医療DXの案件とは?電子カルテ情報共有とFHIRで関わる開発

📘 この記事でわかること
- 電子カルテ情報共有サービスが全国医療情報プラットフォームの一つであることと、医療機関・薬局・本人が情報を共有できる範囲
- 提供される4つのサービスの中身と、健診結果などを閲覧できる立場が医療機関・保険者・本人に分かれること
- 医療データの記述仕様であるHL7FHIRの役割と、案件でエンジニアが関わる標準対応・変換・連携の広がり
医療分野でも、電子カルテの情報を全国で共有する仕組みづくりが進んでいます。中心となるのが厚生労働省の電子カルテ情報共有サービスで、医療機関や薬局をまたいで患者の情報をやり取りする基盤です1。仕組みを支えているのは、施設ごとに形式が異なる記録を一つの標準に整えるデータ設計の力で、これはデータ標準化やシステム連携を積み重ねてきたエンジニアの領域と重なります。この記事では、電子カルテ情報共有サービスの全体像と、エンジニアが関わる標準・技術解説書、そして案件としての関わり方を整理します。
1. 医療DXは、医療情報を全国で共有する動きです
医療DXという言葉は幅広く使われますが、案件として関わる場面ではもう少し輪郭がはっきりします。厚生労働省が構築している電子カルテ情報共有サービスは、全国医療情報プラットフォームと呼ばれる仕組みの一つで、全国の医療機関や薬局などで患者の情報を共有するためのものです1。個々の病院や薬局が別々に抱えてきた記録を、全国という単位でつなぎ直す取り組みだと捉えると、案件の中身が具体的に見えてきます。医療DXの案件で何を作ることになるのかは、調べ始めると次第に気になってくるところです。医療という領域で使われる技術は特殊に見えますが、実際に手を動かすのはデータの流れを設計し、記録の形式を揃える作業であり、これまでの経験の延長線上で捉えられます。
電子カルテ情報共有サービスは全国医療情報プラットフォームの一つ
電子カルテ情報共有サービスは、単独の仕組みというより全国医療情報プラットフォームの一部として位置づけられています1。一つの施設内で情報を整えて終わりにするのではなく、全国という単位で情報の流れを設計し直す取り組みなので、関わるエンジニアには一施設の最適化よりも、全国規模での整合性を見通す視点が求められます。局所の使いやすさよりも、全体の整合性を優先する判断が増えると考えておくと、案件の輪郭をつかみやすくなります。具体的には、対象になるデータの範囲や、施設をまたいだ処理の順序といった設計判断が、通常のシステム開発よりも早い段階で求められる場面が増えてきます。
出典:厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」をもとに作成
全国の医療機関・薬局で患者情報を共有
共有の対象になるのは、医療機関や薬局で扱われている患者の情報です1。これまで施設ごとに抱え込まれていた記録を、必要な場面で他の医療機関からも参照できるようにする取り組みで、情報を金庫にしまっておく発想から、必要な相手に鍵を渡す発想へ移す仕組みだと言えます。参照する側の医療機関にとっても、初診の患者について過去の記録をゼロから聞き取る負担が減るという点で、日々の業務に直結する変化になります。次に押さえておきたいのは、この共有サービスが具体的にどんなサービスを提供しているかという点です。
医療DXで押さえておきたい基本用語
案件の説明を読むと、全国医療情報プラットフォーム・電子カルテ情報共有サービス・HL7 FHIR・バリデーションといった用語が並び、どれが何を指すのか整理しづらく感じることがあります。以下の表は、この記事で扱う基本用語と、その内容、案件との関わり方をまとめたものです。まず用語の位置関係を押さえておくと、後段のFHIRやデータ変換の説明が理解しやすくなります。似た言葉が並ぶ分野ほど、最初に用語の関係を整理しておくことが、案件の説明を正確に読み解く近道になります。
| 用語 | 内容 | 案件との関わり |
|---|---|---|
| 全国医療情報プラットフォーム | 全国規模で医療情報を共有する仕組み全体を指す呼び方 | 案件の位置づけを理解する土台になる |
| 電子カルテ情報共有サービス | 全国医療情報プラットフォームの一つで、医療機関・薬局間の情報共有を担う | 本記事で扱う中心のサービス |
| HL7 FHIR | 医療データを構造化して記述するための仕様 | データ変換・実装の基準になる |
| バリデーション | 変換したデータが仕様どおりかを確かめる検証作業 | 実装工程で欠かせない作業 |
