SSBJ基準の開示に対応するESGデータ基盤の案件と排出量データ

📘 この記事でわかること
- 金融庁が検討するSSBJ基準の有価証券報告書への適用ロードマップと、二段階開示・第三者保証が始まる時期
- 排出量データを収集・算定・集計する仕組みと、拠点や参画先をまたぐデータ統合で問われる勘所
- 保証に耐える記録・追跡の考え方と、リモートやフリーランスの案件でどう関わっていくか
プライム市場に上場する企業を中心に、有価証券報告書へのサステナビリティ情報の記載が、任意の取り組みから法定の開示へと変わろうとしています。金融庁のワーキング・グループでは、時価総額の大きな企業から段階的にSSBJ基準への準拠を求める案が検討されており1、開示を支える仕組みづくりが急ぎ足で進んでいます。排出量データの収集や算定、拠点をまたぐ集計の基盤は、法務や会計だけで完結する仕事ではなく、システムを組む技術者の力を必要とする領域です。この記事では、その動きの中心にある制度の輪郭と、リモートやフリーランスの案件としてどう関わっていけるかを整理します。
1. なぜいまESGデータ基盤・サステナビリティ開示の案件が増えているのか
サステナビリティ情報が「書く場所」から「作る仕組み」へ変わる
サステナビリティレポートやWebサイトでの開示は、担当部署が積み上げてきた任意の取り組みでした。集める項目も書式も企業ごとに異なり、外部への説明は見せ方の工夫で足りていた領域です。
この前提が変わろうとしています。金融庁のワーキング・グループでは、グローバルな投資家との建設的な対話を志向するプライム市場上場企業を対象に、時価総額の大きな企業から順にSSBJ基準に準拠した有価証券報告書の作成を義務付ける方向で検討が進んでいます1。任意の取り組みが、書式・期限・保証まで問われる法定開示の一部に移る動きです。
見せ方を整えるより、データを集めて算定し、集計まで通す仕組みを整えるほうが、これからの開示を支えます。開示の主役が文章からデータ基盤に移るところに、ESGデータの収集・算定・統合を担う技術者の案件が広がっている理由があります。
図の作成:Remogu編集部。サステナビリティ情報が開示に至る一般的な流れを整理したもので、統計データではありません
投資家が求めているのは、体裁の整った報告書ではなく、数字の裏付けを追える情報です。開示の信頼性が問われるようになるほど、データを整える工程そのものが評価の対象になり、その工程を設計し運用できる技術者の存在感が増していきます。単発の集計作業ではなく、継続して回していく仕組みへの需要が広がっている点も、この領域の特徴です。
対応の範囲は上場企業本体にとどまらない
開示の義務を負うのは上場企業本体ですが、実際にデータを積み上げる範囲は、国内外の子会社や関連拠点にまで広がります。連結の対象になる拠点が多いほど、データを集める経路も、システムの数も増えていきます。
本体の情報システム部門だけで抱え込むより、拠点ごとの事情に合わせてデータ連携を組み立てられる技術者を、期間を区切って迎え入れる進め方のほうが現実的です。ここに、リモートやフリーランスの立場で参画できる余地が生まれています。国内外に拠点を持つ企業ほど、この余地は大きくなる傾向にあります。
制度の方向性が見えたところで、次の章ではこの義務化がいつから、どの企業に及ぶのかを具体的に見ていきます。
2. 適用ロードマップと二段階開示
時価総額3兆円以上から始まる段階適用
いつから、どの企業に開示義務が及ぶのかは、案件を探すうえでも気になるところです。準備期間を考えると、制度が固まってから動くのでは間に合わないという実感を持つ技術者は増えています。
検討されている案では、企業の準備期間を考慮し、時価総額3兆円以上の企業から2027年3月期の適用開始を基本とし、時価総額に応じて段階的に対象を広げる計画です2。あわせて、経過措置としてサステナビリティ情報を有価証券報告書と別に開示できる二段階開示が、適用開始から2年間認められる方向で検討されています3。
一度整えて終わりの仕事ではなく、対象企業が毎年広がっていく段階適用だからこそ、開示を支えるデータ基盤の案件は一時的な特需ではなく、複数年にわたって積み上がっていく性質を持っています。
適用開始までの期間が短いほど、社内だけで仕組みを整えるのは難しくなります。時価総額の大きい企業から先に対応が始まるため、次の段階で対象になる企業は、先行する企業の進め方を参考にしながら準備を前倒しする動きも出てきます。早い段階で経験を積んでおくと、後から対象になる企業の案件にも対応しやすくなります。
