個人事業主の安全衛生対策|改正労働安全衛生法でフリーランスが確かめる災害報告と注文者の配慮を解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 令和7年5月に公布された改正法が、同じ場所で働く個人事業者等を保護の対象と義務の主体にしたことと、施行日の違い
- 業務上災害の報告が、個人事業者等から特定注文者等を経て労働基準監督署へ届く流れと、報告を理由とする不利益取扱いの禁止
- 脳・心臓疾患と精神障害を本人が報告できることと、案件を受ける前や体調を崩したときに確かめる順番
短い納期の案件が続き、夜中の画面の前で、胸の動悸に気づいたとします。このまま倒れたら、個人事業主の自分の知らせはどこに届くのでしょうか。厚生労働省の資料で改正労働安全衛生法の中身を確かめると、個人事業者等の脳・心臓疾患や精神障害は、本人が労働基準監督署に報告できると分かります1。自分の体のことを、自分で届けられる仕組みがあると知っておく。そのために、改正の中身を順に確かめます。
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1. 個人事業主が改正労働安全衛生法を確かめる理由
厚生労働省によると、改正労働安全衛生法は令和7年5月14日に公布されました。ほかの働き手と同じ場所で働く個人事業者等を、労働安全衛生法による保護の対象及び義務の主体として位置づけた改正です2。
保護の対象になるだけでなく、義務の主体にもなる。この二つがそろっているので、発注側だけが読めばよい法律ではなくなりました。案件を受ける側も、自分に関わる部分を知っておく必要があります。
ただし、資料の呼び方は「個人事業者等」です。この記事は、個人事業主として案件を受けるエンジニアが確かめる点に絞り、資料の呼び方のまま書きます。
では、改正で何が変わり、それはいつから動くのでしょうか。
2. 改正で変わった点と施行の時期
保護の対象であり、義務の主体でもある
改正の中心は、個人事業者等の位置づけです。厚生労働省は、同じ場所で働く個人事業者等を、労働安全衛生法による保護の対象及び義務の主体としました2。
保護の対象という面では、業務上災害の報告や、報告を理由とする不利益取扱いの禁止が関わります。義務の主体という面では、個人事業者等自身が講ずる措置があり、その一つとして安全衛生教育の受講等が定められています1。
一方で、全部が同じ日に始まるわけではありません。どの部分がいつ施行されるのかを、次の項目で見ていきます。
施行日は一つではない
厚生労働省の説明会資料によると、改正法の施行期日は原則として令和8年4月1日です。一部は令和9年1月1日や令和9年4月1日などに施行されます1。
とくに注意したいのは、個人事業者等の業務上災害の報告制度です。同じ説明会資料は、この制度を令和9年1月(R9.1)の施行として示しています1。報告制度が動き出すのは令和9年1月からで、すでに始まっているわけではありません。
出典:厚生労働省「個人事業者等の安全衛生対策について」「改正労働安全衛生法説明会」をもとに作成
働く場所が自宅でも客先でも、この日程は確かめておきたいところです。Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です3。
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3. 業務上災害の報告をする人と宛先
報告の対象は休業4日以上の死傷災害
個人事業者等の業務上災害の報告制度で対象になるのは、休業4日以上の死傷災害です。厚生労働省の説明会資料によると、この災害は労働基準監督署に遅滞なく報告します1。
ただし、この制度が始まる時期は先です。資料は令和9年1月(R9.1)の施行として示しているので、今の案件にそのまま当てはまる決まりではなく、これから備える話です1。
報告を受ける特定注文者等とは
報告の窓口になるのは、特定注文者です。説明会資料によると、個人事業者等が行う仕事の注文者で、災害が起きた場所で業務を行っている者のうち、個人事業者等から見て直近上位のものを指します1。
つまり、仕事を出してくれた人であれば誰でも該当するわけではありません。災害が起きた場所で業務を行っていることと、自分から見て一つ上にいることが、特定注文者の条件です。
本人から特定注文者等、そして監督署へ
報告の道筋は二段階です。個人事業者等が災害発生の事実を伝えられる場合は、個人事業者等が特定注文者等に報告し、報告を受けた特定注文者等が労働基準監督署に報告します1。
出典:厚生労働省「改正労働安全衛生法説明会」をもとに作成
災害の事実を伝えられない場合の扱いは、この記事で使う資料には書かれていません。実際に備えるときは、厚生労働省の最新の案内で確かめてください。
では、報告したことで、その後の案件に響かないのでしょうか。
4. 報告を理由とする不利益取扱いの禁止
報告をためらう理由の一つは、報告した側が不利に扱われないかという心配です。厚生労働省の説明会資料によると、個人事業者等が特定注文者等に報告したことを理由とする不利益取扱いは禁止されます1。
