金融システム障害の約7割は確認と手順から起きる

📘 この記事でわかること
- 2025年度に金融機関から報告された障害が約1,600件だったことと、その約7割をソフトウェア障害と管理面・人的要因が占めていること
- 冗長構成があっても委託元の合意のない作業で誤設定が全台に配信されると効果を失うことと、備えの試験そのものが影響を出す場合があること
- 影響範囲を確認し作業の合意を取る手順を参画時に持ち込めることと、それが自分に合うリモート案件を探す一歩になること
金融・決済まわりの案件では、コードの精度こそが評価の中心だと捉えられがちです。ですが金融庁が2026年7月に公表した分析レポートを読むと、止まっている場所は違う位置にあります。2025年度に報告された障害の傾向が示すのは、技術の高さよりも確認と手順の設計だという事実です1。この記事では、その中身と、参画初期に信頼を得られる場所を整理します。
1. 止まっている場所は技術の頂点ではない
金融・決済まわりの案件と聞くと、真っ先に思い浮かぶのはコードの精密さかもしれません。ミスが許されない領域だから、技術力の高さがすべてを決めると身構える方もいます。ですが金融庁が2026年7月に公表した分析レポートを読むと、実際に止まっている場所は少し違います。
難しさを感じる場面ほど、確認の手が抜けやすい場面でもあります。レポートが示しているのは、その抜けをどう埋めるかという実務の話です。
全体の約7割はソフトウェア障害と管理面・人的要因
2025年度の障害傾向を事象別に見ると、「ソフトウェア障害」と「管理面・人的要因」による障害が全体の約7割を占めています1。同じ期間に金融機関から報告された件数は約1,600件です2。
この2つでおおよそが説明できるということは、めずらしい攻撃や特殊な事象より、日々の改修や運用の中に止まる理由が潜んでいることを示しています。技術の頂点を極めることより、日常の確認を積み重ねることのほうが効くという話です。
見るべきは「難しさ」ではなく「確認の設計」
コードを書く力そのものが問われていないわけではありません。ただし障害の起点になりやすいのは、書いた後に何を確かめたかという部分です。仕様の複雑化や関係者間の認識のずれは、実装力よりも合意形成の質に関わります3。
難易度の高さよりも、確認の設計。参画初期に評価されるのは、この視点を持ち込めるかどうかです。
参画初期に示せる、確認の設計の具体例
具体的には、改修によって影響が及ぶ画面や外部との連携先を洗い出すこと、改修前に前提となる仕様を関係者と文書ですり合わせておくこと、リリース前に確認する項目をチェックリストとしてまとめ、関係者と共有しておくことといった動きです。どれも高度な実装力そのものを必要とする作業ではありません。
むしろ求められているのは、抜けが出やすい場所を実装の前に洗い出しておく観察力と、確認した内容を関係者に共有しておく丁寧さです。この積み重ねこそが、参画して間もない時期の評価につながっていきます。
確認した内容は口頭で終わらせず、短くても文書やチャットの記録として残しておくと、後から振り返れる材料になります。
出典:金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」(2026年7月)をもとに作成
実際の案件でも、参画してすぐの数週間にこうした確認の観点を言葉にして示せると、任される範囲は少しずつ広がっていきます。技術力を証明する場面が来る前に、まず信頼を積む場面があるということです。
2. ソフトウェア障害の中身は「確認の設計」
ソフトウェア障害の一例として挙げられているのが、外国送金に関わる新しい電文方式への対応です3。この事案を分解すると、参画するエンジニアが持ち込める視点がはっきりします。
仕様の複雑化と、関係者間の認識のずれ
システム改修は、仕様が複雑になるほど関係者の理解にずれが生じやすくなります。挙げられている事案でも、仕様の複雑化と関係者間の認識のずれが、無影響確認テストが十分ではなかったこととともに原因とされています3。
誰か一人の理解が間違っていたという話ではありません。改修の前提を関係者全員が同じ形で共有できていたかという、合意形成の設計の話です。
改修の規模が大きくなるほど、仕様書だけでは前提を伝えきれない場面が増えます。関係者と直接すり合わせる時間を、工程の中にあらかじめ組み込んでおくことが有効です。
無影響確認テストという確認の設計
この事案では、リリース後に一部の送金処理や対外電文の発信が不能となり、電文処理が滞留しました3。原因の中心にあるのは、変更が及ぶ範囲を網羅的に確かめる工程です。
コードの巧拙よりも、確認の範囲をどう設計するか。外から参画するエンジニアが最初に示せる価値は、まさにここにあります。
