データ基盤の案件|項目を決める前に確認する参照先

📘 この記事でわかること
- デジタル庁が三層の参照モデルを公開していることと、いちばん下の書式をそろえるだけで連携が変わること
- コアデータモデルが指すものを決めていることと、実装データモデルは組み合わせとカスタマイズで作れること
- 参照するだけでコア語彙が持つ相互運用性が確保できることと、その経験を4つの層で言葉にできること
データ基盤の案件に参画すると、最初に相談されるのが項目の定義です。日付の形式をどう決めるか、住所をどこまで分けて持つか、案件に入るたびに一から決め直す進め方が今も続いています。デジタル庁は、この定義を参照できる形で三層のモデルとしてすでに公開しています。参照する起点を持っているかどうかで、打診の場で交わす会話の質は変わります。
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1. ひな形が公開されている
項目の定義を決める作業は、案件に入るたびにゼロから積み上げる仕事に見えます。けれど行政分野では、参照できるモデルがすでに用意されており、そこから組み立てを始める案件も増えています。決め方の起点を知っているかどうかは、打診の初期に伝わる印象にも関わってきます。
参照できるモデルがあることと、それをそのまま丸ごと当てはめられることは、同じ話ではありません。まずは何が公開されているのかを、正確に押さえるところから始めます。
毎回ゼロから決める進め方から抜け出す
GIFは、データの相互運用性を確保し、効率的な情報共有と情報連携を実現するためのデータモデルのひな形(参照モデル)であり、実装データモデル、コアデータモデル、コアデータパーツを公開しています1。層に分かれているからこそ、どこを参照し、どこを自分たちで決めるかを切り分けられます。
ゼロから決める進め方よりも、公開されている層を起点にする進め方のほうが、案件が変わっても土台がぶれません。連携先が増えるたびに書式から見直す作業よりも、参照する層をひとつ決めておく作業のほうが、後の手間は小さくなります。
参照する目的は、連携のしやすさ
GIFを利用してデータを整備することで、データ連携が確保され、システム間の相互運用性を高めることができると示されています2。連携先が増えたときに、その都度変換の仕組みを作り直す手間が軽くなっていきます。
この目的を打診の場で言葉にできるかどうかは、参画初期の印象を左右します。項目の並びを尋ねられたときに、参照している層を挙げられれば、決め方の一貫性が伝わります。
出典:デジタル庁「政府相互運用性フレームワーク(GIF)」(2026年3月24日更新)をもとに作成
この三層は、上から下まで全部を覚えておく一覧ではありません。案件で問われた層だけを確かめれば足りる作りになっています。どの層の話をしているのかを最初に見極めることが、参照する範囲を絞る最初の一歩になります。
三層のうち、いちばん下に置かれているのが書式を定めた層です。次の節では、この層から確かめる理由を見ていきます。
2. いちばん下は「書式」から始まる
書式をそろえるだけでも、効く
コアデータパーツは、日付やアドレスなど、多くのデータモデルに登場し共通的に活用されるデータ項目について、値の形式(書式)を定義したものです3。個人や法人といった大きな構造を決める前に、まずここから確かめられる層になっています。
すべての項目を厳密にそろえる進め方よりも、共通的な項目の書式だけを先にそろえる進め方のほうが、着手にかかる時間は短くなります。案件に入って最初の打ち合わせで、この層の話から始められると、決め方の順序が伝わりやすくなります。
書式という層は、専門的な話に聞こえて、実際には日々の入力や表示の細部を指しています。ここを最初にそろえておくと、後から扱うデータの種類が増えても、土台そのものは動きにくくなります。
打診の場で確かめる問い
書式の層があるからといって、案件に入ってすぐ全部を合わせられるわけではありません。既存システムには、すでに固まった項目名や桁数があります。だからこそ、打診の場では具体的なスキーマを見せてもらうより前に、参照する起点をどこに置くつもりかを尋ねておくと、後の作業の見え方が変わります。次の表は、その問いの例です。
| 確認する場面 | 尋ねること | 後の作業がどう変わるか |
