海外在住でフルリモートの日本案件は受けられる?時差と個人データ・契約の確かめ方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 海外在住のフルリモートで依頼元が確かめる3つの項目と、時差を重なる時間帯の決め方で回す考え方
- 個人データを国外へ渡すときに本人の同意が要る場合があることと、その義務を負うのが依頼元であること
- 個人データに触れない形で受ける仕事の見分け方と、報酬の受け取りや請求書で先に揃えておく項目
日本の依頼元とのオンライン面談が終わりに近づいたころ、「ちなみに、お住まいはどちらですか」と聞かれました。海外の都市名を答えると、画面の向こうで相手の方が少し考え込み、「社内の情報管理の担当に確認させてください」と言います。海外在住でフルリモートの業務委託を受けたいエンジニアなら、このまま断られるのではないかと不安になる場面です。ただ、この場面で依頼元が見ているのは、住んでいる場所より、何を扱うかです。
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1. 海外在住のフルリモートで依頼元が確かめたいこと
依頼元が立ち止まる理由
依頼元が少し考え込むのは、海外在住の人には任せないと決めているからとは限りません。国内に住むエンジニアなら確かめなくて済む項目が、国外では増えるからです。以下の整理は公開資料に基づく部分と、書き手の見立てとを分けて書きます。まず見立てから入ります。
確かめる項目は、大きく3つに分かれると考えます。連絡の時間帯、扱うデータ、支払いと請求です。連絡の時間帯は、定例や障害のときに連絡がつくかどうかの話です。扱うデータは、個人データに触れる仕事かどうかで、依頼元の判断が変わります。支払いと請求は、報酬の受け取り方と請求書の形に関わります。
図の作成:Remogu編集部。依頼元の確認事項を書き手の見立てで整理したもので、統計データではありません
取り決めで決まるものと、制度が関わるもの
3つのうち、連絡の時間帯は依頼元との取り決めで決まります。国や地域の名前を挙げなくても、働く時間のどこが重なるかを話し合えば形になります。
一方で、扱うデータと支払いと請求には、法令や税の制度が関わります。ここは取り決めだけでは決まらず、公開されている資料で確かめる必要があります。この記事では、個人情報保護委員会と国税庁の資料に書かれている範囲だけを事実として扱います。資料に書かれていない部分は、確かめる先を示して止めます。
では、最初に決める時差の扱いから見ていきます。
2. 時差の扱いと、重なる時間帯の決め方
時差は時間数より重なりで考える
時差があると聞くと、何時間違うのかに目が向きます。しかし、依頼元の仕事が回るかどうかを左右するのは、時間数そのものではなく、お互いの働く時間がどれだけ重なるかだと考えます。これも書き手の見立てで、国ごとの時差の時間数はここでは扱いません。
重なる時間帯が短い地域に住むなら、その短い時間に何を済ませるかを決めておきます。定例や相談の時間を重なりの中に置き、それ以外の時間は非同期で進められる作業に充てる形です。重なりが短いほど、非同期で進む仕事のほうが合います。
先に決めておく4つの項目
参画開始の前に、依頼元と決めておきたい項目を4つにまとめます。定例の時間帯、返信の目安、障害時の連絡手段、リリース日の立ち会いです。決めておくと、依頼元は海外在住でも連絡が回ると判断しやすくなります。
| 決めること | 決める中身の例 | 決める場面 |
|---|---|---|
| 定例の時間帯 | 週に何回、どの時間帯に顔を合わせるか | 参画開始の前 |
| 返信の目安 | チャットやメールに、いつまでに返すか | 参画開始の前 |
| 障害時の連絡手段 | 夜間や休日に連絡がつく手段と、その順番 | 契約の前 |
| リリース日の立ち会い | リリース作業の時間に在席できるか、代わりの人が要るか | リリース日が決まる前 |
非同期で進める場合の具体的なやり方は、別の記事で詳しく扱っています。この記事では、海外在住で受けるときに依頼元が気にする点に絞ります。
時間帯の取り決めは、ここまで決めれば形になります。次に控えているのは、取り決めだけでは済まない個人データの話です。
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3. 個人データを国外へ渡すときの本人の同意

原則は、あらかじめ本人の同意を得ること
個人情報保護委員会は、個人情報の保護に関する法律のガイドラインのうち、外国にある第三者への提供編を定めています。このガイドラインは平成28年11月に策定され、令和7年12月に一部改正されています。1改正の中身はここでは扱いません。
このガイドラインでは、個人情報取扱事業者が個人データを外国にある第三者に提供するときは、(1)から(3)までのいずれかに該当する場合を除き、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意を得る必要があるとしています。1個人情報取扱事業者とは、ここでは個人データを持つ依頼元の側です。
