BIMの案件|導入後のデータ保管と運用ルールの決め方

📘 この記事でわかること
- BIMを導入している部署が58.7%にのぼることと、効果を大きいと答える部署は42.5%にとどまっている落差
- 社外とのデータ連携をすでに行っている部署が59.8%にのぼることと、共通データ環境を整えた部署は40.9%にとどまっている差
- プロジェクト完了後の保管ルールを定めている部署が22.0%にとどまることと、外から入るエンジニアが担える置き場づくりの役割
BIMと聞くと、建築の3Dモデルを作る技術だと考える人が多いかもしれません。ただ、案件として見えてくるのは、モデルそのものより先に進んだ場面です。モデルを誰に渡し、どこに置き、終わったあとどう扱うか。この受け渡しの設計こそが、国土交通省の実態調査の数字が示す本題です。
1. BIMの案件は、モデルを作る話ではない
建築・設備のデータまわりに関わるエンジニアが案件情報を目にすると、まず思い浮かぶのは3Dモデルを操作するスキルかもしれません。ですが実際の案件の中心にあるのは、モデルを作ることそのものではなく、作られたモデルをどう扱うかという場面です。
国土交通省が実施した令和6年度の実態調査では、BIMを導入している部署が58.7%、導入していない部署が41.3%という結果が出ています1。道具としてのBIMは、すでに半数を超える現場に入り込んでいますが、全社に行き渡っているわけではありません。
モデルを扱った経験がまだ少ないと、この分野の案件には向いていないと感じるかもしれません。ですが調査の数字が示しているのは、その逆です。効果を左右しているのはモデルを操作する熟練度ではなく、渡し方や置き場をどう設計するかという運用面だという事実です。ここに、外から案件に加わるエンジニアの居場所があります。
効率化を期待して入れた道具
同じ調査でBIMの導入の背景やきっかけを尋ねると、最も多かった回答は「業務の効率化や業務フローの改善による生産性の向上を期待した」というものでした3。モデルを立体で見せる技術としてではなく、仕事の流れを整える道具として選ばれているということです。
ところが効果の実感を尋ねる設問では、様子が変わります。導入した部署のうち、効果を「非常に大きい」「大きい」と答えた部署は42.5%にとどまり、「効果は小さい」と答えた部署が13.0%、「デメリットの方が大きい」と答えた部署も2.4%残っています4。導入の入口は効率化への期待だったのに、効果の出方はきれいには揃っていません。
効率化を期待して入れたはずの道具が、効果の実感という結果に単純にはつながっていません。ここには、道具を入れる工程と、道具を使い続けて渡し合う工程のあいだに、別の設計が挟まっているという示唆があります。次の図1に、この落差を示しました。
出典:令和6年度 建築分野におけるBIMの活用・普及状況 実態調査(国土交通省、2025年1月)をもとに作成。効果の実感は、BIMを導入している部署のうち回答した254部署が対象です。
モデルより、扱い方の設計が問われる
導入率と効果実感の落差は、モデルを作る技術力が原因とは限りません。同じ道具を入れても、モデルをどこに置き、誰が触れる状態にし、次の工程へどう渡すかという運用の設計次第で、結果が変わっていると見るほうが自然です。モデリングの精度よりも、渡す仕組みのほうが効果を左右しています。
外から案件に加わるエンジニアの役割も、この落差の埋め方にあります。モデルの作り方を覚え直す仕事ではなく、渡し方・置き場・決め事という、データ連携やシステム設計の経験が生きる仕事だということです。
操作の熟練よりも運用の設計のほうが差になる、というのがこの章の要点です。積み上げてきたデータ連携やシステム設計の経験は、モデルの前で過ごした時間の長さより、この案件では価値を持ちます。
2. 渡し合いはすでに起きている
BIMの案件で外から加わるエンジニアが最初に向き合うのは、モデルの中身よりも、モデルがどこから来てどこへ渡っていくかという関係の把握です。実態調査を見ると、この渡し合いはすでに広く定着しています。
