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    リモートワークを廃止の選択は本当に正解? 企業が知るべきリスクと解決策

    パンデミックをきっかけに、リモートワークは急速に普及しました。そしてコロナが落ち着いた2023年頃から、海外大手テック企業を中心に100%リモートワークだった動きを見直す動きがあるとメディアで報道されました。

    コロナの終焉を感じさせたRTO(Return to Office)の動きですが、果たして、どこまで昔のような働き方に戻るべきなのでしょうか。 

    コロナ禍を経て、我々がどんな働き方や社会を望んでいるのか、それぞれにあったベストな選択を再考する時が近づいています。多くの社会人にとっては働く時間は1日の多くを占めていて、「働き方」は生き方にも大きく影響してきます。

    本記事では、「リモートワーク 廃止」の複合的な要因と、日本企業が市場環境の変化に対応して再設計すべき重要なポイントを解説します。

    1. 海外の大手IT企業による出社回帰のインパクト

    まずは、外資系の大手テック企業についての報道を振り返ってみましょう。

    米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)は、2023年5月に「対面での協働による生産性とイノベーションの促進」を目的として「週3日以上の出社」を義務づけました。そして、2024年9月には、全世界の従業員に「週5日フル出社」を発表しました。

    Meta(旧Facebook)のMark Zuckerberg代表(マーク・ザッカーバーグ)は、オフィスにおける対面でのパフォーマンスの向上を明言し、2023年9月よりハイブリッド勤務を導入しています。また、グローバルコンサルティング大手のアクセンチュアは、2023年10月から「週3日以上の出社義務」を打ち出していましたが、2025年6月からは、「週5日フル出社」へ方針を変更しました。

    2. 日本国内企業のオフィスへ出社を推進する動きはどのくらいあるのか

    メディアが報道した海外の大手IT企業の「リモートワーク廃止」の潮流は日本企業にも影響を与え、「オフィス回帰」を段階的に進める企業もみられます。

    進める理由の中で注目したいのは、日本企業に特有の要因です。「目視で業務を評価したい」という対面主義や、デジタル化(DX)が進まない原因ともなる紙文化、さらに、職場復帰に伴う一体感の復活組織文化の醸成(現場主義)を必要とし、リモートワークを廃止にしたいという方もいるようです。

    また、DXの課題を背景に、リモートワークを管理するマネジメントの問題点をスムーズに解消できないという状況もまだ色濃く見られます。

    3.【企業の損失】「リモートワーク廃止」に賛成する3つの理由

    やはり同僚とはオフィスで働きたい?リモートワークについては様々な意見が交差する

    企業が出社回帰へと舵を切る背景には、マネジメントにおける問題点が大きく影響しています。ここでは、企業がリモートワーク廃止に賛成する3つの理由を整理します。

    3-1. 企業文化の醸成が困難

    リモート環境では、従業員同士のふとした会話や雑談が減ります。この変化によって、企業の一体感、つまり企業文化が共有されにくくなるという指摘があります。

    リモート業務では「コミュニケーションに難しさを感じる」という課題も多く、特に孤立しやすい新人や若手社員にとって、帰属意識やモチベーションの低下につながる可能性があるでしょう。

    3-2. マネジメントの難しさを痛感

    物理的な距離があり目視できないため、リモートワークでは従業員の就業状況を把握しにくくなります。このため、マネジメントでは、勤怠・進捗管理、人事評価、健康管理が取り組むべき課題となっているのです。従業員の評価制度が整っていない企業では、リモート環境では対面よりも従業員への評価やフィードバックが遅れがちになり、人事評価の公平性が損なわれるのではないかという懸念があります。

    経済産業省の2022年「未来人材ビジョン」では、今後はエンジニアのように、的確な予測力や問題発見力、革新性を備えた人材がより多く必要とされることが示されています。企業としてはこの展望に対応できる人材育成が急務ですが、リモートワークでのメンバー育成は計画的に丁寧に戦略立てて行う必要があります。

    3-3. 情報セキュリティリスクの増大

    家庭やコワーキングスペースで業務を行う際には、情報漏えいやセキュリティ事故のリスクが伴います。

    情報処理推進機構(IPA)は、主なセキュリティインシデントとして以下を挙げています。

    • ランサムウェア感染
    • 端末の紛失・盗難
    • クラウドサービスの設定ミスによる情報漏えい
    • VPN機器やネットワーク機器を狙った攻撃
    • 内部不正による情報の持ち出し

    オフィスでは管理できていた事項も、公共Wi-Fiの利用、家族との共用PC、画面の覗き見、デバイスの盗難などによりリスクが上がります。特に、金融や医療など機密情報を扱う業種では、この点を深刻に受け止めており、出社回帰の決定的な要素となっています。