| システムベンダ向け技術解説書 | 開発者向けに公開されている技術解説の資料 | 実装時に参照する一次情報 |
2. 提供される4つのサービス
電子カルテ情報共有サービスが提供するサービスは、次の4点です2。診療情報提供書共有・健診結果閲覧・臨床情報閲覧・患者サマリー閲覧という4つの機能に分かれており、それぞれが扱う文書と目的が異なります。全体を一度に把握しようとせず、一つずつ役割を確認していくと、案件で担当する範囲がはっきりしてきます。一つの巨大なシステムに全部を任せるのではなく、機能ごとにサービスを分けて設計している点は、案件の担当範囲を見極めるうえでも手がかりになります。
4つのサービスとその内容
4つのサービスは、それぞれ扱う文書の種類が異なります2。診療情報提供書共有は医療機関間で紹介状にあたる文書を共有し、健診結果閲覧は健診の結果を、臨床情報閲覧は診療の経過に関わる情報を、患者サマリー閲覧は退院時サマリーなどをまとめて扱います。一つの箱に何でも詰め込むのではなく、文書の性質ごとにサービスを分けている点が、この仕組みの設計の特徴です。扱う文書が変われば、必要になるデータ項目や検証の観点も変わるため、どのサービスを担当するかによって、案件で求められる知識の重心も変わってきます。
図の作成:Remogu編集部。電子カルテ情報共有サービスが提供する機能を整理したもので、統計データではありません
閲覧できる対象は医療機関・保険者・本人
例えば健診結果は、医療保険者及び全国の医療機関等や本人等が閲覧できるサービスとして共有されます3。誰が・どの情報を見られるかがサービスごとに定められているため、案件で設計に関わる際は、閲覧の範囲を機能ごとに確認する作業が欠かせません。閲覧できる立場が広いサービスほど、権限管理や表示の出し分けを丁寧に設計する必要が出てきます。権限の設計は、単に見せる・見せないを分けるだけでなく、誰がどの立場で情報を求めているかを正しく判定する仕組みとセットで考える必要があります。これらを支えているのが、文書の記述方法を統一する共通の仕様です。
3. エンジニアが関わる標準:HL7 FHIR
医療DXの案件でエンジニアが直接関わることになるのが、文書の記述仕様です。共有する3つの文書、つまり健康診断結果報告書・診療情報提供書・退院時サマリーの記述仕様には、HL7 FHIR記述仕様が用いられています5。FHIRという名前だけを聞くと専門的に感じますが、施設ごとにばらばらだった記録の書き方を一つの型に揃える仕組みだと考えると、データ連携の経験がある人にはなじみやすい話になります。標準化そのものは医療分野に限った考え方ではなく、業界をまたいで使われてきた設計手法なので、経験の持ち込み方を工夫すれば十分に対応できる領域です。
3文書の記述仕様にHL7 FHIRを使用
FHIRは、医療データを構造化して表現するための記述仕様で、健康診断結果報告書・診療情報提供書・退院時サマリーという3つの文書に適用されています5。独自形式で管理してきた記録を、決まった型に落とし込む作業が発生するため、データモデルの設計経験やスキーマ変換の経験が、そのまま活かせる領域です。専門用語を覚えることよりも、記録の構造を型に合わせる作業の経験のほうが、案件では重宝されます。記録の項目一つひとつを、決められた型のどこに対応させるかを判断する作業は、地味に見えて、後工程のバリデーションの精度を左右する重要な工程です。
出典:厚生労働省医政局「電子カルテ情報共有サービスについて」をもとに作成
データ変換・バリデーションと技術解説書
記述仕様に沿ってデータを登録する際には、変換とバリデーションという二つの作業が発生します。開発者向けには、システムベンダ向け技術解説書が公開されており4、実装時に参照する資料として位置づけられています。手元のデータをFHIRの型に変換し、仕様どおりかどうかを検証する作業は、他分野のデータ連携で行ってきた変換・検証の工程と重なる部分が多く、経験を横展開しやすい領域だと言えます。検証の観点は仕様書だけでは読み取りにくいことも多く、実装を重ねながら解説書と照らし合わせて確認していく地道な作業が発生します。
FHIR対応で確かめておきたい観点
FHIRへの対応と一口に言っても、案件によって求められる作業の深さは異なります。以下の表は、案件を検討する際に確認しておきたい観点を、記述仕様の理解からバリデーションの実装、参照資料の範囲まで整理したものです。どの観点がどこまで求められるかは案件によって異なるため、条件を確認する材料として使えます。特に技術解説書の参照範囲は、案件によって求められる自走の度合いが変わる部分なので、早めに確認しておく価値があります。こうした標準への対応は、記述の正確さを整えるだけでなく、医療の現場に具体的な価値を返す取り組みでもあります。
