業務委託の納期遅延はどう扱われる?発注者の都合で延びたときと、やり直しで遅れたときの違い
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 3条通知に書く給付を受領する期日と、1か月以上の期間行う業務委託等という禁止行為の対象範囲
- 発注者の都合で納期が延びたときの受領拒否と、増えた作業の費用を負担しない不当な給付内容の変更
- 受注者側の不備でやり直すときは、やり直し後の受領日から支払期日を数えることと、納期が動いたときの確認点
業務委託で開発を受けていたときのことです。発注者の都合で検証環境の準備が遅れ、納期をひと月延ばしたいと言われました。延びた分の作業は増えるのに、その費用はどうなるのか、納期に納めたものを受け取ってもらえるのかが分からず、返事に迷いました。納期の遅れは、誰の事情で遅れたかで扱いが分かれます。
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1. 業務委託の納期を書面で決める
3条通知に書く受領の期日
フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&Aによると、発注者が明示する3条通知には、給付を受領する期日が入ります。役務の提供を受ける委託であれば、役務の提供を受ける期日です1。納期の話の基準になるのは、この受領の期日です。
納期が延びた、縮んだという話が出たときは、まず3条通知に書かれた期日を手元に出します。基準になる期日が分かってはじめて、受け取ってもらえるかどうかの話を始められます。
書面に書く取引条件
公正取引委員会のガイドラインは、発注時の取引条件を明確にする書面に、役務等の具体的内容や品質に係る評価の基準、納期、報酬の額、支払期日、支払方法等を記載するとしています2。納期は、報酬や支払期日と並ぶ取引条件の一つです。
下の表は、納期に関わる2つの資料の書き方を並べたものです。ガイドラインの列挙は「等」で終わっているため、表の項目だけで取引条件が尽きるわけではありません。
| 項目 | 書き方 | 資料 |
|---|---|---|
| 給付を受領する期日(役務の提供を受ける期日) | 3条通知で明示する事項に入ります | フリーランス法Q&A |
| 納期 | 取引条件を明確にする書面に記載します | ガイドライン |
| 報酬の額・支払期日・支払方法など | 同じ書面に記載します | ガイドライン |
| 具体的内容・品質に係る評価の基準 | 同じ書面に記載します | ガイドライン |
2. フリーランス法の禁止行為が適用される業務委託
禁止行為の対象になる期間
フリーランス法の禁止行為は、どの業務委託にも一律に及ぶわけではありません。ガイドラインによると、特定業務委託事業者が1か月以上の期間行う業務委託等をした場合に、受領拒否などの行為をしてはなりません2。
この1か月以上には、基本契約や更新による継続も含まれます2。納期の話に入る前に、いま受けている業務委託がこの期間に当たるかどうかを確かめておきます。以降の節では、フリーランス法の禁止行為と、ガイドラインの独占禁止法上の考え方を、主語を分けて書きます。
役務の提供委託の扱い
Q&Aは、役務の提供委託には受領拒否の禁止規定が適用されないことを前提に、一方的な取消しの扱いを説明しています1。役務を提供する委託では、受領拒否の禁止規定の対象になりません。
ただし、役務の提供委託でも、責めに帰すべき事由がないのに一方的に業務委託を取り消し、要した費用を発注者が負担せずに利益を不当に害したといえる場合は、不当な給付内容の変更として問題となります1。役務の提供だからといって、取消しの場面で何も問われないわけではありません。
図の作成:Remogu編集部。公正取引委員会のガイドラインとQ&Aの記載を整理したもので、統計データではありません
では、発注者の都合で納期が延びたとき、受け取りや費用はどう扱われるのでしょうか。
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3. 発注者の都合で納期が延びたとき
延期で受け取らないとき
冒頭の場面のように、発注者のほうから納期を延ばしたいと言い出すことがあります。Q&Aは、受領拒否を、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに発注した物品等の受領を拒否することと説明しています1。
発注の取消しや納期の延期などで納品物を受け取らない場合も、受領拒否に該当します1。対象になるのは、1か月以上の期間行う業務委託等です2。
そのため、フリーランス側に責めに帰すべき事由がなく、業務委託が1か月以上の期間にわたるなら、発注者の都合の延期で受け取らないことは禁止行為にあたります。逆に、延期の原因がフリーランス側にあるときは、この整理は使えません。
増えた作業の費用
発注内容の変更で作業が増えたときは、受領拒否とは別の禁止行為が関わります。不当な給付内容の変更・やり直しとは、責めに帰すべき事由がないのに、発注の取消しや発注内容の変更、受領後のやり直しや追加作業をさせる場合に、作業に当たって負担する費用を発注者が負担しないことです1。
冒頭の問いに当てはめると、延びた分の作業が発注内容の変更にあたり、フリーランス側に責めがないのであれば、その費用を発注者が負担しないことは不当な給付内容の変更にあたります。この禁止行為も、対象は1か月以上の期間行う業務委託等です2。延期が発注内容の変更を伴うかどうかは、3条通知に書かれた内容と見比べて確かめます。