他部署または社外とのデータ連携を行ったことがある部署は59.8%にのぼり、行ったことがない部署は38.6%にとどまります5。連携という行為自体は、珍しいものではなくなっています。
外から加わるエンジニアがまず把握しておきたいのは、この渡し合いの地図です。誰が最初にモデルを作り、誰の手を経て、最後にどこへ着地するのか。その線を追えるようになることが、案件に入って早い段階で信頼を得る近道になります。
誰と誰の間で渡っているのか
社外とのデータ連携の相手を尋ねた設問では、「設計者-施工者間」の連携が最も多いという結果が出ています6。設計を担う立場と施工を担う立場のあいだで、モデルのデータが日常的に行き来しているということです。
この関係は、ひとつの組織の中で完結しません。設計と施工は別の事業者であることが多く、渡し合いは工程をまたいで、事業者をまたいで起きています。誰が何を渡し、誰がそれを受け取るのかという線を、そのつど整理する場面が生まれます。委託元の事業者が変わるたびに、この線引きは一からやり直しになりがちです。次の表1に、連携の実績をまとめました。
| 区分 | 割合 | 内容 |
|---|---|---|
| 連携を行ったことがある部署 | 59.8% | 他部署または社外とのデータ連携の実績あり |
| 連携を行ったことがない部署 | 38.6% | 連携の実績なし |
| 社外連携で最も多い関係 | ― | 設計者-施工者間の連携が最多 |
この表からわかるのは、連携そのものは特別な体制がなくても起きているという点です。特別な体制がないまま起きているからこそ、途中で情報が抜け落ちたり、二重に手直しが発生したりする隙間も生まれます。
渡し先が読めることの意味
渡す相手が「設計者-施工者間」に集中しているとわかれば、案件に入るエンジニアは何を整えればよいかが見えてきます。渡し先が決まっているからこそ、渡し方の型をあらかじめ設計できるということです。
モデルの作り方を一から覚え直す仕事ではありません。渡し合いがすでに起きている関係の中に、抜けている手順や仕組みを見つけて補う仕事です。
渡し先が読めるという条件は、リモートでの参画とも相性が良い部分です。相手が誰かあらかじめ分かっていれば、同じ場所にいなくても、渡し方の手順さえ共有できれば仕事は成立します。
3. 置き場がないまま渡している
渡し合いが日常になっているなら、渡す場所も同じくらい整っていて良いはずです。ですが実態調査の数字を並べると、そうはなっていません。渡し合いという行為の広がりに、置き場という受け皿の整備がまだ追いついていないのです。
他部署または社外とのデータ連携を行ったことがある部署は59.8%でした5。一方で、共通データ環境(CDE環境)を構築してBIMプロジェクトを行ったことがある部署は40.9%にとどまり、行ったことがない部署のほうが56.7%と多くなっています7。
連携はしても、置き場は個別対応になりやすい
共通データ環境とは、関係者が同じ場所を見て、同じ最新のモデルを扱うための仕組みです。連携という行為自体はすでに広がっているのに、その受け皿となる置き場の整備は追いついていません7。
置き場が定まっていないと、渡し合いはメールやファイル共有のやり取りの中に埋もれます。最新版がどれか、誰が最後に触ったのかが、そのつど確認の手間になります。
置き場がないことは、担当者の能力の話ではありません。渡し合いという行為が先に広がり、それを受け止める仕組みづくりが追いついていないという、順番のずれの話です。次の図2に、この差を示しました。
出典:令和6年度 建築分野におけるBIMの活用・普及状況 実態調査(国土交通省、2025年1月)をもとに作成。
外から入るエンジニアが整える場所
この置き場の設計こそ、モデリングの熟練がなくても担える領域です。共通データ環境をどう構築し、誰にどの権限で開くかを決めるのは、データ基盤やシステム連携の経験が生きる仕事です。
置き場が整えば、渡し合いの手間そのものが減ります。次の章では、渡した後、つまりプロジェクトが終わった後の決め事がどうなっているかを見ていきます。
