AWSの案件は構築と運用のどちらで呼ばれる?任される範囲と条件の違いを整理
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- AWSの案件が作る仕事と動かし続ける仕事に分かれることと、重心が後者に寄りやすいこと
- コストの決まり方や計測・可視化の有無が、参画後に任される作業の中身を左右すること
- 自動化がどこまで進んでいるかということと、止まったときの備えが言葉になっているかということを、受ける前に確かめる順番
AWSの案件と一口に言っても、環境を新しく組み立てる場面と、組み立てた後に動かし続ける場面とでは、任される範囲がまったく違います。案件情報の文面だけでは、どちらの比重が大きいのか読み取りにくいものです。デジタル庁の資料は、システムを刷新しても運用のやり方が従前のままでは、コストを下げる効果は十分に出ないと述べています1。この記事では、作る仕事と動かし続ける仕事の境目、コストの決まり方、受ける前に確かめておきたい順番を整理します。
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1. AWSの案件は作る仕事と動かし続ける仕事に分かれる
AWSの案件情報を眺めていると、同じ「AWS案件」という言葉の中に、環境を新しく組み立てる仕事と、組み立てた後の状態を保ち続ける仕事が混ざっていることに気づきます。案件情報の見出しだけでは、この二つのどちらに重心があるのか読み取りにくいものです。
デジタル庁の資料は、システムを刷新しても運用のやり方が従前のままでは、コストを下げる効果は十分に出ないと述べています1。作って終わりではなく、作った後の動かし方まで含めて一つの仕事だと捉えると、任される範囲の見え方が変わってきます。
新しく作る仕事で問われること
新しく作る仕事では、要件に合わせて環境を組み立て、想定した通りに動くかを確かめる作業が中心になります。設計の意図を形にする力や、動作を確かめる丁寧さが問われる場面です。
この段階の仕事は、区切りが分かりやすいという特徴があります。環境が組み上がり、確認が済めば、その回の仕事は一区切りを迎えます。次にどんな案件を受けるかを、そのつど選びやすい仕事とも言えます。
区切りが明確な分、一つの案件で確かめられることの幅も見えやすくなります。環境を組み立てた経験は、次の案件情報を読むときに、どこまでの範囲が任されそうかを見積もる材料になります。
動かし続ける仕事で問われること
動かし続ける仕事では、区切りが単純ではありません。デジタル庁の資料は、サービスの更新への対応について、単発の出来事としてではなく日常的に対応していく必要があると述べています7。組み立てた後も、状態を見ながら手を動かし続ける前提の仕事になります。
この重心の違いを知らずに参画すると、思い描いていた仕事内容と、実際に任された範囲との間にずれを感じることがあります。案件情報を見るときは、作る仕事と動かし続ける仕事のどちらに比重があるかを、先に確かめておきたいところです。
作る仕事で問われるのは、決められた要件をどれだけ正確に環境へ落とし込めるかという点です。動かし続ける仕事で問われるのは、変化する状況にどれだけ早く気づき、対応を組み立てられるかという点です。どちらの物差しに自分の経験が近いかを、案件情報を読むときの手がかりにできます。
図の作成:Remogu編集部。AWSの案件で任される仕事の傾向を整理したもので、統計データではありません
2. 作った後にコストが決まる
環境を作り終えた時点では、コストの姿はまだ半分しか決まっていません。実際にどれだけの費用がかかるかは、作った後の使い方によって大きく変わってきます。
デジタル庁の資料は、当初からピーク時を想定して構成を決めるやり方から、必要な分だけ自動で増減する構成へ変わることに触れています2。あらかじめ細かく見積もらなくても、無駄の少ない構成に近づけるという考え方です。
ピーク時を基準にした構成との違い
従来型の考え方では、最も負荷がかかる時間帯に耐えられる大きさを先に決め、その大きさを普段の時間帯にも用意しておく形になります。同じ資料は、ピーク時を想定した大きなリソースを、通常時に使わないことを挙げています3。
普段の時間帯にまで大きな構成を保っていると、使っていない分の費用がそのまま積み上がっていきます。稼働していないリソースへの課金を抑えることも、同じ資料が挙げている点です4。
参画する側が見ておきたい点
参画する側としては、環境の大きさが固定されているのか、負荷に応じて自動で増減する仕組みになっているのかを、早い段階で確かめておきたいところです。仕組みの違いによって、日々の作業で気にかける対象が変わってきます。
