サイレント故障とは?警報が鳴らない障害を検知する監視設計

📘 この記事でわかること
- 詳細な様式による報告等が7,941件へ増える一方、重い区分の事故は6件のまま変わっていない実情
- 警報が鳴らないまま通っていない状態に気づくには、何をログに残し何を自動で送る仕組みにするか
- 起きる前提で戻し方をあらかじめ決めておく考え方と、気づいた後に利用者へどう伝えるかという設計の分かれ目
監視の設計は、しきい値をいくつに置くかという細かな調整の話に見えます。総務省の電気通信事故検証会議がまとめた令和7年度の報告を読むと、もっと手前に論点があることが分かります。件数そのものは減っておらず、しかもその多くは派手に壊れる事故ではなく、装置が動いたまま気づかれない形で起きています。この記事では、報告書に挙がる教訓に沿って、気づき方をどう設計するかを整理します。
1. 件数は減っていない
詳細な報告は7,941件に増えています
総務省の電気通信事故検証会議がまとめた令和7年度の報告では、詳細な様式による報告等が143社・7,941件です。前年度は130社・6,713件でしたので、件数も報告する事業者数も増えています1。
この数字だけを見ると、事故そのものが急に増えているように感じます。しかし報告等の対象は幅広い区分を含んでおり、増加は監視や検知の目が細かく届くようになった側面も含んでいます。
重要なのは、件数の増減を単独の指標として眺めるだけでは、どこで気づき方を見直せばよいかが見えてこない点です。増加の中身を分けて見る必要があります。
この報告等の対象には、通信の品質に大きく影響するものだけでなく、比較的軽微な事故も幅広く含まれます。監視の網を広げるほど、これまで表に出てこなかった小さな異常も報告として拾われるようになります。件数の増加は、事故そのものの増加というより、検知の解像度が上がっている表れとして読み取ることもできます。
件数を1つの数字として受け取ると、良いか悪いかの二択で捉えてしまいます。詳細な報告等の増加と、重い区分の事故の水準という2つの物差しを同時に見ることで、どこに気づき方の課題が残っているかが具体的に見えてきます。
監視の設計に関わる立場からすると、件数の増加を悪い知らせとしてだけ受け取る必要はありません。むしろ、これまで気づけなかった層に気づける仕組みが増えている過程として捉え直すことができます。
重い区分の事故はほぼ同じ水準です
一方で、重い区分にあたる事故は6社・6件で、前年度の9社・6件とほぼ同じ水準です2。事業者数は減っていますが、件数自体は変わっていません。
大きな事故が急に増えたわけではなく、日常的な規模の事故が積み重なっているということです。派手な失敗よりも、日々の小さな気づき損ないのほうが、監視設計の主戦場になります。
件数の推移を図1にまとめました。増えているのは詳細な報告の件数で、重い事故の水準はほとんど動いていません。ここから、監視設計を見直す優先順位が見えてきます。
監視・運用設計に関わる案件では「件数が多い」ことよりも「どの層で気づいているか」を尋ねられる場面が増えます。全体の件数と重い区分の件数を分けて説明できる経験は、設計の考え方を伝えるときの材料になります。
出典:総務省「令和7年度電気通信事故に関する検証報告」(2026年7月)をもとに作成
2. 鳴らない故障がある
警報が鳴らない故障という分類があります
報告書が挙げる教訓の一つに、警報を出力しない故障、いわゆるサイレント故障への備えがあります3。装置自体は動作しているのに、通信の一部が実際には届いていない状態です。
止まっていれば警報が鳴ります。けれどサイレント故障は装置が生きたまま起きるため、通常の稼働監視だけでは検知できません。ここに監視設計の一番の落とし穴があります。
サイレント故障という言葉は聞き慣れなくても、現象自体には見覚えがあるかもしれません。ダッシュボード上は正常な表示が並んでいるのに、利用者からは繋がらないという申告が届く。そのずれこそが、稼働だけを見る監視の限界です。
片方向の未達をログとアラームで捉えます
報告書は、片方向にパケットが一定時間未達であったことを示すログの常時確認や、アラームの自動送信の仕組みを整えることが有効です3。
常時確認とは、異常時だけ見るのではなく、平常時から片方向の疎通ログを流し続けて見ておくということです。異常の芽は、稼働状況が正常に見える時間帯にこそ隠れています。
アラームの自動送信は、人がログを見に行く手間を減らす仕組みです。気づく主体を人からログ監視の仕組みに移すことで、見落としの余地を減らせます。
この2つの仕組みは、どちらも装置を止めずに整備できます。新しい機器を足すのではなく、すでに流れているログの見方と、通知の送り先を整える話です。設計段階で決めておけば、運用に入ってからの手間は大きくありません。