|---|---|---|
| 日付や住所など共通項目の話が出たとき | 参照する書式の起点をどこに置くか | 起点が同じなら、連携先が増えても書式のずれを毎回調整せずに済みます |
| 既存システムの項目名を渡されたとき | 名称が違うだけで、指しているものは同じか | 名称でなく指すものの単位で照合すると、後の変換作業が軽くなります |
| 新しい連携先が増えたとき | 相手側も同じ参照元を意識しているか | 双方が同じ参照元を意識していれば、変換の手間を小さくできます |
表にある問いは、細かな規則を尋ねるものではありません。参照する起点を早い段階で共有できるかどうかを確かめるためのものです。ここで会話がかみ合うと、後工程での手戻りは小さくなります。
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この問いに答えられると、書式をそろえる話が、単なる形式合わせではなく、連携のしやすさにつながっていることが伝わります。書式の層を確かめたら、次に見るのは、その一段上に置かれた層です。何を指すかを決める部分に話を進めます。
3. 真ん中は「何を指すか」を決める
書式がそろっても、指しているものが違っていれば連携は崩れます。同じ「住所」という項目名でも、案件によって指す範囲が違うことは珍しくありません。真ん中の層は、この「何を指すか」を決めるための層です。
書式をそろえる作業よりも、指すものをそろえる作業のほうが、後から気づいたときの直しにくさが大きくなります。だからこそ、この層は早い段階で確かめておく価値があります。
個人・法人・住所という単位のそろえ方
コアデータモデルは、様々な場面で共通的に参照される個人データセット等を、個人、法人、連絡先、住所、施設などのコアデータとして選定し、それらの基本的なデータ構造を定義したデータモデルです4。項目名を合わせる作業の前に、そもそも何を指すデータなのかをそろえる層と言えます。
項目名の表記を合わせる作業よりも、指している単位をそろえる作業のほうが、連携先が増えたときの手戻りに直結します。名前が同じでも指すものが違えば、突き合わせるたびに確認作業が発生するためです。
この層は、参照するかどうかが早い段階で分かれる
真ん中の層を参照する案件かどうかは、既存システムの成り立ちによって変わります。新しく組み上げる案件では参照しやすく、長く運用してきたシステムでは、既存の構造との突き合わせが先に必要になります。
どちらの案件でも、指しているものが個人なのか法人なのか施設なのかを、早い段階で言葉にしておくと、後から項目を足すときの判断がぶれにくくなります。
参照する範囲を決める会話は、案件に入ってから時間が経つほど後回しにされがちです。真ん中の層についても、早い段階で言葉にしておくほうが、後の負担は軽くなります。
出典:デジタル庁「政府相互運用性フレームワーク(GIF)」(2026年3月24日更新)をもとに作成
何を指すかが決まったら、次はその上にある層です。個々の分野に合わせて組み上げる部分に話を進めます。
4. 上は「組み合わせとカスタマイズ」で作る
書式と、何を指すかが決まれば、あとは全部を一からそろえるしかない、と考えたくなります。けれど三層目にあたる実装データモデルは、その二択の外にある形として用意されています。
「全部合わせる」と「全部自分たちで決める」の間にある形を知っているかどうかは、案件に入った初期の提案の幅を変えます。両端の発想しか持っていないと、打診の場での選択肢が狭くなります。
実装データモデルは、二択の外にある第三の形
実装データモデルとは、行政やスマートシティなど分野ごとに特化したデータセットに関するデータモデルで、コアデータモデルの組み合わせやカスタマイズによって定義することが可能です5。全部を合わせるのでも、全部を自分たちで決めるのでもない、第三の作り方があります。
共通化されたモデルやパーツを基に実装データモデルを構成することで、相互運用性を損なわず、現場で使用できるモデルになると示されています6。組み合わせる部分と、現場の事情に合わせて整える部分が、あらかじめ両方とも織り込まれています。
自分たちで決める範囲の切り分け
