【中小企業の生成AI】導入が止まる理由と案件の探し方、規模で変わる取組みの実態
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 生成AIに前向きな企業の割合は日本が5割弱にとどまることと、1,001人以上の企業では日本が世界で最も高くなる逆転が起きていること
- 企業の規模が小さくなるほど日本の取組みが下がることと、100人以下の企業では8割近くが着手できていない状況にあること
- 止まる一番の理由が「メリットがわからない」ことと、次に多い知識や情報の行き渡りの弱さは外から補えるものであること
生成AIの案件を探してサイトや調査記事を眺めると、真っ先に登場するのは大きな企業の事例と、海外の先進事例です。自社の規模を思い浮かべながら、そこに自分の居場所はあるのだろうかと考えることもあるはずです。IPAの調査を規模別に読み直すと、差があるのは国ではなく企業の規模そのものだと見えてきます。差がある場所には、外から入っていく仕事の余地も残っています。
▶ あわせて読みたい
・【生成AI・RAG】AI事業者ガイドラインの主体区分で決まる案件の責任範囲と説明責任の進め方
・【内製化支援】外部エンジニアが担える役割とは、アジャイル・データ利活用・体制づくりの実態
・技術負債の返済はどう投資判断に変える?レガシー刷新の現状と経営への翻訳の進め方
1. 国で見ると5割弱、でもそれは全体の話
生成AIについて各国の姿勢を比べるとき、よく使われる物差しが「前向きな取組みをしている企業」の割合です。まずはこの物差しで、全体像を確かめます。
「前向きな取組み」という物差しで見る3か国
ここでいう前向きな取組みには、実際に導入している状態だけでなく、試験的に使っている状態や、導入を検討している状態までが含まれます。実施済みの案件だけを数えているわけではありません。
この物差しで3か国を並べると、米国では8割弱、ドイツでは7割弱の企業が前向きな取組みをしているのに対し、日本は5割弱にとどまります1。半分に届かない数字は、確かに見劣りする印象を持たせます。
ただし、ここで立ち止まりたいのは、この数字が企業全体を均して出した平均だという点です。平均は、規模の違いを覆い隠します。大きな企業と規模の小さい企業を同じ土俵で割ると、両方の実態が薄まって見えてしまうのです。
出典:IPA「DX動向2025」(2025年)をもとに作成
日本が止まっている場所は「拒否」ではない
では日本の5割弱は、どこで止まっているのでしょうか。調査では、日本は「関心はあるがまだ特に予定はない」と回答した企業が、米国とドイツに比べて非常に多いことが示されています2。
つまり日本の企業の多くは、生成AIに背を向けているわけではありません。むしろ関心を持ちながら、次の一歩を踏み出せずに足踏みしている状態です。拒否ではなく足踏みだとすれば、外から関わる余地は十分に残っています。
この足踏みは、経営判断の遅さというより、次の一歩に必要な材料がまだ揃っていない状態に近いと考えると見え方が変わります。材料を外から運び込む役割を担えるかどうかが、案件を見つける視点になります。
この「関心はあるが予定なし」がどの規模の企業に集まっているのかは、国全体の数字だけでは見えてきません。規模で区分すると、平均の裏側にあった景色がはっきりと現れます。次の章で確かめていきます。
この差を知っておくと、案件を探すときの見方が変わります。国全体の統計だけを見て「進んでいる」「見劣りする」と判断するのではなく、どの規模の企業を対象にした話なのかを、まず確かめる習慣が役に立ちます。
2. 規模で切ると景色が変わる
国全体の数字を規模で割ってみると、先ほどとは違う顔が見えてきます。特にはっきりしているのが、大きな企業の動きです。
大きな企業ではむしろ日本が先を行く
1,001人以上の企業を見ると、2023年度に比べて2024年度は試験利用や検討の割合が減り、導入している企業の割合が増えています。大きな企業の生成AI活用が、試す段階を抜けて本格的な導入の段階に進んでいることを示しています3。
しかも3か国で比較すると、1,001人以上の企業に限れば、日本の「導入している」割合が最も高くなります4。国全体では見劣りしていた日本が、規模を絞ると先頭に立つのです。
これは、国の違いよりも規模の違いのほうが、生成AIへの向き合い方を大きく左右していることを示しています。大きな企業だけを見て「日本は先を行く」と言うのも、規模の小さい企業だけを見て「日本は見劣りする」と言うのも、どちらも一面的な見方です。
