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    Unityの案件はゲーム以外にも広がるのか|産業での利用と選ばれにくさの実態

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「Unityは産業でどこまで使うか」を示す図です。ゲームの開発/産業での利用を並べています。強調しているのは産業での利用です。ここは限られると添えています。

    📘 この記事でわかること

    • Unityが産業の現場でどこまで広がっているかという実態と、重視度が低いままである理由
    • 外部の機器や製品として使われるときに広がる期待と、実際に問われる契約や運用の前提
    • 評価の軸がどこに置かれるかと、Unityの経験を次の案件でどう位置づけるかという考え方

    Unityで培った操作感覚は、ゲーム機の外にも通用するという声をよく耳にします。実際に産業の現場でUnityが使われる場面は増えていますが、案件として広がっているかどうかは別の物差しで測る必要があります。IPAの調査を手がかりにすると、現場での関心の高まりと、実務での重視度との間には、まだ距離があることが見えてきます。この距離をどう読み解くかが、次にどこを狙うかを決める材料になります。

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    1. Unityの案件はどこまで広がっているのか

    Unityというと、ゲーム制作の道具という印象が今も根強くあります。けれど、3D表現やリアルタイム描画の技術は、画面の中のエンターテインメントだけにとどまりません。工場の設備や建設の現場を再現し、実際に動かす前に確かめる場面でも、同じ技術が使われ始めています。

    ただし、話題になることと、案件として積み上がることは別の物差しで測る必要があります。IPAが公表した2024年度ソフトウェア動向調査を手がかりにすると、現場での関心の高まりと、実務での重視度との間に、まだ距離があることが見えてきます1。この距離の形を知ることが、次にどこへ力を向けるかを決める材料になります。

    作る側の実態はどこにあるのか

    シミュレーション技術を導入しているベンダー企業は、約2割にとどまっています1。ここでいうシミュレーション技術には、Unityのようなリアルタイム描画の技術を使った再現や検証も含まれます。産業の現場を動かす前に、画面の中で確かめる工程が、まだ一部の企業にしか根づいていないということです。

    2割という数字は、少ないと見るか、伸びしろがあると見るかで受け止め方が変わります。すでに導入している企業から見れば、対応できる人材はまだ限られている状況ですし、これから検討する企業から見れば、比較できる相手が少ない状況とも言えます。どちらの読み方も、次に狙う場所を考えるときの手がかりになります。

    重視度という、もうひとつの壁

    導入している企業がまだ少ないという壁の先には、もうひとつの壁があります。モデリングやシミュレーションに対する重視度は、低い傾向にあるという調査結果です2。導入した企業の中でも、この技術を経営の優先事項として位置づける動きは、まだ広がっていません。

    つまり、Unityの経験を産業の現場に持ち込めば案件がすぐに増える、という単純な話ではありません。技術としての使い道が広がっていることと、事業として重視されることの間には、順番があります。この順番を踏まえて次の章を読み進めると、どこに空白があるのかが見えてきます。

    この壁は、Unityに限った話ではありません。IPAの調査が示しているのは、業種を問わず、確かめる工程そのものが後回しにされやすいという構造です2。だからこそ、この構造を理解したうえで動ける人は、他のツールの経験を持つ人と比べても、位置づけがはっきりします。

    図1:ゲームの開発と産業での利用の広がり方の違い
    ゲームの開発と産業での利用の広がり方の違い ゲーム分野での 広がり 産業分野での 広がり

    図の作成:Remogu編集部。広がり方の違いを整理したもので、統計データではありません

    2. 重視されていないという事実

    重視度が低いという言葉だけでは、実際に何が起きているのかがつかみにくいかもしれません。IPAの調査では、モデリングやシミュレーションだけでなく、SBOMやグラフデータベースといった技術についても、導入は限定的だと報告されています4

    これらは一見バラバラな技術に見えますが、共通点があります。どれも、いま動いているものを直接触るのではなく、いったん外側に置いて確かめたり、整理したりするための技術だという点です。Unityによる再現や可視化も、この並びに入ります。