適用ロードマップの3つの節目
段階適用・二段階開示・第三者保証という3つの節目は、それぞれ始まる時期も対象範囲も異なります。次の表に、現在検討されている内容を時系列で整理しました。
二段階開示という経過措置は、開示の書式を有価証券報告書と切り離せる猶予期間にあたり、システム側から見れば、データ収集や算定の仕組みを整えながら開示の運用を段階的に磨いていける期間でもあります。最初から完成形を求められるとは限らない点は、案件に関わるうえでも押さえておきたいところです。
| 時期 | 制度の内容 | 対象範囲 |
|---|---|---|
| 2027年3月期〜 | SSBJ基準に準拠した有価証券報告書の作成が始まります2 | 時価総額3兆円以上の企業から順次 |
| 適用開始から2年間 | サステナビリティ情報を有報と別に開示できる二段階開示が認められる方向です3 | 二段階開示を選ぶ企業 |
| 適用開始の翌年から | 第三者保証の実施が義務付けられる方向です4。対象は当初2年間、温室効果ガス排出量のScope1・2やガバナンス、リスク管理です5 | 保証を受ける企業 |
出典:金融庁「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」資料(2025年10月)をもとに作成
制度の時間軸が見えたところで、次の章では開示の土台となる排出量データを、どう集めてどう算定するのかを見ていきます。
3. 排出量データを集めて算定する
Scope1・2の収集・算定・集計という工程
保証の対象になる温室効果ガス排出量は、当初はScope1・2が中心です5。数字を出す前に、まず活動量データをどこからどう集めるかという設計が必要になります。拠点や参画先ごとに使っている電力や燃料の記録は、様式もシステムもばらばらなことが多く、集める段階から仕組みが問われます。
集めた活動量データに排出係数を掛け合わせ、温室効果ガス排出量を算定する工程が続きます。ここで使う係数や単位は改定されることがあるため、どのバージョンで算定したかを残しておく設計が欠かせません。そのうえで、拠点や子会社を横断して全社の数値へと集計します。
集計した結果だけを整えるより、途中の活動量データと算定ロジックを一緒に残しておく設計のほうが、後の工程で効いてきます。数字を作る仕事というより、数字が生まれる経路を設計する仕事に近い領域です。
活動量データの集め方は拠点によって差が出やすく、紙の伝票や表計算ソフトで管理されている拠点が残っていることも珍しくありません。集計の前に、データの欠けや重複をどう扱うかという設計を挟む必要があり、ここに技術者の判断が問われます。
海外拠点を持つ企業では、通貨や単位、報告の締め日が拠点ごとに異なることも珍しくありません。集計の前段で、単位をそろえ、締め日のずれを補正する変換の層を挟んでおくと、後工程での手戻りを抑えられます。こうした変換ロジックも、記録として残しておく対象です。
拠点数が多い企業ほど、収集の自動化が効いてきます。手作業で入力してもらう運用のままでは、拠点が増えるたびに確認の手間も増えていきます。入力フォームの整備やAPI連携によって、収集の段階から入力ミスを減らしておく設計が、後工程の負担を軽くします。
図の作成:Remogu編集部。排出量データの一般的な処理工程を整理したもので、統計データではありません
工程ごとに求められるスキル
収集・算定・集計は、それぞれ求められる経験が異なります。データ連携の実装経験を積んできた技術者にとって、初めて聞く業務領域でも、工程そのものは見慣れた形に近いはずです。次の表に工程ごとの作業内容と活きるスキルを整理しました。
| 工程 | 主な作業 | 活きるスキル |
|---|---|---|
| 収集 | 拠点や参画先ごとに散らばる電力・燃料などの活動量データを集める | データ連携基盤の設計、API・CSV取り込みの実装 |
| 算定 | 活動量データに排出係数を掛け合わせて排出量を算定する | 算定ロジックの実装、係数や単位のバージョン管理 |
| 集計 | 拠点・子会社を横断して全社の数値に集計する | データ統合、名寄せ、集計結果の検証プロセスの設計 |
データ連携・算定ロジックの経験が活きるリモート案件をチェックする →
ここまでの工程で作った数値を、外部の保証人が跡をたどれる形に残すところまでが、開示を支える仕事の範囲です。次の章では、保証に耐える記録・追跡の考え方を見ていきます。
