貸倒損失とは?フリーランスエンジニアが回収できない報酬を必要経費にする条件と注意点
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 回収できない報酬を貸倒金として必要経費にできる条件と、取引を止めてから1年以上たった場合の扱い方
- 消費税の課税事業者が貸倒れた金額に対応する税額を控除するしくみと、対象になる取引の範囲
- 事業所得の青色申告者が使える貸倒引当金のしくみと、回収できないと分かったときに確かめる3つの点
案件の作業を納め、請求書を送りました。支払期日を過ぎても報酬は振り込まれず、取引先とも連絡が取れない状態が続きました。売上として帳簿に記録した分を、この先どう扱えばよいのかが気がかりでした。回収できない報酬を必要経費にできるかは、回収できないことが明らかかどうかで決まります。
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1. 回収できない売掛金などは、貸倒金として必要経費になります
報酬が支払われないまま時間がたつと、帳簿に記録した売上と、実際に受け取ったお金とのあいだにずれが残ります。
案件の報酬を事業所得として申告し、売掛金として計上している場合は、この貸倒金の考え方が関わってきます。売掛金や未収入金、貸付金、前渡金など(貸金等)について、一定の事情が生じたときは、その回収できない金額などが貸倒金として必要経費になります1。
帳簿の上では売上になっていても、報酬が振り込まれていなければ、その分のお金は手元にありません。
対象になるのは売掛金・未収入金・貸付金・前渡金などです
貸金等には、売掛金のほか、未収入金や貸付金、前渡金なども含まれます1。貸金等があるだけでは貸倒金にならず、得意先の資産の状況や支払能力などからみて全額が回収できないことが明らかになった場合など、一定の事情が生じたときに必要経費になります1。次の表に、対象と条件、扱いをまとめました。
| 対象になるもの | 条件 | 扱い |
|---|---|---|
| 売掛金・未収入金・貸付金・前渡金など(貸金等) | 得意先の資産の状況や支払能力などからみて、全額が回収できないことが明らかになった場合など | 回収できない金額などが、貸倒金として必要経費になります |
表のとおり、扱いを分けるのは条件の欄です。売掛金などがあるだけでは、貸倒金にはなりません。
では、「全額が回収できないことが明らか」とは、どのような状態を指すのでしょうか。次に、その判断の目安を見ていきます。
2. 判断の目安は、得意先の資産の状況や支払能力です
ここで目安になるのは、得意先の資産の状況や支払能力です。経営が厳しいらしいと感じるだけでは、貸倒金として扱う理由にはなりません。
国税庁の案内が示す判断の目安は、得意先の資産の状況や支払能力などからみて、その全額が回収できないことが明らかかどうかです1。
資料の書き方は「その全額が回収できないことが明らかになった場合など」です1。一部なら回収できそうだという段階は、この「全額」の書き方には当てはまりません。
判断するときは、得意先の資産の状況や支払能力などを手がかりにします1。
計上から必要経費になるまでの3段階
計上から必要経費に至るまでの流れを、図にまとめました。
図の作成:Remogu編集部。国税庁の案内をもとに、貸倒金として扱われるまでの流れを整理したもので、統計データではありません
では、判断がつかないまま時間だけが過ぎたときは、どうなるのでしょうか。
3. 取引を止めて1年以上弁済がなければ、備忘価額を残して必要経費にできます
全額が回収できないとまでは言い切れないまま、取引先と連絡が取れない状態が続くこともあります。得意先の資産の状況や支払能力を確かめる手がかりに乏しく、貸倒金として扱ってよいのか迷う場面です。
こうした状態がある程度の期間続いたときのために、国税庁の案内はもう一つの扱いを示しています。判断がつかないときは、この扱いに当てはまるかを確かめます。
継続して取引していた得意先と取引を停止し、1年以上弁済がない場合です
継続して取引をしていた得意先などと取引を停止したのち1年以上経過してもなお弁済がない売掛金などは、1円以上の備忘価額を残して、その差額を必要経費にできます2。
備忘価額とは、帳簿の上に1円以上を残しておく金額です2。差額の部分を必要経費にする一方で、金額そのものを帳簿から消さずに残す扱いです。
