【案件の電子契約】メールやPDFでの明示が認められる条件を解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 案件の明示義務がフリーランス同士の取引にも及ぶことと、示される事項の最小限の範囲
- URLの記載やPDFの添付で明示ができることと、SNSなど消えやすい経路で内容を残しておく工夫
- 2026年1月に施行された明示事項の改正内容と、実際に多い明示義務違反の件数とその内訳
案件の契約条件をメールやチャットでやり取りする場面は増えています。書面を交わさずに条件を伝え合うことに、心もとなさを感じる場合もあります。フリーランス・事業者間取引適正化等法は、電子的な明示についても具体的な考え方を示しています。条件がどこにどう残るかを知っておくと、案件を受ける判断がしやすくなります。
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1. 明示は受ける側どうしの取引にも及ぶ
案件を受ける側どうしの取引も対象になる
案件を受ける立場になると、条件を示す義務は発注する側だけの話だと考えがちです。しかし、フリーランス・事業者間取引適正化等法が定める取引条件の明示義務は、フリーランス同士の取引も対象です1。受ける側として案件に関わるときも、この考え方を知っておくと、条件のやり取りに落ち着いて向き合えます。
スキルを生かした案件では、直接の発注者だけでなく、間に立つ別のフリーランスから仕事を受け取る場面もあります。この場合も、取引条件の明示義務が及ぶ範囲に含まれます1。誰から案件を受けているかにかかわらず、示された条件を確かめる姿勢は変わりません。
取引の相手が大きな企業か、同じフリーランスかという違いよりも、条件が明示されているかどうかのほうが、案件を安心して進められるかを左右します。相手の規模で判断を変えるのではなく、示された内容そのものを見る習慣が役立ちます。
受ける前に確かめておきたい考え方
案件を受ける前段階では、契約書がまだ交わされていない場合もあります。そうした場面でも、取引条件の明示義務という枠組みがあることを知っておくと、条件のやり取りに向き合いやすくなります。
明示される内容がどこまで及ぶかは次の章で詳しく見ていきますが、まずは対象がフリーランス同士の取引にも広がっている点を押さえておくと、案件選びの土台になります1。
次の章では、実際にどのような事項が明示されるのかを見ていきます。
2. 明示される事項が最小単位になる
検査完了期日と報酬に関する事項
示された条件のどこまでがそろっていれば十分なのか、基準がはっきりしないまま案件を受けてしまう場合があります。パンフレットは、給付の内容を検査する場合の検査完了期日や、報酬の額および支払期日が明示する事項に含まれるとしています2。この最小限の項目がそろっているかどうかを確認の起点にすると、条件の見え方が整理しやすくなります。
検査完了期日が示されていると、いつまでに成果物が確認されるのかが分かり、次の案件の予定を立てやすくなります。報酬の額と支払期日が示されていると、報酬の受け取りにまつわる見通しも立てやすくなります。
金額の大きさよりも、いつ検査が終わり、いつ支払われるのかという時期の明示のほうが、案件を安心して進められるかを左右します。
| 区分 | 明示される内容 |
|---|---|
| 検査に関する事項 | 給付の内容を検査する場合の検査完了期日2 |
| 金銭に関する事項 | 報酬の額および支払期日2 |
| 支払方法に関する事項 | 金銭以外の方法で報酬を支払う場合の支払方法に関すること3 |
支払方法に関する事項も対象になる
報酬の受け取り方は、金銭以外の方法が選ばれる場合もあります。パンフレットは、金銭以外の方法で報酬を支払う場合、支払方法に関することも明示する事項に含まれるとしています3。
受け取り方が示されていないまま案件が進むと、報酬がどのように届くのか分からないまま作業を終えることになりかねません。事前に示された支払方法を確認しておくと、案件の終盤で戸惑う場面を減らせます。
次の章では、この支払方法がどのように明示されるのかを、もう少し詳しく見ていきます。
3. 金銭以外で支払うときの支払方法も対象
支払方法が示されないと何が起きるか
報酬が金銭以外の方法で支払われる案件では、受け取り方自体をイメージしにくい場合があります。パンフレットは、金銭以外の方法で報酬を支払う場合、その支払方法に関することも明示する事項に含まれるとしています3。案件を受ける前に、報酬がどのような形で渡されるのかという点も、明示される事項の一つとして意識しておくと安心です。
支払方法が明示されないまま案件が進むと、成果物を納めたあとに、報酬の受け取り方について改めてやり取りが必要になる場合があります。あらかじめ示された内容を確認しておくと、こうした行き違いを避けやすくなります。
確認しておきたい支払方法の項目
確認しておきたい項目は、報酬の額や支払期日と並んで、支払方法に関することです3。これらが一つのまとまりとして示されているかどうかを見ておくと、案件全体の条件を把握しやすくなります。
