【Linuxの案件】自前で動かす現場とクラウドに任せる現場の違いを解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 自分たちでサーバーを立てて動かす案件と、クラウドの事業者に任せる部分が多い案件とで、任される作業がどう変わるかということ
- 手作業で1台ずつ設定する進め方と、設定を書いたファイルから環境を作る進め方とで、日々の作業がどう変わるかということ
- クラウドのサービスが終了するときにどんな順番で通知や入れ替えが進み、受ける前に案件情報のどこを確かめればよいかということ
Linuxを扱う案件と一口に言っても、任される作業の幅は現場によって大きく異なります。自分たちでサーバーを一台ずつ管理する現場もあれば、クラウドの事業者に管理の多くを任せ、その上の運用に集中する現場もあります。任される中身が変わると、求められる経験や日々の進め方も変わってきます。この記事では、案件情報のどこを見れば動かし方が分かるのか、受ける前に何を確かめればよいのかを整理します。
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1. Linuxの案件は動かし方で中身が変わる
Linuxを扱う案件は、同じ「運用」という言葉で語られていても、任される作業の重さが大きく異なります。サーバーを自分たちで一台ずつ管理する現場と、クラウドの事業者が管理の多くを担う現場とでは、日々の進め方も、求められる経験の種類も変わってきます。
何を任されるかは借り方で変わる
クラウドの使い方には、サーバーやネットワークだけを借りて自分でOSから設定するIaaSと、アプリを動かす環境まで用意されたPaaS、サービスをそのまま使うSaaSがあります。デジタル庁の資料でも、この方針は原則としてIaaSとPaaSを中心に書かれていると述べられていて4、どちらを主に扱う現場かによって、任される作業の幅が変わってきます。
IaaSを中心にした現場では、OSの設定や監視の仕組みづくりまで手元の作業になりやすく、PaaSを中心にした現場では、その上で動くアプリの運用に集中しやすくなります。案件情報を読むときは、この境目を意識すると、実際の作業量を見誤りにくくなります。
この境目は、案件情報の作業内容の欄だけでなく、面談で聞く運用体制の説明にも表れます。任される範囲を早い段階で具体的に確かめておくと、参画後に想定外の作業量に戸惑うことを避けやすくなります。
新しいクラウドでも手作業の現場は残る
クラウドを使っているからといって、現場の作業が自動的に軽くなるわけではありません。市場シェアの大きいクラウドでは古い機能も継続して提供されていて、提供されるサービスのすべてが新しい仕組みというわけではないと述べられています5。
つまり、クラウドという言葉だけでは、その案件が自動化された現場なのか、手作業の多い現場なのかは判断できません。案件情報の中の、どの部分を自分たちで組み立てているかという記述のほうが、実際の作業量を教えてくれます。
クラウドという言葉の中にも、自分たちで組み立てる部分と、事業者に任せる部分が混在しています。次の章では、クラウド上でも自前で立てて動かす形がなぜ残るのか、その理由を整理します。
2. 自前で立てて動かす形は残る
クラウドを使う案件が増えても、自分たちでサーバーを立てて動かす形がなくなるわけではありません。理由の一つは、提供されるサービスをそのまま使っても、新しい構成になるとは限らないためです6。
図の作成:Remogu編集部。任される作業の違いを整理したもので、統計データではありません
そのまま使っても構成が変わるとは限らない
クラウドの事業者が用意したサービスに乗せ換えても、動かし方の設計そのものを見直さなければ、以前とあまり変わらない構成のまま運用が続くことがあります。乗せ換えの作業と、構成を見直す作業は、別の作業として捉えたほうが実態に近くなります。
案件によっては、この見直しの部分を任されることもあれば、すでに整った環境の運用だけを任されることもあります。どちらを任されるかで、必要になる経験は変わってきます。
見直しの経験を積んでいると、乗せ換えだけで終わらせず、構成そのものを整える提案まで担えるようになります。この経験は、次に受ける案件を選ぶときの材料にもなります。
使う場面を選んだほうがよいサービスもある
サーバーを組み立てることを前提とするサービスなど、使う場面を選んだほうがよいものもあると述べられています7。こうしたサービスを使い続けている現場では、サーバーの管理という作業が今も残っています。