共通データ環境の設計は、既存のシステム連携やクラウドの権限管理に近い発想で組み立てられます。建築の専門知識よりも、誰にどこまでの権限を渡すかという設計の経験がそのまま生きる領域です。
置き場や連携の設計に関わるリモート案件をチェックする →
4. 終わった後の決め事が残っていない
渡し合いが起き、置き場が整ったとしても、プロジェクトが終わったあとにモデルをどう扱うかという決め事が抜けていれば、次の案件でまた同じ手間が発生します。
決め事が後回しになりやすい理由
実態調査では、プロジェクト完了後のBIMデータ保管について社内ルールを定めている部署は22.0%にとどまり、定めていない部署が76.0%にのぼっています8。次の表2に、この落差をまとめました。渡し合いや置き場の整備が進んだ現場でも、終わったあとの扱いまでは手が回っていないというのが実態です。
プロジェクトが動いている間は、渡し合いも置き場も、その場の必要に応じて何とか回ります。ですが完了後の保管は、次の案件が始まるまで手が回らない領域になりがちです。決め事を作る担い手が、日々の業務に追われて後回しにしてしまう構図です。
| 区分 | 割合 | 状態 |
|---|---|---|
| 保管ルールを定めている部署 | 22.0% | 次のプロジェクトでも参照できる状態 |
| 保管ルールを定めていない部署 | 76.0% | 担当者の記憶や個別対応に頼る状態 |
保管ルールがないまま担当者が入れ替わると、過去のモデルがどこにあるか、誰が最終版を持っているかが分からなくなります。渡した後の話は、渡した瞬間より、時間が経ってから困る話です。次のプロジェクトが始まったときに、前の資産を再利用できるかどうかは、この決め事の有無で分かれます。
保管ルールがない状態は、案件が終わった直後には見えにくい問題です。困るのは半年後、次のプロジェクトで前のモデルを参照しようとした瞬間です。後回しにされやすいのは、困る時期がずれているからだとも言えます。
ルールを作る側に回るということ
外から案件に加わるエンジニアにとって、この保管ルールの設計は具体的な役割になります。誰が・いつまで・どの形式で保存するかを決め、次のプロジェクトでも使える手順に落とし込む仕事です。
モデルを作る技術よりも、作られたあとの扱いを設計する技術のほうが、この案件では価値を持ちます。
保管ルールを整える仕事は、地味に見えて再現性の高い成果を残せる仕事でもあります。一度手順を決めてしまえば、次のプロジェクトからはその型をそのまま使えるからです。
5. 現場が求めているのは道具ではない
ここまで見てきた渡し合い・置き場・決め事は、どれもモデルを作る技術とは別の話でした。実態調査の最後の設問は、この流れを裏づけています。
BIMの今後の展開に特に期待することを尋ねた設問で、最も多かった回答は「データ連携手法の確立、情報共有環境整備」でした9。現場自身が、道具の高度化よりも、渡し方の整備を求めているということです。ここまで見てきた課題の一つひとつが、この期待の1位に集約されています。
求められているのは受け渡しの形
モデルをより精密に作る技術や、新しい機能を使いこなす技術ではなく、データをどう連携させ、どう共有環境を整えるかという手法の確立が、現場の期待の1位に挙がっています9。ここまでの数字が一本の線でつながる着地点です。
導入は進み、渡し合いは起きているのに、置き場と決め事が追いついていない。現場が次に欲しいのは新しいモデリング機能ではなく、この渡し方そのものを整える手法だということです。
道具の性能を上げることよりも、渡し方の手法を確立することのほうが、現場の期待は大きいのです。この順序を知っているかどうかで、案件に入ったときに何から手をつけるかの見立てが変わります。
出典:令和6年度 建築分野におけるBIMの活用・普及状況 実態調査(国土交通省、2025年1月)をもとに作成。山の高さは期待の大小の順位を表したもので、数値を示すものではありません。
リモートで担える理由
受け渡しの手法を確立する仕事は、モデルの前で作業する仕事ではありません。誰が・どこに・どう置くかという設計とルール作りが中心なので、案件に加わる場所を問いません。
