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    【案件のリスク】賠償の心配より先に確かめる条件と制度の備え

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「案件のリスクの輪郭」を示す図です。不安/条件/制度の備えを並べています。強調しているのは制度の備えです。ここで見ると添えています。

    📘 この記事でわかること

    • 契約時に明示される検査完了期日や報酬に関わる期日と、発注する側に定められた禁止行為の関係
    • 6か月以上の契約を終える際の30日前までの予告と、理由を請求すれば開示される仕組みの中身
    • 違反行為の類型別件数や原状回復の運用実績と、ITのリスク管理を整えている企業の割合

    案件を受ける場面で、賠償という言葉が頭をよぎることがあります。金額の大きさや線引きの曖昧さが、輪郭のはっきりしない不安を生みます。ただ、契約のどの場面で何が明示され、発注する側にどんな禁止行為が定められているかは、資料に沿って先に確かめられる部分です。制度に置かれた備えと合わせて、ここから順番に見ていきます。

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    1. 明示される項目が最初の土台になる

    検査完了の期日と、報酬に関わる期日が土台になる

    案件を受ける前に交わす契約書は、細かい字が並んでいて、どこを見ればよいか分かりにくいものです。公正取引委員会のパンフレットは、給付の内容を検査する場合に検査を完了する期日を明示する事項として挙げています1。まず確かめたいのは、この一文が契約書に置かれているかどうかです。

    同じ資料では、報酬の額および支払期日も明示する事項に含まれています1。金額そのものより、いつまでに支払われるかという期日が明記されているかが、後から迷わないための足がかりになります。案件ごとに条件が異なるぶん、この2点は毎回見比べておきたい部分です。

    契約書で明示される主な事項を、次の表に整理しました。

    項目内容
    検査完了の期日給付の内容を検査する場合に定められる期日1
    報酬の額契約に明示される報酬の金額1
    支払期日報酬が支払われる期日1

    確かめる順番の最初に置きたい理由

    賠償という言葉から連想する不安は、範囲の広さゆえに扱いにくく感じられます。ただ、契約書に明示される事項という土台から順に確かめていくと、輪郭のない不安が、具体的に見比べられる条件に変わっていきます。順番を決めて見ていくことが、遠回りに見えて近道になります。

    この先の章では、発注する側の禁止行為、解除の予告、理由の開示、運用の実績、備えの整え方という順で見ていきます。個別の契約の解釈や、実際に困った場合の対応は、この記事だけで判断せず、公正取引委員会の窓口や専門家に確かめる事項です。まずは土台となる明示事項から押さえていきます。

    図1:賠償の不安は、6つの確かめられる点に分けられます
    明示事項 検査と報酬期日 禁止行為 発注側への定め 解除の予告 30日前の通知 理由開示 請求すれば開示 運用の実績 件数として公表 備えの状況 整備の割合

    図の作成:Remogu編集部。この記事で確かめる項目を整理したもので、統計データではありません

    ここまでの内容を頭に置いたうえで、次の章では発注する側に定められている禁止行為を見ていきます。

    2. 発注する側の禁止行為が定められている

    禁止行為という枠が、発注する側に対して置かれている

    契約を結ぶ前に、相手側に何が定められているのかを知っておきたいと感じる場面があります。契約の条件は、発注する側と受ける側の話し合いだけで決まるものではありません。

    公正取引委員会のパンフレットは、発注する側に対して禁止行為が定められていることを示しています2。個々の条件がどう決まるかという前に、超えてはいけない枠がすでに用意されている形です。

    この枠があることは、条件をすべて交渉に委ねるのではなく、超えてはいけない基準を先に置いておくという考え方に基づいています。案件を受ける側にとっては、この枠の存在を知っておくこと自体が、契約を結ぶ前の確認材料になります。

    この枠がどのような場面を対象にしているかは、案件や契約の内容によって当てはまり方が変わります。この記事では、禁止行為が定められているという事実の土台までを扱い、具体的な一つひとつの行為の当てはめは、公正取引委員会の窓口や専門家に確かめる事項として整理します。

    個別の判断は窓口に確かめる

    賠償という言葉が持つ重さは、当てはまるかどうかが自分では判断しにくいところから来ています。制度としての枠があることを知っておくだけでも、契約を結ぶ場面での見え方は変わります。分からない点をそのままにせず、確かめる先を持っておくことが次の一歩です。