延期と変更の扱いの違い
受け取らない場合は受領拒否、費用を負担しない場合は不当な給付内容の変更と、場面によって当てはまる禁止行為が変わります。下の表は、フリーランス法Q&Aの記載を場面ごとに並べたもので、どの場面も責めに帰すべき事由がないことが前提です。
| 場面 | フリーランス法での扱い | 前提 |
|---|---|---|
| 発注の取消しや納期の延期で、納品物を受け取らない | 受領拒否に該当します | 責めに帰すべき事由がないこと |
| 発注内容を変更し、作業に当たって負担する費用を発注者が負担しない | 不当な給付内容の変更にあたります | 責めに帰すべき事由がないこと |
| 受領後のやり直しや追加作業をさせ、その費用を発注者が負担しない | 不当な給付内容の変更・やり直しにあたります | 責めに帰すべき事由がないこと |
ガイドラインの独占禁止法上の考え方
別の枠組みとして、ガイドラインの独占禁止法上の考え方でも、「受領を拒む」とは役務の成果物を納期に受け取らないことだと説明しています。納期を一方的に延期すること又は発注を一方的に取り消すことにより納期に受け取らない場合も含まれます2。
こちらはフリーランス法の禁止行為とは別の枠組みです。1つの文で両方を根拠に結論を出さず、どちらの話をしているのかを分けて読みます。
では、延期ではなく、納期を一方的に短くされたときはどうなるのでしょうか。
4. 納期を一方的に短くされたとき
合意した納期の一方的な短縮
ガイドラインは、独占禁止法上の問題となり得る想定例として、発注した後に、あらかじめ合意した納期をフリーランスの事情を考慮せず一方的に短く変更し、その納期までに提供が間に合わなかったとして受領を拒否することを挙げています2。
この想定例は、短縮と受領拒否の2つの行為が重なった形で書かれています。納期を延ばされる場合とは向きが逆ですが、納期に受け取ってもらえない点は同じです。
納期の変更を求められたときは、変更前の期日、変更後の期日、変更を求められた日を、文面に残しておきます。あとから「合意した納期はいつだったのか」を示す材料になります。
短い納期で費用が増えたとき
もう一つの想定例では、短い納期を設定したため役務等の提供に必要な費用等も大幅に増加し、フリーランスが報酬の引上げを求めたにもかかわらず、通常の納期で発注した場合と同一の報酬を一方的に定めることが、優越的地位の濫用として問題となり得る想定例に挙げられています2。
この想定例が並べているのは、費用の大幅な増加、報酬の引上げの要望、通常の納期と同一の報酬を一方的に定めること、の3つです。引上げを求めたときは、いつ誰に何を求めたかを記録に残します。
出典:公正取引委員会「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」をもとに作成
では、仕様が決まらないまま作業が進んで遅れたときは、どうなるのでしょうか。
5. 仕様が決まらないまま遅れたとき
仕様の明確化を求めたのに決まらないとき
納期が過ぎる原因は、日程だけとは限りません。何を作るのかが決まらないまま、作業だけが先に進むこともあります。ガイドラインは、フリーランスが仕様の明確化を求めたにもかかわらず、正当な理由なく仕様を明確にしないまま作業を続けさせ、提供しようとしたときに発注内容と異なることを理由に受領を拒否することを、問題となり得る想定例に挙げています2。
この想定例は、仕様の明確化を求めたこと、明確にされないまま作業を続けさせられたこと、発注内容と異なるとして受領を拒否されたことの3つが重なった形です。ガイドラインの独占禁止法上の考え方であり、前の節のフリーランス法の禁止行為とは別の枠組みとして読みます。
仕様を確認した記録の残し方
仕様が曖昧だと感じたら、確認を求めた事実を文面に残します。いつ、誰に、何を尋ねたのか、どんな返事があったのか、返事がなかったのかを、メールやチャットの履歴で追える形にしておきます。
想定例の中心は、明確化を求めたのに明確にされなかったという経過です。その経過を示す記録があれば、あとから発注内容と異なると言われたときにも、何を確認していたかを説明する手がかりになります。
では、遅れの原因が受注者の側にあるときは、扱いはどう変わるのでしょうか。
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6. 受注者側の不備で遅れたとき
責めに帰すべき事由があると判断される場合
これまでの節は、責めがフリーランス側にない場面でした。遅れの原因が受注者の側にあるときは、扱いが変わります。Q&Aによると、給付を受領する前に、給付の内容が3条通知に記載された給付の内容と適合しないこと等が合理的に判断される場合は、責めに帰すべき事由があると整理されます1。
この場合、発注者が費用を負担せずに給付の内容を変更させても問題とならないと、Q&Aは説明しています1。発注者の都合の変更では費用を負担しないことが不当な給付内容の変更になりましたが、責めがあるときは同じ結論になりません。
基準になるのは、3条通知に記載された給付の内容です。納期と同じく、何を納めるのかも3条通知と見比べて判断されるため、納品物がその内容に合っているかを、納める前に手元で確かめておく意味があります。
やり直しのあとの支払期日