ここで確かめる点は、取引を止めた日と、その後の弁済の有無です。取引が止まってからの時間と、その間に弁済があったかどうかを見ます。
前の節の扱いとは、判断の基準が異なります
前の節で触れた「全額が回収できないことが明らか」という判断と、ここでの「取引停止から1年以上」という条件は、別の場面です。どちらも貸倒金の扱いにつながりますが、確かめる中身が違います。
2つの扱いの違いを、次の表にまとめました。
| 状態 | 必要経費にできる金額 |
|---|---|
| 得意先の資産の状況や支払能力などからみて、全額が回収できないことが明らかな場合 | 回収できない金額など |
| 継続して取引をしていた得意先と取引を停止したのち、1年以上弁済がない場合 | 1円以上の備忘価額を残した差額 |
2つ目の扱いは、継続して取引をしていた得意先などが対象です2。取引を止めた日をいつと考えるかは、請求書や連絡の記録など、手元に残っているものから確かめます。
支払いの条件を確かめながら、自分に合う案件を探す →
4. 消費税の課税事業者なら、貸倒れた分の消費税額を控除します
回収できなくなった報酬には、所得税の必要経費だけでなく、消費税の扱いも関わってきます。消費税の課税事業者なら、この点もあわせて確かめます。
消費税では、売掛金その他の債権が貸倒れとなったときは、貸倒れとなった金額に対応する消費税額を、貸倒れの発生した課税期間の売上げに対する消費税額から控除します4。
控除する先は、貸倒れの発生した課税期間の売上げに対する消費税額です4。
対象になるのは、消費税の課税対象となる取引です
消費税で控除の対象となる貸倒れは、消費税の課税対象となる取引の売掛金その他の債権に限られます5。すべての債権が対象になるわけではなく、範囲が決まっています。
貸倒れとして認められる主な例の1つが、債務者の財産状況や支払能力などからみて、その債務者が債務の全額を弁済できないことが明らかであることです6。
所得税の節で確かめた「全額が回収できないことが明らか」という判断の目安と、この消費税の例は、似た言い回しです。
所得税と消費税では、扱いが分かれます
ここまでの内容を、図にまとめました。同じ「報酬が回収できない」という状態からでも、確かめる先が所得税と消費税とで分かれます。
図の作成:Remogu編集部。国税庁の案内をもとに、所得税と消費税それぞれの扱いを整理したもので、統計データではありません
個別に判断する以外に、あらかじめ備える方法もあります。次に、事業所得の青色申告者が使える貸倒引当金のしくみを見ていきます。
5. 事業所得の青色申告者は、貸倒引当金で見込額を必要経費にできます
回収できないと分かってから必要経費にする扱いのほかに、あらかじめ見込んでおく扱いもあります。事業所得の青色申告者が使える、貸倒引当金という勘定です。
対象になるのは、事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者です
この扱いを使えるのは、事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者です3。年末の時点で残っている貸金をもとに、あらかじめ一定の金額を見込みます。
見込む対象は、事業の遂行上生じた売掛金や貸付金などの貸金です3。年末に残っている貸金の帳簿価額をもとに、一括評価で見込みを立てます。
繰り入れられる金額は、年末の貸金の5.5パーセント以下です
繰り入れられる金額には上限があります。年末における貸金の帳簿価額の合計額の5.5パーセント以下の金額を、貸倒引当金勘定へ繰り入れます3。
貸倒引当金勘定へ繰り入れた金額は、必要経費にできます3。金額の大きさは、年末に残っている貸金の帳簿価額しだいです。
この3段階の流れを、図にまとめました。
図の作成:Remogu編集部。国税庁の案内をもとに、貸倒引当金のしくみを整理したもので、統計データではありません
ここまでの節で見てきた扱いは、回収できないことが明らかになった後や、取引を止めてから1年以上たった後に必要経費にする流れでした。貸倒引当金は、それより前の年末の時点で見込みを立てる点が違います。
条件を確かめながら、自分に合う案件を探す →
6. 報酬を売掛金として計上していることが、前提です
貸倒金の扱いにも、貸倒引当金の扱いにも、共通する前提があります。報酬を売掛金として計上していることです。
貸倒金の対象になるのは、売掛金や未収入金、貸付金、前渡金など(貸金等)です1。売掛金がこの対象に含まれている以上、報酬を売上として計上し、まだ受け取っていない金額を売掛金の形で帳簿に残していることが前提です。