支払われる金額の大きさよりも、どのような方法でいつ受け取るのかという明示の有無のほうが、案件を安心して進められるかどうかに関わります。
示された支払方法を確認する習慣は、案件を選ぶときの材料にもなります。
明示された条件を確かめながら、自分に合うリモート案件を見る →
次の章では、電子的にこれらの事項を明示する方法を見ていきます。
4. URLの記載やPDFの添付も認められる
電子的に明示する方法の種類
契約条件を書面で交わす時間が取りにくい案件では、電子的なやり取りだけで済ませたい場合があります。パンフレットは、明示事項を載せたウェブページのURLをメッセージに記載する方法や、PDF等の電子ファイルを添付して送る方法も認められるとしています4。書面を交わさなくても、これらの方法で明示が成立する案件があることを知っておくと、やり取りの選択肢が広がります。
メールの本文に直接明示事項を書き込む方法のほかに、URLやPDFを介して伝える方法も選べます4。案件ごとにやり取りの手段が違っても、明示という目的が満たされているかどうかを見る視点は変わりません。
出典:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月改訂)をもとに作成
方法によって変わる残り方
URLで案件条件を示す方法は、リンク先のページ内容が変わることもあるため、確認した時点の状態を残しておくと安心です。PDFの添付であれば、ファイル自体を手元に保管しておくことで、案件条件をあとから見返しやすくなります4。
URLを記載するだけの明示よりも、PDFを添付して保管しておく明示のほうが、あとから条件を確かめやすい場合があります。
| 電子的な方法 | 残し方の注意点 |
|---|---|
| メール本文への記載 | 送信済みのメールを保存しておくと、あとから見返しやすくなります |
| ウェブページのURLの記載 | リンク先のページ内容が変わることもあるため、確認した時点の状態を残しておくと安心です |
| PDF等の電子ファイルの添付 | ファイルを保管しておくと、日付とあわせて残ります |
| SNSのメッセージ等の利用 | スクリーンショット等で明示された内容を保存しておくとよい方法です5 |
電子的な方法を選ぶときは、明示されるかどうかだけでなく、あとで確認できるかどうかも合わせて見ておくと安心です。次の章では、条件が消えてしまう場面について見ていきます。
5. 消えると困るので残し方に注意がある
消えやすい経路と残りやすい経路
チャットやメッセージアプリでのやり取りは手軽な一方、あとから見返そうとすると、履歴が見つからず困る場合があります。パンフレットは、SNSのメッセージ等を利用する場合、スクリーンショット等で明示された内容を保存しておくとよいとしています5。やり取りの手段を選ぶときから、あとで見返せるかどうかを意識しておくと、案件条件の確認で困る場面を減らせます。
図の作成:Remogu編集部。案件条件の残り方の傾向を整理したもので、統計データではありません
自動で消える設定のあるメッセージアプリや、口頭だけのやり取りは、明示された内容が手元に残りにくい経路です。一方、メール本文への記載やPDFの保管、スクリーンショットの保存は、あとから見返しやすい経路になります。
SNSメッセージを利用するときに意識したいこと
SNSのメッセージ等で案件条件を伝え合う場面は、リモートで案件を進める中でも珍しくありません。この場合、パンフレットはスクリーンショット等で明示された内容を保存しておくとよいとしています5。
やり取りの手軽さよりも、あとから見返せる形で残っているかどうかのほうが、案件条件を確認するときには重要になります。
保存の手間は小さくても、あとで条件を確かめられるという意味は小さくありません。案件を受けるときの記録の残し方として意識しておきたい点です。
次の章では、電子的なやり取りが増えている背景にある、契約の手間について見ていきます。
6. 契約の手間が課題に挙がっている背景
システム開発の契約で挙がる課題
契約書を都度作成し直す作業は、案件が変わるたびに負担として積み重なっていきます。IPAの調査では、システム開発の契約について、取引ごとに手間や工数がかかる点を課題として挙げる企業が多いという結果が示されています6。この背景を知っておくと、電子的な明示が広がっている理由も見えてきます。
契約のたびに書類を作り直す手間は、発注する側だけでなく、案件を受ける側にとっても関わりのある話です。手続きが軽くなれば、条件のやり取りそのものに時間を割きやすくなります。
電子化が手間を減らす方向に働く理由
メールやPDF、ウェブページのURLといった電子的な方法で明示が成立する仕組みは4、書類を都度作り直す負担を軽くする方向に働きます。
紙の書類を毎回そろえる手間よりも、電子的な記録を残す仕組みのほうが、契約ごとの負担を軽くしやすいという見方ができます。
手間が軽くなることは、案件を受ける側にとっても、条件を確認するやり取りに落ち着いて向き合える時間につながります。案件の90%以上がフルリモート可能です1から、こうしたやり取りも画面越しで完結させやすくなります。