    何が後回しにされやすいのか

    システムを止めずに動かし続けることや、目の前の不具合に対応することは、日々の優先事項として扱われやすいものです。一方で、あらかじめ画面の中で確かめておく工程や、後から履歴をたどれるように整理しておく工程は、後回しにされやすい位置にあります2

    この並びは悪いことではなく、日々の変化に対応するための自然な選び方でもあります。ただ、選ばれにくい領域にこそ、確かめる力を持つ人が求められる余地が残っています。

    重視されにくい技術を一覧で見る

    技術要素IPA調査での位置づけUnity実務での意味
    モデリング・シミュレーション重視度は低い傾向2Unityによる再現・可視化が該当する領域
    SBOM導入は限定的4ソフトウェア部品表。産業案件の周辺で話題になることがある
    グラフデータベース導入は限定的4大規模な関係性の整理に使われる技術

    表からも分かるとおり、確認や検証にあたる技術は重視度が低い側に並びます2。SBOMやグラフデータベースも同じ並びに入り、導入は限定的だと報告されています4

    図2:関心はあるが重視はされていないという位置
    関心はあるが重視はされていないという位置 シミュレーション技術の 導入率 約2割 モデリング・シミュレーション の重視度は低い傾向

    出典:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」(2025年4月)をもとに作成

    重視されにくいというのは、価値が無いという意味ではありません。優先順位の外に置かれやすいというだけです。実際には、現場側の関心はむしろ高まっている領域があります。次の章では、その動きを見ていきます。

    3. 現場側の機器への関心は上がっている

    重視されにくい領域がある一方で、逆に関心が高まっている領域もあります。センサーなどの現場側の機器、いわゆるEdgeデバイスです。IPAの調査では、導入を検討中の企業を含めると、利用する側の企業のうち約2割にのぼると報告されています3

    この2割という数字は、シミュレーション技術の導入率とほぼ同じ水準です。ただし中身は対照的です。片方は現場からデータを集める入り口の技術、もう片方はそのデータを画面の中で再現し、確かめる出口の技術にあたります。

    集める技術と、確かめる技術のずれ

    現場側の機器への関心が高まっているということは、これから集まるデータの量そのものは増えていく可能性があるということです。ところが、そのデータを再現して確かめる工程にあたるモデリングやシミュレーションは、重視度が低い傾向のままです2

    入り口は開きつつあるのに、出口の整備がまだ追いついていない。この空白こそが、Unityの経験を持つ人にとっての足がかりになり得る場所です。データを集めた先で、それを再現し、確かめる役割を担える人は、まだ多くありません。

    図3:現場の機器から集まるデータと、再現して確かめる工程の間の空白
    現場の機器から集まるデータと、再現して確かめる工程の間の空白 現場の機器への関心 検討中を含め約2割 再現して確かめる工程 重視度はまだ低い

    出典:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」(2025年4月)をもとに作成

    空白をどう捉えるか

    空白があるということは、需要が確定しているという意味ではありません。現場側の機器への関心が実際の案件に結びつくまでには、まだ時間差があります。ただ、関心が先に立ち上がっている領域は、後から確かめる技術への関心も追いついてくる可能性がある領域でもあります。

    次にどこを狙うかを考えるときは、いま重視されている場所だけでなく、この先に重視され得る場所にも目を向けておく価値があります。外部の製品としてどう使われているかを見ると、その手がかりがさらに増えます。

    この時間差を読み違えると、早すぎる案件探しになったり、様子見のまま機会を逃したりすることになりかねません。関心の高まりを示す数字と、重視度の低さを示す数字を両方見ておくことが、動くタイミングを見極める助けになります。

    4. 外部の製品として使われる形

    Unity自体も、企業から見れば外部の製品のひとつです。IPAの調査では、外部のサービスや製品について、一部での利用を含めると6割強の企業が活用していると報告されています8。産業の現場に技術を持ち込むとき、内製よりも外部の製品を組み合わせる動きは、すでに広がっているということです。

    ここで気になるのは、この6割強という数字がそのまま案件の広がりを意味するわけではない、という点です。活用している企業が目立っても、その使い方や向き合い方には差があります。

