自動運転の案件|実証から車両台数の拡大へ移る段階

📘 この記事でわかること
- 法改正でレベル3・4が制度上可能になった経緯と、そこに置かれた2030年度の数値目標
- 目標の対象が箇所数から車両台数に変わったことと、その対象が公共交通・幹線輸送トラックに絞られていること
- 事故原因を後から追える体制づくりが目標達成の施策に含まれていることと、自分の経験がどの層で活きるかの見立て方
組込みの経験も、データ処理の経験も、運用基盤を支えてきた経験もあります。それでも自動運転と聞くと、車両そのものを開発する研究者の世界だと感じて、案件情報から目をそらしてきた技術者がいます。国土交通省の資料は、自動運転の実現には保安基準など既存制度の見直しや社会受容性の向上、普及支援が欠かせないと示しています1。つまり技術だけでなく、制度を積み上げる仕事が伴っているということです。
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1. 制度は段階で積み上がってきた
技術だけでは進まないという前提
自動運転という言葉から思い浮かぶのは、カメラやセンサーの精度を競う開発の現場かもしれません。しかし国土交通省の資料は、自動運転の実現には保安基準など既存制度の見直しに加え、社会が受け入れられる状態をつくることや、普及を後押しする仕組みが欠かせないと示しています1。技術を磨く仕事の隣に、制度を整える仕事が並んでいるということです。
言い換えると、自動運転の案件は車両の頭脳をつくる仕事だけでは完結しません。基準をどう解釈し、どんな手順で安全を確かめ、周囲にどう説明するかという工程が伴います。運用基盤やデータ処理に関わってきた経験は、こうした工程の中でこそ活きる場面が見えてきます。手順を文書に落とし込む力や、システムの状態を継続的に把握してきた力は、車両の開発とは別の入り口として案件につながっていきます。
2020年の法改正でレベル3が動いた
制度は一足飛びに整ったわけではありません。2020年の法改正で「自動運行装置」という言葉が定義され、この時点でレベル3の自動運転が制度上可能になりました2。研究段階にあった技術に、法律という土台が用意された最初の区切りです。この区切りを境に、走行の条件や責任の整理を前提とした仕事が生まれ、技術の検証だけでなく制度に沿った運用の設計に関わる余地が広がりました。
この段階では、自動運転が一定の条件のもとで走ることを前提に、手続きが整理されました。制度が一段ずつ積み上がる様子を追うと、次にどこが動くかを見立てやすくなります。研究の華やかさよりも、段を追う視点のほうが案件を見立てる材料になります。段の高さや幅を意識して制度を追うことは、次にどの経験が求められるようになるかを先回りして考える手がかりにもなります。
2023年の法改正でレベル4まで届いた
次の段は2023年に来ました。安全基準の策定と、無人の自動運転を認める許可制度の創設が行われ、レベル4の自動運転が制度上可能になっています3。運転する人がいない状態を制度が正式に認めたという点で、レベル3とは重みが異なる区切りです。この区切りにより、走行中に人が関与しない場面をどう運用し、どう記録し、どう説明するかという課題が具体的になりました。
レベル3からレベル4までを合わせて見ると、制度は数年の間に着実に段を踏んできたことが分かります。今後の広がりを追うときは、法改正の有無や許可制度の運用状況を確かめる視点が手がかりになります。段の高さが増すごとに、運用や記録に関わる仕事の比重も増していくと見立てられます。
出典:国土交通省「自動運転を巡る動きについて」(2026年1月)をもとに作成
2. 合わせる先は国内だけではない
国内の基準だけでは閉じない
制度が国内で整っても、それだけで話が終わるわけではありません。自動運転車の実現と普及には基準の国際的な足並みをそろえることが欠かせず、国連WP.29の場で国際基準づくりの議論が進められています4。国内の法改正は、こうした国際的な調整と並行して進んでいます。制度がまだ動いている領域だからこそ、目の前の仕様だけでなく、その先にある調整の動きまで意識しておくと、案件の見え方が変わってきます。
これは案件に関わるときの視点にもつながります。国内向けの仕様だけを追っていればよい仕事と、国際的な基準の動向まで踏まえて設計や運用を組み立てる仕事とでは、求められる視野の幅が変わってきます。国内の基準よりも、国際的な整合まで見渡す視点のほうが、案件の幅を広げる材料になります。