この逆転は、大きな企業を対象にした案件がすでに成熟し始めていることも意味します。運用の改善や拡張が中心になる領域では、経験の幅よりも、既存の仕組みを理解して手を入れる丁寧さが問われるようになります。
一方で、規模の小さい企業を対象にした案件は、多くの企業がまだ足を踏み出していないぶん、これから増えていく余地を残しています。今のうちに関わり方を知っておく価値があります。
規模のねじれを表で確認する
国全体の平均と、大きな企業に限った数字を並べると、規模によってまったく違う結論が出ることが分かります。表にまとめて確認します。
| 規模区分 | 起きている変化 | 3か国で見たときの位置づけ |
|---|---|---|
| 1,001人以上の企業 | 2023年度から2024年度にかけて試験利用・検討が減り、導入している企業が増加3 | 3か国の比較でも日本の「導入している」割合が最も高い4 |
| 100人以下の企業 | 企業の規模が小さくなるほど取組み割合が下がる5 | 「関心はあるが予定なし」「今後も取組む予定はない」の合計が8割近い6 |
この表が示すのは、日本の生成AI活用が「進んでいる」「見劣りする」という一本の線ではなく、規模という軸を挟んで二つの姿に分かれているということです。大きな企業はすでに本格導入の段階に入っています。
問題は、この逆転が起きているのが大きな企業に限られている点です。規模が小さくなるにつれて、状況はどう変わるのでしょうか。次の章で確かめます。
大きな企業に本格導入の実績があるという情報は、規模の小さい企業にとっても手がかりになります。同じ壁をすでに越えた例を知っている立場から関わることで、規模の小さい企業の背中を押す役割を担えます。
3. 差が出るのは小さい会社
大きな企業での逆転を確認したところで、規模を反対側までたどってみます。差がはっきり出るのは、ここから先です。
規模が小さくなるほど下がるのは、日本だけの傾向
調査では、企業の規模が小さくなるほど日本の取組み割合は下がっていく一方、米国とドイツは大きく下がらないことが分かっています5。同じ「規模が小さくなる」という条件でも、下がり方は国によって大きく違います。
国の違いよりも規模の違いのほうが効いている、という前の章の見立ては、ここでも裏付けられます。日本の内側で起きている差は、規模の小さい企業と大きな企業のあいだにあるのです。
出典:IPA「DX動向2025」(2025年)をもとに作成
100人以下の企業に見えている景色
100人以下の企業では、「関心はあるがまだ特に予定はない」と「今後も取組む予定はない」を合わせた割合が8割近くにのぼります6。米国は2割強、ドイツは4割弱にとどまっており、日本の規模の小さい企業が置かれている状況の特徴が際立ちます。
これは、規模の小さい企業が生成AIに否定的だという意味ではありません。関心を持ちながらも、着手する材料や時間の面で足踏みしている状態が積み重なった結果です。差は規模の側にあり、そこには外から入っていく余地が残っています。
規模の小さい企業を「見劣りする」と見るのは、半分だけの見方です。正しくは、大きな企業が先に踏み出した道を、規模の小さい企業がこれから歩き始めるところだと捉えるほうが実態に近いはずです。
では、規模の小さい企業が足踏みしている理由は何でしょうか。技術的な壁なのか、それとも別の理由なのか。次の章で確認します。
実際に規模の小さい企業と話すと、生成AIそのものへの疑問より先に、「何から始めればよいのか」「かけた分に見合うのか」といった素朴な問いが出ることが多くあります。参画前の面談では、技術の説明よりも、こうした問いに落ち着いて答える場面のほうが多いはずです。
この段階にある企業を見つけたときは、技術力の高さよりも、状況を丁寧に聞き取る姿勢のほうが評価されやすくなります。焦って提案を並べるより、まず何が止まっているのかを一緒に確認する進め方が向いています。
規模の小さい企業に多いのは、担当者が生成AIの専任ではなく、他の業務と兼任しているという状況です。まとまった時間を取りにくい相手だと理解しておくと、話の進め方や資料の作り方も自然と変わってきます。
規模の壁を越えて、今の経験が活きる案件をチェックする →
4. 止まっている理由は技術ではない
規模の小さい企業が足踏みしている理由を、調査は具体的に示しています。技術の壁だと思われがちですが、実際に上位に挙がるのは別の理由です。
最も多い理由は「メリットがわからない」