組み合わせとカスタマイズが前提に含まれているとはいえ、どこまでを参照に任せ、どこからを自分たちで決めるかは、案件ごとに整理が必要です。次の表は、その切り分けの見取り図です。
| 層 | 参照に任せられる部分 | 自分たちで決める部分 |
|---|---|---|
| いちばん下(書式) | 日付やアドレスなど共通項目の値の形式 | 案件固有の項目を、どこまでこの書式に合わせるか |
| 真ん中(構造) | 個人・法人・連絡先・住所・施設などの基本構造 | 案件固有の項目を、この構造にどう結びつけるか |
| いちばん上(実装) | コアデータモデルの組み合わせ方 | 分野ごとの要件に合わせたカスタマイズの中身 |
切り分けを最初に見取り図として共有できると、後から「ここは合わせるはずだった」という食い違いが起きにくくなります。組み合わせの余地があることは、決め方の柔らかさであって、決め方が無いことではありません。
この切り分けは、一度決めたら終わりというものでもありません。連携先が増えたり、扱うデータの種類が広がったりするたびに、参照する部分と自分たちで決める部分の境目を見直す場面が出てきます。
出典:デジタル庁「政府相互運用性フレームワーク(GIF)」(2026年3月24日更新)をもとに作成
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三層の位置づけが見えたところで、次の節では、参照すること自体が持つ、もうひとつの効果を見ていきます。
5. 参照すること自体が、外とつながる
三層のモデルを参照する効果は、社内の連携にとどまりません。もう少し外側とのつながりも、参照するという行為そのものについてきます。
ここまでの三層は、いわば案件の内側で通じ合うための取り決めでした。参照はその先で、案件の外にある語彙ともつながっていきます。
コア語彙という、もうひとつの参照先
コア語彙は共通語彙基盤の基礎をなすもので、氏名や住所等を定義し、海外語彙との相互運用性を確保するなどの専門家の利用を想定してIMIで公開されています7。コアデータモデルの後ろには、さらにこの語彙の層があります。
GIF利用者は、コアデータモデルを参照することでコア語彙が持つ相互運用性の確保ができると示されています8。専門的な語彙の定義を自分で読み込まなくても、コアデータモデルを参照するだけで、その恩恵に届く仕組みになっています。
コア語彙のような専門領域の話は、担当者一人で追いきる範囲を超えることもあります。参照先を知っているだけで、専門家に確認する範囲を絞り込めます。
資料は、自分で確かめられる
GIFの資料はGitHubで2022年10月13日に公開が開始されており、GitHubを利用できない場合は資料一式のダウンロードから取得できると示されています9。参画する前に、資料そのものへ自分でアクセスできます。
打診を受けてから慌てて調べるよりも、資料の在りかを先に押さえておくほうが、案件に入った直後の会話に落ち着いて臨めます。参照先を知っていること自体が、準備の証にもなります。
積み上げてきた経験を、4つの層で書き出す
ここまでの三層と、参照という行為そのものは、これまで携わってきたデータ基盤の経験を言葉にするときの見取り図にもなります。次の表は、経験を4つの層に分けて書き出す例です。
| 層 | 携わってきた内容の例 | 打診の場で伝わる言葉 |
|---|---|---|
| 書式をそろえる | 日付やアドレスなど共通項目の形式を統一してきた経験 | 「値の形式を早い段階でそろえてきました」 |
| 構造を決める | 個人・法人など基本データの構造を決めてきた経験 | 「指すものを最初に固定してきました」 |
| 組み合わせて作る | 既存の構造を組み合わせ、現場向けに整えてきた経験 | 「ゼロからでなく、組み合わせで作ってきました」 |
| 外とつなぐ | 連携先が増えても崩れない参照の仕組みを意識してきた経験 | 「参照先を明示して、連携を保ってきました」 |
出典:デジタル庁「政府相互運用性フレームワーク(GIF)」(2026年3月24日更新)をもとに作成
層に分けて書き出すと、「データ整備をしてきました」だけで止まっていた説明が、どの層で何をしてきたのかが伝わる言葉に変わります。
6. まとめ