国連WP.29での議論は、自動運転に限らず自動車の安全基準全般を扱う枠組みです。日本もこの議論に加わっており、国内の制度は国際的な合意と無関係に決まっているわけではありません4。制度の動きを追うときは、国内の法改正だけでなく、この国際的な足並みも視野に入れておくと見通しやすくなります。
打診の場で確かめておきたい視点
制度がまだ動いている領域では、参画の打診を受けた時点で確かめておきたい視点があります。どの段階の制度を前提にした仕事なのか、国内向けか国際基準まで踏まえるものか、実証段階か運用段階かによって、必要になる経験の中身は変わります。次の表は、打診の場で確かめておきたい問いを整理したものです。
| 確かめたい問い | 確かめる理由 | 経験が活きやすい場面 |
|---|---|---|
| どの制度段階を前提にしているか | 法改正の有無で条件外の考え方が変わる | 手順や条件を文書に整理してきた経験 |
| 国内向けか、国際基準まで踏まえるか | 国際基準調和の議論が進められている4 | 複数の基準を横断して読み解いてきた経験 |
| 実証段階か、運用段階か | 目標の置かれ方によって仕事の性格が変わる | 運用の継続性を支えてきた経験 |
| 誰が安全を確保する前提か | レベルによって確保する主体が異なる | 安全に関わる要件を整理してきた経験 |
表に挙げた問いは、打診を受けた場面でクライアントとの協議の中で確かめられる内容です。曖昧なまま引き受けるのではなく、前提を先に確認する姿勢が、後の仕事のしやすさにつながります。制度段階や対象範囲を先に言葉にしておくことで、条件のすり合わせにかかる時間も短くなります。
自分の経験がどの問いに応えられるかを事前に言葉にしておくと、打診の場でのやり取りがスムーズになります。まずは案件の傾向を眺めて、どんな問いが実際に出てくるかを確かめてみるのも一つの方法です。言葉にする作業は一人で完結させず、実際の案件情報と照らし合わせながら進めると精度が上がります。
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3. 目標が「箇所」から「台数」になった
2027年度の目標は「箇所」で置かれた
自動運転の広がり方を見るとき、目印になるのが政府が掲げる目標です。2027年度までに無人自動運転移動サービスを100か所以上で実現することが掲げられています5。これは特定の地域で実証を重ねるだけでなく、面として広げる目標です。目印となる目標を持つことは、案件がどの段階にあるかを外から見立てる際の基準にもなります。
100か所という数字は、限られた地域だけの話ではなく、全国的な広がりを前提にした目標です。実証を一箇所で終わらせるのではなく、複数の地域で同時に動かしていく段階に入っていることを示しています。複数の地域で同時に動かす段階では、地域ごとの条件を横並びで比較し、共通の運用の型に落とし込む仕事も求められます。
2030年度の目標は「台数」に変わった
さらに先を見ると、目標の単位そのものが変わっています。第3次交通政策基本計画では、2030年度における自動運転サービス車両数を10,000台とする数値目標が新たに設定されました6。単位が変わったこと自体が、実証の積み重ねから運用の規模拡大へと段階が進んだことを映しています。
「箇所」から「台数」への変化は小さな言い換えではありません。箇所数は地域の広がりを測る指標ですが、台数は実際に稼働する車両の規模を測る指標です。地域を増やすことよりも、稼働する台数を積み上げることのほうが、目標の中心に置かれたと読み取れます。
目標の変化が意味すること
目標が台数で置かれるということは、車両を動かし続ける仕組みを支える仕事が増えるということでもあります。実証を一度動かして終える仕事から、稼働を継続させる仕事へと重心が移っていきます。継続させる仕事では、一度きりの検証よりも、日々の運用を積み重ねる姿勢が求められる場面が増えていきます。
運用を継続させる仕事には、データを継続的に扱ってきた経験や、障害が起きたときに対応してきた経験が活きる場面が多くあります。目標の置かれ方を追うことは、案件の中身を見立てる手がかりになります。継続を前提にした仕事では、一度の成果よりも、日々の変化に気づき対応し続ける姿勢のほうが評価されやすくなります。
出典:国土交通省「自動運転を巡る動きについて」(2026年1月)をもとに作成
4. 対象は公共交通と幹線輸送
対象は公共交通と幹線輸送トラック
台数の目標には対象があります。対象となるのは全国のバス及びタクシー等の公共交通と、幹線輸送のトラック車両です7。個人が所有する車両は、この数値目標の対象には含まれていません。対象が絞られていることは、案件を探すときにどの領域に目を向ければよいかを見立てる助けにもなります。