片方向の未達をどこで測るかも設計次第です。装置の内側だけで見るのか、利用者に近い地点まで含めて見るのかによって、気づける範囲は変わります。見る位置を決めることも監視設計の一部です。
こうした常時確認とアラームの設計は、装置そのものの知識だけでなく、運用の現場でどう受け止められるかまで含めて考える力が問われます。監視・運用の案件で経験として語りやすいのは、この組み合わせ方の部分です。
表1に、完全に止まる故障とサイレント故障の違いをまとめました。同じ「故障」でも、気づき方の設計は別に立てる必要があります。
| 分類 | 装置の状態 | 警報 | 気づき方 |
|---|---|---|---|
| 完全に止まる故障 | 停止します | 鳴ります | 通常の稼働監視で検知できます |
| サイレント故障 | 動作を続けます | 鳴りません | 片方向のログを常時確認し、未達をアラームで自動送信する仕組みが有効です3 |
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3. 「落ちたら鳴る」では気づけません
稼働監視だけでは片方向の途切れを拾えません
「落ちたら鳴る」監視は、装置の生死を見る仕組みとしては有効です。ただしサイレント故障は装置が生きたまま起きるため、この監視だけでは気づけません。
監視の対象を装置の稼働状況だけに絞ると、片方向の疎通が止まっていても正常だと表示され続けます。見た目の正常さが、気づきを遅らせる原因になります。
稼働率の数値だけを追いかけていると、片方向が止まっている時間も「稼働中」として記録されます。指標そのものは正しく計測されているのに、その指標が答えている問いが違うということです。
常時確認と自動送信を両方そろえます
報告書が挙げているのは、ログの常時確認とアラームの自動送信という2つの仕組みを組み合わせることです3。片方だけでは検知の網に穴が残ります。
ログの常時確認だけでは、人が見落とした瞬間に気づきが遅れます。アラームの自動送信だけでは、想定していなかった種類の異常をアラームの設定から漏らす可能性が残ります。
アラームの送信先も設計の対象です。誰に届くか、しきい値をどう置くかまで含めて考えないと、仕組みを整えても気づく人の手元に届かないという事態が起きます。
検知の仕組みは一度作って終わりではありません。異常の起き方は時期によって変わるため、常時確認の対象やアラームの条件も、必要に応じて見直す前提で運用することになります。
稼働だけを見る監視を否定する話ではありません。装置の生死を見る仕組みと、片方向まで見る仕組みは、どちらも必要です。片方だけで十分だと考えてしまうことが、気づけない状態を生みます。
図2は、装置の稼働だけを見る監視と、片方向の疎通を常時確認してアラームにつなぐ監視の違いを示したものです。同じ「監視」でも、見ている対象が違います。
検知の設計を任される案件では、この2つの仕組みをどう組み合わせているかが問われます。稼働率だけでなく疎通の状態まで踏み込んで確認できる経験は、案件を選ぶときの材料になります。
図の作成:Remogu編集部。総務省「令和7年度電気通信事故に関する検証報告」の教訓をもとに整理したもので、統計データではありません
4. 備えても起きる前提で戻し方を決める
冗長化していても起きる前提に立ちます
報告書は、冗長化構成や停電対策をとっていても障害が発生する場合を想定し、復旧の手順書を作成しておくことが重要です5。
備えを厚くするほど「起きないはず」という前提に寄りがちです。しかし報告書が置いているのは、備えていても起きるという前提です。起きた後の動き方を先に決めておく発想に切り替わります。
起きる前提に立つというのは、悲観的になることではありません。起きたときにどう動くかが決まっていれば、起きた瞬間の混乱を減らせます。備えの厚さと、起きた後の落ち着きは別の指標として考えます。
手順書とフェイルオーバーを先に定めます
重要な装置の故障に備え、復旧手順書を作成し、フェイルオーバーの具体的な手法・手順を定めておくことが重要です4。
手順を事故の最中に考えると、判断に時間がかかります。あらかじめ手順書に落としておけば、気づいた直後にやることが決まっている状態を作れます。
さらに、手動で行う手順のうち自動化できる部分は自動化することが望ましいです6。人が実行する手順を減らすほど、戻すまでの時間のばらつきが小さくなります。
手順書は、書いて終わりにすると実際の事故では使えないことがあります。手順の中に、誰が何を確認して次に進むかという判断の分かれ目まで書いておくと、初めて手を動かす人でも迷いにくくなります。