    使ってはいるが、備えは半分

    外部のサービスの利用に関する方針を整備している企業は、全体の約半数にとどまっています9。つまり、活用している企業のうち、一定数は方針を持たないまま外部の製品を取り入れている状況にあるということです。

    方針が整っていない状態で外部の技術を取り入れると、選定や運用の判断が現場任せになりやすくなります。Unityのような製品を提案する側にとっては、ここに説明の役割が生まれます。導入の是非だけでなく、方針づくりそのものを支える動きが求められる場面が出てきます。

    活用と備えの差を一覧で見る

    項目割合示していること
    外部のサービス・製品を活用している企業(一部利用を含む)6割強8内製より組み合わせを選ぶ動きが広がっている
    外部サービスの利用方針を整備している企業約半数9活用と備えの間にまだ開きがある
    図4:外部の製品として使われるときに問われること
    外部の製品として使われるときに問われること 外部のサービス・製品を 活用している企業 6割強 利用方針を整備している 企業は約半数

    出典:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」(2025年4月)をもとに作成

    表を見ると、活用と備えの間にまだ開きがあることが分かります。この開きを埋める説明ができる人は、産業の現場でも重宝されやすくなります。

    内製よりも組み合わせを選ぶ動きが広がっているという事実は、Unityのような既製の技術を持ち込む側にとって、追い風になり得ます。ただし、その追い風は無条件に吹くわけではなく、方針づくりまで支えられるかどうかで、案件に結びつくかどうかが変わってきます。

    外部の製品として使われる形が広がるほど、選ぶ側の判断を助ける役割の重みも増していきます。次の章では、その判断のどこに不安が出やすいのかを見ていきます。

    5. 入れた後の不安はどこに出るか

    外部の製品を取り入れる決め手になるのは、導入のしやすさだけではありません。導入した後、それをどう維持していくかという不安も大きく関わってきます。IPAの調査では、外部サービスにおいてもメンテナンスや運用に対する不安を抱える企業が目立つと報告されています10

    この不安は、Unityを産業の現場で使い続けるときにも、そのままあてはまります。作って終わりではなく、動かし続け、更新し続ける前提で考える必要があるということです。

    何に対する不安なのか

    不安の中心にあるのは、外部の製品そのものの品質ではなく、それを社内でどう抱え続けるかという体制の話です。担当できる人がいなくなったときにどうするか、変更が必要になったときに誰が動くのか、といった問いに、あらかじめ答えを用意できているかが問われます。

    Unityの経験を持つ人がここで示せる価値は、作る力だけではありません。長く動かし続けるための整理や引き継ぎのしやすさまで含めて提案できることが、不安をやわらげる材料になります。

    不安を材料に変える

    不安があるということは、裏を返せば、そこに説明を尽くせる人が求められているということでもあります。維持や運用の見通しを具体的に示せるかどうかが、産業の現場でUnityの経験を評価してもらえるかどうかの分かれ目になりやすい部分です。

    この分かれ目を意識しておくと、次に見る評価の軸との結びつきも見えやすくなります。品質という言葉が、どの場面で重みを持つのかを続けて見ていきます。

    6. 評価の軸は品質に置かれる

    外部の製品を選ぶ側の企業が、最終的に何を基準にしているのかも見ておく価値があります。IPAの調査では、利用する側の企業は、システムの品質を最も優先する事項として捉えていると報告されています5

    品質という言葉は幅が広く聞こえますが、ここでの意味ははっきりしています。導入した後も安定して動き、想定どおりの結果を返し続けられるかどうかという点です。表現の派手さや目新しさよりも、この一点が優先されやすいということです。

    品質という軸で見られること

    品質という軸で見られるのは、作る力の高さだけではありません。想定した条件から外れたときにどう振る舞うか、長く使われても崩れない構造になっているかといった点まで含まれます。

    評価の場面見られる観点Unity経験の言い換え方
    導入を検討する段階想定どおりに動き続けるか5負荷が変動しても安定して動かし続けた工夫
    運用に入った段階崩れずに使われ続ける構造か長く保守されることを前提にした設計や整理
    条件が変わった段階現実の寸法や動きとのずれがないか現実の値に合わせて調整・検証してきた経験

