リモートワークのメリットが変える新しい働き方の未来/エンジニアが注目する魅力的な生き方とは?

リモートワークは、「働き方の一つ」として始まりました。しかし今日では、人生そのものをどう設計するかという視点にまで広がりを見せています。
本記事では、一歩踏み込んで「なぜ、企業や個人がリモートワークの導入に価値を見いだしているのか」を深掘りします。
リモートワークのメリットを、自分らしい生き方の選択肢(ウェルビーイング)と、誰もが取り残されない社会の実現(多様性の包摂) という2つの観点から見ていきましょう。
1.【推奨する理由】注目される「リモートワークのメリット」とは?
2020年のパンデミックを機に、「オフィスへの出勤が当たり前」だった働き方の常識が大きく変わりました。それから5年、100%リモートワークだったコロナ禍から「出社回帰」と「リモートワークの継続」また、「オフィスとリモートワークの両方のハイブリッド型」の間で揺れ動いています。
働き方を模索する中で、注目されるリモートワークの本質的なメリットについて考えていきます。
1-1. 【地域創成の可能性】居住制限なしの優秀な人材確保

リモートワークが推進される大きな理由の1つとして、日本が抱える社会的な課題を解決する効果があります。
「2025年問題」や人口減少により、働き手の減少が加速しています。さらに、若い人たちが都市部へ移り住む流れが続き、地方の企業の採用難は深刻です。
この背景の中で、リモートワークは、場所を問わず優秀な人材を確保できる手段として、企業の人材戦略には不可欠な選択肢となります。
![]() 団塊の世代(1947~1949年生まれの約800万人)が75歳以上の後期高齢者となり、全体で約2,180万人に達します。これにより、医療や介護の必要性が高まるだけでなく、働き手の減少がさらに深刻化します。 参考URL: 内閣府 第1章 高齢化の状況(第1節1) |
1-2. 【デジタル基盤を強化】DXが加速する相乗効果
リモートワークが機能しない要因として、「2025年の崖」と呼ばれるデジタル化(DX)の遅れがあり、多くの企業がICTを十分に活用できていないのが現状です。逆に、リモートワークを推進すれば、データのクラウド保存、ペーパーレス化、非対面でのコラボレーションが定着した「DXの職場環境」が整います。
DXの環境下であれば、リモートワークが有効に機能し、これからの標準的な働き方として定着するでしょう。
![]() ※2025年の崖とは:日本企業のITシステムの老朽化(レガシーシステム)とDXの遅れによって、2025年以降には最大年間12兆円の経済損失が発生するリスクがあるという警鐘です。 ※非対面コラボレーションとは:オフィスで顔を合わせなくても、ビデオ会議ツール(Zoom)やチャットツール(Slack)・共有文書作成ツール(Google Workspace)・仕事の管理ツール(Asana)などを使ってどこからでも情報を共有し、チームで効率よく仕事を進められる方法です。 |
1-3. 【広い受け入れ体制】誰もが活躍できる社会づくり
今日の社会は、一人ひとりの持つ特徴(性別、年齢、ハンディキャップ、出身、文化的背景、考え方)やライフスタイルに制限されない「多様性の包摂」が期待されています。
これは、特定の人やグループが排除されたり孤立したりしないように、偏った見方をせず、平等な機会やサポートの提供に努めて、誰もが安心して参加できる社会を作るという考え方です。
多様性を尊重して、さまざまな背景を持つ人が活躍できる職場が増えれば、子育てや家族の介護などのプライベートでの責任と仕事との両立に苦労している人や、地方在住者でこれまでの通勤型の勤務では不利だった人にも平等に就労の機会が与えられます。
リモートワークは、公平な視点で、住む場所に限定されず、多様性を受け入れて人材を活用する仕組みづくりを推進し、社会全体に大きな活力を生み出すでしょう。
2.【ウェルビーイング】リモートワークで広がる従業員の5つの自由