4. 保証に耐えるデータの記録・追跡
「集計した数値」から「跡をたどれる数値」へ
集計した数値を報告書に載せれば仕事が終わる、と考えたくなりますが、保証が入る開示ではそこで終わりません。サステナビリティ情報の第三者保証は、開示基準の適用開始時期の翌年から義務付ける方向で検討が進んでいます4。保証範囲は、当初2年間は温室効果ガス排出量のScope1・2やガバナンス、リスク管理が対象です5。財務諸表の監査に慣れた企業でも、非財務情報を対象にした保証への対応は、これから整えていく段階にあります。
保証人は、最終的な数値だけを見ているわけではありません。どの活動量データから、どの係数を使って、どういう手順で算定したのかを、跡をたどって確かめます。集計結果を並べるより、活動量データと算定ロジックのつながりを記録として残しておくほうが、保証に耐える基盤になります。
この記録・追跡の設計は、監査対応の経験がなくても、ログ設計やバージョン管理、データの変更履歴を追う仕組みづくりの延長として組み立てられる領域です。会計の専門知識よりも、データの出どころを追跡できる設計力が問われます。
バージョン管理は、係数表や算定ロジックのプログラムだけでなく、集計に使った元データのスナップショットにも及びます。後から数値の根拠を尋ねられたときに、当時の状態を再現できる設計が、保証に耐える基盤の実質的な条件になります。
誰が、いつ、どのデータに触れたかを残すアクセス管理も、記録・追跡の一部です。担当者が変わっても手順が引き継がれるよう、操作ログや承認の記録を仕組みとして残しておくと、保証対応の場面で慌てずに済みます。
図の作成:Remogu編集部。保証に耐える記録・追跡の一般的な考え方を整理したもので、統計データではありません
保証の対象がScope1・2から広がっていく可能性を踏まえると、記録・追跡の仕組みは早い段階で整えるほど、後から範囲が広がったときの手戻りを抑えられます。次の表に、当初2年間の保証範囲を整理しました。
| 保証範囲(当初2年間) | 記録・追跡で問われること |
|---|---|
| 温室効果ガス排出量(Scope1・2)5 | 活動量データの取得元と、算定に使った係数・計算式の記録 |
| ガバナンス5 | 開示に関わる意思決定の経緯や体制の記録 |
| リスク管理5 | リスクの識別・評価の手順とその履歴の記録 |
制度と工程の全体像が見えたところで、次の章ではリモートやフリーランスの案件として、実際にどこに関わっていけるのかを具体的に見ていきます。
5. リモート・フリーランス案件でどう関わるか
収集・算定・統合の経験が入り口になる
ESGという言葉に慣れていなくても、データ連携基盤の構築やETLの設計、拠点を横断したデータ統合、ダッシュボードの整備といった経験を積んできた技術者であれば、開示を支える仕組みは見慣れた形に近いはずです。専門用語の壁より、工程そのものへの理解のほうが先に立ちます。
会計や監査の専門知識を一から積み上げるより、これまで培ってきたデータ設計の経験を、収集・算定・集計・記録という新しい文脈に当てはめるほうが、参画までの距離は近くなります。国際的な開示の動向を踏まえた検討も続いており6、この領域の仕組みづくりは一時的な流行ではなく、継続的に積み上がっていく分野です。
案件への入り口は、既存の基幹システムを大きく作り替える仕事とは限りません。特定拠点のデータ連携を整える、算定ロジックの一部を実装する、記録の仕組みを見直すといった、区切りやすい単位から始まる進め方も見られます。積み上げてきた経験の一部から関わり始められる余地がある領域です。
期間を区切って特定の工程に集中する参画のしかたは、リモートやフリーランスの働き方と相性がよく、拠点をまたぐ調整が前提の領域だからこそ、常駐にこだわらない進め方が受け入れられやすくなっています。
実際の案件では、会計やサステナビリティの担当者と、データ基盤を担う技術者がチームを組んで進める形が中心になります。担当領域を分けて協議しながら進められるため、開示の詳細な判断は専門の担当者に委ね、技術者はデータの設計と実装に集中できる座組みが多く見られます。役割の境目がはっきりしているぶん、関わり始めやすい構図とも言えます。