送金処理という具体的な業務に置き換えると、確認する範囲は思ったより広くなります。改修した機能だけでなく、その前後でデータを受け渡す仕組みまで含めて、影響が及ぶ範囲として扱う発想が求められます。
要因ごとに見る、確認の設計の観点
報告されている事案の中身を要因ごとに分けると、それぞれに対応する確認の観点が見えてきます。仕様の複雑化には変更範囲の洗い出しが、関係者間の認識のずれには前提の文書化が、無影響確認テストが十分ではなかったことには影響先を洗い出してからの検証が対応します3。実装の前に、この3つを持ち込めるかどうかが分かれ目になります。
| 報告された要因 | 事案の内容 | 参画時に持ち込める視点 |
|---|---|---|
| 仕様の複雑化 | 新しい電文方式に合わせたシステム改修 | 変更が及ぶ範囲を洗い出し、影響先を一覧にする |
| 関係者間の認識のずれ | 改修の前提が関係者間で揃っていなかった | 合意した仕様を文書に残し、関係者と共有する |
| 無影響確認テストが十分ではなかったこと | 送金処理や対外電文の発信が不能となり、電文処理が滞留 | 影響が及ぶ範囲を洗い出してから検証を組む |
表にまとめた3つの観点は、どれも実装に着手する前に確認できることです。難しい技術を新たに覚える必要はなく、確認の順番を整えるだけで避けられる失敗が含まれています。
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3. 冗長化は合意のない作業では効かない
冗長構成を組んでいても、同じ誤りが両系に配られれば意味がありません。管理面・人的要因の事案が、そのことをはっきり示しています5。
合意という言葉は抽象的に聞こえますが、内容は単純です。誰が、どこまでの範囲に、何を変えるのかを、作業の前に言葉として残しておくことです。
委託元の許可を得ない作業が全台に及んだ理由
報告された事案では、委託元の許可を得ないメンテナンス作業が実施され、冗長構成機器に誤設定が配信されて、ネットワーク機器が全台通信不能となりました5。
冗長化は、片方に不具合が出てももう片方が支える仕組みです。しかし作業そのものが両方に同じ内容で配信されれば、冗長化の前提は崩れます。
冗長構成は「壊れても大丈夫」という安心感を生みますが、その安心感が、作業の影響範囲を確かめる手間を省く方向に働くこともあります。実際に報告されている事案は、まさにその抜け道から起きています5。
技術の設計より、作業の合意
ここで問われているのは冗長構成の技術的な精度ではなく、誰の許可のもとで、どの範囲に作業を及ぼすかという合意の設計です。作業の前に影響範囲を確認し、実施の可否を委託元と揃える手順が、この事案では抜けていました。
設計の強さより、合意の強さ。外から参画するエンジニアが持ち込めるのは、作業の前に合意を確かめるという習慣そのものです。
参画時に確認したい、作業合意の材料
作業を進める前に、誰の許可のもとで、どの範囲まで変更が及ぶのかを言葉にしておくことが、合意の材料になります。口頭だけで済ませず、変更の内容と対象範囲を書き残しておく進め方が有効です。
冗長構成があるからといって、両系に同時に反映する必要はありません。まず一方に反映して結果を確認し、問題がなければもう一方に進めるという順番を提案できると、参画初期でも信頼につながります。
出典:金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」(2026年7月)をもとに作成
4. 備えるための作業が影響を出すことがある
障害に備えるための訓練や試験そのものが、影響を出すこともあります6。備えの手順自体を確認の対象に含める必要があるということです。
備えの作業は、実施した記録が残るからこそ安心材料になりますが、記録が残ることと、実際の障害時に機能することは別の話です。
起動試験で通信遮断が未実施だった事案
災害対策環境の起動試験において、ATMから災害対策環境への通信遮断が未実施であったために、一部のATM取引に影響を及ぼした事案が報告されています6。
備えの手順そのものに、切り替える経路を洗い出す確認が届いていなかったということです。訓練は実施すれば良いというものではなく、経路の確認までが一つの手順です。
障害対応態勢と指示系統の不備
同じ事案では、障害対応態勢及び指示系統の不備によって、顧客対応が遅延したことも報告されています6。
誰が状況を判断し、誰が顧客に伝えるか。この役割分担が事前に定まっているかどうかが、復旧の速さを左右します。
障害対応態勢は、平時に整えていても、実際の障害時にうまく機能するとは限りません。訓練の場面でこそ、指示系統が実際にどう動くかを確かめておく価値があります。
