フリーランスエンジニアの通信費は何割まで経費?家事按分の基準とスマホ端末の扱いの違い
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 通信費が業務上の費用として経費の対象になる理由と、仕事と私用で共用する費用が家事関連費として別に扱われる仕組み
- 「何割まで」の答えが決まった割合ではなく、明らかに区分できる金額と適切な基準によるあん分であるという考え方
- スマホ端末やルーターを買ったときに、取得価額の区切りで変わる扱いと、按分の根拠として残しておく記録
月末に、スマホと光回線の利用明細が届きます。仕事の連絡や開発に使った分と、私用の分が一つの請求に混ざっていて、どこで線を引けばよいのか手が止まってしまいます。決まった割合を探したくなりますが、割合を探すより、分けた理由を説明できるかを先に決めます。この記事では、フリーランスエンジニアの通信費について、経費になる理由から按分の基準、帳簿への付け方、端末を買ったときの扱いまでを順に確かめます。
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1. フリーランスエンジニアの通信費が経費になる理由
業務上の費用としての通信費
国税庁のタックスアンサーNo.2210は、事業所得の必要経費として、販売費、一般管理費その他業務上の費用の額を挙げています1。クライアントとの連絡や開発に使うスマホ、自宅の回線の料金は、仕事のために払う費用に当たる場面があります。
共用の費用は家事関連費
ところが、同じページは一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用を、家事関連費としています1。私用と仕事で共用するスマホ料金や自宅の回線料金のような共用の費用は、この区分で考える場面があります。
では、共用の費用はどこまでを仕事の分として扱えるのでしょうか。
2. 何割まで、の答え
割合ではなく区分できる金額
タックスアンサーによると、家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られます1。何割まで、という問いに対する資料の答えは、割合ではなく「明らかに区分できる金額」です。
実務では、利用明細に「仕事で使った」と書かれているわけではありません。そのため、仕事分と家事分を分けた根拠を、あとから自分の言葉で示せる形にしておくところから始めます。
あん分に使う基準
国税庁の白色申告者の決算の手引きは、家事関連費の家事分と事業分の区分を、使用面積や保険金額、点灯時間などの適切な基準によってあん分して計算するとしています2。ここに挙がっているのは手引きの基準の例で、通信費そのものの例ではありません。
通信に当てはめるなら、たとえば使用時間や通信量のように、仕事分と家事分を説明できる基準が候補になります。ただし、手引きが示しているのは「適切な基準」という条件で、何%にするかではありません。基準を選ぶ目安は、利用の実態に合っているかどうかです。
家事分は経費に入れない
同じ手引きは、水道料金や電気料金、燃料費などのうち家事分の費用は必要経費にならないとしています2。挙げられているのは水道料金などの例ですが、共用の通信費にも同じ考え方を当てはめるなら、家事分は経費に入れず、仕事分だけを経費にします。
図の作成:Remogu編集部。国税庁の説明を整理したもので、統計データではありません
なお、Remoguは案件の90%以上がフルリモート可能です3。自宅で働く案件が中心になるほど、通信費の分け方は毎月の実務に関わってきます。
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3. 按分の基準の選び方
通信の種類ごとの分け方
通信費といっても、スマホ料金、自宅の光回線、仕事だけに使う回線では、分ける必要があるかどうかが違います。私用と仕事で共用するものは、手引きが挙げる適切な基準でのあん分を考えます2。業務だけに使う回線は家事分が無いので、分ける必要がありません。表では、通信の種類ごとに、分け方の考え方と残しておく根拠を並べています。
| 通信の種類 | 分け方の考え方 | 残す根拠 |
|---|---|---|
| スマホ料金(私用と共用) | 使用時間や通信量のように、説明できる基準で家事分と業務分に分けます | 利用明細と、基準を決めた理由のメモ |
| 自宅の光回線(家族や私用と共用) | 使い方の実態に合う基準を選び、家事分を除いた業務分を経費にします | 請求書と、基準を決めた理由のメモ |
| 仕事専用の回線 | 業務だけに使う回線は家事分が無いので、分ける必要がありません | 請求書と、業務だけに使うと分かる記録 |
基準を決めるときの見方
基準を決めるときは、その基準で仕事分が本当に取り出せるかを確かめます。たとえば使用時間なら、仕事で通話や通信に使った時間が記録から追えるかどうかが分かれ目です。通信量なら、利用明細などから仕事分を切り出せるかを見ます。
家事関連費で求められているのは、取引の記録などに基づいて明らかに区分できることでした1。そのため、基準を選んだら、なぜその基準にしたのかを一文で書き残します。数字そのものより、この一文が説明の土台になります。
4. 帳簿への付け方
毎回家事分を除く原則
国税庁の帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)は、家事関連費は家事上の経費を除いて記載するのが原則としています4。支払いのたびに家事分を除き、仕事分だけを経費として帳簿に付ける形です。
年末に一括して減算する書き方
一方で、使用状況に基づき年末に一括して家事上の経費を減算する記載もできるとしています4。この場合、年間を通した使用状況から家事分を割り出し、年末にまとめて差し引きます。毎月除く書き方も、年末に一括する書き方も、家事分を除く根拠は使用状況の記録です。
図の作成:Remogu編集部。国税庁の説明を整理したもので、統計データではありません
毎月の料金とは別に、スマホ端末やルーターを買ったときは、金額によって扱いが変わります。
5. スマホ端末やルーターを買ったとき
取得価額で分かれる扱い
国税庁のタックスアンサーNo.2100は、使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものについて、取得に要した金額の全額を、業務の用に供した年分の必要経費とするとしています5。スマホ端末やルーターを買ったときは、まず取得価額がどの区切りに入るかを見ます。
取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産は、一定の要件の下で、合計額の3分の1ずつを3年間の各年分の必要経費に算入できるとされています5。同じ端末でも、金額が変わると経費に入れる年が変わります。
