個人情報を扱う案件で押さえる安全管理措置の4つの柱

📘 この記事でわかること
- 個人データを扱う事業者に安全管理措置が求められる法的な背景と、組織的・人的・物理的・技術的の4つに整理された全体像
- エンジニアが実装するアクセス制御・不正アクセス対策の具体例と、委託を受ける側として求められる監督の仕組み
- 安全管理措置を運用で続ける自己点検・監査の考え方と、個人データを扱う案件をリモートで選ぶときの見方
個人データを扱うシステムの案件では、設計や実装の場面で安全管理措置という語がたびたび出てきます。個人情報保護法は、個人データを取り扱う事業者に安全管理措置を講じることを求めており、その一部はエンジニアが手を動かす技術的な対策として現れます。委託を受ける側として案件に関わるときは、何を整えればよいか、どこまでが自分の役割かを押さえておくと、任される場面での戸惑いが減ります。この記事では、法が求める安全管理措置の全体像から、エンジニアが実装する技術的措置、委託先としての立場までを順に整理します。
1. 個人データを扱う案件では、安全管理措置が求められます
個人データを扱う事業者に課される義務
顧客データや会員情報を扱うシステムに関わると、開発の範囲がそのままデータの取り扱いにも及びます。個人情報保護法は、個人データを取り扱う事業者に安全管理措置を講じることを求めており1、これは努力目標ではなく法律上の義務として位置づけられています。案件の要件定義や設計の打ち合わせで「安全管理措置」という言葉が出てきたときは、その背景にこの義務があると捉えると、求められる水準の理由が見えてきます。
だから案件でも設計・実装に関わる
義務を負うのは個人情報を取り扱う事業者ですが、実際にシステムを設計し実装するのはエンジニアです。仕様を決める段階から安全管理措置を織り込んでおくほうが、後から手を加えるよりも作業の負担が軽くなります。案件の初期に確認しておきたい事項として安全管理措置の考え方を押さえておくことは、設計を任される側としての信頼にもつながります。
出典:個人情報保護委員会『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)』をもとに作成
安全管理措置の全体像
個人情報保護法が求める安全管理措置は、基本方針の策定や規律の整備を土台に、組織的・人的・物理的・技術的の4領域と、外的環境の把握を合わせて整理されています2。案件に関わるときにどの領域を誰が担うのかを俯瞰しておくと、自分が実装で関わる部分と、発注側が組織として整える部分の切り分けがしやすくなります。全体像を表1にまとめます。
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 基本方針の策定 | 個人データの適正な取扱いに関する事業者としての方針を定める |
| 規律の整備 | 取扱方法や担当者の役割分担などの規律を整える |
| 組織的安全管理措置 | 体制の整備や取扱状況を確認する仕組みを設ける |
| 人的安全管理措置 | 個人データを扱う働き手への教育や監督を行う |
| 物理的安全管理措置 | 個人データを扱う区域や機器を物理的に管理する |
| 技術的安全管理措置 | アクセス制御や不正アクセス対策などシステム面の対策を講じる |
| 外的環境の把握 | データを取り扱う国・地域の制度等の状況を把握する |
安全管理措置が具体的に何を指すのかを知るために、まずはこの全体像のうち4つの柱の内訳を確認していきます。
2. 講ずべき措置は4つの柱に整理されています
組織的・人的・物理的・技術的の4つ
個人情報保護委員会のガイドラインでは、講ずべき安全管理措置は組織的・人的・物理的・技術的の4つに整理されています2。組織的措置は体制や規程の整備、人的措置は教育や監督、物理的措置は区域や機器の管理、技術的措置はシステム面の対策というように、それぞれ担う領域が分かれています。案件で自分が関わるのはどの領域かを意識すると、求められる作業の範囲がはっきりします。
加えて基本方針・規律の整備・外的環境の把握
4つの措置に加えて、基本方針の策定と規律の整備が土台として置かれ、データを取り扱う国や地域の制度等の状況を把握する外的環境の把握も安全管理措置の一部です2。土台となる方針や規律は発注側の事業者が整えるものですが、案件に関わるエンジニアがその存在を知っておくと、要件の背景を理解したうえで設計に取り組めます。
出典:個人情報保護委員会『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)』をもとに作成
このうち、エンジニアが直接手を動かすのは技術的安全管理措置です。次にその具体例を見ていきます。
