【取適法とフリーランス法の違い】案件で対象になる範囲を解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 情報成果物の作成委託と役務の提供委託にあたる具体的な範囲と、建設工事が法律によって対象から外れる場合があること
- 発注する側が自分で使う役務の委託まで対象になることと、契約の名前が委託でも法律の適用を受けない場合があること
- 取引条件の明示義務がフリーランス同士の取引にも及ぶことと、制度の改正後も違反が確認されている実態
案件を進めている最中に、契約書に書かれた言葉だけでは、自分がどの制度に守られているのか判断がつかない場面に行き当たることがあります。取適法とフリーランス法は、どちらも取引の適正化を目的にした制度ですが、対象になる委託の範囲が異なります。同じ「委託」という言葉が使われていても、委託の内容や業種によって、どちらの制度が適用されるかは変わってきます。この記事では、公正取引委員会が公表している資料をもとに、範囲の違いと、受ける側がどちらで守られるかを整理します。
▶ あわせて読みたい
・【案件の前払い・着手金】着手の費用をめぐる決まりと注意点を解説
・【案件のリスク】賠償の心配より先に確かめる条件と制度の備え
・案件の障害対応はどこまで負うのか|範囲の読み方と確かめる順番を解説
1. 情報成果物の作成委託という区分がある
受けている案件がソフトウェアの開発なのか、映像やデザインの制作なのか。まずはその中身を、法律が使っている言葉に置き換えてみることが、範囲を理解する最初の一歩になります。
公正取引委員会のパンフレットは、情報成果物の作成委託を、ソフトウェア・映像コンテンツ・デザインなどの作成を委託することと説明しています1。プログラムを書く仕事も、動画を編集する仕事も、ロゴやレイアウトを設計する仕事も、この区分に含まれます。
図の作成:Remogu編集部。2つの法律が対象にする範囲の関係を整理したもので、統計データではありません
情報成果物の作成委託にあたる仕事の広がり
この区分が指しているのは、成果物そのものの性質です。納品先の業種がIT企業であるか、それ以外の業種であるかは問いません。作成する対象がソフトウェアや映像、デザインであれば、区分としては同じ扱いになります。
業種で範囲を狭めて考えるよりも、成果物の性質で範囲を捉えるほうが、実際の判断に近づきます。自分が普段受けている案件を、成果物の種類で言い換えてみると、この区分に当てはまるかどうかが見えてきます。
区分を知ることが次の判断の土台になる理由
区分を先に押さえておくと、この後の章で扱う役務の提供委託や、建設工事の扱いといった違いも、同じ土台の上で比較できるようになります。
逆に区分があいまいなままだと、自分の案件がどちらの制度の対象になるのかを考える手がかりを失ってしまいます。次の章では、もう一つの区分である役務の提供委託を見ていきます。
2. 役務の提供委託には修理も含まれる
案件の中身が「作る」ことではなく「直す」ことであっても、委託の対象から外れるわけではありません。この点は、区分を確かめるときに見落としやすいところです。
公正取引委員会のパンフレットは、役務の提供委託についても説明しており、この「役務」には物品を修理することも含まれるとしています2。保守や修理を中心にした案件も、区分としては役務の提供委託に入ります。
図の作成:Remogu編集部。委託の区分を整理したもので、統計データではありません
| 区分 | 委託の内容 |
|---|---|
| 情報成果物の作成委託 | ソフトウェア・映像コンテンツ・デザインなどの作成を委託すること1 |
| 役務の提供委託 | 他者に役務の提供を委託すること。物品を修理することもこの役務に含まれます2 |
情報成果物の作成委託と役務の提供委託の違い
情報成果物の作成委託が「新しく作る」ことに重心があるのに対し、役務の提供委託は「作業や対応を行う」こと自体を委託の対象にしています。作るという成果物よりも、対応そのものが委託の中身になる場合は、こちらの区分で考えることになります。
修理のように、既にあるものへの対応を行う案件も、この区分に含まれる点は、実務の感覚と少し離れているかもしれません。区分の名前だけで判断せず、委託の中身を確かめておくことが大切です。
自分の案件がどちらに近いかを確かめる
受けている案件を、成果物を新しく作っているのか、既にあるものへの対応を行っているのかという観点で見直してみると、どちらの区分に近いかが整理しやすくなります。
区分が分かれば、次に確かめたいのは業種による違いです。次の章では、建設工事の扱いがどう分かれているかを見ていきます。
3. 建設工事の扱いが2つの法律で違う
案件が建設に関わる工事だった場合、範囲の判断は少し複雑になります。ここは2つの法律で扱いが分かれている部分だからです。
公正取引委員会のパンフレットは、取適法では建設業法における建設工事は対象外ですが、フリーランス法は業種・業界の限定がないため、建設工事も業務委託の対象になるとしています3。
| 観点 | 取適法 | フリーランス法 |