| 観点 | 確認するポイント |
|---|---|
| 記述仕様の理解 | どの文書にFHIRが適用されるか、記述の構造を把握しているか |
| データ変換の設計 | 既存形式からFHIRへどう変換するかの設計方針 |
| バリデーションの実装 | 変換後のデータを検証する仕組みをどう組み込むか |
| 技術解説書の参照範囲 | システムベンダ向け技術解説書のどこまでを参照して進めるか |
4. 案件の意義と、経験を活かす関わり方
標準への対応やデータ変換は地味な作業に見えますが、その先には具体的な意義があります。平時には見えにくい価値でも、緊急時に必要な情報が施設をまたいで届く状態をつくる作業だと考えると、案件に取り組む意味が具体的になります。地道な変換やバリデーションの積み重ねが、離れた場所にいる患者やその情報を必要とする医療機関に届く価値へとつながっている点は、案件に取り組む上での支えになります。ここからは、この案件がどんな価値につながるのか、そしてどんな関わり方ができるのかを見ていきます。
情報共有がもたらす救急・災害時の安全性
救急搬送や災害時は、患者本人が自身の病歴や服薬情報を十分に説明できない場面があります。そうした状況でも、電子カルテ情報共有サービスを通じて必要な情報が共有されていれば、搬送先の医療機関がより安全な診療を行いやすくなります6。平時の設計・実装の丁寧さが、緊急時の安全性につながるという点は、この案件に関わる意義そのものです。普段の業務では目に見えにくい部分ですが、施設をまたいだ情報の流れを整えることが、いざという場面での安全性を底上げする土台になります。
図の作成:Remogu編集部。医療データの案件で関わる技術領域を整理したもので、統計データではありません
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リモート中心でも関われる案件
標準対応やデータ変換、システム連携といった作業は、施設に常駐しなくても進めやすい性質を持っています。Remoguでは、案件の90%以上がフルリモート可能です7。医療という社会性の高い領域に関わりながら、働く場所を選べる余地が大きい点は、これまで積み上げてきたデータ設計の経験を活かしたい人にとって、条件を確かめる価値がある要素です。常駐が前提になりにくい分、クライアントとのやり取りは文書やオンラインでの協議が中心になり、成果物や進め方をこまめに言語化する姿勢が求められます。
まずは登録して、自分の経験に合う条件を確かめる →
案件で確かめておきたい観点
医療DXの案件を検討する際は、報酬や技術要素だけでなく、関わり方の条件も含めて確認しておくと、参画後の認識のずれを防ぎやすくなります。以下の表は、対象システムの範囲からリモートでの関わり方まで、確認しておきたい観点をまとめたものです。案件ごとに条件は異なるため、気になる案件があれば、募集内容を直接確かめることをおすすめします。特に情報の取り扱いに関する観点は、他分野のデータ連携案件よりも丁寧に確認しておきたい部分です。標準への対応や案件の意義を押さえたところで、次に触れておきたいのが、医療情報という機微な情報を扱う際の前提です。
| 観点 | 確認するポイント |
|---|---|
| 対象システムの範囲 | どのシステム・どの文書を対象にした案件か |
| 標準対応の範囲 | FHIRへの変換・バリデーションのどこを担当するか |
| リモートでの関わり方 | 常駐の要否や、稼働できる時間・頻度の条件 |
| 情報の取り扱い | 機微な情報を扱う前提での安全管理の体制 |
5. 機微な情報を扱う前提を押さえる
医療DXの案件で扱う情報には、病歴や診療内容など機微な情報が含まれます。標準対応やデータ変換に関わる前提として、この点は一度押さえておく必要があります。
医療情報は機微な情報であり、安全管理が伴う
医療情報を扱う案件では、通常のデータ連携以上に慎重な安全管理が求められます。具体的な安全管理の考え方や措置については、個人情報を扱う案件を整理した別記事で詳しく扱っているので、あわせて確認しておくと、案件を選ぶ際の判断材料が増えます。普段のデータ連携案件で培ってきた守秘や取り扱いの意識を、医療という領域の重みに合わせてもう一段引き上げる感覚を持っておくと安心です。ここでは、医療情報が機微な情報であるという前提を押さえた上で、次に進みます。
関わり方は案件ごとに確かめる