資料が禁止として示しているのは、報告したことを理由とする不利益取扱いです。報告の前後でほかにどんな扱いが問題になるのかは、この資料には書かれていません。
場面ごとの資料の扱い
ここで、報告の各場面について資料がどう扱っているかを表に並べます。個人事業者等が特定注文者等に報告する場面、特定注文者等が労働基準監督署に伝える場面、そして対象になる災害の範囲です。報告のしやすさに関わるのは、報告を理由とする不利益取扱いの禁止の列です。
| 場面 | 資料の扱い |
|---|---|
| 個人事業者等が特定注文者等へ報告する | 報告を理由とする不利益取扱いは禁止される1 |
| 特定注文者等が受けた報告を伝える | 特定注文者等が労働基準監督署に報告する1 |
| 報告の対象になる災害 | 休業4日以上の死傷災害を、遅滞なく報告する1 |
この表のうち、報告する側の個人事業者等に直接かかわるのは最初の行です。禁止の対象になっているのは、特定注文者等への報告を理由とする不利益取扱いで、ほかの場面は報告の道筋を示しています。
次の節では、災害報告とは別に、本人が自分で届けられる報告を見ます。
5. 脳・心臓疾患と精神障害は本人が報告できる
災害報告とは別の報告
冒頭の場面で気にかかるのは、体調を崩したあと、その知らせを誰が届けるかです。厚生労働省の説明会資料によると、脳・心臓疾患と精神障害については、災害報告とは別に、個人事業者等自身が労働基準監督署に報告できます1。
前の節で見た業務上災害の報告は、個人事業者等が特定注文者等に伝え、特定注文者等が監督署に報告する流れでした1。一方、脳・心臓疾患と精神障害は、本人が監督署に報告できます。報告する人が特定注文者等ではなく本人である点が、二つの違いです。
出典:厚生労働省「改正労働安全衛生法説明会」をもとに作成
同じ「報告」でも、道筋が二つあります。災害として扱う報告は注文側を経由し、脳・心臓疾患と精神障害は本人が届けられます。ただし、本人が報告できる条件や、いつから始まるのかは、この記事で使う資料には書かれていません。確かめる先は、厚生労働省の最新の案内です。
入力支援サービスから報告できる改修
報告の手段については、説明会資料に一つ記述があります。業務上災害の報告も、労働基準監督署への届出を支援する入力支援サービスから報告できるよう、システム改修が行われます1。
ただし、資料が入力支援サービスについて述べているのは、業務上災害の報告です。脳・心臓疾患と精神障害の本人報告を同じサービスで行えるかどうかは、この資料には書かれていません。
画面の使い方や、サービスが使えるようになる時期も同じです。この資料には書かれていないので、必要になった時点で、厚生労働省の案内から確かめます。
では、リモートで働く場合は、これらの決まりにどう関わるのでしょうか。
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6. リモートで働く場合と健康管理ガイドライン
同じ場所で働く場合と異なる場所で働く場合
厚生労働省の説明会資料によると、個人事業者等は、ほかの働き手と同じ場所で就業する場合に必要な事項を実施します。ほかの働き手と異なる場所で就業する場合も、これに準じた取組が推奨されます1。
リモートで働くとき、就業する場所がほかの働き手と異なるなら、後者に当たります。ただし、資料の書き方は同じではありません。同じ場所の場合は「実施」、異なる場所の場合は「推奨」です。リモートだから関係がない、とも、リモートでも同じ義務がある、とも読めない書き方です。
個人事業者等自身が講じる措置としては、改正法が安全衛生教育の受講等を定めています1。受講の方法や頻度は、この資料には書かれていません。
過重労働やメンタルヘルスへの対策
過重労働やメンタルヘルスなどの対策として、令和6年5月28日付けで「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」が策定されました1。冒頭の場面のように、短い納期が続く働き方に近い話題です。
説明会資料は、本人に向けた内容として、個人事業者等自身による定期的な健康診断の受診やストレスチェックの実施を勧奨しています1。自分の体の状態を、自分で確かめる行動です。
一方、発注側にも書かれていることがあります。個人事業者等が過度な長時間就業とならないよう、発注者等による期日設定などに関する配慮が求められます1。本人の努力だけでなく、納期を決める側の配慮も、資料は並べて示しています。
立場ごとの求められること
ここで、立場ごとに資料が述べていることを表に並べます。個人事業者等は、働く場所によって書き方が変わります。個人事業者等自身には教育の受講や健康診断などが、発注者等には期日設定などの配慮が挙がっています。
| 立場 | 求められること |
|---|---|
| 個人事業者等(ほかの働き手と同じ場所で就業) | 必要な事項を実施します1 |
| 個人事業者等(ほかの働き手と異なる場所で就業) | 準じた取組が推奨されます1 |
| 個人事業者等自身 | 安全衛生教育の受講等1、定期的な健康診断の受診とストレスチェックの実施が勧奨されます1 |