公共交通と幹線輸送という対象を踏まえると、案件が並ぶ場所も見えてきます。特定の地域を走る交通事業者や、決まった経路を走る輸送の仕組みに関わる運用や管理の仕事が、目標達成に向けて積み上がっていく領域です。事業者ごとに経路や条件は異なるため、同じ運用の型をそのまま当てはめられない場面も多く、調整に関わる経験が問われます。
台数が増えると必要になる仕事
対象が公共交通と幹線輸送に絞られていることは、必要になる仕事の中身にもつながります。決まった経路を走らせ続ける仕組みには、運用を管理する仕事、車両の状態を継続的に把握する仕事、記録を残して振り返る仕事が伴います。次の表は、台数が増えていく過程で必要になる仕事を整理したものです。
| 局面 | 必要になる仕事 | 活きる経験 |
|---|---|---|
| 運用を始める局面 | 経路や条件を運用ルールに落とし込む仕事 | 手順書・運用設計の経験 |
| 運用を続ける局面 | 車両やシステムの状態を継続的に把握する仕事 | 監視・運用基盤の経験 |
| 記録を残す局面 | 走行や判断の記録を蓄積し、振り返れる形にする仕事 | データ処理・記録設計の経験 |
| 説明する局面 | 事業者や利用者に運用の状況を伝える仕事 | 資料化・可視化の経験 |
表に挙げた仕事は、車両そのものを開発する仕事とは性格が異なります。運用や記録に関わってきた経験のほうが、こうした仕事では強みになりやすい領域です。
個人の移動ではなく、事業の仕組みという視点
対象が公共交通と幹線輸送である以上、話の中心は個人の移動ではなく、事業として運行を続ける仕組みです。案件を見立てるときも、個人の利用シーンではなく、事業者側の運用という切り口で捉えると、必要な経験が具体的に見えてきます。
この切り口を持っておくと、案件情報を読むときに「誰が、何を運用し続けるための仕事か」という軸で読めるようになります。事業の継続を前提に読み替えるだけで、同じ案件情報でも見える仕事の輪郭がはっきりしてきます。
図の作成:Remogu編集部。運用に関わる仕事の流れを整理したもので、統計データではありません
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5. 条件の定義と、後から追える形
事故原因を後から追える体制づくり
台数を積み上げる目標には、安全に関わる施策も並んでいます。運輸安全委員会における事故原因究明体制の構築や、レベル4の技術基準となる安全ガイドラインの具体化などが、目標達成に向けた施策として挙げられています8。台数を増やす計画と、記録を残す仕組みづくりが同じ目標の中に並んでいる点は、押さえておきたいところです。
原因を究明する体制をつくるという施策は、走らせて終わりにしない仕組みを求めています。何かが起きたときに、後から経緯を追える形にしておくことが、目標達成の一部として位置づけられています。ログを設計し、判断の経緯をたどれる形で残してきた経験は、この仕組みづくりに直結します。
レベル3とレベル4で変わる「条件外」の考え方
この施策の背景には、レベルごとに安全を確保する主体が異なるという整理があります。レベル4は条件外でも車両が安全を確保するもの、レベル3は条件外ではドライバーが安全を確保するものとして整理されています9。どちらの前提かによって、確認する手順や残す記録の粒度も変わってきます。
「条件」がどこまでかを定義することと、「条件外」で誰が安全を確保するかを定義すること。この二つを明確にする作業こそが、制度の中心にある仕事だと読み取れます。運転する技術よりも、条件を定義し記録に残す仕事のほうが、これから積み上がっていく領域です。
経験を4つの層で書き出す
ここまで見てきた制度・目標・対象・安全の仕組みを踏まえると、自分の経験がどの層で活きるかを整理できます。次の表は、自動運転に関わる仕事を4つの層に分けて書き出したものです。車両そのものの開発経験がなくても、運用や記録、説明といった層には別の経験が活きる余地があります。
| 層 | 仕事の中心 | 活きやすい経験 |
|---|---|---|
| 車両・技術の層 | 車両の頭脳となる技術そのものの開発 | 車両開発に携わってきた経験 |
| 運用の層 | 経路や条件に沿って運行を続ける仕組みづくり | 運用基盤・監視の経験 |
| 記録の層 | 走行や判断を後から追える形に残す仕組みづくり | データ処理・記録設計の経験 |
| 説明の層 | 事業者や利用者、社会に向けて状況を伝える仕組みづくり | 資料化・可視化・コミュニケーションの経験 |