|---|---|---|
| 建設工事の扱い | 建設業法における建設工事は対象外です | 建設工事も対象になります3 |
| 業種・業界の限定 | 限定があります | 業種・業界の限定はありません3 |
業種の限定がある制度とない制度の違い
取適法は、対象になる取引を業種や資本の区分によって定めており、建設工事はその対象から外れます。一方でフリーランス法は、業種・業界による限定を設けていないため、建設工事に関わる委託も対象に含まれます3。
業種による限定があるかどうかは、範囲を確かめるときの大きな分かれ目になります。自分の案件がどちらの制度の対象になるかは、業種だけでなく、この限定の有無も合わせて確かめる必要があります。
建設に関わる案件を受けている場合の確認ポイント
建設に関わる案件を受けている場合は、取適法の対象から外れていても、フリーランス法の対象には含まれる可能性がある、という順番で確かめておくと整理しやすくなります。
範囲の違いを押さえたところで、次はもう一つ見落としやすい対象、発注する側が自ら使う役務の委託について見ていきます。
自分の経験に近いリモート案件をチェックする →
4. 自ら用いる役務の委託も対象になる
委託した役務が、他社への納品物ではなく、発注する側が自分たちで使うためのものだった場合はどうなるのか。ここも範囲を確かめるときに迷いやすい部分です。
公正取引委員会のパンフレットは、発注する側が自ら用いる役務の提供を委託することも、この法律の対象になるとしています4。納品先が社外か社内かという違いだけでは、対象から外れる理由にはなりません。
誰が使うためのものかで対象から外れるわけではない
たとえば社内で使う業務システムの開発や、社内向けの資料のデザインを委託されている場合でも、委託の内容が情報成果物の作成や役務の提供にあたるのであれば、範囲の外に置かれるわけではありません。
「外部に売るものではないから対象外だろう」という思い込みよりも、委託の内容そのものを確かめるほうが、範囲の判断としては確かです。
自分の案件を振り返るときの視点
受けている案件が、発注する側の社内で使われるものだと分かっている場合も、委託の内容を情報成果物の作成委託・役務の提供委託のどちらかに当てはめて考えてみることが、範囲を確かめる手がかりになります。
範囲が広く取られている理由が分かったところで、次は逆に、委託という形でも対象から外れる場合について見ていきます。
5. 形式が委託でも適用されない場合がある
契約書に「業務委託契約書」という名前が付いていれば、それだけでこの法律の対象になる、というわけではありません。名前だけで判断できない場合がある、という点も押さえておきたいところです。
公正取引委員会のパンフレットは、形式的には業務委託契約を締結している者であっても、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合には、この法律が適用されないとしています5。
図の作成:Remogu編集部。形式と実質の判断の関係を整理したもので、統計データではありません
契約書の名前ではなく実質で見られる
実質的に労働者と判断されるかどうかは、働き方の実態、たとえば作業の進め方をどちらが決めているかや、時間・場所の拘束の度合いなど、複数の要素を踏まえて確かめられるものです。契約書の文言だけを見て判断できるものではありません。
契約の名前よりも、実際にどのような形で業務を進めているかのほうが、この判断では重みを持ちます。名前を整えることよりも、実態を振り返っておくことのほうが、範囲を確かめるうえでは近道になります。
自分の働き方を振り返る視点
作業の進め方をどちらが決めているか、時間や場所をどこまで指定されているかといった点を振り返っておくと、実質的にどちらの立場に近いかを考える手がかりになります。
形式では対象になっていても実質で外れる場合がある、という関係を押さえたところで、次は受ける側どうしの取引が明示の対象になる範囲を見ていきます。
6. 受ける側どうしの取引も明示の対象
委託する側と受ける側という関係だけでなく、受ける側どうしの取引も、この制度の対象に含まれています。ここは見落とされやすい範囲です。
公正取引委員会のパンフレットは、取引条件の明示義務は、フリーランス同士の取引も対象になるとしています6。委託する側の規模にかかわらず、フリーランスがフリーランスに委託する場合も、この義務の範囲に入ります。
明示しなければならない事項
明示する事項には、給付の内容について検査する場合の検査を完了する期日と、報酬の額および支払期日が含まれます7。
| 明示する事項 | 内容 |
|---|---|
| 検査を完了する期日 | 給付の内容を確認し終える期日7 |
| 報酬の額 | 支払う報酬の金額7 |
| 支払期日 | 報酬を支払う期日7 |
明示された事項を確かめておくことは、後になって「言った・言わない」の食い違いを防ぐ、実務上の備えになります。決めた内容を残る形にしておくことが、範囲を確かめる作業のもう一つの側面です。
受ける側どうしの取引でも同じように確かめる