自前で立てて動かす形は、古い方法というよりも、条件によっては理にかなった選択として残っている形です。比較の観点を表にまとめると、次のようになります。
| 観点 | 自分たちで立てて動かす形 | クラウドの事業者に任せる形 |
|---|---|---|
| サーバーの管理 | 一台ごとに手元で管理する | 管理の多くを事業者が担う |
| 障害対応 | 現場の判断で復旧作業を行う | 事業者の仕組みに沿って復旧を進める |
| 更新作業 | 適用する時期を自分たちで決める | 事業者の更新に合わせて確認する |
| 求められる経験 | OSやネットワークの知識が中心 | 運用設計や監視の知識が中心 |
次の章では、設定を書いたファイルから環境を作る進め方について見ていきます。
3. 設定を書いたファイルから作る
サーバーの設定を手作業で一台ずつ行うか、設定を書いたファイルから環境を作るかという違いは、日々の作業の重さに直結します。デジタル庁の資料では、設定を書いたファイルから環境を作る方法を使うと、作業の効率が上がるという点が挙げられています1。
手作業の設定は記録と再現が難しい
サーバーを一台ずつ手作業で設定すると、その手順は担当者の記憶や個人のメモに残りやすく、他の担当者が同じ手順を再現しにくくなります。台数が増えるほど、この差は目立つようになります。
設定を書いたファイルから環境を作る進め方では、手順そのものがファイルとして残るため、誰が実行しても同じ環境を作りやすくなります。運用作業の自動化を徹底することも、あわせて挙げられています2。
自動化の範囲は案件によって違う
自動化を徹底するといっても、その範囲は案件によって差があります。サーバーを新しく用意する部分だけを自動化している現場もあれば、日々の監視や復旧の一部まで自動化している現場もあります。
自動化を広げる順番も現場によって違う
設定を書いたファイルから環境を作る仕組みを、どの順番で広げていくかも現場ごとに違います。新しいサーバーを増やすところから始める現場もあれば、既存のサーバーの設定を書き起こすところから始める現場もあります。
この順番を知っておくと、自分が参画した時点でどこまで整っていて、どこから先を任されるのかが見えやすくなります。案件を受ける前には、どこまでを設定ファイルとして管理していて、どこから先が手作業として残っているのかを確かめておくと、実際の作業量をつかみやすくなります。比較の観点を表にまとめます。
| 観点 | 手作業で1台ずつ設定する進め方 | ファイルから環境を作る進め方 |
|---|---|---|
| 手順の記録 | 個人の手元に残りやすい | ファイルとして残る |
| 再現のしやすさ | 担当者によって差が出やすい | 同じ手順を繰り返しやすい |
| 展開の速さ | 台数が増えると時間がかかる | 複数台への展開がしやすい |
| 見直しのしやすさ | 変更の経緯が残りにくい | 変更の経緯を追いやすい |
図の作成:Remogu編集部。設定の進め方の違いを整理したもので、統計データではありません
次の章では、監視の対象をどう見直すかについて整理します。
設定の進め方を意識してLinux案件をチェックする →
4. 何を見て異常と判断するか
運用を任される案件では、何を異常と判断するかという基準が、そのまま日々の作業の中身になります。監視の対象を見直すことが挙げられています3。
監視の対象は固定ではない
サーバーやアプリの動きを見張るときの対象は、一度決めたら変わらないものではありません。使っているサービスの構成が変われば、見るべき対象も変わります。監視の対象を見直す作業そのものが、運用の一部として続きます。
この見直しを誰が担うかは案件によって差があります。運用チーム全体で見直す現場もあれば、個人の裁量に近い形で任される現場もあります。
更新のたびに確認テストを整える
管理を任せているサービスが更新されるときの確認テストを見直して整えることも挙げられています9。事業者側の更新は、こちらの都合とは関係なく進むことがあるため、確認の手順をあらかじめ整えておく必要があります。
確認テストの範囲が狭いままだと、更新のたびに想定外の動きに気づくのが遅れます。逆に、確認の手順が整っている現場では、更新への対応がその都度の作業として収まりやすくなります。
案件によって監視の運用体制も変わる
監視の仕組みをどう運用するかも、案件によって差があります。24時間体制で異常を検知する仕組みを整えている現場もあれば、日中の稼働時間帯だけ人の目で確認する現場もあります。