条件のやり取りが電子化された案件を確認する →
次の章では、この分野で実際に行われた制度の改正と、明示に関する不備の実態を見ていきます。
7. 制度の改正と、実際に多い不備
施行規則の改正で加わったこと
制度は一度決まったら変わらないと思われがちですが、実際には運用の中で見直しが重ねられています。フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行規則の改正は、2025年10月1日に公布され、2026年1月1日に施行されました7。この改正の内容を知っておくと、いま明示される事項がどのような経緯で定められているかが見えてきます。
この改正では、明示するときに示さなければならない事項を定める内容が加わりました8。示される事項の範囲は、制度の見直しとともに整理されてきた経緯があります。
実際に多い明示義務違反
制度が整えられていても、実際の運用では明示に関する不備が見られます。令和7年度の運用状況では、取引条件の明示義務違反が1,126件(41.3%)でした9。
出典:公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」(2026年6月)をもとに作成
この明示義務違反には、取引条件を示していない場合のほか、一部の事項の明示に不備がある場合も含まれます10。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 取引条件の明示義務違反 | 1,126件(41.3%)9 |
| 違反に含まれるもの | 取引条件の不明示、一部の事項の明示不備10 |
違反の件数の大きさよりも、その中に不明示だけでなく明示不備も含まれているという内訳のほうが、日々の案件でどこに気をつければよいかを示しています。
図の作成:Remogu編集部。案件条件を確認するときの観点を整理したもので、統計データではありません
示された内容が最小限の事項を満たしているか、あとから見返せる形で残っているかを確かめる習慣が、案件を選ぶときの支えになります。
電子的な方法だけで明示は成立しますか
パンフレットは、明示事項を載せたウェブページのURLをメッセージに記載する方法や、PDF等の電子ファイルを添付して送る方法も認められるとしています4。書面を交わさない案件でも、これらの方法で明示が成立する場合があります。あとから見返せる形で残しておくと、条件の確認がしやすくなります。
施行規則の改正でこれまでと何が変わりましたか
2025年10月1日に公布され、2026年1月1日に施行された改正では7、明示するときに示さなければならない事項を定める内容が加わりました8。この整理によって、示される事項の範囲がより具体的になりました。
明示義務違反が多いのはどのような場合ですか
令和7年度の運用状況では、取引条件の明示義務違反が1,126件(41.3%)でした9。この中には、取引条件を示していない場合のほか、一部の事項の明示に不備がある場合も含まれます10。示された内容が最小限の事項を満たしているかを案件ごとに確かめておくと、こうした不備を避けやすくなります。まず登録して、案件ごとに示される条件を確かめてみるのも一つの選び方です。
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出典・参考情報
*1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
*2 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月・2026年9月確認)
*3 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」明示の範囲(2026年7月・2026年9月確認)
*4 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」明示の方法(2026年7月・2026年9月確認)
*5 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」残し方(2026年7月・2026年9月確認)
*6 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」契約の負担(2025年4月・2026年9月確認)
*7 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」規則の改正(2026年6月・2026年9月確認)
*8 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」示す項目(2026年6月・2026年9月確認)
*9 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」2番目に多い違反(2026年6月・2026年9月確認)
*10 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」不備も含む(2026年6月・2026年9月確認)