    4.「リモートワーク廃止」は従業員の満足度低下に繋がる!リモートワークの継続を願う人々

    リモートワークの廃止は困る!それぞれの生活に適した働き方をする時代へ

    リモートワーク廃止に対しては、従業員からは、反発の声が多く上がっています。これまで、柔軟な働き方の価値を実感した人々は、リモートワーク廃止について、どのように感じているのでしょうか。

    4-1. 出社強制による生産性・満足度の低下への懸念

    • 集中環境の喪失: 自宅の静かな環境で培った高い集中力が、オフィスの騒音や中断により著しく低下する可能性
    • 通勤時間による疲労蓄積: 往復の通勤時間が業務に使えた時間を削減し、移動疲労により作業効率が大幅に減少する懸念
    • 個人の最適な作業リズムの破綻: 早朝や夜間など個人の生産性ピーク時間を活用できず、画一的な勤務時間により成果が低下

    出社強制は、リモートワーク期間中に確立された効率的な働き方を一律に否定することとなり、従業員の生産性向上への取り組みや自己管理能力の発揮機会を奪う結果となります。これまで柔軟な環境で最大限のパフォーマンスを発揮していた従業員にとって、固定的なオフィス勤務への回帰は明らかな生産性低下要因となり得るのです。

    4-2. 多様なライフステージとの不整合(育児・介護・病気)

    家庭の事情やライフステージに合わせて働きたい人にとっては、リモートワークは働き方の選択肢を広げます。育児、介護、通院などと両立しながら働く人にとっては、スケジュール調整がしやすい在宅勤務は、ライフステージに合わせた就労を支える重要な手段です。

    厚生労働省の「テレワークで始める働き方改革 H28年度」によると、リモートワークによって得られる雇用面での成果として、以下のような効果が示されています(図表Ⅰ-3-3より):

    • 育児:42.7%
    • やむを得ない事情:28.2%
    • 介護:17.9%

    核家族が多い今日の社会では、育児、介護などのプライベートの理由、通院などの健康面での配慮という観点からも、リモートワークの重要性が非常に高いことがわかります。

    4-3. 離職率・採用難・人手不足の悪化

    出典:帝国データバンク人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)

    2025年問題によって少子高齢化がさらに進み、人材獲得競争はさらに激化しています。こうした中、リモートワークの普及は、都市部に一極集中していた働き方を見直すきっかけとなり、Uターン・Iターンの促進や、二拠点生活の実現も可能にしました。

    就職や転職においては、「場所にとらわれない働き方」が、職場選びの重要な判断基準となっています。さらに、高齢者の再就職の機会創出という点でも、リモートワークの果たす役割は非常に大きいといえるでしょう。また、地方創生や労働力人口の確保という観点からも、居住地の選択肢が広がるリモートワークは、人口の分散や地域活性化に資する効果が期待されています。

    こうした背景を踏まえると、リモートワークの廃止は、社会が抱えるさまざまな懸案事項―「特に地方・高齢社会・人材不足といった課題」―の解決に向けたチャンスを失うことにもなりかねません。

    ※2025年問題とは:
    団塊の世代(約800万人)が75歳以上となり、日本の総人口において「5人に1人が後期高齢者」となる社会転換点。これにより、介護・医療・年金などの社会保障分野における負担増が懸念されています。

    5.リモートワークの廃止で問われる「働き方の本質」

    今日注目すべきは、「どこで働くかではなく、どう働くか」という本質的なテーマです。企業文化の醸成、効率や生産性の向上に加え、従業員の満足度との整合性をどう図るかを考える時ではないでしょうか。

    今こそ「リモートワークのあり方を再評価する」視点が求められています。

    5-1. 単なる「出社/在宅」の議論?必須なのはハイブリッドワークの再定義

    リモートワークをめぐる議論は、「出社か、在宅か」といった単なる二者択一では収束しません。重要なのは、業務内容の特性と、従業員の「個別ニーズ」に応えた設計を行えるかどうかです。折衷案として、リモートとオフィス勤務を組み合わせた「ハイブリッドワーク」を、企業が選ぶ傾向があります。

    しかしもし、ハイブリッドワークを、単に「週に何日出社するか」というルールだと企業側がとらえて、体制を変えないままであれば、従業員が求める「適宜調整が可能な仕事のスタイル」とは乖離(かいり)してしまいます。そして、企業と従業員との間に主張のズレが生じ、従業員の満足度の低下を招く結果になりかねません。ハイブリッド型であっても、業務の内容や目的に応じて、時間・場所の自由度を柔軟に設定できる仕組みが求められます。

    5-2. 企業が目標としたい「人に合わせた働き方」

    企業が「選ばれる存在」になるためには、従業員一人ひとりのライフステージや価値観に対応できる柔軟な制度の設計が欠かせません。育児、介護、病気など、人生におけるさまざまな局面において、無理なく働ける仕組みがある企業は、離職率が低く、結果としてノウハウの蓄積や、組織の安定といった企業の資産形成にもつながります。