    次に見ていくのは、契約の終わり方に置かれた猶予です。解除や更新をしない場合に、どのタイミングで何が伝えられるのかを、続けて確かめていきます。

    3. 解除には30日前までの予告がある

    6か月以上の契約が対象になる

    契約がどのように終わるかは、始める段階では見えにくい部分です。だからこそ、終わり方にどんな仕組みが置かれているかを、あらかじめ知っておく意味があります。

    公正取引委員会のパンフレットは、6か月以上の業務委託で契約の解除または不更新をしようとする場合、例外に当たる場合を除き、解除日または契約満了日から30日前までにその旨を予告しなければならないとしています3

    対象になるのは6か月以上続く業務委託です。期間の長さが、予告という猶予の有無を分ける基準になっている形です。案件を選ぶ段階で契約期間を確かめておくと、この猶予が当てはまるかどうかの見当がつきやすくなります。

    猶予の有無を分けるのが契約期間の長さだという点は、案件を選ぶ段階でも意識しておきたい基準になります。契約書に記載されている期間を、最初に確かめておく理由がここにあります。

    例外もあることを踏まえておく

    この予告には、例外に当たる場合を除くという条件が付いています3。すべての契約終了に一律で適用されるわけではなく、状況によって扱いが変わる場合があります。自分の契約がどちらに当たるかは、この記事だけで判断せず、窓口や専門家に確かめる事項です。

    予告という仕組みがあること自体は、契約の終わり方が一方的に決まるものではないという土台になります。次に見るのは、その予告のあと理由を尋ねられる仕組みです。

    4. 理由は請求すれば開示される

    理由開示という、もう一段の仕組み

    契約の終わり方について、もう一つ気になるのが理由です。予告のあとに、なぜ契約が終わるのかを尋ねられる仕組みがあるかどうかは、確かめておきたい点です。

    公正取引委員会のパンフレットは、予告された日から契約が満了するまでの間に解除の理由を請求した場合、例外に当たる場合を除き、遅滞なく開示しなければならないとしています4

    理由を尋ねる権利が、予告のあとに続けて置かれている形です。開示を請求できる期間は、予告された日から契約満了までの間と定められており、このタイミングを押さえておくことが確かめる際の目安になります。

    予告と開示は、続きものとして見る

    予告と理由開示は、別々の場面ではなく一続きの流れとして整理できます。表にまとめると、契約の終わり方に沿って何がいつ確かめられるのかが見通しやすくなります。

    予告と理由開示の関係を、次の表に整理しました。

    場面内容
    6か月以上の業務委託で解除・不更新をしようとする場合例外に当たる場合を除き、解除日または契約満了日から30日前までに予告3
    予告された日から契約満了までの間に理由を請求した場合例外に当たる場合を除き、遅滞なく開示4

    この2つの仕組みを知っておくだけで、契約の終わり方に対する見え方は変わります。次の章では、これらの仕組みがどれくらい運用されているかを、公表されている件数から見ていきます。

    図2:制度に置かれた備えは、4つの仕組みでできています
    明示事項 検査・報酬 禁止行為 禁止の定め 解除予告 30日前通知 理由開示 請求で開示

    出典:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月改訂)をもとに作成

    5. 違反行為の類型別件数と支払いの位置

    全体の件数と、支払いに関わる違反の多さ

    禁止行為や予告、理由開示といった仕組みがあることは分かっても、実際にどれくらい運用されているかは気になるところです。制度がどれくらい動いているかは、公表されている運用状況から確かめられます。

    公正取引委員会の公表資料によると、違反行為の類型別にみると全体で2,727件です5。そのうち期日における報酬の支払義務違反が最も多く1,135件(41.6%)です6

    違反行為の類型別件数を、次の表にまとめました。

    類型件数(構成比)
    全体2,727件5
    期日における報酬の支払義務違反1,135件(41.6%)6
    取引条件の明示義務違反1,126件(41.3%)7

    支払いに関わる違反が最も多いという位置づけは、報酬の期日を明示する事項として押さえておく重みにつながります。1章で見た明示事項のうち、支払期日という項目が、実際の運用でも大きな位置を占めている形です。

    取引条件の明示義務違反という、もう一つの多い類型

    取引条件の明示義務違反は1,126件(41.3%)です7。支払いに関わる違反とほぼ並ぶ件数で、1章で見た明示する事項が、実際の運用でもくり返し確かめられている対象になっていることがわかります。

    図3:違反行為の類型別の割合は、支払いと明示の2つが並んで多くなっています
    全体では2,727件です 期日における報酬の支払義務違反 1,135件(41.6%) 取引条件の明示義務違反 1,126件(41.3%)