取引を停止してから1年以上弁済がない場合の扱いも、対象は同じく売掛金などです2。取引を止めた後の話であっても、扱う対象そのものは変わりません。
貸倒金として必要経費にする扱いにも、備忘価額を残して必要経費にする扱いにも、売掛金が対象として入っています。
計上のしかたによって、話が当てはまるかどうかが変わります
案件の報酬を事業所得として申告し、その報酬を売掛金として計上している場合に、ここまでの扱いが関わってきます。
取引先の支払いが滞っているかどうかより、まず報酬を売掛金として計上しているかどうかが、この先の話が当てはまるかどうかの分かれ目です。
次に、売掛金として計上したうえで、回収できないと分かったときに何を確かめればよいのかを整理します。
7. 回収できないと分かったら、3つを確かめます
ここまで、回収できないと分かったときの扱いを、いくつかの場面に分けて見てきました。場面によって確かめる点は変わりますが、共通して見る点は3つに絞れます。
確かめる点は、3つに分かれます
確かめる点は3つあります。1つ目は、全額が回収できないことが明らかかどうかです。2つ目は、取引を停止してから1年以上、弁済がない状態が続いているかです。3つ目は、消費税の課税事業者に当てはまるかどうかです。当てはまる点によって、扱いが変わります。次の表に、3つの点と扱いをまとめました。
| 確かめる点 | 扱い |
|---|---|
| 全額が回収できないことが明らかな場合 | 回収できない金額などが、貸倒金として必要経費になります |
| 継続して取引をしていた得意先と取引を停止したのち、1年以上弁済がない場合 | 1円以上の備忘価額を残した差額を、必要経費にできます |
| 消費税の課税事業者である場合 | 貸倒れとなった金額に対応する消費税額を、売上げに対する消費税額から控除します |
全額が回収できないことが明らかかどうかは、得意先の資産の状況や支払能力などからみて判断します1。一定の事情が生じたと言えるかどうかが、ここでの分かれ目です。
この判断は、2つ目の節で見た目安と同じです。一部の回収が見込める段階や、経営が厳しいらしいと感じるだけの段階では、この点には当てはまりません。
継続して取引をしていた得意先などと取引を停止したのち1年以上経過してもなお弁済がないときは、1円以上の備忘価額を残して、その差額を必要経費にできます2。
確かめる中身は、取引を止めた日と、その後の弁済の有無です。備忘価額を残す扱いは、継続して取引をしていた得意先が対象で、全額が回収できないと分かる場合とは判断の基準が異なります。
消費税の課税事業者なら、もう一つ確かめる点があります。貸倒れとなった金額に対応する消費税額を、貸倒れの発生した課税期間の売上げに対する消費税額から控除します4。
対象になるのは、消費税の課税対象となる取引の売掛金その他の債権です5。認められる例の1つが、債務者の財産状況や支払能力などからみて、債務の全額を弁済できないことが明らかであることです6。3つの点を確かめる順番を、図にまとめました。
図の作成:Remogu編集部。国税庁の案内をもとに、確かめる3つの点の順番を整理したもので、統計データではありません
得意先の資産の状況や支払能力などからみて全額が回収できないことが明らかになった場合など、一定の事情があるときは、回収できない金額が貸倒金として必要経費になります1。取引を停止してから1年以上弁済がない売掛金などは、1円以上の備忘価額を残して、差額を必要経費にできます2。消費税の課税事業者は、貸倒れた金額に対応する消費税額を控除します4。
回収できない報酬を必要経費にできるかは、回収できないことが明らかかどうかで決まります。取引が止まった日と、その後の弁済の有無を帳簿に残します。
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出典・参考情報
*1 国税庁「貸倒金」(2025年・2026年9月確認)
*2 国税庁「貸倒金」(2025年・2026年9月確認)
*3 国税庁「No.2070 青色申告制度」(2026年・2026年9月確認)
*4 国税庁「No.6367 貸倒れに係る税額の調整」(2026年・2026年9月確認)
*5 国税庁「No.6367 貸倒れに係る税額の調整」(2026年・2026年9月確認)
*6 国税庁「No.6367 貸倒れに係る税額の調整」(2026年・2026年9月確認)