3. エンジニアが実装する「技術的安全管理措置」
アクセス制御で範囲を限定
技術的安全管理措置の具体例として、アクセス制御を実施し、担当者と取り扱う個人情報データベース等の範囲を限定することが挙げられています3。権限設計やロールベースのアクセス制御は、まさにこの要請を満たすための実装にあたります。誰が、どのデータベースの、どの範囲まで扱えるのかを設計段階で明確にしておくことが、実装の出発点になります。
不正アクセス・不正ソフトから保護する仕組み
もう一つの具体例は、個人データを取り扱う情報システムを外部からの不正アクセスや不正ソフトウェアから保護する仕組みの導入です4。ファイアウォールの設定やログの監視、脆弱性への対応といった実装は、この仕組みを具体化したものと位置づけられます。案件の技術要件にこうした項目が並ぶ理由を理解しておくと、設計の意図を捉えやすくなります。
出典:個人情報保護委員会『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)』をもとに作成
技術的措置で確かめる観点
技術的安全管理措置は、アクセス制御と不正アクセスへの対策という2つの具体例を中心に整理されています3。担当者ごとに扱える個人情報データベース等の範囲を限定する仕組みに加えて、外部からの不正アクセスや不正ソフトウェアから情報システムを保護する仕組みも欠かせません4。設計や実装の段階でどこまで対応できているかを確かめる際に押さえておきたい観点を、表2に整理します。
| 観点 | 確かめる内容 |
|---|---|
| アクセス権限の設計 | 担当者ごとに扱える個人情報データベース等の範囲が限定されているか |
| 権限の見直し | 異動や案件終了時にアクセス権限を棚卸しし、不要な権限を外しているか |
| 外部からの侵入対策 | ファイアウォールや通信の制御で不正アクセスを防ぐ仕組みがあるか |
| 不正ソフトウェア対策 | ウイルス対策ソフトの導入や脆弱性への対応が続けられているか |
| 記録と監視 | アクセスログを記録し、異常を検知できる状態になっているか |
案件では、こうした技術的な実装だけでなく、自分がどの立場で関わっているのかも押さえておきたいところです。
4. 委託を受ける側(委託先)としての立場
委託する側は委託先に必要かつ適切な監督を行う義務
個人データの取扱いを委託する場合、委託した側は委託を受けた者に対して必要かつ適切な監督を行う義務を負うと定められています5。案件でシステムの開発や運用を任されるフリーランスは、まさにこの「委託を受けた者」にあたります。発注側が監督責任を持つ一方で、委託先が実際にどのような水準で個人データを扱っているかが、その監督の対象になります。
フリーランスは委託先=求められる水準を整える
委託先として案件に関わるときは、発注側から示される要件だけでなく、自分の作業環境や実装が安全管理措置の水準を満たしているかを、案件ごとに確かめる姿勢が求められます。個別の適法性の判断は契約内容や案件の性質によって異なるため、迷う場合は契約書の記載や個人情報保護委員会の資料を確かめるか、専門家に相談することが安心につながります。安全管理措置を整えることでリスクを下げられますが、対策を講じてもリスクをゼロにできるとは限らない点も踏まえておくと安心です。
出典:個人情報保護委員会『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)』をもとに作成
個人データを扱うリモート案件の条件を確認する →
措置は一度整えて終わりではなく、運用の中で続けていくことが求められます。次に、その運用と案件選びについて見ていきます。
5. 運用で続ける(点検・監査)と、案件を選ぶ
定期的な自己点検と監査
組織的安全管理措置の例として、取扱状況の定期的な自己点検と、他部署や外部の者による監査の実施が挙げられています6。実装した仕組みは、作った時点で終わりではなく、運用の中で継続的に確かめられる対象です。案件に関わるエンジニアにとっても、点検や監査の対象になり得る前提で設計や記録を残しておくことが、後々の説明のしやすさにつながります。
個人データを扱う案件はリモート中心でも関われる
個人データを扱う案件だからといって、常駐や対面での作業が前提になるわけではありません。安全管理措置の考え方を押さえておけば、場所に縛られずに個人データを扱う案件に関わる選択肢が広がります。
案件参画前のチェック
個人データを扱う案件に参画する前に確認しておくと、委託先としての立場を安心して進めやすくなる項目があります。技術的な実装の観点だけでなく、契約や運用の面も含めて、案件ごとに確かめておきたい観点があります。参画後にすり合わせるよりも、事前に押さえておくほうが、発注側と委託先の双方にとって認識のずれが少なくなります。確認しておきたい観点を表3にまとめます。