フェイルオーバーの手順は、平常時に一度動かして確かめておくかどうかで、いざというときの所要時間が変わります。手順書に書いた通りに動くかを、事故の外で確認しておく発想も含まれます。
戻し方を先に決めておく設計は、検知の仕組みとセットで評価されます。気づく仕組みだけを整えても、戻す手順が曖昧なままでは、気づいた後の対応に時間がかかってしまいます。
自動化できる部分と、人の判断が必要な部分を線引きしておくことも欠かせません。すべてを自動化の対象にするのではなく、判断が必要な箇所を明確にしておくことで、手順の信頼性が高まります。
表2に、手順書・フェイルオーバー・自動化という3つの視点をまとめました。戻し方を先に決めておく設計は、検知の仕組みとあわせて評価される力です。
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 復旧手順書 | 重要な装置の故障に備え、フェイルオーバーの具体的な手法・手順を定めておきます4 |
| 起きる前提 | 冗長化構成や停電対策をとっていても障害が発生する場合を想定して手順書を作成します5 |
| 復旧の自動化 | 手動で行う手順のうち自動化できる部分は自動化することが望ましいです6 |
5. 気づくことと伝えることは別
自分の外側のサービスも事前に把握します
外部サービスを利用する場合には、障害発生時の影響や対応などのサービス内容について事前に把握しておくことが重要です7。自分たちが見ている範囲だけを追っていても、気づける範囲は閉じてしまいます。
検知の仕組みを設計するときは、自分たちの装置だけでなく、依存している外部サービスの障害時の振る舞いまで含めて考える必要があります。
依存先のサービスがどこまで冗長化されているか、障害時にどのような通知が来るかは、契約や公開情報から事前に確認できます。起きてから調べていては、対応の初動が遅れます。
外部サービスの把握は、契約時の一度きりの確認では終わりません。サービス内容が変わることもあるため、定期的に見直す対象として扱う考え方が必要です。
利用者への周知は検知と別に設計します
事故発生時における利用者への情報提供は、速やかにかつ正確に利用者が状況を理解できるように実施することが重要です8。
気づく仕組みと、伝える仕組みは別のものです。検知が早くても、伝える手順が整っていなければ、利用者が状況を理解するまでの時間は縮まりません。
利用者への周知は、検知した情報をそのまま流せばよいわけではありません。状況をどう理解してもらうかという視点で言葉を選び直す作業が、検知とは別に必要になります。
速やかさと正確さは、時に両立しにくい場面もあります。分かっていることと、まだ確認できていないことを分けて伝える形にしておくと、速やかさを優先しても正確さを損ないにくくなります。
周知の文面や発信手段をあらかじめ用意しておくと、事故発生時に一から言葉を考える必要がなくなります。検知の仕組みと同じように、周知の仕組みも事前に整えておく対象です。
図3は、事故が起きてから気づくまでの流れと、気づいてから利用者に伝えるまでの流れを分けて示したものです。どちらか一方だけを整えても、利用者から見た体験は変わりません。
検知の仕組みと周知の仕組みを両方設計できる経験は、監視・運用に関わる案件で評価される視点の一つです。
図の作成:Remogu編集部。総務省「令和7年度電気通信事故に関する検証報告」の教訓をもとに整理したもので、統計データではありません
運用設計の経験を活かせる案件を条件から見る →
6. まとめ(気づき方は作るときに決まる)
件数は減っていません。しかもその多くは、装置が動いたまま気づかれにくい形の事故です。警報が鳴らないまま通っていない状態に気づく仕組みを、監視の設計に組み込んでおく必要があります。
戻し方は、起きた後ではなく起きる前に決めておきます。復旧手順書とフェイルオーバー、自動化できる部分の自動化がそろって、戻すまでの時間のばらつきを減らせます。
気づくことと伝えることは、別の設計です。外部サービスの把握、検知、利用者への周知は、それぞれ役割が違う仕組みとして考えます。
これらは運用の段階だけの話ではありません。要件定義・設計プロセスでは、ハードウェアとソフトウェアの両面からレビューできるよう担当部署の参画要否をマニュアルで明確化し、実施されているかを品質管理部門が確認できるプロセスを整えることが望ましいです9。気づき方は、作るときにすでに決まっています。
設計段階からレビューできる体制を整えることは、運用に入ってからの気づき方の質を左右します。あとから監視の仕組みを足すよりも、作るときに気づき方を組み込んでおくほうが、抜けが少なくなります。