環境の大きさが固定された案件では、費用の話が案件の後半にまとまって出てくることがあります。増減する仕組みが動いている案件では、費用の話が日々のやり取りの中に自然に混ざってきます。
コストの話は数字だけの問題ではなく、普段どこに目を配るかという仕事の中身そのものに関わってきます。表1は、この二つの構成の違いを整理したものです。
| 観点 | ピーク時を想定した構成 | 必要な分だけ増減する構成 |
|---|---|---|
| 見積りの仕方 | あらかじめ細かく見積もる | 厳密に固めなくても近づけられる2 |
| 普段の時間帯の負荷 | ピーク時と同じ大きさを保つ | 通常時には使わない3 |
| 動いていない分の費用 | そのまま積み上がりやすい | 課金を抑える4 |
| 参画する側が見る対象 | 構成が変わらないか | 増減の仕組みが動いているか |
出典:デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」をもとに作成
当初の見積りを厳密に固める仕事から、動かしながら整えていく仕事へと重心が移ると、日々の点検の頻度も変わってきます。見積りの正確さよりも、日々の数字を追いかける継続力が問われる場面が増えていきます。
コストの増減は、日々の数字を見ながら小さく直していく仕事です。大きな変更を一度に加えるより、小さな調整を積み重ねる進め方のほうが、動いている環境では選ばれやすくなります。
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3. 計測と可視化が範囲に入るか
動かし続ける仕事の中でも、状況がどれだけ見えているかによって、日々の進み方は大きく変わります。数字が見えている現場と、感覚だけで判断している現場とでは、同じ相談を受けても動き方が違ってきます。
デジタル庁の資料は、定量的な計測とダッシュボードによる状況の可視化を挙げています5。数字と画面があることで、何が起きているかを都度言葉で説明し直す手間が減ります。
見える現場で起きていること
計測の仕組みが整っている現場では、変化があったときにまず数字を確認し、そこから原因を絞り込んでいく流れになります。判断の材料が手元にあるため、相談や報告のやり取りも短く済みます。
同じ資料は、監視の対象を見直すことも挙げています9。最初に決めた監視の項目をそのまま使い続けるのではなく、状況に応じて見る対象を入れ替えていく仕事も含まれます。
見直しの頻度も現場によって差があります。区切りを決めて見直す現場もあれば、変化があるたびにその場で見直す現場もあり、任される関わり方が変わってきます。
見えていない現場で起きていること
計測の仕組みが整っていない現場では、まず状況を言葉で確認するところから始まります。数字がない分、判断の根拠を毎回言語化する必要があり、同じ対応でも時間がかかりやすくなります。
参画する前に、可視化の仕組みがどこまで整っているかを尋ねておくと、日々の進め方をあらかじめ思い描きやすくなります。表2は、この二つの状況の違いを整理したものです。
| 観点 | 計測・可視化がある場合 | ない場合 |
|---|---|---|
| 状況の把握 | 数字とダッシュボードで確認できる5 | 言葉のやり取りから確認する |
| 原因の特定 | 絞り込みが早い | 一つずつ確かめていく |
| 監視対象の扱い | 状況に応じて見直す9 | 当初の項目のまま使われやすい |
| 報告や相談の手間 | 短く済みやすい | やり取りが増えやすい |
図の作成:Remogu編集部。可視化の有無による進み方の傾向を整理したもので、統計データではありません
可視化の仕組みは、一度整えたら終わりではありません。デジタル庁の資料が挙げる監視対象の見直しは、状況が変わるたびに繰り返す作業として位置づけられています9。可視化の仕組み自体を育てていく仕事も、この範囲に含まれます。
可視化の仕組みがまだ整っていない場合、最初の期間は仕組みを作る作業そのものが仕事の中心になることがあります。分析や改善に進む前に、まず見える状態を作るところから始まる場面です。
4. 更新への対応は日常の仕事
組み立てた環境は、公開した時点で完成するわけではありません。土台になる仕組み側の更新は途切れることなく続くため、それを追いかける作業が日常の中に組み込まれます。
デジタル庁の資料は、継続的なアップデートへの対応を挙げています6。更新は特別な出来事ではなく、日々の作業の一部として織り込まれるものだという前提です。
更新を特別な出来事として扱わない
同じ資料は、サービスの更新への対応について、通常のアップデートとして捉え、日常的に対応していく必要があると述べています7。大きな作業として身構えるより、日々の一手として組み込む前提になります。