安全管理の枠組みは案件によって整備の程度が異なるため、参画前にクライアントとどのように協議できるかを確かめておくと安心です。これまで整理してきた標準対応やデータ変換の経験を、機微な情報を扱う前提とあわせて振り返ると、自分がどの立ち位置で関われそうかが見えやすくなります。条件をクライアントと協議する段階で、情報の取り扱いについて具体的にすり合わせておくことが、参画後の認識のずれを防ぐ近道です。
6. まとめ
- 電子カルテ情報共有サービスは全国医療情報プラットフォームの一つで、全国の医療機関・薬局で患者情報を共有する仕組みです
- 提供されるサービスは4点で、それぞれ扱う文書と閲覧できる立場が異なります
- 記述仕様にはHL7 FHIRが用いられ、データ変換とバリデーションの経験が活きる領域です
- 情報共有は救急・災害時の安全な診療につながり、リモートを中心とした関わり方も選べます
- 医療情報は機微なため、安全管理の前提を確認した上で関わることが欠かせません
これまで積み上げてきたデータ標準化やシステム連携の経験は、医療DXという社会性の高い領域でも十分に活かせます。説明を読むだけで終わらせず、実際の案件の条件を見比べてみると、自分の経験がどこで活きるのかが具体的につかめてきます。まずは、医療データやデータ連携に関わるリモート案件がどんな条件で並んでいるかを見比べるところから始めてみましょう。気になる案件があれば、登録して詳しい条件を確かめることが、次の一歩になります。
7. よくある質問
医療DXの案件では何を作ることになりますか
電子カルテ情報共有サービスに関わる案件では、施設ごとに異なる記録をHL7 FHIRの記述仕様に変換する処理や、変換後のデータが仕様どおりかを確かめるバリデーションの実装が中心になります5。開発時にはシステムベンダ向け技術解説書を参照しながら進める案件もあり、記述仕様への理解を実装に落とし込む工程が求められます4。文書ごとに必要なデータ項目や検証の観点が異なるため、担当する文書の種類を早い段階で確認しておくと、作業の見通しが立てやすくなります。
どんな技術経験が活きますか
データモデルの設計やスキーマ変換、他システムとのデータ連携を担当してきた経験が直接活きる領域です。医療分野特有の知識よりも、記録の構造を決まった型に合わせる作業や、変換後のデータを検証する作業の経験のほうが、案件では重宝されます。特にデータの意味を保ったまま形式を変換する経験や、変換後のデータを検証するテスト設計の経験は、医療分野に限らず高く評価されやすい領域です。
医療の専門知識は必要ですか
記述仕様であるFHIRへの理解や、システムベンダ向け技術解説書を読み解く力は必要になりますが、医療行為そのものに関する専門知識までは前提とされていません。臨床や診療の是非を判断する場面はなく、あくまで情報を正しく変換・共有する仕組みづくりに軸足があります。扱う情報が機微であることを踏まえた安全管理の意識は欠かせません。
医療DXの案件はリモートで関われますか
施設への常駐が前提になりにくい標準対応・データ変換・システム連携が中心のため、リモートで関わりやすい案件が中心です。常駐を前提にした働き方よりも、成果物と進め方をこまめに共有しながら進めるスタイルに慣れておくと、リモートでの参画がよりスムーズになります。具体的な条件は案件ごとに異なるので、まずは登録して自分の経験に合う条件を確かめてみましょう。
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医療DXの案件は、標準仕様への対応からデータ変換、システム連携まで関わり方が幅広くあります。まずは医療データやデータ連携のリモート案件が、いまどんな条件で並んでいるかを見てみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」(2025年6月)
*2 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」(2025年6月)
*3 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」(2025年6月)
*4 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」(2025年6月)
*5 医政局「電子カルテ情報共有サービスについて」(2024年9月)
*6 医政局「電子カルテ情報共有サービスについて」(2024年9月)
*7 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能