リモートワークを取り入れると、働く人たちに多くの自由と恩恵をもたらします。以下に、5つの大切なポイントとその効果について紹介しましょう。
2-1. 通勤からの解放
リモートワークの最大の魅力は、毎日の通勤から解放されることでしょう。例えば、往復1〜2時間の通勤がなくなれば、1年間では約250〜500時間の自由が手に入るのです。
この時間を使って、十分な睡眠をとったり、家族と過ごしたり、好きなことに挑戦したり、新しいスキルを身につけたりすることができ、生活の質(QOL)にも良い影響を与えるでしょう。
2-2. 居住地の選択肢が拡大
出社義務のないリモートワークでは、居住地を自分の希望で選べるようになります。都会から田舎へ引っ越したり、都会と地方の両方に住まいを持ったりする「二拠点生活」を始める人が増えています。
旅行しながら仕事もできる環境の「ワーケーション」を推進した和歌山県の例では、年間約50人が新たに移り住み、地元のお店やサービス業に約8,900万円の売り上げがあったことで、地域経済への波及効果がありました。このようなリモートワークの形もあり、地方創生の可能性も秘めています。
![]() ワーク(Work=仕事)とバケーション(Vacation=休暇)を一緒に楽しむライフスタイル。美しい自然がある場所やお気に入りの観光地、実家のある地域など、オフィスや自宅とは異なる場所で休暇を楽しみながら仕事も行う新しい働き方。 |
2-3. 調和したワークライフバランスの実現
子育てや介護などの家庭の事情と仕事とのバランスを取れることが、リモートワークの最大の強みです。
内閣府の調査によれば、女性の就業者数は9年間(2012~21年)で約340万人増加しています。この増加は、保育所の整備や働き方関連法の整備、社会全体の意識変革など、複数の要因による効果ですが、ここにリモートワークが加わると、働き方の選択肢はさらに広がるでしょう。
また、特筆すべき社会問題として、介護があります。厚生労働省の調査によると毎年約10万人が介護を理由に離職しており、その約8割が女性です。これも、リモートワークの活用によって、介護と仕事とのスケジュール調整が可能となり、離職を防ぐ現実的な打開策になります。
2-4. 趣味・学びの時間確保
通勤時間が減れば、自由な時間を確保しやすくなります。国土交通省の調査では、これらの自由時間の使い道は、趣味が63.6%、家族との時間が36.6%などでした。
こうして、趣味や自己啓発に時間を充てることで、スキルの向上や新たな経験の蓄積が可能となり、キャリアの幅を広げることにもつながるでしょう。
2-5. 心身の健康をコントロール
リモートワークは、従業員の心と体の健康を整えたり、コントロールしたりする手助けになります。リモートワークを実施した従業員は、メンタルヘルスの指標が改善した要因として、集中力の高まり・疲労や体調の改善・通勤や準備時間の削減をあげています。
総じて、リモートワークは働き方の多様性と生活の質の向上を促進し、個人のライフスタイルやライフステージ(年齢や生活状況で変化する段階のこと)に合わせたキャリア設計を支える上で、重要な要素となってきました。
今後、心身の健康と社会的な充足感を考えるウェルビーイングは、働き方を決める上で、最も大切な判断基準になっていくことが予想されます。
3.【社会が享受するメリット】リモートワークの3つの社会的効果

次に、リモートワークによる社会全体のメリットについて、3つの観点で解説しましょう。
3-1. 地方創生と地域雇用のバックアップ
地方創生のための交付金比較(公的な取組み p2、p13)
交付金種類 | 2024年度 | 2025年度 | 増減率 |
新地方創生交付金 | 1,000億円 | 2,000億円 | +100% |
テレワーク関連分 (デジタル実装) | 360億円 | 500億円(推計) | +39% |
これまで都市部へ一極集中していた居住や雇用が、リモートワークの導入をきっかけに、人材やビジネスが地方へと分散する動きにつながりました。
地方創生テレワーク(内閣府)の推進によって、地域企業と主要都市の人材とのマッチングや、地域経済の活性化が進んでいます。
地方とのマッチングを積極的に進めている企業では
- 地方拠点の新設や情報収集
- 地元自治体・企業との連携強化
に着目して戦略的な取り組みを進めており、今後さらなる展開が期待されるところです。
また、国の移住支援事業を活用した「専門職の雇用マッチング」は約3.4万件、地方への移住者数は約7,800人に達し、今も増加の傾向にあります。
3-2. 環境へのエコロジーの効果
リモートワークは、通勤ラッシュや人口過密を軽減する効果があります。また、通勤が減ればCO₂排出量の削減につながり、ペーパーレス化による環境への配慮も評価されています。
さらに、オフィスの電力消費量は、スペースの縮小と照明時間を考慮すると、一人当たり43%削減が可能になり、在宅勤務による家庭での電力消費増加を考えても、全体で14%の削減が見込まれるのです。
3-3. スキルをマッチさせた働き方の快適化
介護や看護のために離職せざるを得ない人の状況は、2025年問題で後期高齢者が増加すれば、さらに深刻になると予想されます。
一方で、高齢であっても健康を維持し、自宅で働き続けたいというニーズも存在します。専門知識や実務経験を豊富に持つ人材が働き続けられる社会システムがあれば、優秀な人材の就労の機会を増やし、労働力人口を維持する効果が見込めるのです。
また、在宅勤務は身体的な制約を持つ人にも、新たな就業の機会をもたらします。
リモートワークがさらに企業に広く浸透し、社会が受け入れる土壌と法整備を進めれば、誰もが能力に応じて働ける仕組みが整うでしょう。
4. 成功事例から見る「リモートワークの真の価値」