| 発注者等 | 過度な長時間就業とならないよう、期日設定などに関する配慮が求められます1 |
表で目を引くのは、求められることが立場ごとに違う点です。働く側は自分の行動を、発注者等は納期の決め方を、それぞれ見直す形で並んでいます。
では、案件を受ける前と、体調を崩したときに、どの順で確かめればよいのでしょうか。
7. 案件を受ける前と体調を崩したときに確かめる順番
契約の前と受けている間に確かめる2点
順番は、時間の流れに沿って四つです。最初は契約の前です。説明会資料は、個人事業者等が過度な長時間就業とならないよう、発注者等による期日設定などに関する配慮が求められるとしています1。配慮を求められているのは発注側なので、納期の話は契約の前に発注側と交わしておきたいところです。
次は、案件を受けている間です。定期的な健康診断の受診とストレスチェックの実施を、自分で行います。資料は、個人事業者等自身によるこれらを勧奨しています1。受診の間隔のような細かな条件は、この資料には書かれていません。
体調を崩したときに確かめる2点
三つ目は、体調を崩したときの報告の道筋です。災害発生の事実を伝えられる場合は、個人事業者等が特定注文者等に報告し、報告を受けた特定注文者等が労働基準監督署に報告します1。報告を理由とする不利益取扱いは禁止されます1。体調を崩した経過を記録に残す方法は、この資料には書かれていません。
四つ目は、本人が報告できる範囲です。脳・心臓疾患と精神障害は、災害報告とは別に、個人事業者等自身が労働基準監督署に報告できます1。冒頭の場面の動悸や、気持ちの不調に当たる場面で、知っておきたい点です。
4つの確認と資料に書かれていない点
四つの確認を、資料が述べていることと、資料に書かれていない点に分けて表にします。左の列が自分で確かめる行動で、中央が資料の記述、右が確かめる先に回す点です。
| 確かめること | 資料が述べること | この資料に書かれていない点 |
|---|---|---|
| 契約の前に期日設定を発注側と話す | 発注者等による期日設定などに関する配慮が求められます1 | 話し合いの進め方 |
| 健康診断とストレスチェックを自分で受ける | 定期的な受診と実施が勧奨されます1 | 受診の間隔 |
| 体調を崩したら報告の道筋を確かめる | 災害発生の事実を伝えられる場合は、特定注文者等を経て労働基準監督署へ報告します1。報告を理由とする不利益取扱いは禁止されます1 | 記録の残し方 |
| 本人も報告できると知っておく | 脳・心臓疾患と精神障害は、本人が労働基準監督署に報告できます1 | 報告できる条件と時期 |
図の作成:Remogu編集部。厚生労働省「改正労働安全衛生法説明会」の記述を確かめる順に並べたもので、統計データではありません
体調のことを自分で届ける
冒頭の場面に戻ります。夜中の画面の前で動悸に気づいたとき、個人事業主の自分の知らせはどこに届くのか。その問いに対して、資料が示す答えの一つは、脳・心臓疾患と精神障害は本人が労働基準監督署に報告できる、というものです1。
ただし、四つの確認は資料の記述から取り出したもので、決まりのすべてではありません。条件や時期は、厚生労働省の最新の案内で確かめます。それでも、自分の体のことを、自分で届けられる仕組みがあると知っておきます。知っているだけで、納期の話を契約の前に切り出す理由が一つ増えます。
次の一歩は、案件の条件を見るときに、納期と稼働の話を契約の前に確かめることです。Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングです。登録して、自分に合う条件を知るところから始めてみましょう。
8. よくある質問
リモートで働く個人事業主も対象ですか
説明会資料は、ほかの働き手と同じ場所で就業する場合に必要な事項を実施し、異なる場所で就業する場合も、これに準じた取組が推奨されると述べています1。異なる場所の取組は「推奨」と書かれています。リモートの個人事業主が個別にどう扱われるかは、この資料には書かれていないので、厚生労働省の案内で確かめます。
業務上災害の報告はいつから始まりますか
説明会資料は、個人事業者等の業務上災害の報告制度を、令和9年1月(R9.1)の施行として示しています1。改正法の施行期日は、原則として令和8年4月1日で、一部は令和9年1月1日や令和9年4月1日などです1。報告制度は、原則の日ではなく令和9年1月の施行です。
報告したら次の案件で不利になりませんか
説明会資料によると、個人事業者等が特定注文者等に報告したことを理由とする不利益取扱いは禁止されます1。資料が述べているのは、この範囲です。次の案件でほかの発注者がどう扱うかは、この資料には書かれていません。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 厚生労働省「改正労働安全衛生法説明会」(2025年12月・2026年10月確認)
*2 厚生労働省「個人事業者等の安全衛生対策について」(2026年・2026年10月確認)
*3 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能