案件の更新か乗り換えか|条件を見直すための材料と順番を解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 6か月以上の契約における不更新の30日前予告のルールと、更新を重ねた期間の数え方
- 価格の引き上げ要請に応じて協議した発注者の割合と、定期的な協議の場を設けている発注者の少なさ
- 更新前に確認しておきたい契約の通算期間と、条件を伝える際に揃えておく材料の順番など
契約の更新が近づくと、このまま続けるのか、条件のよい先を探すのか、判断の材料がないまま日だけが迫ってきます。今の関わりに大きな不満はなくても、条件を見直す機会を逃したくないという迷いも生まれます。更新の時期は、続けるか離れるかという二択の場面ではなく、契約の条件を見直すための区切りです。公正取引委員会の資料には、更新や協議の場面で押さえておける制度上の材料が示されています。
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1. 不更新にも30日前までの予告がある
続けない決定にも、30日前までの予告というルールがある
更新の時期が近づくと、続けるかどうかを決めるのは自分だけの判断のように感じられます。しかし制度の側にも、決定の伝え方について定めがあります。
公正取引委員会のパンフレットは、6か月以上の業務委託で契約の解除または不更新をしようとする場合、例外に当たる場合を除き、解除日または契約満了日から30日前までにその旨を予告しなければならないと定めています1。
この予告は、発注する側に課された義務です。受ける側から見れば、解除や不更新の連絡は遅くとも30日前に届くことになり、そこから動ける時間が読めます。
予告の期限は、更新の可否を考える区切りに使える
連絡が届いてから条件を比べ始めると、検討にかけられる時間が短くなります。
30日という期限は、逆算すれば「いつまでに条件を整理しておくか」という自分の予定に置き換えられます。契約満了日から30日を引いた日を、条件を見直す締め切りとして先に決めておく方法があります。
期限を待って動くよりも、期限から逆算して動くほうが、比較検討にかけられる時間は長くなります。
図の作成:Remogu編集部。公正取引委員会のパンフレットをもとに整理したもので、統計データではありません
2. 更新を重ねた通算の期間で数える
短い契約を重ねていても、対象からは外れない
契約の期間が数か月ずつの更新型だと、6か月に満たないから対象外だと考えがちです。
公正取引委員会のパンフレットは、対象は6か月以上の業務委託だけでなく、契約の更新により6か月以上継続して行うこととなる業務委託も指すとしています2。
つまり、1回あたりの契約期間ではなく、更新を重ねた通算の期間で数える必要があります。今の契約が何回目の更新かを数えてみると、対象に当たるかどうかの見当がつきます。
通算で数えるという発想は、更新の記録を残す動機にもなる
更新のたびに新しい契約書を交わしていると、それぞれが独立した短い契約のように見えてしまいます。
実際には、更新の履歴をつなげて見ることで初めて、対象に当たるかどうかが分かります。開始日と更新の回数を記録しておくと、通算の期間をいつでも確認できます。
記録を更新のたびに整理しておくほうが、必要になってから過去の契約書を探し直すよりも、確認にかかる手間は小さくなります。
図の作成:Remogu編集部。公正取引委員会のパンフレットの考え方を整理したもので、統計データではありません
3. 基本契約があるときは基本契約で数える
個別契約ではなく、基本契約を基準にする
案件ごとに個別契約を結び直している場合、区切りのたびに期間がリセットされるように感じます。
パンフレットは、基本契約を締結している場合には、個別契約ではなく基本契約をもとに期間を判断するとしています3。
個別契約書の期間だけを見ていると対象を見落とします。基本契約の開始日まで遡って確認する必要があります。
自分がどちらの形で契約しているかを、まず確かめる
基本契約と個別契約という言葉自体になじみがない場合、自分の契約がどちらに当たるのか分かりにくいことがあります。
契約書が複数あるなら、共通の条件を定めた文書があるかどうかを確認します。共通の文書があれば、それが基本契約に当たります。
個別契約の期間だけを数えるよりも、基本契約の開始日から数えるほうが、実際の通算期間に近づきます。
1〜3の内容を、まとめて確認する
ここまでの3つの観点は、それぞれ別の場面で使う知識に見えますが、実際には1つの流れとして確認する内容です。対象になる契約かどうか、期間をどう数えるか、どの契約書を基準にするか、この3つを順に確認すると、今の契約が予告のルールの対象に当たるかどうかが分かります。表の形で並べておくと、契約の更新が近づいたときに見返しやすくなります。
| 確認する観点 | 内容 |
|---|---|
| 対象になる契約 | 6か月以上の業務委託、または更新を重ねて6か月以上になる業務委託 |
| 期間の数え方 | 個別の契約期間ではなく、更新を重ねた通算の期間 |
| 基準になる契約書 | 基本契約があるときは、個別契約ではなく基本契約 |
| 予告の期限 | 契約の解除または不更新をしようとする日から30日前まで |
4. 要請すれば協議になる割合は公表されている
価格の協議に応じた発注者の割合が公表されている
条件の見直しを言い出しにくいと感じる場面では、相手が応じてくれるかどうかが分からず足踏みしてしまいます。
公正取引委員会の調査では、引き上げの要請に応じて、すべての商品やサービスについて価格の協議をした発注者の割合は60.9%です4。
一部の商品やサービスについて協議をした場合まで含めると69.7%です5。要請そのものをしなければ、この数字の対象にすら入りません。
数字が示すのは、応じる用意がある発注者の存在
協議に応じてもらえるかどうかは、実際に伝えてみるまで分からないという不安があります。
調査の数字は、要請に対して協議をした割合を示すものであり、要請をしなくても協議が始まるという意味ではありません4。
黙って待つよりも、条件を具体的に言葉にして伝えるほうが、この数字の対象に入る機会は増えます。
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5. 定期的な協議の場がある発注者は限られる
定期的な場を持つ発注者は27.1%にとどまる
協議の機会がいつ来るのか分からないまま待っていると、言い出すタイミングをつかみにくくなります。
公正取引委員会の調査では、すべての受注者と定期的な協議の場を設けた発注者の割合は27.1%です6。
定期的な場が用意されている契約のほうが少数派だと分かれば、場が来るのを待つより、自分から機会を作る動きに意味があると見えてきます。
場がないなら、更新のタイミングを機会にする
定期的な協議の場がない契約では、条件の話をする入り口自体が見つかりにくいことがあります。