| 確認する項目 | 内容 |
|---|---|
| 取り扱うデータの範囲 | 個人データのどの範囲を、どの工程で扱うのかを確認する |
| アクセス権限の設計 | 自分に付与される権限の範囲と、その根拠を確認する |
| 委託契約の内容 | 委託元から求められる安全管理措置の水準や報告方法を確認する |
| 点検・監査への対応 | 自己点検や監査が発生した場合の協力範囲を確認する |
| 稼働の進め方 | リモートでの稼働が可能かどうかを、案件ごとに確認する |
安全管理措置の水準が明確な案件を見る →
個人データを扱う案件は、技術面でも運用面でも確かめておきたい観点がありますが、裏を返せば、水準を整えているエンジニアほど安心して任される場面が増えるということでもあります。次に、ここまでの内容を整理します。
6. まとめ
ここまで、個人データを扱う案件で押さえておきたい安全管理措置を整理してきました。
- 個人データを扱う事業者には安全管理措置を講じる義務があり1、組織的・人的・物理的・技術的の4つに整理されています2
- エンジニアが実装するのは技術的措置で、アクセス制御による範囲の限定3と、不正アクセス・不正ソフトウェアからの保護4が具体例です
- 委託を受ける側として案件に関わるときは、委託元から必要かつ適切な監督を受ける立場にあります5
- 措置は一度整えて終わりではなく、定期的な自己点検や監査を通じて運用を続けることが求められます6
- Remoguでは、案件の90%以上がフルリモート可能です7。安全管理措置の考え方を押さえておくことは、個人データを扱う案件に安心して関わるための土台になります
ここまでの内容を踏まえると、次に取れる一歩は、まず自分の経験に合う案件がどのような条件で並んでいるかを見てみることです。個人データを扱う案件に不安を感じていた向きも、押さえるべき観点さえ整理できれば、委託先として安心して任される場面は増えていきます。Remoguへの会員登録は短時間で完了するため、まずは登録をして、自分に合う条件の案件を確かめてみてはいかがでしょうか。
7. よくある質問
安全管理措置とセキュリティ対策は何が違うのですか
安全管理措置は個人情報保護法が求める枠組みで、組織的・人的・物理的・技術的の4領域と、方針・規律の整備、外的環境の把握から成ります2。一般的なセキュリティ対策は、この枠組みを実装する手段として重なる部分が多く、両者は対立するものではなく、法が求める水準を満たすための具体策という関係にあります。
エンジニアはどこまで安全管理措置を担うのですか
義務を負うのは個人情報を取り扱う事業者ですが、エンジニアが実装で関わるのは主に技術的安全管理措置です。アクセス制御による範囲の限定3や、不正アクセス・不正ソフトウェアからの保護4が具体的な担当範囲にあたります。組織的な体制づくりや方針の策定は発注側が主導する部分です。
委託先として何を求められるのですか
委託先は、委託元から必要かつ適切な監督を受ける立場にあります5。案件ごとに求められる安全管理措置の水準を確認し、自分の実装や作業環境がその水準を満たしているかを確かめる姿勢が求められます。個別の判断に迷う場合は、契約内容や個人情報保護委員会の資料を確かめるか、専門家に相談することが安心につながります。
リモートの案件でも安全管理措置は守れるのですか
安全管理措置は場所ではなく、アクセス制御や監督の仕組みなど運用の設計によって満たすものです。リモートでの稼働を前提にしながら、点検や監査を通じて水準を保つ6ことができます。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」(2024年12月)
*2 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」(2024年12月)
*3 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」(2024年12月)
*4 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」(2024年12月)
*5 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」(2024年12月)
*6 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」(2024年12月)
*7 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能