給付の内容が明示した内容と異なるなど責めに帰すべき事由があり、報酬の支払前にやり直しをさせる場合は、やり直しをさせた後の給付を受領した日が支払期日の起算日となります1。最初に納品した日ではありません。
やり直しをさせた場合は、その受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で報酬を支払う必要があります1。やり直しで納期から遅れた分だけ、支払期日の起算日も後ろへずれる形です。
出典:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」をもとに作成
発注時に決めた額を引き下げられる場面
報酬の額についても、責めの有無で結論が分かれます。特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、発注時に決定した額を発注後に引き下げることは、禁止行為の一つです1。
つまり、禁止されるのは責めがないのに引き下げる場合です。責めに帰すべき事由があるときについては、Q&Aのこの箇所に記載がなく、ここでは判断を書きません。遅れた理由が自分の側にあるかどうかが、扱いを分ける最初の分かれ目になります。
とはいえ、遅れの原因は、当事者の見方が分かれることもあります。そこで最後の節では、納期が動いたときに手元で確かめる点を、順番に整理します。
7. 納期が動いたときに確かめる3点
確かめる3点と見る先
納期が動いたときに手元で確かめるのは、3つです。1つ目は、3条通知に書かれた給付を受領する期日です1。2つ目は、いま受けている業務委託が1か月以上の期間行うものかどうかです2。3つ目は、遅れの原因が誰の事情なのかです。
原因が発注者の都合で、責めに帰すべき事由がないなら、納期の延期などで受け取らないことは受領拒否に該当します1。発注内容の変更で生じた費用を発注者が負担しないことは、不当な給付内容の変更にあたります1。受注者の側に責めがあってやり直すときは、やり直し後の受領日が支払期日の起算日です1。
下の表は、3つの確認点について、見る先と分かることを並べたものです。3つ目の遅れの原因は、見る先が3条通知の内容と、発注内容の変更や延期のやりとりの両方にまたがります。
| 確かめること | 見る先 | 分かること |
|---|---|---|
| 受領の期日 | 3条通知 | 給付を受領する期日がいつか |
| 禁止行為の対象か | 業務委託の期間(基本契約・更新を含む) | 1か月以上の期間行う業務委託等に当たるか |
| 遅れの原因 | 3条通知の給付の内容、発注内容の変更や延期のやりとり | 責めに帰すべき事由が発注者側にあるか、受注者側にあるか |
確認する順番
確かめる順番は、期日、期間、原因の順です。期日が分からなければ、納期が延びたのか縮んだのかも言えません。期間が分からなければ、フリーランス法の禁止行為の対象になるかも分かりません。
図の作成:Remogu編集部。公正取引委員会のガイドラインとQ&Aの記載を整理したもので、統計データではありません
冒頭の場面に戻って
冒頭の場面では、発注者の都合で納期をひと月延ばしたいと言われ、増える作業の費用と、納めたものを受け取ってもらえるかが気がかりでした。フリーランス法では、1か月以上の期間行う業務委託等で2、責めに帰すべき事由がないのに納期の延期などで受け取らないことは受領拒否に当たります1。
発注内容の変更で生じた費用を発注者が負担しないことは、不当な給付内容の変更に当たります1。一方、給付の内容が明示した内容と異なるなど受注者に責めがあってやり直すときは、やり直した後の受領日が支払期日の起算日です1。
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納期の遅れは、誰の事情で遅れたかで扱いが分かれます。3条通知の受領の期日と、遅れの原因を記録に残しておきます。
8. よくある質問
発注者の都合で納期が延びたら、受け取ってもらえないことはありますか
1か月以上の期間行う業務委託等で、フリーランス側に責めに帰すべき事由がない場合、納期の延期などで納品物を受け取らないことは受領拒否に該当します1。1か月以上という条件は、禁止行為の適用範囲として定められています2。
やり直しになったら、支払期日はいつから数えますか
責めに帰すべき事由があり、報酬の支払前にやり直しをさせる場合は、やり直しをさせた後の給付を受領した日が起算日です1。その日から60日以内のできる限り短い期間内で支払う必要があります1。
発注内容が変わって増えた作業の費用は、誰が負担しますか
責めに帰すべき事由がないのに発注内容を変更し、作業に当たって負担する費用を発注者が負担しないことは、不当な給付内容の変更にあたります1。対象は、1か月以上の期間行う業務委託等です2。
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出典・参考情報
*1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」随時更新(2026年8月・2026年10月確認)
*2 公正取引委員会「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」令和8年1月1日改定(2026年1月・2026年10月確認)
*3 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能