| 取得価額の区切り | 扱い | 対象となる条件 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 取得に要した金額の全額を、業務の用に供した年分の必要経費とします | 使用可能期間が1年未満のものも同じ扱いです |
| 10万円以上20万円未満 | 合計額の3分の1ずつを、3年間の各年分の必要経費に算入できます | 一定の要件の下で認められる扱いです |
| 10万円以上40万円未満 | 合計300万円に達するまでの額を、業務の用に供した年分の必要経費に算入できます | 一定の要件を満たす青色申告者が、令和11年3月31日までに取得したものです |
青色申告者だけの特例
一定の要件を満たす青色申告者には、令和11年3月31日までに取得した取得価額10万円以上40万円未満の減価償却資産について、合計300万円に達するまでの額を、業務の用に供した年分の必要経費に算入できる特例があります5。令和8年3月31日までの取得は、30万円未満が対象でした。
この特例は青色申告者の制度です。白色申告の人が同じ扱いを受けられるとは、資料から読み取れません。申告の方法がどちらなのかを先に確かめてから、端末の金額に当てはめます。
図の作成:Remogu編集部。国税庁の説明を整理したもので、統計データではありません
端末の扱いが決まったら、そのとき残しておく記録も一緒に整えます。
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6. 残しておく記録
保存する期間
国税庁のタックスアンサーNo.2080によると、事業所得のある人は、帳簿や書類を5年間保存する必要があります。記帳制度に基づいて作成した帳簿は7年間です6。
資料が示しているのは帳簿や書類の保存期間で、利用明細や基準のメモがこれに当たると書かれているわけではありません。ただ、按分の根拠を示す記録なので、帳簿と同じ期間は手元に残す前提で整理しておくと、あとから説明するときに困りません。
按分の根拠を示す記録
家事関連費が経費になるのは、取引の記録などに基づいて明らかに区分できる金額に限られます1。この「取引の記録」にあたるものとして、毎月の利用明細を取っておきます。
もう一つは、基準を決めた理由の短いメモです。使用時間で分けたのか、通信量で分けたのかを書き、決めた日も添えます。そして、仕事分を差し引いた結果が分かる帳簿と並べれば、明細、基準、帳簿の三つがつながります。
残す記録がそろったら、次は全体を整理する順番を決めます。
残す記録を、役割ごとに並べると次のようになります。
| 残す記録 | 中身 | 役割 |
|---|---|---|
| 利用明細・請求書 | 毎月の通信料金と端末の代金 | 支払った事実と金額を示します |
| 基準のメモ | 使用時間や通信量など、選んだ基準と決めた日 | 家事分と業務分をどう分けたかを示します |
| 帳簿 | 家事分を除いた業務分、または年末に一括で差し引いた記載 | 経費に入れた金額を示します |
7. 通信費を整理する順番
四つの手順
最初に、毎月払う回線の料金と、買った端末やルーターを分けます。料金は家事関連費として按分を考え、機器は取得価額の区切りで扱いを決めるので、同じ表に混ぜると判断がぶれます。
次に、料金のほうは基準を決めます。明らかに区分できる金額に限られること1と、適切な基準によるあん分であること2を踏まえ、使用時間や通信量など、説明できる基準を一つ選びます。
三つ目は帳簿の付け方です。毎回家事分を除いて付けるか、年末に一括して減算するかを決めます4。最後に、明細、基準のメモ、帳簿を、保存期間を意識して残します6。
図の作成:Remogu編集部。国税庁の説明を整理したもので、統計データではありません
月末の明細の前で決めること
月末にスマホと光回線の利用明細が届いたとき、手が止まる原因は、決まった割合が見つからないことではありません。仕事分を取り出す基準と、それを残す記録が決まっていないことにあります。
経費にできるのは、明らかに区分できる金額に限られます1。その区分は、使用時間や通信量のような適切な基準によるあん分で行います2。割合を探すより、分けた理由を説明できるかを先に決めます。基準と記録が決まれば、来月の明細は迷わず分けられます。
基準が決まって気持ちが落ち着いたら、リモートで参画できる案件の条件も、じっくり見比べられます。
8. よくある質問
通信費は何割まで経費にできますか
資料に、何割までという決まった数字は書かれていません。家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて明らかに区分できる金額に限られます1。区分は、適切な基準によるあん分で計算します2。
仕事専用のスマホを持つと全額が経費になりますか
仕事だけに使う回線は家事分が無いので、分ける必要がありません。家事関連費は、一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわる費用を指すためです1。ただし、仕事だけに使っていると説明できる記録は残します1。端末を買った場合は、通信料金とは別に、取得価額の区切りで扱いを確かめます5。
10万円以上20万円未満の端末は、買った年に一度に経費にできますか
取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産は、一定の要件の下で、合計額の3分の1ずつを3年間の各年分の必要経費に算入できるとされています5。一方、一定の要件を満たす青色申告者の特例では、合計300万円に達するまでの額を、業務の用に供した年分の必要経費に算入できます5。どちらの扱いになるかは、申告の方法と要件によって分かれます。
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出典・参考情報
*1 国税庁「No.2210 必要経費の知識」(2026年・2026年10月確認)
*2 国税庁「決算の手引き」(2025年・2026年10月確認)
*3 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能
*4 国税庁「帳簿の記帳のしかた」(2025年・2026年10月確認)
*5 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」(2026年・2026年10月確認)
*6 国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」(2026年・2026年10月確認)