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    案件で指名されるには何が要るのか?実績の示し方と条件を解説

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「案件で指名につながる示し方」を示す図です。売り込む/範囲を示す/記録を残すを並べています。強調しているのは範囲を示すです。

    📘 この記事でわかること

    • 窓口が仲介か再委託かで発注する側の義務が変わることと、取引条件の明示義務が及ぶ範囲
    • 競争にかかわる事業では外部への委託が最も多い形であることと、人材の量が不足していると答えた企業の割合が85.1%に上ること
    • 契約の手間や工数、モデル契約の認知、技術情報の収集が課題に挙がっていることと、指名につながる確認の順番

    問い合わせフォームを経由せず、担当者から直接依頼が届く。エンジニアとして案件に関わっていると、そうした場面に触れることがあります。指名は話し方や見せ方を磨いた結果というよりも、相手が抱えている不足と、自分が担える範囲が噛み合ったときに起こるものです。窓口の立場や、発注する側が抱えている課題を順に見ていくと、示し方の見当がつきやすくなります。

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    1. 窓口が仲介か再委託かで前提が変わる

    窓口の説明だけでは、発注する側に当たるかは決まらない

    案件を受けるとき、窓口となる相手が案件を直接発注しているのか、別の会社を経由しているのかは、案件情報だけでは分かりにくいものです。窓口が「仲介」を名乗っていても、その内実は取引ごとに異なります。

    公正取引委員会のパンフレットは、単に仲介をしている場合は発注する側に当たらないが、フリーランスへ再委託している場合や実質的に業務委託をしているといえる場合は当たるとしています1。窓口の呼び方ではなく、実際の関わり方で立場が変わるということです。

    実質的な業務委託かどうかは、関わり方の実態で判断される

    では、実質的に業務委託をしているといえるかは、どこで見分けられるのでしょうか。公正取引委員会は、委託の内容への関与の状況等、契約および取引実態を総合的に考慮して判断されるとしています2

    契約書に書かれた肩書きだけでなく、指示の出し方や成果物の受け渡し方まで含めて見られるということです。窓口の立場を漠然と捉えるより、こうした観点で整理しておくと、次に述べる明示義務の話ともつながります。

    この見分けを済ませておくと、次章で見る明示義務についても、自分に関わる話として理解しやすくなります。窓口の立場が曖昧なまま案件を進めると、後の章で扱う課題への向き合い方も見えにくくなります。

    窓口の3つの類型を整理する

    窓口の立場は、大きく3つに分けて整理できます。単に仲介をしている場合、フリーランスへ再委託している場合、そして実質的に業務委託をしているといえる場合です。前者は発注する側に当たりませんが、後の2つは当たります1。実質的に業務委託をしているかどうかは、委託の内容への関与の状況等、契約および取引実態を総合的に考慮して判断されます2。次の表に整理しました。

    窓口の形発注する側に当たるか判断のポイント
    単に仲介をしている場合当たりません仲介にとどまる関わり方1
    フリーランスへ再委託している場合当たります再委託という関わり方1
    実質的に業務委託をしていると言える場合当たります委託の内容への関与の状況等を総合的に考慮2

    自分が受けている案件の窓口が、この3つの類型のどれに近いかを整理しておくと、次章で見る明示義務の対象かどうかも判断しやすくなります。

    2. 受ける側にも明示の義務がある

    取引条件の明示義務は、フリーランス同士の取引にも及ぶ

    発注する側が果たす義務、という言い方をすると、自分には関係のない話に聞こえるかもしれません。ですが、取引条件の明示義務は、フリーランス同士の取引も対象です3

    窓口となっている相手が個人や小規模な事業者であっても、取引条件を明示する義務から外れるわけではありません。案件を受ける側が、この点を知っているかどうかで、やり取りの進め方も変わってきます。

    明示義務という言葉だけを見ると難しく感じられますが、要するに、取引条件を口頭やその場限りのやり取りで済ませず、確認できる形で示すという話です。

    明示できる形を、自分の側でも整えておく

    取引条件の明示義務があるということは、逆に言えば、明示された内容を確認できる立場に自分がいるということでもあります。案件の内容や条件があいまいなまま進んでしまう前に、明示を求める余地があります。

    窓口が仲介にとどまる場合と、再委託や実質的な業務委託に当たる場合とでは、この義務の重さも変わります1。前章で整理した3つの類型を思い出しながら、自分が受けている案件の窓口を確認しておくと安心です。

    相手の事情と自分の範囲が噛み合うところに指名がある

    ここまでで、窓口の立場と明示義務という、取引の前提を整理しました。ここから先は、発注する側がどのような事情を抱えているのかを見ていきます。指名は、その事情と自分が担える範囲が噛み合ったときに起こるものです。