Remoguが扱う案件は、90%以上がフルリモート可能です7。拠点をまたぐデータ統合や記録・追跡の設計は、常駐して進める性質の仕事ではなく、リモートでも成果を積み上げやすい領域です。ただし条件は案件によって異なるため、興味を持った時点でどんな案件があるかを確かめておくと、動きが早くなります。
まず登録して、自分の経験に合う条件を確かめる →
制度の輪郭も、必要になる技術も見えてきたところで、あとは自分の経験がどこに当てはまるかを確かめる一歩を残すだけです。まず登録して、自分に合う条件を確かめてみることから始めてみましょう。
6. まとめ
プライム市場上場企業を中心に、SSBJ基準に準拠した有価証券報告書の作成が義務付けられる方向で検討が進んでいます1。時価総額3兆円以上の企業から2027年3月期に適用が始まり2、2年間の二段階開示3を経て、適用開始の翌年からは第三者保証も始まる方向です4。
この一連の流れを支えるのは、法務や会計だけの仕事ではありません。排出量データの収集・算定・集計、拠点をまたぐ統合、保証に耐える記録・追跡まで、データ基盤を組む技術者の力が随所で必要になります。積み上げてきたデータ設計の経験は、この新しい文脈でも十分に活かせます。特定の業界知識を先に揃えるより、案件の中で必要な知識を補っていく進め方でも十分に対応できる領域です。
案件の90%以上がフルリモート可能というRemoguの環境なら7、場所に縛られずこの領域の経験を積んでいけます。制度がまだ動き始めたばかりの今だからこそ、早い段階で経験を持つ技術者の値打ちは上がっていきます。まずは登録して、自分の経験に合う案件があるかを確かめてみてください。
7. よくある質問
ESGの専門でなくても関われますか
関わりやすい領域です。開示を支える仕事の中心は、データの収集・算定・集計・記録という工程にあり、ESG領域特有の専門知識よりも、データ連携やシステム設計の経験のほうが土台になります。専門用語は案件の中で覚えていく形で十分です。
どんなスキルが活きますか
データ連携基盤の構築、ETLの設計、API・CSV取り込みの実装、データの変更履歴を追う設計の経験が活きやすい領域です。拠点や子会社をまたぐ集計、記録・追跡の仕組みづくりに触れてきた経験があれば、なじみやすいはずです。特定の言語や製品よりも、データの流れを設計する力そのものが評価されます。
データ統合や集計の経験は活きますか
活きやすい経験です。拠点・子会社を横断して数値をまとめる集計の工程は、ほかの業務システムで行うデータ統合と近い設計になります。名寄せや検証プロセスの設計経験は、そのまま強みになります。業種が違っても、統合の考え方そのものは持ち込みやすい領域です。
会計の知識はどの程度必要ですか
一から会計を積み上げる必要はありません。求められるのは、データの出どころと算定の手順を跡付けられる記録・追跡の設計力です。会計や監査に関わる詳細な判断は、専門の担当者と協議しながら進める形になります。基礎的な用語を押さえておくと、やり取りはよりスムーズになります。
案件はフルリモートでもできますか
Remoguが扱う案件は、90%以上がフルリモート可能です7。ただし条件は案件によって異なるため、まず登録して、自分の経験に合う条件を確かめてみることをおすすめします。拠点をまたぐやり取りが前提の領域だからこそ、リモートでの協業に慣れていることも強みになります。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 金融庁「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(2025年10月)
*2 金融庁「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(2025年10月)
*3 金融庁「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(2025年10月)
*4 金融庁「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(2025年10月)
*5 金融庁「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(2025年10月)
*6 金融庁「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(2025年10月)
*7 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能