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    案件の報酬を後から減らされたら?禁止されている行為と確かめ方

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「案件の報酬の減額」を示す図です。決めた額/後から減る/禁止を並べています。強調しているのは禁止です。ここが線と添えています。

    📘 この記事でわかること

    • 業務委託で禁止されている行為の内容と、名目や方法を変えても対象になる範囲の広さ
    • 給付内容の変更・やり直しや、契約解除など不利益な取扱いにあたる行為の具体例
    • 公表された勧告の件数・内訳と、原状回復として総額1734万円が行われた実態

    案件を受けるときに決めた報酬額は、契約の入り口で交わした約束です。ところが履行が進んだあとになって、その額を理由もなく減らして支払われる場面が実際に起きています。名目を変えたり、方法を工夫したりしても、後から減らす行為そのものが禁止行為として定められています。この記事では、何が禁止されていて、公表された運用の実態がどうなっているかを、公正取引委員会の資料に沿って確認していきます。

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    1. 禁止行為が定められている

    案件を受ける場面では、何を作るか、いつまでに納めるかといった中身の話が先に立ちます。ところが取引の枠組みそのものにも、決まりごとがあります。公正取引委員会は、業務委託で仕事を発注する側が守るべき禁止行為を定めています1。中身の交渉とは別に、枠組みの側にも確かめておく価値があります。

    発注する側に向けられた決まりごと

    フリーランスとして案件を受ける関係は、業務委託です。上下の関係で決まるものではない分、契約で決めた条件がそのまま拠りどころになります。だからこそ、発注する側の行動に線引きが要ります。

    公正取引委員会が示す禁止行為は、契約の中身そのものではなく、契約を結んだあとの発注する側の振る舞いに向けられています1。決めたことをあとから覆す動きを止める枠組みです。

    個々の交渉の巧拙よりも、契約時に何を取り決め、それがどこに残っているかのほうが、あとになって効いてきます。中身の良し悪しよりも、記録の有無のほうが分かれ目になります。

    禁止行為という言葉が指すもの

    公正取引委員会のパンフレットは、発注する側が守るべき禁止行為が定められているとしています1。心がけの話ではなく、当てはまるかどうかを個別に照らせる形で示されています。

    次の章からは、その禁止行為の一つひとつを見ていきます。まず取り上げるのは、報酬の額そのものに関わる禁止行為です。

    図1:減額が起きる場所
    減額が起きる場所 契約 報酬額 を決める 履行 案件を進める 検収 納品を 確認する 支払 報酬を 受け取る ここで額が変わると対象になります

    図の作成:Remogu編集部。契約から支払までの流れを整理したもので、統計データではありません

    2. 後から減らして支払うことは禁止されている

    禁止行為の中でも中心にあるのが、報酬の額を後から減らして支払う行為です。契約時に決めた金額が、履行の段階を経てから縮む場面を指します。

    対象になる範囲の広さ

    公正取引委員会は、フリーランスに責任がないのに、業務委託時に定めた報酬の額を後から減らして支払うことを禁止行為としています2

    ここで肝心なのは、名目や方法、金額の大小にかかわらず、あらゆる減額行為が対象になるという範囲の広さです2。呼び方を変えても、対象から外れるわけではありません。

    手数料という名目に置き換えても、値引きという言い方に変えても、実質が報酬を減らす行為であれば同じ枠に入ります。呼び方の工夫よりも、実質が何かのほうが問われます。

    契約時に決めた額が起点になる

    この禁止行為の起点は、契約時に決めた報酬の額です2。決めた額がどこにどう残っているかが、あとから振り返るときの拠りどころになります。

    口頭でのやり取りだけで済ませた場合、決めた額そのものがあいまいになりやすくなります。書面や記録に残す形にしておくと、あとから見比べる材料が手元に残ります。

    次に見るのは、金額そのものではなく、給付の内容や進め方に関わる禁止行為です。

    3. 変更とやり直しにも歯止めがある

    報酬の額だけでなく、仕事の中身の変更ややり直しにも歯止めがあります。

    費用を負担しない変更

    公正取引委員会は、費用を負担せずに給付の内容を変更させたり、受領した後に給付をやり直させたりすることを、不当な給付内容の変更・やり直しとしています3

    変更ややり直しそのものが禁止されているのではなく、費用の負担なしに一方的に行わせることが問題とされています。中身を見直すこと自体よりも、費用の扱いのほうが線引きの軸になります。