    図1:指名までの噛み合わせ
    指名までの噛み合わせ 相手が抱えている 不足という前提 自分が担える範囲 を示すこと 指名につながる

    図の作成:Remogu編集部。指名につながる要素の関係を整理したもので、統計データではありません

    次章からは、発注する側がどのような開発の形を選び、どのような事情を抱えているのかを、公的な調査から見ていきます。

    3. 競争にかかわる事業では外部への委託が最も多い

    外部への委託が、開発の形として最も多く挙がっている

    発注する側は、開発をどのような形で進めているのでしょうか。IPAの調査では、競争にかかわる事業で、外部への委託による開発を行っている回答率が4割弱で最も多いという結果が示されています4

    自社の中だけで完結させるのではなく、外部の力を取り入れる形が、他の開発の形と比べても最も多く選ばれているということです。案件を受ける側にとっては、それだけ機会が生まれやすい領域とも言えます。

    開発を担う体制をすべて自社で抱えるのではなく、必要な場面で外部に委ねる形が広がっていると見ることもできます。案件を受ける側からすると、この動きに沿った関わり方を示せるかが一つの手がかりになります。

    開発の形の内訳を、図で確認する

    開発の形にはいくつかの選択肢がありますが、競争にかかわる事業では、外部への委託を行っていると答えた回答率が最も多いという結果です4。次の図に、その位置づけを示しました。

    図2:外部への委託が、最も多く挙がっている開発の形です
    開発の形の内訳 回答した企業が挙げた開発の形 外部への委託 4割弱 そのほかの開発の形

    出典:IPA「DX動向2025」(2025年6月)をもとに作成

    図に示した通り、外部への委託は他の開発の形と比べても大きな割合を占めています4。この位置づけを踏まえておくと、自分がどの場面で力を発揮できるかを考えやすくなります。

    割合の大きさだけでなく、外部への委託が選ばれる理由も見ておくと、自分が担える範囲を考えるときの手がかりになります。次章では、その理由の一つである人材の不足について見ていきます。

    4. 内製化が進まない理由に人材の不足がある

    人材不足が、内製化が進まない理由に挙がっている

    外部への委託が選ばれる背景には、内製化を進めたくても進められない事情があります。IPAの調査では、人材不足により内製化が進まない企業が多いことが示されています5

    内製化が進まないというのは、人材が届いていないという事情だけにとどまりません。開発を担う体制を自社の中だけで維持することが、以前より難しくなっているという事情の表れでもあります。

    案件を受ける側にとっては、この事情を理解しておくことが、自分の関わり方を考える手がかりになります。

    人材の量が不足していると答えた企業の割合は85.1%に上る

    内製化が進まない理由を、数字で見てみます。DXを進める人材の量が不足していると答えた企業の割合の合計は85.1%に上ります6

    人材の量が不足していると答えた企業の割合の合計が85.1%というのは、限られた企業だけの事情ではないことを示しています。

    図3:人材の量が不足していると答えた企業の割合は85.1%です
    相手が抱えている不足 DXを進める人材の量についての回答 人材の量が不足 85.1%

    出典:IPA「DX動向2025」(2025年6月)をもとに作成

    内製化が進まないことは、外部への委託の理由につながる

    内製化が進まない理由に人材の不足が挙がっていること5と、人材の量が不足していると答えた企業の割合が85.1%に上ること6を合わせて見ると、競争にかかわる事業で外部への委託が最も多い形として挙がっていた背景が見えてきます4

    人材の量が不足しているという事情は、次章でもう少し詳しく見ていきます。

    5. 人材の量が不足していると答えた企業が多い

    「量」の不足は、担い手の数そのものに関わる

    前章で見た85.1%という数字は、人材の「量」が不足していると答えた企業の割合です6。量という言葉が使われている点に注目すると、単に高度な技術力の話ではなく、担い手の数そのものが不足しているという事情が浮かび上がります。

    量が不足しているという状態では、案件の範囲を自分の中で完結させて進められる相手が、貴重な存在になりやすいと考えられます。

    案件を受ける側が、この事情を知らずにいると、相手がなぜ自分に声をかけたのかが見えにくくなります。量の不足という背景を知っておくことは、噛み合わせを理解する第一歩です。

    範囲が読める相手であることが、量の不足を補う手がかりになる

    人材の量が不足している企業にとって、案件ごとに一からやり取りの範囲を決め直す手間は、負担になりやすいものです。自分が担える範囲をあらかじめ示せる相手であれば、その負担を減らす手がかりになります。

    これは、話し方や見せ方の巧拙とは別の話です。相手が抱えている量の不足と、自分が担える範囲が噛み合うかどうかという、事実に基づいた噛み合わせの問題です。

    内製化が進まない企業ほど、外部の担い手を必要とする

    人材の量が不足し、内製化が進まない企業ほど5、外部への委託という開発の形を選びやすくなります4。案件を受ける側にとっては、この重なりを理解しておくことが、自分の立ち位置を考える手がかりになります。