この運用体制の違いは、日々の作業リズムに直結します。案件情報だけでは読み取りにくいため、面談で対応の範囲を確かめておくと、参画後の働き方の見通しが立てやすくなります。
監視の対象と確認テストは、どちらも一度作って終わりにはならない作業です。次の章では、サービスそのものが終了する場面について見ていきます。
5. サービスの終了と入れ替え
クラウドの事業者が提供するサービスは、いつまでも同じ形で続くとは限りません。使っているサービスが終了するときは、終了の時期と代わりになる機能があらかじめ知らされます8。
通知から入れ替えまでの順番がある
終了の通知を受け取ってから実際に入れ替えるまでには、いくつかの手順が並びます。終了の時期を確認し、代わりになる機能を確かめ、切り替えの計画を立てるという順番です。
この順番を踏まずに通知だけを見て放置すると、切り替えの作業が期限の直前に集中します。順番どおりに進めることが、作業の負担を分散させることにつながります。
外部への不安は運用の現場に残る
外部のサービスについて、維持や運用に不安を抱える企業が多いという結果が出ています10。この不安は、サービスが終了する場面でとくに表れやすく、代わりの機能をどこまで自分たちで確かめられるかが、現場の裁量になります。
案件によっては、この確認作業をどこまで任されるかが、はっきり書かれていないこともあります。比較の観点を表にまとめておきます。
切り替えの計画を現場としてあらかじめ持っているかどうかで、対応に追われる度合いは大きく変わります。すでに計画のひな型がある現場もあれば、通知が来てから都度考える現場もあります。
| 観点 | 事前に分かること | 現場で確かめること |
|---|---|---|
| 終了の時期 | 事業者から通知される | 自分たちの移行の期限に当てはめる |
| 代わりの機能 | 事業者から示される | 今の構成に合うかを確かめる |
| 切り替えの計画 | 案件ごとに定めていない場合がある | 現場で計画を立てる |
図の作成:Remogu編集部。サービス終了時の進み方を整理したもので、統計データではありません
次の章では、こうした違いを案件情報からどう読み取るかを整理します。
6. 案件情報から動かし方を読む
ここまで見てきた違いは、案件情報の書き方にも表れます。この方針は、原則としてIaaSとPaaSを中心に書かれていて、SaaSについてはその都度明記されると述べられています4。案件情報の中で、どの層について書かれているかを読み分けると、任される作業の見当がつきやすくなります。
書かれている言葉から層を読み分ける
「サーバーの構築」「運用」といった言葉が並ぶ案件は、IaaSに近い層を任される可能性が高く、「アプリの運用」「機能の追加」といった言葉が中心の案件は、PaaSに近い層を任されている可能性が高くなります。
ただし、同じ言葉でも案件によって指す範囲は違います。案件情報だけで判断しきれない部分は、面談の場で確かめておくと、参画してからのずれを防ぎやすくなります。
言葉の使われ方は案件情報を出す担当者によっても差が出ます。同じ「運用」という言葉でも、監視だけを指す場合と、構成の見直しまで含む場合があるので、具体的な作業内容まで読み進めることが大切です。
そのまま使っても構成は変わらないことがある
サービスをそのまま使っても、新しい構成になるとは限らないと述べられています6。案件情報に「クラウド」という言葉があっても、それだけでは新しい構成の現場かどうかは分かりません。
構成を見直す作業まで含まれているのか、すでに整った環境の運用だけなのかは、案件情報の作業内容の欄を具体的に読むことで見えてきます。
自動化と監視の話は面談で具体化する
案件情報に書かれた言葉だけでは、自動化の範囲や監視の仕組みまで細かく分かるとは限りません。書かれている言葉は、あくまで作業の見当をつけるための手がかりです。
面談の場では、設定を書いたファイルから環境を作っているか、監視の対象をどのくらいの頻度で見直しているかを具体的に尋ねると、実際の作業量がより明確になります。
案件の90%以上がフルリモート可能です。動かし方の違いを意識しながら、自分の経験に近い条件の案件情報を読み比べてみましょう。次の章では、受ける前に確かめておきたい順番を整理します。
登録して自分に合う条件のLinux案件を確かめる →
7. 受ける前に確かめる順番
ここまで見てきた内容を踏まえると、案件を受ける前に確かめておきたい順番が見えてきます。動かし方の違いや設定の進め方、監視の対象、サービス終了への対応は、それぞれ別の観点に見えても、実は一つの流れの中でつながっています。運用作業の自動化を徹底することが挙げられているように2、まずは自動化の範囲を確かめることが起点になります。