備えの場面ごとに確認したいこと
起動試験と障害対応態勢は、どちらも「備えるための作業」という同じ場面から出ています。場面ごとに何を確認するかを整理すると、次の表のようになります6。実際に手を動かす前に、この観点を持てているかどうかが差になります。特別な準備がなくても、次の一覧を目安にするだけで確認の抜けはかなり減らせます。
| 備えの場面 | 報告されている事案 | 参画時に確認したい点 |
|---|---|---|
| 災害対策環境の起動試験 | ATMから災害対策環境への通信遮断が未実施 | 遮断する経路をあらかじめ手順に明記できているか |
| 障害発生後の対応 | 障害対応態勢及び指示系統の不備で顧客対応が遅延 | 誰が判断し、誰に伝えるかを事前に決めているか |
起動試験も指示系統の整備も、実施すること自体が目的ではありません。試験の後に、遮断する経路や連絡する相手を洗い出し直す工程まで含めて、備えの手順だと捉える視点が求められます。
2つの事案を並べて見ると、備えの手薄さは訓練の回数ではなく、確認する項目の網羅性に表れることが分かります。回数を重ねるより、確認する項目そのものを見直すほうが効果的です。
5. 外側で止まることも前提にする
自社の中だけを固めても、止まる場所は外側にもあります。障害の要因を、自社の内側だけで見ていると見落とす部分です。
報告されている事案を並べると、外部のサービス提供事業者による障害と、委託先を経由するインシデントという2つの経路が見えてきます。どちらも自社の実装力とは別の場所で起きる出来事です。
外部サービス提供事業者側の障害
外部のストレージサービス提供事業者においてハードウェア障害が発生し、それに起因して決済の一部が利用できなくなった事案が報告されています4。
自社のシステムに欠陥がなくても、依存している外部のサービスが止まれば影響は及びます。止める・止めないの判断を自社だけで完結できない場面があるということです。
依存先が増えるほど、止まる可能性のある場所も増えます。外部のサービスを使うこと自体を避けるのではなく、止まったときにどこへ連絡し、何を確認するかをあらかじめ決めておく発想に切り替えることが有効です。
委託先を経由するインシデント
外部委託先に起因するランサムウェア被害のほか、金融機関を装ったボイスフィッシングやDDoS攻撃等のサイバーインシデントも発生しています7。加えて、システム統合・更改や平時の運用・保守に起因する重大な障害も引き続き認められています7。
攻撃だけでなく、日々の運用や更改の中にも障害の芽があるということです。外側で止まることを前提にすれば、備え方も変わります。
攻撃は防ぎきれるとは限りません。だからこそ、起きた後にどう対応するかという手順の価値が、ここでも変わらず問われます。
出典:金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」(2026年7月)をもとに作成
外側の要因と、確認したい窓口
外側で起きる要因は種類が異なれば確認先も変わります。外部サービス側の障害なのか、委託先を経由するインシデントなのかによって、最初に把握しておきたい窓口を整理すると次のとおりです。
| 要因の種類 | 報告されている具体例 | 参画時に確認したい点 |
|---|---|---|
| 外部サービス提供事業者側の障害 | ストレージサービスのハードウェア障害で決済の一部が利用できない | 自社の外側で止まった場合の連絡経路を把握しているか |
| 外部委託先を経由するインシデント | 外部委託先に起因するランサムウェア被害 | 委託先の状況を確認する窓口を把握しているか |
外側の変化にも対応できる、フルリモートの案件を条件から探す →
6. まとめ(防ぐ設計から、戻す設計へ)
ここまで見てきた事案に共通するのは、技術力の限界ではなく、確認・合意・戻す手順の設計です。レポートの結論も、未然防止だけを求めていません8。
障害又はインシデント発生時に重要業務を継続し、顧客影響を軽減し、早期に復旧させるための態勢整備こそが重要な経営課題だと示されています8。防ぐ設計だけでなく、戻す設計を重ねる発想です。
金融機関の業務運営や顧客サービスがIT・デジタル基盤に一層依存する状況を踏まえて、このレポートはまとめられています9。依存が深まるほど、確認と手順の価値は増します。
防ぐ設計と戻す設計は、どちらか一方を選ぶものではありません。すでに動いているシステムに新しく加わる場面ほど、両方の視点を持ち込めるかどうかが問われます。
参画するシステムが大きいほど、防ぐ設計だけでは追いつかない場面が出てきます。だからこそ、戻す設計を理解していることが、外から加わるエンジニアの価値になります。