この前提を知らずに参画すると、更新のたびに大きな作業が発生する現場だと感じてしまうことがあります。実際には、日々の中に少しずつ組み込まれた作業として続いていくものです。
参画する側にとっての意味
更新への対応が日常の一部になっている現場では、変化のペースに慣れることが早い段階で求められます。落ち着いて確認しながら進める姿勢が、長く続けやすさにつながります。
更新の内容を毎回すべて把握しようとするより、影響が大きい部分から優先して確かめる進め方のほうが、日々の負担を抑えやすくなります。
更新の頻度や進め方は案件によって異なります。参画する前に、更新をどんなペースで扱っている現場かを尋ねておくと、日々の負担感を思い描きやすくなります。
更新への対応は、待ったなしで発生する日もあれば、静かに過ぎていく日もあります。この波のある進み方に慣れておくと、更新のたびに気持ちを乱されにくくなります。
5. 自動化をどこまで任されるか
動かし続ける仕事の中には、人が毎回手を動かす部分と、仕組みに任せられる部分とがあります。この境目がどこにあるかによって、日々の作業量は大きく変わってきます。
デジタル庁の資料は、運用作業の自動化を徹底することを挙げています8。繰り返す作業を仕組みに任せることで、人が確かめる作業に時間を使えるようになるという考え方です。
仕組みに任せやすい作業
決まった手順で繰り返される確認や、あらかじめ条件が決まっている対応は、仕組みに任せやすい部類に入ります。仕組みが整っている現場では、こうした作業に時間を取られにくくなります。
定量的な計測とダッシュボードによる可視化も、この自動化と組み合わせて使われることが多い仕組みです5。数字が仕組みの側から流れてくることで、人が確認する対象を絞りやすくなります。
人が確かめる作業として残るもの
一方で、初めて見る状況の判断や、仕組みが出した結果を最終的に確かめる作業は、人の側に残りやすい部分です。自動化が進んでいる現場ほど、こうした確認の質が問われます。
仕組みに任せる範囲が広い現場ほど、人が確認する一件あたりの重みは増していきます。任される作業の数ではなく、判断の重さで仕事の内容を捉えておくと、実際の負担感とのずれが小さくなります。
参画する前に、自動化がどこまで進んでいて、人が確かめる範囲がどこに残っているかを尋ねておくと、日々の作業のイメージが具体的になります。表3は、この振り分けの一例を整理したものです。
| 作業の種類 | 仕組みに任せやすい | 人が確かめる |
|---|---|---|
| 決まった手順の確認 | 任せやすい | 結果の最終確認 |
| 初めて見る状況の判断 | 任せにくい | 中心になる |
| 数字の集計・表示 | 任せやすい5 | 数字の解釈 |
| 繰り返す運用作業 | 自動化が進む対象8 | 例外時の対応 |
自動化が進むほど、手を動かす作業よりも、仕組みが出した結果を見極める作業の比重が増えていきます。手順を覚える力よりも、違和感に気づく観察力が問われる場面が増えていきます。
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6. 止まったときの備え
動かし続ける仕事には、止まったときにどう対応するかという備えも含まれます。この備えが、参画する現場によって整っている度合いに差があります。
IPAの調査では、ITのリスク管理と業務継続計画について、全体の5〜6割程度の企業が整備していると示されています10。裏返すと、備えが整っていない現場に参画する場面もあるということです。
備えが整っている現場とそうでない現場
備えが整っている現場では、止まったときにまず何を確認し、誰に伝えるかという流れがあらかじめ決まっています。落ち着いて手順に沿って動ける分、対応にかかる時間も読みやすくなります。
備えが整っている現場では、訓練や見直しの機会も定期的に設けられていることが多く、手順そのものが少しずつ更新されていきます。
備えが整っていない現場では、止まった瞬間から手順を組み立てる作業が始まります。判断の材料も少ないため、対応の道筋を都度言葉にしながら進めることになります。
運用の全体像とのつながり
デジタル庁の資料が指摘するように、刷新しても運用のやり方が従前のままではコストを下げる効果は十分に出ません1。止まったときの備えも、運用の全体を見直す取り組みの一部として位置づけられているものです。
参画する前に、止まったときの手順がどこまで言葉になっているかを尋ねておくと、その現場の運用の成熟度がおおよそつかめます。
止まったときの手順が言葉になっているかどうかは、参画してすぐには見えにくい部分です。参画前の面談で尋ねておくと、実際に何かが起きたときに落ち着いて動ける可能性が高まります。
備えがある現場では、日々の点検の中に「止まったらどう動くか」を確かめる工程が組み込まれています。備えがない現場では、その工程自体をこれから作る仕事になります。