    フリーランスの利益を不当に害すること

    この禁止行為は、フリーランスの利益を不当に害することと位置づけられています3。受け取るはずだった対価と、実際にかかる手間のずれが焦点になります。

    納品を終えたあとに追加の作業を求められる場面は珍しくありません。追加が生じたときに、費用の話がどう扱われたかを振り返っておくと、次の案件でも役立ちます。

    次の章では、この変更ややり直しとは別の枠として定められている、不利益な取扱いという禁止行為を見ていきます。

    4. 不利益な取扱いという枠もある

    報酬を減らす行為や給付内容の変更とは別に、契約の解除その他の不利益な取扱いという枠も定められています。

    解除や不利益の例に挙がる行為

    公正取引委員会は、「契約の解除その他不利益な取扱い」となる行為の例に、報酬を支払わないことまたは減額を行うことを挙げています4

    減額そのものを禁止する枠に加えて、契約の解除や不利益な扱いという別の切り口からも同じ行為が挙がっている点が特徴です。単独の禁止行為としてだけでなく、複数の枠から捉えられています。

    支払期日を過ぎることも該当する

    報酬の支払期日までに報酬を支払わなかった場合なども、不利益な取扱いに該当するとしています5

    金額を減らすだけでなく、支払う時期を遅らせることも、この枠に含まれます。額の話に目が向きがちですが、期日という時間の軸も同じくらい見ておく価値があります。

    契約書や発注書に記された支払期日は、金額の欄と同じくらい確かめておきたい項目です。

    5. 受領を拒むことも禁止されている

    契約で決めた給付を、理由なく受け取らない行為にも禁止の枠が及びます。

    受領拒否という禁止行為

    公正取引委員会は、フリーランスに責任がないのに給付の受領を拒むことを禁止行為として定めています6

    案件を進めて納品したにもかかわらず、理由が示されないまま受け取りを保留にされる場面が想定されています。受け取る側の都合よりも、決めた給付内容に沿っているかどうかのほうが基準になります。

    受け取りを保留にされている間は、次の案件にも動きにくくなります。理由が示されないまま止まっている状態こそ、確かめておきたい対象です。

    ここまでの禁止行為を並べて見る

    ここまでで、報酬を減らす行為2、給付内容の変更・やり直し3、契約の解除その他不利益な取扱い4(支払期日を過ぎる場合を含みます5)、受領を拒む行為6という4つの禁止行為が出そろいました。

    名目や方法を変えても、この4つのどれかに当てはまれば禁止行為から外れません。次は、これらがどれくらいの規模で確認されているかを、公表された運用の実態から見ていきます。

    禁止行為を一覧で確認する

    ここまでに出てきた4つの禁止行為は、着眼点も、位置づけも少しずつ違います。金額そのものに関わるもの、給付の内容や進め方に関わるもの、契約の解除や不利益な取扱いという枠に位置づけられるもの、給付の受け取りに関わるものというように、切り口が分かれています。一覧にすると、それぞれがどの場面を指しているかが見えやすくなります。

    禁止行為の類型指している場面
    報酬を減らす行為業務委託時に定めた報酬の額を、後から減らして支払うこと2
    給付内容の変更・やり直し費用を負担せずに給付の内容を変更させたり、受領後にやり直させたりすること3
    契約の解除その他不利益な取扱い報酬を支払わないことや減額を行うことが例に挙がる行為4、支払期日を過ぎる場合5
    受領拒否フリーランスに責任がないのに給付の受領を拒むこと6

    次の章では、こうした禁止行為が実際にどれだけ確認されているか、公表された勧告の件数と内訳を見ていきます。

    図2:禁止されている行為の並び
    禁止されている行為の並び 1 報酬の 減額 2 給付内容 の変更 やり直し 3 契約解除 不利益な 取扱い 4 受領を 拒む

    図の作成:Remogu編集部。公正取引委員会が示す禁止行為の類型を整理したもので、統計データではありません

    6. 勧告の件数と内訳

    禁止行為がどれだけ現実に確認されているかは、公表された運用の実態から分かります。

    勧告という形で公表される

    公正取引委員会は、令和7年度における運用状況として、勧告件数は10件であったとしています7

    勧告という言葉は、禁止行為への対応の一つの形です。件数として数えられ、年度ごとに公表される点が、この制度の特徴です。

    件数の多い少ないよりも、どんな行為が勧告の対象になっているかという内訳のほうが、案件を受ける側にとっては参考になります。

    内訳に見える傾向

    内訳では、取引条件の明示義務違反が10件、期日における報酬支払義務違反が9件となっています8

    これに加えて、報酬を減らす行為と、不当な経済上の利益の提供要請がそれぞれ1件となっています9

    件数の多さから見ると、取引条件を明示すること自体や、期日どおりに支払うことのほうが、まず確認されやすい対象になっていると読めます。

    内訳を一覧で見る

    件数を文章だけで追うより、一覧にして並べたほうが、どの項目がどれくらいの比重を占めているかをつかみやすくなります。次の表は、令和7年度の勧告内訳をまとめたものです。