自動化と監視の範囲を確かめる
最初に確かめたいのは、設定を書いたファイルから環境を作っているか、手作業の部分がどこまで残っているかという点です。次に、管理を任せているサービスが更新されるときの確認テストを、誰がどこまで整えているかを確かめます9。
この2点を面談で尋ねると、日々の作業がどのくらいの手間になるのか、具体的な見当がつきやすくなります。
終了・入れ替えへの対応を確かめる
最後に確かめたいのは、使っているサービスが終了したときの対応を、誰が担うのかという点です。終了の通知から入れ替えまでの手順が、現場としてどこまで整っているかで、案件の落ち着き具合が変わります。手順が整っていない現場では、この作業を任される側が計画づくりから担うことも珍しくありません。
これらを受ける前に確かめておくと、参画してから任される作業の重さに驚くことが少なくなります。確かめる順番を図にまとめます。
図の作成:Remogu編集部。受ける前に確かめる順番を整理したもので、統計データではありません
自前で立てて動かす案件とクラウドに任せる案件、どちらの経験が生きますか
どちらか一方の経験が優れているということではなく、任される層によって求められる経験の種類が違います。IaaSに近い層ではOSやネットワークの知識が、PaaSに近い層では運用設計や監視の知識が生きてきます。自分の経験がどちらの層に近いかを踏まえて案件を探すと、条件を協議しやすくなります。経験の名称よりも、実際にどんな作業を担当してきたかを具体的に伝えると、協議がさらにスムーズになります。
案件情報だけで動かし方の違いを判断できますか
案件情報の言葉から見当をつけることはできますが、同じ言葉でも案件によって指す範囲は違います。自動化の範囲や監視の仕組み、終了時の対応まで含めて、面談の場で具体的に確かめておくと、参画後のずれを防ぎやすくなります。面談で確かめた内容は、メモに残しておくと後から条件を振り返りやすくなります。
クラウドを使っている案件なら手作業の負担は少ないですか
そうとは限りません。市場シェアの大きいクラウドでも古い機能が継続して提供されています5。サービスをそのまま使っても、新しい構成になるとは限らないとも述べられています6。クラウドという言葉だけでなく、案件情報の作業内容の欄を具体的に読むことが必要です。案件ごとに実際の構成は異なるため、クラウドという言葉だけで負担の軽さを判断しないことが大切です。
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出典・参考情報
*1 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」手作業を減らす(2026年・2026年8月確認)
*2 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」人の時間(2026年・2026年8月確認)
*3 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」増えたまま(2026年・2026年8月確認)
*4 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」層で書き分ける(2026年・2026年8月確認)
*5 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」古い機能も残る(2026年・2026年8月確認)
*6 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」使えば新しくはならない(2026年・2026年8月確認)
*7 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」選ばない判断(2026年・2026年8月確認)
*8 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」終わりの知らせ(2026年・2026年8月確認)
*9 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」テストの費用(2026年・2026年8月確認)
*10 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」不安の所在(2025年4月・2026年8月確認)