    量の不足という事情の次に、契約そのものにまつわる課題も見ておきます。

    6. 契約の手間そのものが課題に挙がっている

    取引ごとの手間や工数が、課題に挙がっている

    発注する側が抱えている事情は、人材の量だけではありません。システム開発の契約では、取引ごとに手間や工数がかかる点を課題に挙げる企業が多いことも示されています8

    案件ごとに契約の内容を一から確認し、条件をすり合わせる作業は、発注する側にとっても負担です。この負担が、担い手を選ぶときの基準に影響することは十分に考えられます。

    取引条件をあらかじめ明示できる相手であれば、この手間を一定程度減らせると考えられます3

    モデル契約の認知や、情報収集の仕組みにも課題がある

    契約に関する課題は、手間や工数だけにとどまりません。モデル契約そのものを知らないとする企業も多いことが示されています9

    技術情報の収集についても、体系的な仕組みを持たず、個人に任されている企業が多いという実情があります10。契約の型や情報の集め方が、企業の中で十分に整っていない場面があるということです。

    3つの課題を、表で整理する

    ここまで見てきた3つの課題を整理すると、次の表のようになります。取引ごとの手間や工数8、モデル契約の認知9、技術情報の収集の仕組み10という、それぞれ性質の異なる課題です。

    課題内容
    取引ごとの手間や工数取引ごとに手間や工数がかかる点を課題に挙げる企業が多いこと8
    モデル契約の認知モデル契約そのものを知らないとする企業も多いこと9
    技術情報の収集体系的な仕組みを持たず、個人に任されている企業が多いこと10

    これらの課題は、案件を受ける側が自分の範囲をあらかじめ示せることで、いくらか和らげられる性質のものです。次章では、その示し方と確かめる順番を整理します。

    7. 指名につながる示し方と、確かめる順番

    指名は、示し方の巧拙ではなく噛み合わせで決まる

    ここまで見てきた、窓口の立場、明示義務の対象範囲、開発の形の内訳、人材の量の不足、契約の手間という要素は、どれも発注する側が抱えている事情です。指名は、これらの事情と自分が担える範囲が噛み合ったときに起こります。

    話し方や見せ方を磨くことよりも、相手がどこで困っているかを理解し、自分が担える範囲をそのまま伝えることの方が、結果として指名につながりやすくなります。

    確かめる順番を整理する

    相手の事情と自分の範囲を噛み合わせるには、確かめる順番があります。まず取引条件を明示できる形にしておくこと3。次に、内製化を進めるにあたっての課題を尋ねて実情を把握すること7。最後に、技術情報を体系立てて伝えることです10。この3つを順番に整理すると、次の表のようになります。

    順番確かめること
    1取引条件を明示できる形にしておくこと3
    2内製化を進めるにあたっての課題を尋ねて実情を把握すること7
    3技術情報を体系立てて伝えること10
    図4:取引条件の明示から、課題の把握、情報の整理までの順番
    示し方の順番 指名につながる確認の順番 1 取引条件を 明示できる形 2 課題を尋ねて 実情を把握 3 技術情報を 体系立てて 伝える

    図の作成:Remogu編集部。指名につながる確認の順番を整理したもので、統計データではありません

    窓口が仲介か再委託かは、どこで確認できますか

    契約書や業務委託契約の内容を確認すると、委託の内容への関与の状況等、契約および取引実態を総合的に考慮して判断される部分が見えてきます2。窓口の説明だけでなく、実際のやり取りの深さも合わせて見ていくと、実質的な業務委託かどうかの見当がつきやすくなります。

    取引条件の明示義務は、どんな相手にも及びますか

    取引条件の明示義務は、フリーランス同士の取引も対象です3。窓口が別のフリーランスであっても、明示の対象から外れるわけではありません。相手がどのような立場であっても、明示できる形を自分の側でも整えておくと、取引の入り口でつまずきにくくなります。

    内製化が進まない企業には、どのような事情がありますか

    人材不足により内製化が進まない企業が多いことに加え5、DXを進める人材の量が不足していると答えた企業の割合の合計は85.1%に上ります6。外部への委託を選ぶ背景には、こうした事情があります。

    窓口の立場、明示義務の対象範囲、相手が抱えている事情、確かめる順番。これらを一度整理しておくと、次に案件の窓口とやり取りするときに、自分の範囲を落ち着いて伝えられるようになります。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
    *2 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
    *3 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
    *4 IPA「DX動向2025」外に出る仕事(2025年6月・2026年9月確認)
    *5 IPA「DX動向2025」内製の壁(2025年6月・2026年9月確認)
    *6 IPA「DX動向2025」人の足りなさ(2025年6月・2026年9月確認)
    *7 IPA「DX動向2025」調査の対象(2025年6月・2026年9月確認)
    *8 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」契約の負担(2025年4月・2026年9月確認)
    *9 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」相手の前提(2025年4月・2026年9月確認)
    *10 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」知識の持ち方(2025年4月・2026年9月確認)