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    案件の契約外の作業と無償の依頼|想定例に挙げられている形を解説

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「案件の契約外の作業と無償の依頼」を示す図です。契約に含まれる/契約に含まれないを並べています。強調しているのは契約に含まれないです。ここが分かれ目と添えています。

    📘 この記事でわかること

    • 優越的地位の濫用が問題となるときに揃う要素と、契約に含まれる作業かどうかを見分ける考え方
    • 協賛金の負担や改修・保守の無償提供など、想定例として挙げられている具体的な形とその共通点
    • 給付内容の変更・やり直しや購入の強制が、経済上の利益の要請とは別の類型として置かれている位置づけ

    契約で決まっていない作業を無償で頼まれたとき、依頼そのものの良し悪しで考えたくなります。ただ、公正取引委員会のガイドラインが置いている枠組みは、依頼の是非ではなく、取引の力関係と、断りにくさがどこまで働いているかという状態に目を向けています。想定例も具体的に挙げられているので、順番に確認していきます。

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    1. 何が問題として扱われるのか

    契約で決まっていない作業を無償で頼まれる場面は、案件を続ける中で起こることがあります。まず押さえておきたいのは、ガイドラインが見ているのが依頼そのものの中身ではなく、取引の力関係と、断りにくさの度合いだという点です。

    取引上の地位が優越していることを利用した不当な行為という考え方

    ガイドラインは、優越的地位の濫用として問題となる行為とは、取引上の地位が優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に行われる行為であるとしています1。起点になっているのは取引の力関係そのものであり、頼まれた作業の内容だけで判断が決まるわけではありません。

    力関係が優越しているかどうかは、発注元との関係の中で変わります。一方的に条件が決まりやすい関係にあるかどうかを、まず自分の状況に照らして考える材料になります。

    受け入れざるを得ない場合等が問題の入り口になる位置づけ

    ガイドラインはさらに、取引上の地位がフリーランスに優越している発注事業者が、協力金等の負担、役務の無償提供、その他経済上の利益の無償提供を要請する場合であって、今後の取引に与える影響を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合等には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となるとしています2

    この書き方から分かるのは、無償の依頼が出た時点で自動的に問題になるわけではなく、受け入れざるを得ない事情が重なった場合等が問題の入り口として置かれているという位置づけです。依頼の中身そのものよりも、取引の力関係と受け入れざるを得ない事情がどこまであるかという状態のほうが、判断の起点として置かれています。

    図1:問題になる場合の要素
    問題になる場合の要素 取引上の地位が 優越していること + 合理的に必要な 範囲を超えること + 受け入れざるを 得ない場合等 問題となる場合

    図の作成:Remogu編集部。ガイドラインが示す考え方の枠組みを整理したもので、統計データではありません

    この3つの要素をひとまとまりで見る視点を土台に、次の章では法律の側がどのような形で禁止を定めているかを確認します。

    2. 法律上はどう禁止されているのか

    無償で頼まれた作業がどのように扱われるかを考えるとき、ガイドラインの記述だけでなく、法律の条文がどのような形で禁止を定めているかを合わせて見ておくと、位置づけが掴みやすくなります。

    経済上の利益を提供させることを禁止する条文の形

    フリーランス・事業者間取引適正化等法では、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることによって、特定受託事業者の利益を不当に害することが、不当な経済上の利益の提供要請として禁止されているとされています3。ガイドラインが示す考え方の枠組みと、法律が置く禁止の形は、同じ方向を向いています。

    ここで対象になっているのは、金銭に限らず役務や物といった経済上の利益全般です。無償で頼まれる作業も、役務の提供という形でこの枠組みに含まれます。

    3つの類型は対象にしている場面が違う

    不当な経済上の利益の提供要請は、この後の章で扱う不当な給付内容の変更及び不当なやり直しや、購入・利用強制と並んで置かれている類型の一つです。それぞれ対象にしている場面が違うため、混同せずに読み分けることが手がかりになります。

    契約に含まれている作業を追加で頼まれた場合と、契約に含まれていない作業を無償で頼まれた場合とでは、当てはまる考え方の入り口が変わります。作業の中身よりも、契約に含まれているかどうかという線引きのほうが、読み分けの起点になります。

    この章で押さえた禁止の形を土台に、次の章からはガイドラインが挙げている想定例を順番に確認します。

    3. 想定例に挙げられている協賛金の負担

    ガイドラインは、優越的地位の濫用として問題となりうる場面を、抽象的な定義だけでなく具体的な想定例で示しています。ここから紹介する想定例は、あくまで挙げられている形であり、読んでいる案件がそれに当たるかどうかの判定ではありません。

    図2:想定例に挙げられている形
    想定例に挙げられている形 ①決算対策のための協賛金の負担 ②契約にない改修・保守・点検の無償提供 ③契約にない顧客リストの無償提出 ④取り決めた範囲を超える資料の使用

