。
分野ごとの並びを、経験の切り口に変える
分野の見出しは、そのまま自分の経験の切り口に変換できます。例えば本人確認や連携の基盤に関わってきた経験は個人向けの窓口に近く、様式や手続きのデータ化に関わってきた経験は法人向けの窓口に近い、という具合です。
分野を横断して手を広げるよりも、まず自分の経験に近い1つの見出しから当てはめてみるほうが、案件を探すときの手がかりになります。
分野の名前だけを見て縁が薄いと決めつける前に、どんな経験の切り口が効くのかを表で確かめておくと、選べる案件の幅が変わってきます。
分野と、そこで効きやすい経験の対応
分野ごとに求められる経験の質は異なります。次の表は、暮らしの側に並ぶ分野の見出しと、それぞれで活きやすい経験の切り口を並べたものです。
| 分野の見出し | 近い性格 | 効きやすい経験の切り口 |
|---|---|---|
| マイナポータル | 個人向けの窓口 | 本人確認・連携まわりの実装経験 |
| Gビズポータル | 法人向けの窓口 | 様式・手続きデータの電子化に関わった経験 |
| 医療DX | 医療分野の情報連携 | 複数システム間の連携・データ設計の経験 |
| こども・子育て・教育DX | 分野別の取組 | 現場の運用に合わせた設計・調整の経験 |
| 防災DX | 分野別の取組 | 情報の集約・可視化に関わった経験 |
出典:デジタル社会の実現に向けた重点計画(デジタル庁、2026年7月21日閣議決定)をもとに作成
分野ごとの案件の並びを、一覧でチェックする →
分野ごとの並びを確認したところで、最後にこれらの分野を横断して効いてくる取組を見ていきます。分野別の窓口を1つずつ深掘りする前に、横断の軸を先に押さえておくと、あとから読む分野の見出しも位置づけやすくなります。
5. 横断で効くのは、データ連携と安全性
国、自治体、暮らしという担い手や分野の並びを見てきましたが、経済成長の加速という段には、分野をまたいで効いてくる取組がまとめて挙げられています。
データ連携・利活用を促進する環境整備
その一つが、データ連携・利活用を促進する環境整備です8。特定の分野に閉じた取組ではなく、これまで見てきたどの分野の案件にも共通して関わってくる基盤づくりだといえます。
分野ごとの窓口を1つずつ深掘りするよりも、データ連携という横断の軸を押さえておくほうが、複数の分野の案件に経験を持ち越しやすくなります。
安全性・信頼性とサイバーセキュリティ対策
同じ段には、政府認証基盤を始めとする政府情報システム等に係る安全性・信頼性の向上も挙げられています8。認証の仕組みに関わる経験は、分野を横断して評価されやすい位置づけにあると読めます。
サイバーセキュリティの確保という段では、AI性能の高度化を踏まえた対策の向上、政府情報システムへの対策強化、自治体の対策の向上等が挙げられています9。AIの進展が、活用の場面だけでなく対策の場面にも取組として並んでいる点が特徴です。
データ連携と安全性は、別々の専門というより、同じ基盤を支える両輪として並んでいます。片方だけを深めるよりも、両方に目を配れる経験のほうが、横断の軸では評価されやすくなります。
行政DXの経験を、4つの層で書き出す
ここまで見てきた見出しは、基盤・移行と検証・データ連携・安全性という4つの層に整理し直すと、自分の経験を書き出しやすくなります。次の表は、その4つの層と、対応する取組の見出し、経験を書き出すときの切り口をまとめたものです。
| 層 | 対応する取組の見出し | 書き方の切り口 |
|---|---|---|
| 基盤層 | ベース・レジストリの整備・利活用促進4 | データ項目の共通化や参照系の設計に関わった経験を挙げる |
| 移行・検証層 | 統一・標準化とガバメントクラウド移行の推進5 | 移行計画や検証工程を担った経験を挙げる |
| データ連携層 | データ連携・利活用を促進する環境整備8 | API連携や連携基盤の設計・実装の経験を挙げる |
| 安全性・セキュリティ層 | 政府認証基盤を始めとする安全性・信頼性の向上8 | 認証まわりの設計やセキュリティ対策の実装経験を挙げる |
出典:デジタル社会の実現に向けた重点計画(デジタル庁、2026年7月21日閣議決定)をもとに作成
見出しの並びを地図として一通りたどったところで、ここまでの内容を整理します。
6. まとめ
行政DXの案件は、範囲が広く見えて的が絞りにくいという印象を持たれがちです。けれど重点計画を開くと、理念・原則から課題、取組までの見出しがそのまま地図になっています。
理念・原則の段にはAIの徹底活用が置かれ2、課題の段には自治体のリソースのひっ迫や生成AIの進展、リスク要因の高まりが並びます3。取組は、国の基盤整備4、自治体の移行と課題の検証5、国・地方の共通基盤づくり6、暮らしの分野別の窓口7、横断するデータ連携8、そして安全性とセキュリティ対策9に分かれています。