件数の実情、サイレント故障への備え、戻し方、外部サービスの把握、利用者への周知。この5つは、どれか1つを整えれば済むものではなく、あわせて設計して初めて機能します。
表3に、ここまでの5つの視点を整理しました。監視・運用に関わる案件では、このどこに自分の強みがあるかを照らし合わせておくと、条件を協議するときの材料になります。
| 視点 | この記事での位置 |
|---|---|
| 件数の実情 | 1章:詳細な報告は増えても、重い区分の事故はほぼ変わりません |
| サイレント故障への備え | 2〜3章:ログの常時確認とアラームの自動送信を組み合わせます |
| 戻し方を先に決める | 4章:復旧手順書とフェイルオーバー、自動化できる部分の自動化です |
| 外部サービスの把握 | 5章:自分たちの外側にあるサービスの障害時の影響も把握します |
| 利用者への周知 | 5章:検知とは別に、速やかにかつ正確に伝える仕組みを用意します |
監視や検知の設計に関わってきた経験を、リモートの参画先でどう評価してもらえるか気になる場面もあります。Remogu(株式会社LASSIC運営)はリモートワーク案件に特化したエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です10。まずは自分の経験に近い案件がどのような条件で並んでいるかを見比べるところから、参画までの距離を確かめられます。
7. よくある質問
監視の設計を見直すときは、何から手をつければよいですか
まず、装置の稼働だけを見ているのか、片方向の疎通まで見ているのかを確かめます。次に、戻し方の手順書があるかどうかを確認します。図4は、気づく・戻す・伝えるという3つの仕組みを分けて考える流れを示したものです。要件定義・設計の段階からレビューできる体制を整えておくと、運用が始まってからの手戻りを減らせます9。
図の作成:Remogu編集部。総務省「令和7年度電気通信事故に関する検証報告」の教訓をもとに整理したもので、統計データではありません
サイレント故障は具体的にどんな場面で起きますか
報告書では、警報を出力しない故障により片方向の疎通が止まった場合を挙げています3。装置は動作を続けているため、稼働状況を見るだけの監視では異常として現れません。片方向のログを常時確認しておくことが備えになります。片方向という言葉が示す通り、通信の一部だけが止まる場面は、装置全体の停止よりも見つけにくい形で起きます。
検知の仕組みを整えるとき、優先順位はどう考えればよいですか
まずサイレント故障のように装置が生きたまま起きる異常から手をつけると、効果が出やすくなります。そのうえで、復旧手順書と自動化できる部分の自動化、利用者への周知の仕組みを順に整えていきます3。
こうした検知・監視の設計に関わる案件は、リモートで参画できますか
Remoguはリモートワーク案件に特化したエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です10。監視・運用設計に関わる案件がどのような条件で並んでいるか、まず自分の経験に近いものから見比べてみることができます。気づき方や戻し方の設計に関わってきた経験は、参画先でも条件を協議するときの材料として活かせます。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 総務省「令和7年度電気通信事故に関する検証報告」概要(2026年7月・電気通信事故検証会議)(2026年7月)
*2 総務省「令和7年度電気通信事故に関する検証報告」概要(2026年7月・電気通信事故検証会議)(2026年7月)
*3 総務省「令和7年度電気通信事故に関する検証報告」概要(2026年7月・電気通信事故検証会議)(2026年7月)
*4 総務省「令和7年度電気通信事故に関する検証報告」概要(2026年7月・電気通信事故検証会議)(2026年7月)
*5 総務省「令和7年度電気通信事故に関する検証報告」概要(2026年7月・電気通信事故検証会議)(2026年7月)
*6 総務省「令和7年度電気通信事故に関する検証報告」概要(2026年7月・電気通信事故検証会議)(2026年7月)
*7 総務省「令和7年度電気通信事故に関する検証報告」概要(2026年7月・電気通信事故検証会議)(2026年7月)
*8 総務省「令和7年度電気通信事故に関する検証報告」概要(2026年7月・電気通信事故検証会議)(2026年7月)
*9 総務省「令和7年度電気通信事故に関する検証報告」概要(2026年7月・電気通信事故検証会議)(2026年7月)
*10 Remoguサイト公開情報(フルリモート可能案件の割合)