個人情報保護委員会のQ&Aは、個人データの取扱いを委託する場合の扱いにも触れています。委託は第三者提供には当たらない扱いです。ただし、外国にある第三者に取扱いを委託する場合も、例外に当たらなければ、あらかじめ本人の同意を得る必要がある点は同様だと答えています。2ガイドラインとQ&Aは別の文書ですが、義務を負うのは、個人データを提供する依頼元の側であるところは変わりません。
図の作成:Remogu編集部。個人情報保護委員会のガイドラインとQ&Aをもとに整理したもので、統計データではありません
海外に住む個人の受託者は、依頼元が判断する
ここで気になるのは、海外に住む個人のエンジニアが、この「外国にある第三者」に当たるのかどうかです。ガイドラインの例として挙がっているのは、外国にある事業者への委託です。海外に住む個人の受託者が当たるかどうかは、個人データを持つ依頼元が判断します。
そのため、海外在住の人は個人データを扱えないと決まっているわけではありません。反対に、本人の同意や契約があれば足りると決まっているわけでもありません。個人データに触れる仕事かどうかで、依頼元が確かめる内容が変わる、という整理が実際の姿に近いと考えます。
例外(1)〜(3)の中身や、越境移転の詳細は、ブリッジSEの越境移転を扱った別の記事で詳しく書いています。次は、個人データに触れない形で仕事を受けるとどうなるかです。
4. 個人データに触れない仕事の形
体制を確保する方法の例
ガイドラインは、提供先の体制を確保する「適切かつ合理的な方法」の例として、外国にある事業者に個人データの取扱いを委託する場合の、提供元と提供先の間の契約、確認書、覚書等を挙げています。個々の事例ごとに判断されるとも書かれています。1
契約、確認書、覚書等は、あくまで体制を確保する方法の例です。交わせば足りるとは書かれていません。海外在住の受託者にとっては、契約書を用意することより、依頼元がどの作業にどの確認が要るかを決める手前で、仕事の形を整えておくほうが現実的だと考えます。
仕事の形ごとの、個人データとの距離
個人データに触れない形で受けられる仕事があれば、依頼元の確認は軽くなります。次の表は、仕事の形ごとに個人データとの距離を整理したもので、書き手の見立てです。どの作業なら国外から扱ってよいかは、依頼元が決めます。
| 仕事の形 | 個人データとの距離 | 依頼元と確かめる点 |
|---|---|---|
| 疑似データでの開発 | 触れない作りにできます | 疑似データを依頼元が用意するか |
| 匿名化済みデータでの検証 | 加工の程度で変わります | どの加工を済ませたデータか |
| 設計レビュー | 渡される資料の範囲で変わります | 資料に個人データが含まれるか |
| 本番データに触れる運用保守 | 触れます | 国外から扱ってよいか(依頼元が決めます) |
表の上から下へ、個人データとの距離は近くなります。疑似データでの開発は、個人データに触れない作りにできます。本番データに触れる運用保守は、触れる仕事です。
そのため、最初の面談では、希望する仕事がどの形に近いかを伝えると話が進みます。個人データに触れない形で受ける提案ができれば、依頼元の確認は軽くなります。次の節では、依頼元が報酬の支払いで確かめることを見ていきます。
5. 報酬の受け取りで依頼元が確かめること
支払う側に生じる源泉徴収の義務
国税庁のタックスアンサーは、非居住者等に対して国内において源泉徴収の対象となる国内源泉所得の支払をする者に、その支払の際に所得税等を源泉徴収し納付する義務がある、としています。3義務を負うのは支払う側です。受け取る側のエンジニアではありません。
この説明の対象は、国内源泉所得に当たる支払です。海外で作業した業務委託の報酬がこれに当たるかどうかは、この資料には書かれていません。そのため、海外在住者への報酬は源泉徴収される、あるいはされない、のどちらも言い切れません。判断は条件で変わります。
依頼元の経理の側から見ると、支払いの前に確かめたい点が増えます。自分の取引先に居住者として支払うのか、非居住者として支払うのかで、確かめる中身が変わるからです。海外在住で受けるエンジニアにとっては、その確認が入ると考えておくと、後から慌てずに済みます。
図の作成:Remogu編集部。国税庁のタックスアンサーをもとに確かめる並びを整理したもので、統計データではありません
区分は別の記事で、確かめる先は税務署
居住者と非居住者のどちらに当たるかは、納税管理人や出国前の手続きとあわせて、【納税管理人】海外移住するフリーランスエンジニアの税金で詳しく書いています。この記事では税を主題にせず、依頼元が支払いのときに何を確かめるか、までにとどめます。
自分の報酬がどう扱われるかは、条件によって変わります。依頼元に説明を求められたら、断定せずに、税務署に確かめると伝えるのが無理のない答え方です。確かめた結果は、依頼元の経理にも共有しておくと、支払いの手続きが止まりにくくなります。
報酬の受け取りは、請求書の形とも結びついています。そこで、請求書とインボイスについて、先に揃えておく項目を見ていきます。
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6. 請求書とインボイスの扱いを先に揃える

登録申請の手続は2つに分かれている