自分の経験がどの見出しに重なるかを先に決めてから案件を見ると、探し方そのものが変わります。見出しを1つずつ照らし合わせるよりも、まず4つの層で経験を書き出しておくほうが、その後の当てはめが早くなります。
Remoguは、案件の90%以上がフルリモート可能です10。行政DXの見出しと自分の経験を重ねたら、まずは登録して、自分に合う条件がどのくらい並んでいるかを確かめてみましょう。
7. よくある質問
公共の案件は手続きが中心になるのか
制度に関わる手続きの場面がまったく無いわけではありません。ただ重点計画の取組を並べてみると、データ連携基盤の整備4や、システムの標準化・移行5など、開発の比重が大きい項目も数多く挙げられています。
制度に沿った書類のやり取りを思い浮かべるよりも、その先にある基盤の設計や移行の実務を思い浮かべるほうが、この分野の案件の実像に近づきます。
案件ごとに実際の内容は異なるため、手続きの比重がどのくらいかは、個別に見ておくと安心です。
どの分野から入るのがよいのか
分野の見出しに優劣はありません。まず自分がこれまで携わってきた仕事に近い言葉を探し、そこに当てはまる見出しから見ていくのがおすすめです。マイナポータルのような個人向けの窓口も、Gビズポータルのような法人向けの窓口も、医療DXや教育DX、防災DXといった分野別の取組も7、並びとしては対等に挙げられています。
複数の分野を同時に狙うよりも、まず1つの分野で経験を言葉にしてみるほうが、案件を見るときの視点が定まりやすくなります。
計画はまた変わるのか
ここで確認できているのは、2026年7月21日に閣議決定されたという事実です1。改定の頻度や次の見直しの時期について述べた内容ではないため、この記事では決定日までを事実として扱っています。
見出しの並びが今後変わる可能性はありますが、経験を4つの層に整理しておく考え方そのものは、見出しが多少入れ替わっても使い続けられます。目先の見出しを覚えることよりも、層で整理する型を身につけておくほうが、変化への備えになります。
行政DXの経験は、どう書けば伝わるのか
「担当しました」だけで終わる書き方では、どの層の経験かが伝わりません。基盤・移行と検証・データ連携・安全性という4つの層のどこに当たるかを添えるだけで、読み手が経験を位置づけやすくなります。
作業の手順を細かく書き並べるよりも、どの層を担い、何を判断してきたかを添えるほうが、経験の重さは伝わります。同じ案件の話でも、層を意識した言葉に置き換えるだけで印象は変わります。
書き方を整えたら、次は実際にその経験が重なる案件がどのくらい並んでいるかを確かめる番です。Remoguで登録し、自分の経験に近い条件を探してみるところから始めてみましょう。
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出典・参考情報
*1 デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」重点計画(2026年7月21日 閣議決定)(2026年7月21日)
*2 デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」第1 2 理念・原則(2026年7月21日)
*3 デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」第1 3 我が国の現状認識・課題(2026年7月21日)
*4 デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」第1 4(1)国のAX/DX基盤(2026年7月21日)
*5 デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」第1 4(2)自治体のAX/DX基盤(2026年7月21日)
*6 デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」第1 4(2)自治体のAX/DX基盤(2026年7月21日)
*7 デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」第1 4(3)国民の暮らしのAX/DX推進(2026年7月21日)
*8 デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」第1 4(4)経済成長の加速(2026年7月21日)
*9 デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」第1 4(5)サイバーセキュリティの確保(2026年7月21日)
*10 Remoguサイト公開情報(フルリモート可能案件の割合)