    従業員が、週に何日出社するかを自分で調整できたり、あるいは業務内容に応じてチーム単位で最適な働き方を決められたりするなど「自己裁量の幅」がある職場が理想でしょう。大切なのは「すべての人が、自分らしく働ける社会」の実現です。

    5-3. 期待されるDX環境の整備と業務設計

    本当の意味で、多様な働き方を実現するには、企業がテクノロジーを活用した体制を整えることが前提です。いくら「リモートワーク」を論じたところで、実際にそれがスムーズに機能する社内システムや、業務を把握・管理・評価できるマネジメント全般のDX環境がなければ何も始まりません。

    具体的には、クラウドサービスの活用、オンライン会議の効率化、非同期コミュニケーションの導入などが進むことで、物理的な場所に依存しない働き方が機能します。また、情報共有の透明性の確保やナレッジマネジメントの推進も重要な要素です。このような環境の整備は、DXの一環として、企業の生産性と創造性の両方を後押しします。そして、社内のルールづくりと法整備も並行して進める必要があります。リモートワークの是非を問うためには、まずこうした基盤の見直しと刷新が求められているのです。

    ※ナレッジマネジメントとは:
    企業内で属人化した知識(暗黙知)を共有して(形式知)活用し、業務の効率化や意思決定を向上させる取り組み。

    6.「廃止」ではなく、未来に向けて再設計すべきこと

    今、企業が取り組むべきは、リモートワークの一律な廃止ではなく、変化する社会や働き方に対応した「再設計」です。
    働く人の多様な価値観やライフスタイルに対応しながら、組織としてのパフォーマンスも最大化するために、以下の3つの視点を紹介します。

    6-1. 成果を正当に考査する「新しい評価制度」

    今後の働き方を考える上で、まず必要になるのは、働く場所で判断するのではなく、「成果」が公平に評価される仕組みづくりです。その中核をなすものとして、以下が考えられます。

    • 等級制度: 役割やスキルのランクで評価
    • 評価制度: 会社の方針や行動指針に対する貢献度を評価
    • 報酬制度: 上記の2つに基づき、報酬を決定する制度

    上記をもとに評価すれば、どうすれば昇格できるか、何を重視して働けば報われるかが理解でき、従業員は働くモチベーションと目標を維持しやすくなります。結果として、従業員にとって、公平性・客観性・透明性・妥当性を兼ね備えた評価システムとなります。

    新しい取り組みとして、ダイキン工業株式会社は、2024年4月から60歳以降の従業員にも同一評価制度を適用し、年齢に関係なく能力と成果で昇格や昇給を可能にした例があります。

    6-2. オフィスの再定義「集まる価値」の創設

    リモートワークは「オフィス不要論」ではありません。むしろ、目的のある集まりは、企業文化を再定義する「」になるでしょう。オフィスが、チームビルディングを強化でき、対面の協業が生み出すアイデアが増えるような学び合う空間になれば、新たに「集まる価値」を生み出せるのではないでしょうか。個人作業はリモートでも可能ですが、チーム作業や重要な会議、交流イベントをオフィスで行うなどの使い分けが効果的です。

    三菱地所は、「新しいアイデアが生まれる場所 改修で利用率6倍に」(2024.3.14)という記事の中で、BGM・グリーン等を配置し、生体リズムが整うような工夫によってリラックスできる「ウェルビーイングな環境」を創設した結果、オフィスの利用率が6倍に向上したという具体例を掲載しています。

    6-3. DX推進は、仕事の質を高める土台に

    多くの企業が直面している人手不足の解消には、DXによる業務の効率化が求められます。その実現には、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI(人工知能)の導入、ペーパーレス化、システムの統合などの業務全体を見直す包括的な取り組みが不可欠です。

    単にデジタルツールを導入するだけでは不十分です。業務の流れを整理し、分担を明確に分けてプロセスのルールをマニュアル化するなど、企業全体の方針を再定義し、運用ルールを整える必要があるでしょう。また、これを推進・維持するためには、社内教育も並行して行うことを忘れてはなりません。

    DXは生産性を高めるだけでなく、従業員がルーティンから解放されて、より創造的な仕事に集中でき、働きがいを感じられる環境をつくり出します。また、リモートワークという「働き方の自由な選択肢」を支える基盤として重要な役割となるでしょう。

    7. まとめ 「リモートワーク廃止」か「リモートワーク継続」は生き方の分岐点

    突然のパンデミックによりリモートワーク導入の波が押し寄せたことは記憶に新しく、その時にリモートワークがうまく機能するリモートワーカーと適応できない企業や職種が明確に大きく分かれました。

    企業が一旦立ち止まり「働くこととは何か」という本質に向き合わずに「リモートワーク廃止」を選んでしまえば、自由度の高い働き方や生き方を求める求職者が離れてしまい、能力ある人材や貴重な労働力を確保できずに、企業の競争力が低下してしまう恐れがあります。今、求められているのは、制度・文化・テクノロジーを総合的に考えた「未来に向けた働き方の再設計」でしょう。

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