国税庁のタックスアンサーは、インボイス制度の適格請求書発行事業者の登録申請について、国内事業者用と国外事業者用の2つの手続を案内しています。4手続が2つに分かれている点が、この資料から言える事実です。
海外在住のエンジニアがどちらに当たるのか、そもそも登録するかどうかは、この資料からは分かりません。したがって、ここでは断定しません。登録の有無や手続の種類は、税務署や国税庁の窓口に確かめます。
契約の前に依頼元と揃えておく項目
請求書は、受け取る依頼元の経理が処理するものです。そのため、請求書の形は参画を始める前に依頼元と合わせておくほうが、後の手戻りが少なくなると考えます。次の表は、書き手の見立てで揃えておきたい項目をまとめたものです。
| 揃えること | 揃える中身の例 | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 請求書の宛先と通貨 | 宛先の名義、金額をどの通貨で示すか | 依頼元の経理 |
| 振込先の口座 | 受け取る口座と、口座名義の表記 | 依頼元の経理 |
| インボイスの登録の有無 | 登録しているか、依頼元に伝えられる状態か | 税務署 |
| 登録申請の手続の種類 | 国内事業者用か国外事業者用か | 税務署・国税庁の窓口 |
表の下の2行は、制度に関わる項目です。登録の有無や手続の種類は、自分で決めつけず、確かめた結果をそのまま依頼元に伝えます。上の2行は依頼元との取り決めなので、契約の前に口頭ではなく文面で残しておくと、行き違いを防げます。
ここまでで項目はそろいました。最後に、全体をどの順番で進めるかを見ていきます。
7. 海外在住で日本の案件を受ける順番
扱うデータから決めていく
順番は、扱うデータの範囲、連絡の時間帯、報酬と請求、契約の4段階で考えます。これは書き手の見立てです。最初に扱うデータを置くのは、個人データに触れるかどうかで、依頼元の確認の重さが大きく変わるからです。
個人データを国外へ渡す場合は、例外に当たらなければあらかじめ本人の同意を得る必要があります。1その判断をするのは依頼元です。先に触れる範囲を決めておけば、連絡の時間帯や支払いの話は、そのうえで進められます。
図の作成:Remogu編集部。ここまでの内容を書き手の見立てで並べたもので、統計データではありません
住んでいる場所より、何を扱うか
4段階を済ませてから契約に進むと、冒頭の面談のように「確認させてください」と言われても、答えを持って待てます。扱うデータの範囲、重なる時間帯、報酬と請求書の形が決まっていれば、依頼元の情報管理の担当と経理に、同じ材料を渡せるからです。
Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。海外に住みながら日本の案件を探すなら、まず登録して、自分の経験に合う条件を確かめてみる、が最初の一歩になります。
面談の最後に聞かれる「お住まいはどちらですか」は、断られる合図とは限りません。海外在住で問われるのは、住んでいる場所より、何を扱うかです。
8. よくある質問
海外在住であることは、依頼元に伝えた方がよいですか
最初の面談で伝えるのがよいと考えます。扱うデータと支払いの両方に関わるため、後から分かると、契約の前に確認をやり直すことになります。伝えるときは、住んでいる場所だけでなく、重なる時間帯と触れるデータの範囲も一緒に話すと、依頼元が判断しやすくなります。
移住の前に日本で案件を受け始めておいた方がよいですか
書き手の見立てでは、受け始めてから移住する場合でも、移住後に住所が変わることは契約の前に依頼元へ伝えておきます。住所が変わると、扱うデータや支払いの確認が増えるからです。税の区分は条件で変わるため、【納税管理人】海外移住するフリーランスエンジニアの税金で確かめてください。
個人データを扱う案件は受けられませんか
受けられないと決まっているわけではありません。個人データを国外へ渡すには、例外に当たらなければあらかじめ本人の同意を得る必要があり、同じ点は委託の場合も変わりません。2ただし、義務を負うのは依頼元で、本人の同意や体制の整備で対応するか、仕事の範囲を変えるかは依頼元が判断します。個人データを扱う案件を探すときは、まず依頼元の判断を聞くところから始めます。
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海外在住でも、連絡の時間帯と扱うデータの範囲を先に決めておけば、日本の案件をフルリモートで受けやすくなります。フルリモートの業務委託案件から探してみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)」(2025年12月・2026年10月確認)
*2 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」(2025年7月1日・2026年10月確認)
*3 国税庁「No.2885 非居住者等に対する源泉徴収のしくみ」(2026年4月1日・2026年10月確認)
*4 国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」(2026年4月1日・2026年10月確認)