業務委託の振込手数料を差し引かれたら?フリーランスエンジニアが確かめる減額に当たる3つの条件
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 振込手数料を差し引くと「減額」に当たる場合と、実費の範囲内なら当たらない場合の分かれ目
- 業務委託の前に書面か電磁的方法で合意しておくことと、差し引ける額の上限が実費までであること
- 差し引かれていたときに確かめる3つの点と、迷ったときに弁護士へ相談できる窓口があること
業務委託で受けた案件の報酬の入金を確かめたところ、請求した額から振込手数料が引かれていました。契約のときに手数料の話をした覚えはなく、これがフリーランス・事業者間取引適正化等法の「減額」に当たるのかが分かりませんでした。合意がないまま振込手数料を報酬から差し引くことは、「減額」に該当します4。
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1. 振込手数料を差し引くことは、「減額」に当たることがあります
法律は、発注する側がしてはならない7つの行為を定めています
フリーランス・事業者間取引適正化等法の第5条は、業務委託をした発注事業者がしてはならない行為を7つ定めています2。
そのうちの一つが「減額」の禁止です。振込手数料の差し引きが、この禁止に当たるかどうかを確かめます。
「減額」は、落ち度がないのに決めた報酬を後から減らすことです
「減額」の禁止とは、フリーランスに落ち度がないのに、発注時に決めた報酬を発注後に減らすことを指します。協賛金の徴収や原材料価格の下落といった理由でも、名目や方法、金額にかかわらず禁止されています3。
金融機関の口座へ振り込む方法をとる場合、振込手数料をフリーランスに負担させることに合意がないのに報酬の額から差し引くことや、合意があっても金融機関に支払う実費を超えた額を差し引くことは、「減額」として問題となるおそれがあります1。
表1にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| どんな行為 | 発注時に決めた報酬を発注後に減らすこと3 |
| 名目 | 名目や方法、金額にかかわらず禁止3 |
| 振込手数料 | 合意なし・実費を超えた差し引きは問題となるおそれ1 |
2. 合意がないまま差し引くのは、「減額」に該当します
合意がないまま手数料を負担させると、「減額」に該当します
冒頭で触れたとおり、フリーランスと合意することなく、報酬を振り込む際の手数料をフリーランスに負担させ、報酬の額から差し引くことは、「減額」に該当します4。
合意の有無で、扱いが分かれます
図1に分かれ目を示します。
図の作成:Remogu編集部。資料の内容をもとに整理したもので、統計データではありません
合意がある場合は、次の条件を確かめます。
3. 業務委託の前に書面か電磁的方法で合意し、実費の範囲内なら当たりません
実費の範囲内なら、「減額」に該当しません
業務委託の前に、振込手数料をフリーランスが負担する旨を書面または電磁的方法で合意している場合に、発注事業者が金融機関に支払う実費の範囲内で振込手数料を報酬の額から差し引くことは、「減額」に該当しません5。
3つの条件に分けると、次のとおりです。
- 業務委託の前に決めていること
- その合意が書面または電磁的方法によること
- 差し引く額が、金融機関に支払う実費の範囲内であること
3つがそろえば、振込手数料の差し引きは「減額」に当たりません5。
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4. 合意していても、実費を超えて差し引けば減額に当たります
実費を超えた差し引きは、合意があっても「減額」に当たります
業務委託の前に合意していたとしても、発注事業者が報酬を振り込む際に金融機関に支払う実費を超えた振込手数料の額を報酬の額から差し引くことは、「減額」に該当します6。
合意があるかどうかに加えて、差し引かれた額が実費の範囲内かどうかも確かめます56。
3つの場面を、表で整理します
表2にまとめます。
| 場面 | 減額に当たるか |
|---|---|
| 合意がない | 当たります4 |
| 前に書面か電磁的方法で合意し、実費の範囲内 | 当たりません5 |
| 合意しているが、実費を超えている | 当たります6 |
5. 7つの禁止行為は、1か月以上の業務委託が対象です
対象になるのは、1か月以上の業務委託です
フリーランスに1か月以上の業務委託をしている発注事業者には、7つの禁止行為が定められています8。
フリーランスが了解していたり、合意していたりしても、発注事業者に違法性の意識がなくても、これらの行為は法律に違反します8。
「減額」の禁止も、この7つのうちの一つです。業務委託時に定めた報酬の額を後から減らして支払うことを指し、名目や方法、金額にかかわらず、あらゆる減額行為が禁止されています9。
振込手数料は、この枠の中で条件を確かめる話です
ただし振込手数料については、公正取引委員会のQ&Aが条件を示しています。業務委託の前に合意し、書面か電磁的方法によっており、実費の範囲内であれば、「減額」には該当しません5。
図2に、対象となる業務委託の範囲を示します。