データ基盤の案件では、項目の定義を毎回ゼロから決めがちです。けれどデジタル庁は、参照できるモデルを三層で公開しています。いちばん下は書式、真ん中は何を指すかという構造、いちばん上は分野ごとの組み合わせとカスタマイズです。
組み合わせとカスタマイズが前提に含まれているということは、参照すれば全部が自動的に解決するわけではないということでもあります。参照する部分と、現場に合わせて整える部分の両方を、最初に切り分けておく作業が残ります。
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まずは、自分が携わってきた層を整理し、それに近い条件の案件を眺めてみることから始められます。次に取る一歩は、登録して条件を確かめることです。
7. よくある質問
民間のシステムでも使えるのか
GIFは、データモデルのひな形として公開されている資料です1。行政向けの相互運用性フレームワークとして整備されたもので、民間のシステムに参照を義務づける記載は資料の中にありません。参照するかどうかは、案件ごとの判断に委ねられます。
行政と連携する場面や、行政のデータセットを扱う場面では参照する意義が大きくなりますが、それ以外の案件でも、書式や構造をそろえる考え方の見取り図として参考にする使い方があります。
参照するかどうかを最初から決めつけず、案件の相手にとってこのモデルがどの程度なじみのあるものかを尋ねてみると、以降の会話の前提をそろえやすくなります。
標準に合わせると現場が回らなくなるのでは
実装データモデルは、コアデータモデルの組み合わせやカスタマイズによって定義することが可能だと示されています5。参照する層をそのまま当てはめる仕組みではなく、現場に合わせて整える部分が前提に含まれています。
共通化されたモデルやパーツを基に構成することで、相互運用性を損なわず現場で使用できるモデルになると示されている点も、このカスタマイズの余地を裏づけています6。参照すれば現場の判断が要らなくなる、という話ではありません。
既存システムがある案件ではどこから手をつけるのか
いちばん下の書式の層から確かめると、着手の負担が軽くなります。日付やアドレスなど共通項目の書式をそろえる作業は、既存の構造を大きく変えずに始められる範囲だからです3。
書式を確かめたあとで、指しているものの単位が既存システムとどれだけ重なっているかを見ていくと、真ん中の層をどこまで参照するかの判断がしやすくなります。
データ基盤の経験は、どう書けば伝わるのか
「データ整備をしてきました」という言葉のままでは、打診の場でどの層に強いのかが伝わりにくくなります。書式・構造・組み合わせ・参照という4つの層のどこに携わってきたかを分けて書き出すと、経験の伝わり方が変わります4。
層を分けて書き出す作業は、一度やってしまえば使い回せます。案件ごとに一から棚卸しをやり直す必要はなく、次の打診では層の対応表を見せるだけで済みます。
層で書き出した経験を持って、自分に近い条件のリモート案件を見比べてみることが、次に取れる具体的な一歩になります。まずは登録して、条件を確かめるところから始められます。
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出典・参考情報
*1 デジタル庁「政府相互運用性フレームワーク(GIF)」GIFとは(2026年3月24日)
*2 デジタル庁「政府相互運用性フレームワーク(GIF)」GIFとは(2026年3月24日)
*3 デジタル庁「政府相互運用性フレームワーク(GIF)」コアデータパーツとは(2026年3月24日)
*4 デジタル庁「政府相互運用性フレームワーク(GIF)」コアデータモデルとは(2026年3月24日)
*5 デジタル庁「政府相互運用性フレームワーク(GIF)」実装データモデルとは(2026年3月24日)
*6 デジタル庁「政府相互運用性フレームワーク(GIF)」実装データモデルとは(2026年3月24日)
*7 デジタル庁「政府相互運用性フレームワーク(GIF)」コアデータパーツとは(注記)(2026年3月24日)
*8 デジタル庁「政府相互運用性フレームワーク(GIF)」コアデータパーツとは(注記)(2026年3月24日)
*9 デジタル庁「政府相互運用性フレームワーク(GIF)」ドキュメント(2026年3月24日)
*10 Remoguサイト公開情報(フルリモート可能案件の割合)