    図の作成:Remogu編集部。ガイドラインの想定例をもとに整理したもので、統計データではありません

    決算対策としての協賛金という想定例

    想定例として、決算対策のための協賛金を要請し、フリーランスにこれを負担させることが挙げられています4。決算という発注事業者側の事情を理由に、金銭の負担を求める形が例として置かれています。

    この想定例が示しているのは、負担を求める理由が発注事業者側の経営事情にあり、フリーランスが提供した役務や成果物とは別の負担であるという構図です。頼まれている内容と、本来の契約の対価との関係を切り分けて考える材料になります。

    挙げられている形と、自分の場面は分けて読む

    想定例に近い場面に見えても、それだけで判断が確定するわけではありません。優越した地位のもとで受け入れざるを得ない状態になっているかどうかという要素は、個別の事情によって変わります。

    行政が判断する枠組みであることを踏まえると、この記事の中で扱えるのは、この想定例がどのような形として置かれているかというところまでです。協賛金という金銭の負担の次に、ガイドラインはシステムに関わる役務の無償提供を想定例として挙げています。

    4. 契約に含まれていない改修・保守・点検を無償で

    システムに関わる案件では、稼働後の細かな手直しを頼まれる場面があります。ガイドラインは、この種の依頼についても想定例を置いています。

    発注内容に含まれているかどうかが分かれ目

    想定例として、契約内容に情報システムの改修・保守・点検を行うことが含まれていないにもかかわらず、フリーランスに対し、情報システムの改修・保守・点検を無償で提供させることが挙げられています5。ここで欠かせないのは、発注内容に含まれていないにもかかわらずという限定です。

    契約に含まれている作業の範囲内で改修や保守を行う場合は、この想定例が指す場面とは異なります。無償かどうかより先に、発注内容に含まれている作業かどうかを見る順番になります。

    契約書を確認する視点

    契約書や発注書に、改修・保守・点検がどこまで含まれているかが明記されているかどうかを確認する視点が、この想定例を読むときの起点になります。

    明記されていない作業を追加で頼まれた場合、それが無償を前提にした依頼なのか、対価の話がどうなっているのかを確かめることが、次の一歩として置けます。

    図3:契約に含まれるものと含まれないもの
    契約に含まれるものと含まれないもの 契約に含まれる作業 対価の対象になる作業 発注書に明記された範囲 契約に含まれない作業 無償の提供を求められた作業 使用範囲を超えた利用

    図の作成:Remogu編集部。ガイドラインの想定例をもとに整理したもので、統計データではありません

    システムの改修・保守・点検の次に、ガイドラインは顧客リストや資料の扱いについても想定例を挙げています。

    5. 顧客リストや資料の扱い

    案件を通じて積み上げた情報の扱いについても、ガイドラインは想定例を置いています。

    顧客リストの無償提出という想定例

    想定例として、フリーランスの顧客リストについて、発注内容に含まれていないにもかかわらず、無償で提出させることが挙げられています6。ここでも、発注内容に含まれていないにもかかわらずという限定が付いています。

    顧客リストは、案件を続ける中で積み上げてきた情報です。契約の対象になっていない情報の提出を求められた場合、それが対価とどう関係しているかを確かめる材料になります。

    取り決めた使用範囲を超えて使う場合

    もう一つの想定例として、役務等の提供に付随して提供された資料について、使用範囲をあらかじめフリーランスとの間で取り決めているにもかかわらず、追加的な対価を支払わないまま取り決めた使用範囲を超えて使用することが挙げられています7

    資料を渡す時点で使用範囲を取り決めていたかどうかが、この想定例の起点です。取り決めた範囲を超えて使われている場合、その超えた部分の対価がどうなっているかを確かめる視点につながります。

    ここまで見てきた4つの想定例は、いずれも「発注内容に含まれていないにもかかわらず」という同じ限定を伴って置かれています。表で整理すると、対象になっている経済上の利益の種類の違いが見えてきます。

    想定例対象になる経済上の利益出典
    決算対策のための協賛金の負担金銭4
    契約にない改修・保守・点検の無償提供役務5
    契約にない顧客リストの無償提出情報の無償提供6
    取り決めた範囲を超える資料の使用使用範囲を超えた利用7

    顧客リストや資料の扱いの次に、ガイドラインは給付内容の変更とやり直しを、別の類型として置いています。

    6. 変更とやり直しは別の類型として置かれている

    ここまで見てきた協賛金の負担や無償提供の想定例は、不当な経済上の利益の提供要請という類型に属します。ガイドラインは、これとは別に、給付内容の変更及びやり直しという類型を置いています。

    責めに帰すべき事由がないのに変更・やり直しをさせること

    不当な給付内容の変更及び不当なやり直しとは、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、給付の内容を変更させ、または給付を受領した後に給付をやり直させることによって、特定受託事業者の利益を不当に害することであるとされています8

    ここでの「責めに帰すべき事由」という言葉は、成果物の不備など、フリーランスの側に原因がある場合を指す法律の用語です。原因がフリーランスの側にない場合に、変更ややり直しを一方的に求める形が、この類型の対象として置かれています。