DXに取組んでいない100人以下の企業では、「自社がDXに取組むメリットがわからない」という回答率が最も高くなっています7。ツールの使い方や技術的な難しさではなく、そもそも何のために取組むのかが見えていない状態です。
これは技術力の差ではなく、意味の翻訳が済んでいない状態だと言い換えられます。生成AIという言葉と、日々の業務とのあいだに、まだ橋が架かっていないのです。外から関わるエンジニアの最初の仕事は、この橋を架けることから始まります。
次に多いのは知識と情報
次に高いのは、DXに取組むための知識や情報が十分に行き渡っていないという回答です8。1位の「メリットがわからない」が意味の壁だとすれば、2位は情報の壁だと言えます。
| 順位 | 100人以下の企業がDXに取組んでいない理由 | 示唆 |
|---|---|---|
| 1位 | 自社がDXに取組むメリットがわからない7 | 技術ではなく、意味を翻訳する余地がある |
| 2位 | DXに取組むための知識や情報が十分に行き渡っていない8 | 外から持ち込める種類の情報である |
情報の壁は、技術力よりも、外から持ち込みやすい種類のものです。すでに事例や進め方を知っている立場から、規模の小さい企業に合う形で情報を届け直すことは、社内だけでは進みにくい役割です。
つまり規模の小さい企業が止まっている理由の上位2つは、どちらも技術そのものの難しさではありません。意味を翻訳し、情報を届け直す。この2つが埋まれば、次の一歩を踏み出しやすくなります。
意味を翻訳する仕事は、難しい専門用語を使うことではありません。「この作業のどこにAIを当てると、今の手間が減るのか」を、担当者と一緒に一つずつ言葉にしていく作業です。専門知識よりも、聞き取り、整理し、選択肢を示す進め方のほうが効きます。
情報の壁を埋める役割も同じです。他の企業でどう進んだかという例を、規模や状況に合わせて調整しながら伝え直すことは、社内の担当者だけでは難しい仕事です。外から関わる意味は、まさにここにあります。
知識や情報を届け直すときは、専門用語をそのまま伝えるのではなく、相手の日々の業務の言葉に置き換える一手間が効きます。この一手間があるかどうかで、同じ情報でも伝わり方は大きく変わります。
では、その一歩を踏み出したあとで、実際にどんな力が求められるのでしょうか。次の章で確認します。
5. 求められるのは当てる力
意味の壁と情報の壁が下がったあと、規模の小さい企業が向き合うのは、生成AIをどう使うかという実践の段階です。ここで求められる力の向きも、調査は示しています。
求められるのは開発力ではなく適用力
調査によれば、生成AIは自社で開発して使うものではなく、事業企画や業務適用、AI導入、データ分析等に活用していく傾向にあります9。モデルそのものを一から作る力よりも、既にある手段をどこに当てるかを決める力のほうが重視されているのです。
モデルを作る力よりも、業務のどこに当てるかを決めて動く形にする力のほうが、案件では効きます。この向きは、規模の小さい企業であるほど強く当てはまります。開発に人と時間をかける余裕が少ないぶん、既にある手段を業務に落とし込む力が重宝されるからです。
表3が示す4つの入り口
調査が挙げる活用の向きは、事業企画・業務適用・AI導入・データ分析の4つに整理できます。それぞれで、外から関わるエンジニアの役割は少しずつ違います。表で確認します。
| 活用の向き | 関わる仕事の内容の傾向 |
|---|---|
| 事業企画 | どの業務にAIを当てるかを決める企画側の仕事 |
| 業務適用 | 決めた企画を実際の業務プロセスに落とし込む仕事 |
| AI導入 | 選んだ手段を導入して動く形にする仕事 |
| データ分析 | 導入後のデータを見て効果や精度を確かめる仕事 |
共通しているのは、どの入り口も「意味を翻訳し、業務に当てはめる」役割だという点です。最先端のモデルを扱った経験がなくても、業務の構造を理解し、既存の手段をどこに当てるかを決めてきた経験は、そのまま活きる場面が多くあります。
これまでに積み上げてきた経験の中には、業務の目的を整理し、手段を選び、実際に動く形へ落とし込んできた場面があるはずです。その経験こそが、規模の小さい企業が今まさに必要としている力です。
面談では、これまで扱ってきた手段の種類よりも、業務の目的をどう整理し、どんな手段を選んで、どう動く形に落とし込んできたかを尋ねられる場面が増えています。経験を語るときは、使った技術の名前よりも、この一連の流れで語り直すと伝わりやすくなります。