    表に整理したように、品質という軸は、見た目の完成度だけでなく、運用に入ってからの安定性まで含めて評価されます。Unityでの制作経験を、この軸に沿って言い換えられるかどうかが、産業の現場での評価につながります。

    経験を言い換える視点

    ゲーム開発で培った経験を、そのまま産業の現場に持ち込んでも、伝わりにくいことがあります。フレームレートを保つ工夫は、負荷が変動しても安定して動かし続ける工夫として言い換えられますし、当たり判定の精緻さは、現実の寸法や動きを正確に再現する精度として言い換えられます。

    こうした言い換えができると、品質を最優先する評価の軸に、自分の経験をきちんと乗せることができます。ここまでの整理を踏まえたうえで、最後に契約の実務に目を向けます。

    経験の言い換えは、面談で使う言葉を用意するという意味だけではありません。日々の作業の中で、どこを安定性のために作り込んだか、どこを検証のために手間をかけたかを、自分の言葉で説明できるようにしておくことが土台になります。

    7. 契約の手間と、相手の前提

    評価の軸を満たせたとしても、案件が形になるまでにはもう一段階あります。契約の実務です。IPAの調査では、取引ごとに手間や工数がかかる点を課題として挙げる企業が目立つと報告されています6

    産業の現場に関わる契約は、ゲーム開発の業務委託よりも、確認する項目が増えることがあります。仕様のすり合わせや、成果物の検収の基準など、都度確認しなければならない手間が、契約する側の負担として意識されているということです。

    相手も同じ土俵に立っているとは限らない

    さらに踏み込むと、モデル契約そのものを知らないとする企業も目立つと報告されています7。契約の型を熟知しているのは、発注する側とは限りません。

    この事実は、産業の現場に関わるうえで心強い材料にもなります。契約の考え方を分かりやすく示せる人は、相手にとっても頼りになる存在になれるからです。委託元の事業者と協議しながら、条件をひとつずつ言葉にしていく姿勢が、産業の現場では特に役立ちます。

    次にどこを狙うか

    ここまで見てきたように、Unityの経験を産業の現場に広げる道筋は、単純な追い風だけでできているわけではありません。重視度の低さという壁があり、契約の手間という壁もあります。同時に、現場側の機器への関心の高まりや、外部の製品としての活用の広がりという足がかりもあります。

    重視度の低さや契約の手間は、参入のハードルであると同時に、先に動いた人が位置を確保しやすい条件でもあります。足がかりのある領域を早めに見つけておくことが、後から広がる案件に対応する力になります。

    場所に縛られず、裁量を持って自分の経験を活かしたいと考えるなら、こうした足がかりのある領域を選んで力を向ける価値があります。Remoguは案件の90%以上がフルリモート可能です。まずは自分の経験に近い案件がどのくらいあるかを確かめてみることが、次の一歩になります。

    Unityの経験だけで産業系の案件に参画できますか

    経験だけで参画が決まるわけではありませんが、評価の軸ははっきりしています。品質を最優先する視点に沿って、自分の経験を安定性や再現性の言葉に言い換えられるかどうかが、判断材料になります。

    契約の形で気をつけることはありますか

    取引ごとに手間がかかる点や、モデル契約自体になじみが薄い相手がいる点は、あらかじめ知っておくと役立ちます。分からない点はクライアントと協議しながら、条件を具体的な言葉にしていく進め方が向いています。

    まず何から始めればいいですか

    重視度が低い領域と、関心が高まっている領域の両方を踏まえたうえで、自分の経験に近い案件がどのくらいあるかを確かめることから始められます。まずは登録して、条件を見比べてみることをおすすめします。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」限られた導入(2025年4月)
    *2 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」重視度の低さ(2025年4月)
    *3 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」現場側の関心(2025年4月)
    *4 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」導入の限定(2025年4月)
    *5 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」評価の軸(2025年4月)
    *6 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」契約の負担(2025年4月)
    *7 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」相手の前提(2025年4月)
    *8 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」利用の広さ(2025年4月)
    *9 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」方針の有無(2025年4月)
    *10 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」不安の所在(2025年4月)