4-1. メルカリ:働く場所・住む場所・働く時間を自由選択
2021年9月、メルカリは「YOUR CHOICE」という新しいワークスタイルを導入。日本国内のどこに住んでもよく、勤務場所もオフィスや自宅、ホテルなどから、セキュリティ要件を満たせば自由に選択ができます。就業時間もフルフレックスで、中抜けや休日と平日の入れ替えも認められ、「働く場所」「住む場所」「働く時間」すべてを個人の裁量で決められる制度を実現しました。
さらに、エンジニア部門では、オンボーディングや研修も完全オンライン化し、情報を集約したポータルサイトやメンター制度、1on1ミーティング、KPI(目標)設定の仕組みを活用して、新入社員でも場所や時間に縛られずスムーズに組織に適応し、早期に戦力になれる環境を整備したのです。
4-2. サイボウズ:多様な働き方を認める企業文化
グループウェア大手のサイボウズは、約従業員1300人を有し、2010年からクラウド上に「仮想オフィス」を構築してリモートワークの導入を進めてきました。企業理念に掲げる「100人が100通りの働き方」を体現し、多様な働き方を尊重する企業文化を築いています。
特に注目すべき点は、情報のオープン化とコミュニケーションの工夫、そして、出退勤管理の徹底による業務の可視化やリスク・健康管理の強化です。これらの取り組みにより、離職率は2005年の28%から、2021年には3~5%へと大幅に改善されました。
従業員の働きやすさと満足度を高めた結果、サイボウズはリモートワークの先進的な成功例として注目されています。
4-3: GitLab:完全リモート企業の成功モデル
GitLabは、60カ国に2300人の従業員を持つ完全リモート企業です。最大の特徴は、全業務を明文化した3000ページを超える「GitLab Handbook」にまとめ、ウェブ上で公開している点にあります。
このHandbookに基づき、リアルタイムではなく、非同期コミュニケーションを基本とし、グローバルなチームが時間に縛られずスピーディに行われます。評価方法は、「時間」ではなく「成果」=作業内容の質を重視し、期限を1週間と設定して記録・評価を迅速化しました。会議は「アジェンダなしでは行わない」と効率化を徹底。さらに、アジア⇔欧州⇔北米間の異なるタイムゾーンでの時差(夜間)をフル活用し「24時間開発サイクル」で生産性を高めています。
従業員満足度(エンゲージメント)は毎年サーベイを公開し、2025年の心理的安全性は90%を達成しました。
5.【企業の未来】リモートワークの効果は、今後どう進化する?

5-1. ハイブリッドワークという最適解
出社とリモートワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」は、多くの企業で主流になりつつあります。
グローバル企業のGoolgeでは、週2〜3日の出社と在宅勤務を併用するハイブリッドモデルを採用し、従業員の満足度と生産性の向上に成功しています。
この背景には、各部門の具体的なニーズを分析した上で、組織構造にマッチするツールを導入し、柔軟に適応させた運営戦略が秘訣だといいます。
5-2. 働き方を支えるテクノロジーの進化
クラウドツールやコミュニケーションアプリ、AI(人工知能)などの先端技術は、リモートワークを快適に運用するのに不可欠な要素です。オンライン会議ツールやチャットアプリの利用は今や当たり前となり、最近ではバーチャルオフィスや仮想現実(VR)を使った会議も実証段階に入りました。
物理的な制約を克服し、チームが協働できる就業環境づくりが今後リモートワークを成功させる鍵になるでしょう。
5-3. 評価制度とマネジメントの再設計がヒント
制度面における今後の課題は「人の働きぶりをどう見極め、どう支援するか」という点です。従来の「目視による監視型管理」ではなく、成果とプロセスを適正に評価する方法が課題です。
日本経済団体連合会(経団連)は「場所にとらわれない働き方を実現するには、受け入れる体制や規定の整備が不可欠」と指摘しています。信頼関係の構築をベースにしたマネジメントへの移行が求められているのです。
6. まとめ ウェルビーイングの尊重が鍵
今日では、「ウェルビーイング」という概念が重要な社会的価値観として注目されるようになりました。
長く働くことだけに重きをおくのではなく、いかに健康で、充実した暮らし方をしながら働き続けられるかが重要な指標になりつつあります。
リモートワークは、このような「持続可能な働き方」の象徴ともいえる存在です。
このような社会変化を背景に、リモートワークは単なるコロナ対策の一時的な措置ではなく、企業・個人・社会がともに次のフェーズへ進むための基盤として、真価が見直されています。
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