    無償の要請とは別の類型として置かれている

    この類型は、これまで見てきた協賛金の負担や役務の無償提供の要請とは別の場面を対象にしています。金銭や役務そのものを求める話ではなく、すでに合意した給付の内容や納品後の扱いを一方的に変える話です。

    対価の話なのか、それとも合意した内容の変更ややり直しの話なのかを見分けることのほうが、金額の大小を気にするよりも先に確かめておきたい視点です。

    図4:類型の並び
    類型の並び 経済上の利益の 提供要請 無償提供を求める 給付内容の変更・ やり直し 内容を変更させる 購入・利用強制 購入を強制する

    図の作成:Remogu編集部。ガイドラインの類型を整理したもので、統計データではありません

    給付内容の変更・やり直しの次に、ガイドラインは物や役務の購入・利用を強制される場面を、もう一つの類型として置いています。

    7. 物や役務の購入を強制される場合

    最後に確認するのは、購入や利用そのものを強制される場面です。ここまでの3つの類型を、表で並べて振り返っておきます。

    類型何が問題とされているかこの記事での節
    不当な経済上の利益の提供要請金銭・役務等の経済上の利益を提供させて利益を不当に害すること33〜5章
    不当な給付内容の変更及び不当なやり直し責めに帰すべき事由がないのに変更・やり直しをさせること86章
    購入・利用強制正当な理由がある場合を除き、指定する物・役務の購入・利用を強制すること97章

    正当な理由がある場合を除きという限定

    購入・利用強制とは、特定受託事業者の給付の内容を均質にし、またはその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、または役務を強制して利用させることであるとされています9

    ここでの限定は、正当な理由がある場合を除きという部分です。均質な品質を保つための指定など、理由がある場合まで一律に問題として扱われているわけではありません。理由の有無を確かめる視点が、この類型を読むときの起点になります。

    確かめる順番を決めておく

    ここまで見てきた想定例は、いずれも発注内容に含まれているかどうか、正当な理由があるかどうかという限定が付いた形で置かれています。頼まれた作業に接したとき、まず契約に含まれている範囲かどうかを確かめ、含まれていない場合に対価の話がどうなっているかを確かめる、という順番が手がかりになります。

    案件を選ぶ段階でも、契約の範囲が明確に示されているかどうかは、確かめておきたい点の一つです。Remoguでは、案件の90%以上がフルリモート可能です。契約の内容を確認しながら、自分に合う案件を探すという進め方もあります。

    頼まれた作業の是非を自分だけで判断しようとするより、契約に含まれているかどうかという事実を先に確かめるほうが、次に取る行動を選びやすくなります。確かめる視点を、簡単な形に整理しておきます。

    場面確かめる視点
    作業を頼まれたとき発注書や契約書に、その作業の範囲が明記されているか
    含まれていない作業だった場合対価の話がどのように決まっているか
    資料や情報を渡す場合使用範囲がどこまで取り決められているか

    ここからは、この記事のテーマに関わる質問を確認します。

    初めて請ける案件でも、この考え方は関係がありますか

    初めて請ける案件であっても、ガイドラインが置いている枠組み自体は変わりません。契約に含まれている作業かどうかを確かめる視点は、案件の経験の長さに関わらず使えます。

    契約書や発注書の内容を、案件を始める前に確認しておくことが、後から頼まれた作業の位置づけを見分ける材料になります。

    副業として請けている案件でも同じ考え方になりますか

    副業として請けている案件であっても、取引の相手が発注事業者であり、フリーランスとして役務を提供している関係である点は変わりません。ガイドラインが対象にしている考え方の枠組みも、同じように当てはまります。

    稼働できる時間が限られている中で、契約に含まれていない作業を無償で頼まれた場合も、まず契約の範囲を確かめるという順番は変わりません。

    地方在住でオンラインだけの取引でも、想定例に挙げられている形は変わりますか

    取引の場所がオンラインであっても、発注事業者とフリーランスという関係、契約に含まれる作業の範囲という考え方は変わりません。想定例に挙げられている形も、対面かオンラインかによって変わるものではありません。

    リモートでのやり取りが中心になる案件では、契約の内容や作業の範囲を文書として残しておくことが、後から確認する材料になります。自分に合う条件のリモート案件を、登録して確かめるという進め方もあります。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 公正取引委員会「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」枠組み(2026年1月・2026年9月確認)
    *2 公正取引委員会「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」問題になる場合(2026年1月・2026年9月確認)
    *3 公正取引委員会「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」法律上の禁止(2026年1月・2026年9月確認)
    *4 公正取引委員会「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」協賛金の例(2026年1月・2026年9月確認)
    *5 公正取引委員会「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」改修・保守・点検の例(2026年1月・2026年9月確認)
    *6 公正取引委員会「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」顧客リストの例(2026年1月・2026年9月確認)
    *7 公正取引委員会「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」資料の使用範囲の例(2026年1月・2026年9月確認)
    *8 公正取引委員会「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」変更・やり直し(2026年1月・2026年9月確認)
    *9 公正取引委員会「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」購入・利用強制(2026年1月・2026年9月確認)