図の作成:Remogu編集部。資料の内容をもとに整理したもので、統計データではありません
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6. 契約の前に、振込手数料をどちらが負担するかを決めておきます
発注する側が負担する一文が、パンフレットに示されています
公正取引委員会のパンフレットが示す「明示の事例」には、発注の文面として「口座振込にかかる振込手数料は当社が負担します」という一文が載っています7。
フリーランスが受け持つなら、業務委託の前に合意しておきます
フリーランスが振込手数料を受け持つ場合は、業務委託の前に、その旨を書面または電磁的方法で合意しておきます。そのうえで実費の範囲内で差し引くことは、「減額」に該当しません5。
合意がなければ「減額」に該当し4、合意があっても実費を超えれば「減額」に該当します6。
図3に、2つの決め方を並べます。
図の作成:Remogu編集部。資料の内容をもとに整理したもので、統計データではありません
7. 差し引かれていたら、3つを確かめます
3つの点を、順番に確かめます
実際に報酬から振込手数料が差し引かれていたときは、3つの点を順番に確かめます。まず、業務委託の前に振込手数料の負担について合意していたかどうかです。
次に、その合意が書面かメッセージなど電磁的方法で残っているかどうかです。資料が「減額」に当たらないとしているのは、書面または電磁的方法で合意している場合です5。
最後に、差し引かれた額が金融機関に支払う実費の範囲内かどうかです。実費を超えた額が差し引かれていれば、合意があっても「減額」に該当します6。
表3に、3つの確認点をまとめます。
| 確かめること | 見る点 |
|---|---|
| 合意の有無 | 業務委託の前に、振込手数料の負担について合意していたか5 |
| 合意の方法 | 書面かメッセージなど電磁的方法で残っているか5 |
| 差し引かれた額 | 金融機関に支払う実費の範囲内かどうか6 |
迷うときは、フリーランス・トラブル110番に相談できます
3つを確かめても、「減額」に当たるかどうかの判断に迷うことがあります。そうしたときは、フリーランス・トラブル110番で弁護士に相談できます。電話やメールでの相談のほか、和解あっせんも行われています10。
図4に、確かめる順番を示します。
図の作成:Remogu編集部。資料の内容をもとに整理したもので、統計データではありません
業務委託の前に書面か電磁的方法で合意し、実費の範囲内であれば、振込手数料の差し引きは「減額」に該当しません5。合意があっても実費を超えていれば、「減額」に該当します6。迷うときは、フリーランス・トラブル110番で弁護士に相談できます10。
合意がないまま振込手数料を報酬から差し引くことは、「減額」に該当します4。次の契約の前に、振込手数料をどちらが負担するかを書面かメッセージで決めておきます。
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出典・参考情報
*1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」Q&A(令和6年12月18日時点)(2024年12月18日・2026年9月確認)
*2 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」Q&A(令和6年12月18日時点)(2024年12月18日・2026年9月確認)
*3 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」Q&A(令和6年12月18日時点)(2024年12月18日・2026年9月確認)
*4 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」Q&A(令和6年12月18日時点)(2024年12月18日・2026年9月確認)
*5 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」Q&A(令和6年12月18日時点)(2024年12月18日・2026年9月確認)
*6 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」Q&A(令和6年12月18日時点)(2024年12月18日・2026年9月確認)
*7 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法(パンフレット)」パンフレット(2026年9月・2026年9月確認)
*8 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法(パンフレット)」パンフレット(2026年9月・2026年9月確認)
*9 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法(パンフレット)」パンフレット(2026年9月・2026年9月確認)
*10 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法(パンフレット)」パンフレット(2026年9月・2026年9月確認)