更新の連絡や契約満了日の前後は、条件について話す自然な区切りになります。定期的な場がなくても、この区切りを協議の機会として使えます。
場が用意されるのを待つよりも、更新という区切りを自分から協議の機会にするほうが、話を始めやすくなります。
協議の状況を、数字で並べて確認する
ここまで見てきた3つの数字は、それぞれ別の質問に対する答えです。すべての商品やサービスで協議をしたか、一部でも協議をしたか、定期的な協議の場を持っているか。この3つを並べてみると、協議そのものは広く行われている一方で、定期的な場を持つ発注者は限られていることが分かります。数字の違いを表の形で確認しておきます。
| 協議の状況 | 割合 |
|---|---|
| すべての商品・サービスについて価格協議をした発注者4 | 60.9% |
| 一部を含めて価格協議をした発注者5 | 69.7% |
| すべての受注者と定期的な協議の場を設けた発注者6 | 27.1% |
出典:公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」(2025年12月)をもとに作成
6. 呼びかけを待つと動かない相手もいる
自分から呼びかけない発注者も一定数いる
条件の見直しを相手から持ちかけてくれるのを待っていると、いつまでも話が始まらない契約もあります。
調査では、発注する側から進んで協議を呼びかけないが、要請があれば協議に応じるという発注者が存在します7。
待っているだけでは、この種の発注者との協議は始まりません。要請するという行動が、協議が始まるかどうかの分かれ目になります。
相談がなければ動かないという声もある
条件の変更を言い出さなければ、今のままで問題ないと受け取られてしまう場面もあります。
調査では、値上げの相談がなければ協議を行っていないという発注者の意見があります8。
相手の判断を待つよりも、自分から相談を始めるほうが、協議が動き出す可能性は高くなります。
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7. 更新前に揃える材料と、その順番
協議をしない据え置きには、問題になり得る形がある
条件の話を持ち出さないまま更新が繰り返されると、それが当たり前の状態のように見えてしまいます。
公正取引委員会の調査は、費用の上昇分を反映する必要について協議をせずに取引価格を据え置くことは、独占禁止法上の問題となるおそれがあるとしています9。
引き上げを求められたのに理由を書面や電子メールで回答せずに据え置くことも、同じく問題となるおそれがあるとしています10。
協議をしない状態そのものが、制度の側では見過ごされない対象になっています。条件を求める側にも、伝える言葉を用意しておく理由があります。
更新前に揃えておきたい材料と、その順番
条件を見直す話をする前に、材料を順番に整理しておくと、話が具体的になります。まず、契約の開始日と更新の回数を確認し、通算でどれだけの期間になっているかを把握します。
次に、今の契約が基本契約に基づくものか、個別契約だけのものかを確認します。最後に、条件について話したい内容を、具体的な言葉として書き出しておきます。この3つを順番に整理しておくと、更新の連絡が来たときにすぐ使えます。
| 順番 | 確認する材料 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 契約の開始日と更新の回数 | 通算の期間を数える基準になります |
| 2 | 基本契約の有無 | 個別契約ではなく基準にする契約を確認します |
| 3 | 伝えたい条件の内容 | 協議の場で使う言葉として整理しておきます |
図の作成:Remogu編集部。更新前に確認しておきたい材料を整理したもので、統計データではありません
更新の期限も、協議の数字も、材料の順番も、知っておけば当日に慌てず使える材料です。今の契約について条件を整理したら、次はほかにどんな案件があるのかを確かめてみることもできます。まずは自分の経験に近い案件を探すところから始めてみませんか。
初めての更新でも、30日前予告のルールは対象になりますか
対象になるかどうかは契約の期間で決まります。初めての更新であっても、契約の開始日からの通算期間が6か月以上になっていれば、更新を重ねて6か月以上になる業務委託として対象に当たります2。
稼働日数が週3日など少ない契約でも対象になりますか
対象を分けるのは稼働日数ではなく契約の期間です。週の稼働日数にかかわらず、6か月以上の業務委託、または更新を重ねて6か月以上になる業務委託であれば対象に当たります2。
地方在住の場合も、更新前に確認する材料は同じですか
確認する材料は契約の内容にもとづくもので、居住地によって変わるものではありません。開始日からの通算期間、基本契約の有無、伝えたい条件という順番は、地域にかかわらず同じように使えます。
副業として複数の案件を掛け持ちしている場合、期間はどう数えますか
期間の数え方は契約ごとに見ます。掛け持ちしている契約が複数あるなら、契約ごとに開始日からの通算期間を確認します2。基本契約があるかどうかも、契約ごとに個別に確認します3。
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出典・参考情報
*1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
*2 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
*3 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
*4 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」要請すれば協議になる(2025年12月・2026年9月確認)
*5 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」協議の広さ(2025年12月・2026年9月確認)
*6 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」向こうからは来ない(2025年12月・2026年9月確認)
*7 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」言えば動く(2025年12月・2026年9月確認)
*8 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」黙っていると進まない(2025年12月・2026年9月確認)
*9 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」協議のない据え置き(2025年12月・2026年9月確認)
*10 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」理由の回答義務(2025年12月・2026年9月確認)