業務適用やAI導入の場面では、最初から完成された仕組みを目指すよりも、小さく始めて手応えを確認しながら広げていく進め方が向いています。この進め方自体が、規模の小さい企業にとって価値のある提案になります。
事業企画や業務適用の場面で問われるのは、技術の新しさよりも、業務の目的に対して手段が合っているかどうかを見極める視点です。この視点は、規模の大小にかかわらず積み上げられる経験だと言えます。
図の作成:Remogu編集部。IPA「DX動向2025」(2025年)が挙げる活用の向きを整理したもので、比率を示す統計データではありません
「当てる力」が求められる案件をチェックする →
ここまで、国の平均から規模の違い、止まっている理由、求められる力の向きまでを見てきました。最後に、この記事の要点を整理します。
6. まとめ
「日本は生成AIに見劣りする」という国単位の見方は、規模で分けると姿を変えます。大きな企業では、日本はむしろ3か国のなかで最も「導入している」割合が高い立場にいます4。差が出るのは、規模の小さい企業のほうです5。
止まっている理由も、技術の難しさではありませんでした。最も多いのは「メリットがわからない」という回答です7。次に多いのは、知識や情報が十分に行き渡っていないという回答でした8。求められるのは、モデルを開発する力よりも、業務のどこに当てるかを決める力です9。
図の作成:Remogu編集部。IPA「DX動向2025」(2025年)とRemogu公開情報をもとに構成したイメージで、統計データそのものではありません
場所に縛られず、積み上げてきた経験を正しく活かしたいと考えるなら、規模の小さい企業が抱えるこの壁こそが、外から関わる仕事の入口になります。Remoguが扱う案件は、90%以上がフルリモート可能です10。
規模の小さい企業と関わる仕事は、目立つ事例にはなりにくいかもしれません。それでも、意味を翻訳し、当てる場所を決めるという役割は、これから増えていく仕事です。まずは登録して、これまでの経験がどの案件の条件に合うのかを確かめてみましょう。
7. よくある質問
生成AIの案件はどんな企業に多いのでしょうか
大きな企業と規模の小さい企業の両方に案件はありますが、内容は異なります。大きな企業は本格導入の段階に入っており3、運用や拡張に関わる仕事が中心です。規模の小さい企業はこれからの段階にあり6、最初の一歩を一緒に描く仕事が中心になります。
規模の小さい企業向けの案件では何が求められるのでしょうか
技術的な難しさよりも、メリットが伝わっていない状態7や、知識や情報が十分に行き渡っていない状態8を埋める役割が求められます。加えて、事業企画や業務適用のように、既にある手段を業務に当てはめる力が重視されます9。
今の経験は、この分野でも活かせるのでしょうか
業務の目的を整理し、手段を選んで動く形に落とし込んできた経験は、規模の小さい企業が必要としている力と重なります。面談で聞かれるのは、扱った技術の名前よりも、業務の目的をどう捉え、どう動く形にしてきたかという流れです。まずはRemoguで、これまでの経験に近い案件の条件を確かめてみましょう。
リモートワーク案件をお探しの方へ
Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
「日本は生成AIが遅れている」とまとめると、案件の在りかを見失います。まずはAIやデータ活用のリモート案件が、いまどんな条件で並んでいるかを見てみてください。
会員登録無料 / 案件閲覧・相談は無料
※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 IPA「DX動向2025」図表2-9 生成AIの導入状況(2025年)
*2 IPA「DX動向2025」図表2-9 生成AIの導入状況(2025年)
*3 IPA「DX動向2025」図表2-10 規模別(2025年)
*4 IPA「DX動向2025」図表2-10 規模別(2025年)
*5 IPA「DX動向2025」図表2-10 規模別(2025年)
*6 IPA「DX動向2025」図表2-10 規模別(2025年)
*7 IPA「DX動向2025」図表1-4 取組んでいない理由(2025年)
*8 IPA「DX動向2025」図表1-4 取組んでいない理由(2025年)
*9 IPA「DX動向2025」2.3 生成AIの導入状況(2025年)
*10 Remoguサイト公開情報(フルリモート可能案件の割合)