    出典:公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」(2026年6月)をもとに作成

    2つの類型を並べて見ると、明示される事項と、その通りに実行されるかどうかの両方が、運用の中で確かめられていることが見えてきます。件数という形で公表されていること自体が、この制度が実際に動いていることの手がかりです。

    6. 原状回復という結果も公表されている

    総額1734万円という結果

    違反があった場合にどのような結果につながるのかも、公表資料から確かめられます。件数だけでなく、その先の結果まで公表されているかどうかは、制度の実効性を見るうえで気になる点です。

    公正取引委員会の公表資料は、不利益の原状回復として総額1734万円が行われたとしています8

    この金額は、個別の案件でいくら支払われるかを示すものではなく、運用全体の結果を合計した数字です。原状回復という結果が実際に公表されていること自体が、制度が書類の上だけのものではないことの手がかりになります。

    この件数や金額は、あくまで公表された運用全体の結果です。自分が関わる契約がこの結果と同じように扱われるとは限らず、個別の状況は窓口や専門家に確かめる事項として分けて考えたい部分です。

    公表された結果と、個別の状況は分けて見る

    制度としての枠組みと、自分が置かれている状況は、いったん分けて考えたほうが見通しが立ちやすくなります。分からない点があれば、そのままにせず、確かめる先を持っておくことが安心につながります。

    ここまでで、明示される事項、禁止行為、予告と理由開示、そして運用の結果という流れを見てきました。次の章では、視点を変えて、備えとして何が整えられているかを確かめます。

    7. ITのリスク管理の整備と、確かめる順番

    整備している企業は5〜6割程度

    契約や運用の仕組みとあわせて、備えの状況も確かめておきたい点です。IPAの調査によると、ITのリスク管理および業務継続計画は、全体の5〜6割程度の企業が整備しています9

    5〜6割という水準は、全体を通して見ればまだ道半ばとも言える整備状況です。案件に関わる仕組みが常に整っているとは限らないことを踏まえたうえで、契約の中身を確かめる姿勢につなげたい数字です。

    外部サービスへの不安も、調査に表れている

    同じ調査では、外部のサービスについて、維持や運用に不安を抱える企業が多いことも示されています10。備えの整備状況と、実際の不安の大きさが、同じ調査の中に並んで表れている形です。

    備えが整っているかどうかも、案件によって異なります。契約前に確かめられる事項が明示されているか、禁止行為の枠があるか、予告や理由開示の仕組みが機能しているかを合わせて見ておくと、不安の中身がより具体的になります。

    図4:先に確かめる条件は、4つの順番で見ていくと整理しやすくなります
    1 明示される事項を見る 検査と報酬期日 2 禁止行為に触れていないか見る 発注側への定め 3 解除の予告があるか見る 30日前の通知 4 理由開示の請求方法を見る 請求すれば開示

    図の作成:Remogu編集部。契約書を確かめる順番の一例を整理したもので、統計データではありません

    契約書に明示される事項が見当たらない場合はどうすればよいですか

    契約書の記載が十分かどうかを自分だけで判断するのは難しい場面です。気になる点があれば、公正取引委員会の窓口や専門家に確かめる事項として相談することができます。

    解除の予告がないまま契約が終わることはありますか

    予告には、例外に当たる場合を除くという条件が付いています3。自分の契約がその例外に当たるかどうかは、この記事だけで判断できるものではなく、窓口や専門家に確かめておきたい点です。

    違反に当たるかどうかは自分で判断できますか

    この記事で扱っているのは、明示される事項や禁止行為、予告と理由開示、そして運用の件数という公表されている内容までです。個別の契約が違反に当たるかどうかの判断は、公正取引委員会の窓口や専門家に確かめる事項になります。

    賠償という言葉から始まった不安は、明示される事項、禁止行為の枠、予告と理由開示の仕組み、そして運用の実績という順に確かめていくと、輪郭のある条件に変わっていきます。自分が関わる案件の条件を具体的に確かめたい場合は、Remoguへの登録が次の一歩になります。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
    *2 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
    *3 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
    *4 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
    *5 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」類型別の総数(2026年6月・2026年9月確認)
    *6 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」最も多い違反(2026年6月・2026年9月確認)
    *7 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」2番目に多い違反(2026年6月・2026年9月確認)
    *8 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」戻された額(2026年6月・2026年9月確認)
    *9 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」止まる備え(2025年4月・2026年9月確認)
    *10 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」不安の所在(2025年4月・2026年9月確認)