7. 受ける前に確かめる順番
ここまで見てきた通り、AWSの案件は作る仕事と動かし続ける仕事とで、任される範囲も日々の進め方も変わってきます。参画する前に確かめておくと、思い描いていた仕事内容とのずれを防ぎやすくなります。
確かめる順番に決まりはありませんが、範囲の大きい話から尋ねていくと、話が具体的になりやすい傾向があります。
確かめておきたい4つの順番
まず、作る仕事と動かし続ける仕事のどちらに重心があるかを確かめます。次に、計測とダッシュボードによる可視化がどこまで整っているかを尋ねます5。
続いて、運用作業の自動化がどこまで進んでいて、人が確かめる範囲がどこに残っているかを確認します8。最後に、止まったときの備えが言葉になっているかを尋ねると、その現場の運用の全体像が見えてきます。
この4つの確認は、参画してからではなく、話を受ける前の段階で尋ねておきたい内容です。ここからは、よくある疑問を具体的に見ていきます。
図の作成:Remogu編集部。受ける前に確かめておきたい順番を整理したもので、統計データではありません
作る仕事と動かし続ける仕事は、参画の期間でどう分かれますか
案件によって異なりますが、動かし続ける仕事は日々の対応が前提になるため、参画の期間が長くなりやすい傾向があります。作る仕事は区切りが分かりやすく、一つの環境が組み上がった時点で一区切りを迎えることが多くなります。参画期間の見通しを尋ねる際は、想定される区切りの目安も合わせて確認しておくと、心づもりがしやすくなります。
計測や可視化の仕組みは、参画してから自分で整えるものですか
現場によって異なります。すでに数字とダッシュボードが用意されている現場もあれば、監視の対象を見直すところから任される現場もあります9。参画前にどちらに近いかを尋ねておくと、初日からの動き方を思い描きやすくなります。整っていない現場では、最初の数週間を仕組みづくりに充てる想定で臨むと、心づもりがしやすくなります。
止まったときの備えが整っていない現場は、参画を避けたほうがよいですか
備えの有無だけで判断する必要はありません。IPAの調査が示すとおり、備えを整えている企業は全体の5〜6割程度にとどまります10。備えが整っていない現場であっても、手順を作る側として関わる経験は、次の参画先を選ぶときの材料になります。参画前に「止まったときの手順は言葉になっていますか」と一つ尋ねるだけでも、現場の状況をつかむ手がかりになります。
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任される範囲の見分け方が分かれば選びやすくなります。AWSの案件を見てみてください。
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出典・参考情報
*1 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」刷新の限界(2026年・2026年8月確認)
*2 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」見積りの前提(2026年・2026年8月確認)
*3 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」常時の余裕(2026年・2026年8月確認)
*4 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」止まっているもの(2026年・2026年8月確認)
*5 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」見えるようにする(2026年・2026年8月確認)
*6 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」終わらない作業(2026年・2026年8月確認)
*7 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」更新の捉え方(2026年・2026年8月確認)
*8 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」人の時間(2026年・2026年8月確認)
*9 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」増えたまま(2026年・2026年8月確認)
*10 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」止まる備え(2025年4月・2026年8月確認)