自分がフリーランスとして、別のフリーランスに委託する立場になることもあります。その場合も、明示義務の対象から外れるわけではないという点を、頭の片隅に置いておくとよさそうです。
範囲の広がりを押さえたところで、次の章では制度の改正と、実際に多い違反の実態を見ていきます。
条件を明示している案件から自分に合うものを探す →
7. 制度の改正と、実際に多い違反
制度は一度作られて終わりではなく、運用しながら見直されています。直近の改正がいつ行われたのかを押さえておくと、確認している情報が最新のものかどうかの目安になります。
公正取引委員会の資料によると、施行規則の改正は令和7年10月1日に公布され、令和8年1月1日に施行されました8。あわせて、明示をするときに示さなければならない事項を定めることが、この改正に含まれています9。
出典:公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」(2026年6月)をもとに作成
改正によって明示の事項が明確になった
改正前後で何が変わったのかを細かく比べることよりも、明示しなければならない事項が定められたという方向性を押さえておくことのほうが、実務では役立ちます。
自分が受け取っている明示の内容が、この定めに沿っているかどうかを確かめる視点を持っておくと、範囲の話を実際の案件に結びつけやすくなります。
運用の実態として違反はどれくらいあるのか
公正取引委員会の資料では、違反行為の類型別件数は全体で2,727件です10。制度が定められていても、運用の実態としては一定数の違反が確認されていることが分かります。
件数の多さをどう受け止めるかよりも、明示された内容を自分の手元に残しておくことが、範囲を確かめる作業の延長として実際にできることです。
初めて案件を受ける場合も、この制度の対象になりますか
対象になるかどうかは、経験の有無ではなく、委託の内容がどの区分にあたるかで決まります。情報成果物の作成委託や役務の提供委託にあたる内容であれば、案件を受けるのが初めてであっても、範囲の考え方は変わりません1。
副業として受けている案件も対象になりますか
副業か専業かという受ける側の事情ではなく、委託の内容と、委託する側・受ける側の関係で範囲が決まります。副業として受けている案件であっても、区分にあたる内容であれば対象に含まれます2。
稼働の日数が週3日程度でも対象になりますか
稼働の日数そのものは、対象になるかどうかを分ける基準にはなっていません。形式的な契約と実質的な働き方のどちらに近いかを確かめる視点のほうが、範囲の判断では重みを持ちます5。
明示された内容と実際が違うと感じたときは、まず何を確認すればよいですか
契約のときに明示された事項、検査を完了する期日や報酬の額、支払期日を、実際の進み方と照らし合わせて確認することが、最初にできることです7。
範囲の話は、自分が受けている委託がどの区分に入るのかを見るところから始まります。明示された内容を確かめながら案件を選べる環境かどうかも、働きやすさを左右します。Remoguはリモートワークの案件に特化したエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。まずは登録して、自分の経験に合う条件を確かめてみることが、次の一歩になります。
リモートワーク案件をお探しの方へ
Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
範囲が分かれば安心して受けられます。リモートの案件を見てみてください。
会員登録無料 / 案件閲覧・相談は無料
※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
*2 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
*3 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
*4 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
*5 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
*6 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
*7 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
*8 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」規則の改正(2026年6月・2026年9月確認)
*9 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」示す項目(2026年6月・2026年9月確認)
*10 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」類型別の総数(2026年6月・2026年9月確認)