技術の高さを競う場面は、参画してしばらく経ってから訪れます。最初に信頼を積むのは、確認と手順という地味に見える部分です。
外から参画するエンジニアが最初に示せるのは、難易度の高いコードではありません。影響範囲を確認する手順を持ち込み、作業の合意を取り、止まったときに戻せる形を用意すること。Remoguの案件は90%以上がフルリモート可能です10。場所に縛られず、この視点を活かせる案件を探すところから、参画への一歩を踏み出せます。
7. よくある質問
ここまでの内容を、案件に参画する前によくある疑問の形で整理します。技術力そのものより、確認と手順の設計をどう示すかに焦点を当てています。
出典:金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」(2026年7月)をもとに作成
金融のシステム障害は技術力が高くないと防げませんか
技術力が無関係というわけではありませんが、報告されている障害の多くは仕様の複雑化や関係者間の認識のずれ、無影響確認テストの範囲といった、確認の設計に関わる部分から起きています3。参画初期に評価されやすいのは、この確認の手順を提案し、実行できることです。実装力に加えて、確認の抜けを見つける観察力を早い段階で示せると、評価につながりやすくなります。
冗長構成があれば、外側の障害には備えられていますか
冗長構成そのものは有効ですが、誤った設定が両系に同じ形で配信されれば効果は失われます5。加えて、外部のサービス提供事業者や委託先に起因する事案も報告されているため4、自社の外側で止まる場面も前提に置きたいところです。冗長構成の設計と同じくらい、作業の合意や外側の連絡先を確認しておく設計が重要になります。
参画してすぐに、何を確認すれば信頼を得られますか
難しい実装より先に、影響範囲を確認する手順があるか、作業を進める前に関係者と合意しているか、止まったときに戻せる形を用意しているかを確かめる姿勢です。技術の高さを示す場面は、こうした姿勢を積み重ねた後にやってきます。まずはRemoguで、金融・決済まわりの案件がどのような条件で並んでいるかを見比べるところから始められます。
Remoguに登録すると、何が変わりますか
登録すると、金融・決済まわりを含むフルリモートの案件を、条件を絞って比較できるようになります。参画前に条件をすり合わせられるため、確認と手順を大事にする働き方を、自分に合う案件から選びやすくなります。気になる案件があれば、まず条件を確かめるところから始められます。
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出典・参考情報
*1 金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」2026年7月版(2025年度の障害報告の分析)(2026年7月)
*2 金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」2026年7月版(2025年度の障害報告の分析)(2026年7月)
*3 金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」2026年7月版(2025年度の障害報告の分析)(2026年7月)
*4 金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」2026年7月版(2025年度の障害報告の分析)(2026年7月)
*5 金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」2026年7月版(2025年度の障害報告の分析)(2026年7月)
*6 金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」2026年7月版(2025年度の障害報告の分析)(2026年7月)
*7 金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」2026年7月版(2025年度の障害報告の分析)(2026年7月)
*8 金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」2026年7月版(2025年度の障害報告の分析)(2026年7月)
*9 金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」2026年7月版(2025年度の障害報告の分析)(2026年7月)
*10 Remoguサイト公開情報(フルリモート可能案件の割合)