    勧告の内訳件数
    勧告件数(総数)10件7
    取引条件の明示義務違反10件8
    期日における報酬支払義務違反9件8
    報酬を減らす行為1件9
    不当な経済上の利益の提供要請1件9
    図3:勧告の内訳
    勧告の内訳 令和7年度の勧告件数は10件です 取引条件の明示義務違反 10件 期日における報酬支払義務違反 9件 報酬を減らす行為 1件 不当な経済上の利益の提供要請 1件

    出典:公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」(2026年6月)をもとに作成

    7. 原状回復の結果と、確かめる項目

    勧告の先には、原状回復という結果も公表されています。

    原状回復として公表された総額

    公正取引委員会は、不利益の原状回復として総額1,734万円が行われたとしています10

    勧告という手続きの先に、実際に金額が動く結果があることが分かります。件数と金額の両方が公表されている点が、この運用状況の資料の特徴です。

    案件を受ける側にとって大切なのは、この数字そのものよりも、自分が結んでいる契約のどこにその可能性があるかを確かめておくことです。数字を眺めるよりも、手元の契約を見直すほうが、次の一歩につながります。

    確かめておきたい項目

    ここまで見てきた禁止行為は、いずれも契約時に決めた内容が起点になっています。案件を受ける側として確かめておきたいのは、次のような項目です。

    確かめる項目見るところ
    契約時に決めた報酬の額契約書・発注書に書かれた金額と条件
    支払の期日契約書・発注書に書かれた期日
    給付内容の変更点やり取りの履歴に残る変更の指示
    受領の可否納品後のやり取りに残る返答

    決めた内容がどこにどう残っているかを確かめておくと、あとから振り返るときの拠りどころになります。

    図4:確かめる項目
    確かめる項目 1 契約時に 決めた 報酬額 2 支払の 期日 3 給付内容 の変更点 4 受領の 可否

    図の作成:Remogu編集部。契約時に確かめておきたい項目を整理したもので、統計データではありません

    ここからは、案件を受ける場面でよく浮かぶ疑問に答えます。

    初めて案件を受ける場合でも対象になりますか

    今回の禁止行為は、業務委託の契約に基づいて報酬を受け取る場面を対象にしています1。案件を受けた回数や経験の年数を条件にする記述は見当たりません。初めて案件を受ける場面ほど、決めた報酬額がどこに残っているかを見落としやすいので、契約や発注の内容を最初に確かめておくと、あとで迷わずに済みます。

    副業として請け負っている場合も当てはまりますか

    副業か本業かを分けて扱う記述も見当たりません。業務委託として報酬を受け取る関係であれば、契約時に決めた内容が拠りどころになる点は変わりません。

    地方に拠点があっても扱いは変わりませんか

    拠点の所在地に触れた記述も見当たりません。やり取りが契約に基づいて進む業務委託であれば、確かめる内容は契約の中身に集約されます。

    報酬を減らすと伝えられたら、何を確かめればよいですか

    まず契約時に決めた報酬の額と、その条件がどこに書かれているかを確かめます。あわせて、支払期日や給付内容の変更点についてのやり取りが、記録として残っているかも見ておくと、状況を整理しやすくなります。

    どのような案件が対象になりますか

    公正取引委員会が示す禁止行為は、業務委託として発注を受ける関係を対象にしています1。特定の技術分野や工程を条件にする記述は見当たらず、契約の形に着目した枠組みです。

    週3日程度の稼働でも対象になりますか

    稼働の日数を条件にした記述も見当たりません。日数の多寡にかかわらず、契約時に決めた報酬額や条件が起点になる点は共通しています。次にどんな案件を受けるかを考える場面でも、契約条件を確かめる姿勢は変わりません。

    決めた報酬額が、今どこにどんな形で残っているか。次の案件を選ぶときにも、まずそこから確かめてみませんか。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
    *2 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」減額の禁止(2026年7月・2026年9月確認)
    *3 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」変更とやり直し(2026年7月・2026年9月確認)
    *4 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」不利益な取扱い(2026年7月・2026年9月確認)
    *5 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」該当する例(2026年7月・2026年9月確認)
    *6 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」受領拒否の禁止(2026年7月・2026年9月確認)
    *7 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」勧告の件数(2026年6月・2026年9月確認)
    *8 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」違反の中身(2026年6月・2026年9月確認)
    *9 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」内訳のうち少数(2026年6月・2026年9月確認)
    *10 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」戻された額(2026年6月・2026年9月確認)