車両・技術の層に経験がなくても、運用・記録・説明という層には、これまで積み上げてきた経験がそのまま活きる場面があります。層で捉え直すことが、自分の経験の置きどころを見立てる手がかりになります。どの層に厚みがあるかを言葉にしておくと、打診を受けた場面での自己紹介にもそのまま使えます。
出典:国土交通省「自動運転を巡る動きについて」(2026年1月)をもとに作成
6. まとめ
自動運転は研究開発の世界に見えて、実際には制度と数値目標の話に移っています。2020年の法改正でレベル3が制度上可能になり2、2023年の法改正でレベル4まで届きました3。目標は2027年度に箇所数5、2030年度には台数へと移り6、対象は公共交通と幹線輸送のトラック車両に絞られています7。
この流れの中で必要になるのは、車両そのものを開発する仕事だけではありません。事故原因を後から追える体制づくりが施策に挙げられ8、レベルごとに安全を確保する主体を定義する作業も欠かせません9。
運用や記録、説明に関わってきた経験は、この領域でこそ活きます。Remoguは案件の90%以上がフルリモートで進められる、リモート案件に特化したエンジニアマッチングです10。自分の経験がどの層で活きるかを確かめる一歩として、まずは登録して、どんな条件の案件が並んでいるかを見てみるのも一つの方法です。
制度はすでに段を踏み、目標は台数という形で置かれています。次に動くのは、その台数を支える仕事です。自分の経験がどこで活きるか、まずは案件の傾向を眺めるところから始めてみませんか。
7. よくある質問
車両開発に携わったことがなくても、この領域に関わることはできるのでしょうか
車両そのものを開発する仕事は、自動運転に関わる仕事のひとつの層です。運用や記録、説明といった層には、車両開発とは異なる経験が活きる場面があります。どの層に自分の経験が合うかを見立てることが、最初の一歩になります。層ごとに求められる中身は異なるため、まずは自分がどの層の仕事に近い経験を積んできたかを棚卸ししてみることをおすすめします。
実証で終わる案件を、どう見分ければよいのでしょうか
見分ける目安になるのは、目標がどう置かれているかです。地域の広がりを示す箇所数で語られる段階もあれば5、稼働する台数という数値目標で語られる段階もあります6。台数という目標が置かれている領域のほうが、実証で終わらず運用を続ける前提に近いと見立てられます。
どの分野から広がっていくのでしょうか
目標の対象として挙げられているのは、全国のバス及びタクシー等の公共交通と、幹線輸送のトラック車両です7。まずはこの二つの領域を軸に、案件の動きを追ってみることをおすすめします。対象の範囲は資料が示す限りであり、それ以外の分野については、現時点で断定できる材料がありません。
自動運転の経験は、どう書けば伝わるのでしょうか
「分析しました」「開発に関わりました」で止めるのではなく、どの層に関わったのかを書き添えると伝わりやすくなります。運用を支えた経験なら「稼働を止めずに運用を続けた」、記録に関わった経験なら「後から経緯を追える形に記録を設計した」というように、層と結びつけて言葉にすることが、次の参画につながる書き方です。
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出典・参考情報
*1 国土交通省「自動運転を巡る動きについて」自動運転の実現に向けた国土交通省の取組み(2026年1月)
*2 国土交通省「自動運転を巡る動きについて」自動運転の実現に向けた国土交通省の取組み(2026年1月)
*3 国土交通省「自動運転を巡る動きについて」自動運転の実現に向けた国土交通省の取組み(2026年1月)
*4 国土交通省「自動運転を巡る動きについて」国連における自動運転の実現に向けた取組み(2026年1月)
*5 国土交通省「自動運転を巡る動きについて」第3次交通政策基本計画 自動運転KPIについて(2026年1月)
*6 国土交通省「自動運転を巡る動きについて」第3次交通政策基本計画 自動運転KPIについて(令和8年1月16日閣議決定)(2026年1月)
*7 国土交通省「自動運転を巡る動きについて」第3次交通政策基本計画 自動運転KPIについて(2026年1月)
*8 国土交通省「自動運転を巡る動きについて」KPI達成に向けた施策(2026年1月)
*9 国土交通省「自動運転を巡る動きについて」参考資料 自動運転のレベル分け(2026年1月)
*10 Remoguサイト公開情報(フルリモート可能案件の割合)