Remoguが扱う案件は、90%以上がフルリモート可能です10。渡し合いの相手が地理的に一か所に集まっていない仕事だからこそ、リモートでの参画と噛み合います。
場所に縛られず、自分の経験を活かせる案件を探しているなら、渡し方の設計というこの角度は見落としやすい入り口です。これまで積み上げてきたデータ連携の経験を、そのまま次の案件の条件に照らして確かめてみましょう。
データ連携手法の確立に関わるリモート案件をチェックする →
6. まとめ
BIMの案件は、モデルを作る精度の勝負ではありません。導入している部署は58.7%に達し1、社外との連携を行ったことがある部署は59.8%にのぼるのに5、共通データ環境を構築した部署は40.9%7、保管ルールを定めている部署は22.0%にとどまっています8。
渡し合いはすでに起きていて、追いついていないのは置き場と決め事です。現場が今後の展開に期待することの1位も、道具の高度化ではなく「データ連携手法の確立、情報共有環境整備」でした9。次の表3に、ここまでの数字の流れをまとめました。
建築の現場や設計者の扱い方の問題というより、渡し合いという新しい動きに対して、置き場と決め事という受け皿の整備がまだ追いついていない段階にあるということです。ここは、外から加わるエンジニアが埋められる余地であり、モデルの操作経験がなくても踏み出せる入り口でもあります。
| 段階 | 割合 | 状態 |
|---|---|---|
| BIMの導入 | 58.7% | 道具は入っている |
| 社外とのデータ連携 | 59.8% | 渡し合いは起きている |
| 共通データ環境(CDE)の構築 | 40.9% | 置き場は追いついていない |
| 保管ルールの整備 | 22.0% | 決め事が残っていない |
| 今後への期待の1位 | データ連携手法の確立 | 現場が求めるのは道具でなく手法 |
この置き場と決め事を設計する役割は、モデリングの熟練よりも、データ連携やシステム設計の経験が生きる仕事です。Remoguが扱う案件は90%以上がフルリモート可能なので10、渡し合いの相手が各地に散らばるこの仕事とも噛み合います。まずは登録して、自分の経験がどの案件の条件に合うかを確かめてみてはいかがでしょうか。
7. よくある質問
モデルを作る操作の経験がなくても、BIMの案件は担えますか
担えます。実態調査でも、導入している部署のなかで効果を大きいと感じる部署は42.5%にとどまっており4、モデルを作る技術だけでは効果につながっていない実態が出ています。求められているのは、渡し方・置き場・決め事という運用の設計です。データ連携やシステム設計の経験は、そのままこの役割に生きます。モデルを作る経験よりも、渡し方や置き場を組み立ててきた経験のほうが、この案件では差になります。
設計の経験しかなくても、施工側とのデータの受け渡しに関わる案件はありますか
あります。社外とのデータ連携では「設計者-施工者間」の連携が最も多いという結果が出ており6、設計を担う立場から施工側へ渡す場面は珍しくありません。渡す相手が決まっているからこそ、渡し方の手順を整える経験が価値を持ちます。設計側の視点を持ちながら、施工側にどう渡せば手戻りが減るかを整理できる人は、この関係の中で重宝されます。
地方に住んでいても、BIMに関わる案件でリモートワークはできますか
所属部署の所在地を見ると、東京・愛知・大阪が30.9%に対し、そのほかの地域が66.7%という結果になっています2。BIMに関わる部署は大都市圏だけに集まっているわけではなく、渡し合いの相手はもともと地理的に散っています。場所を問わない働き方と噛み合いやすい仕事だということです。次の図4に、この分布を示しました。
出典:令和6年度 建築分野におけるBIMの活用・普及状況 実態調査(国土交通省、2025年1月)をもとに作成。
参画するには、まずどこから条件を確認すればよいですか
自分の経験がどの案件の条件に合うかは、実際の案件情報を見るのが早い方法です。渡し合い・置き場・決め事のどこに強みがあるかを整理しながら、Remoguに登録して案件の条件を確かめてみることから始められます。条件を見るだけでも、今の経験がどこで生きるかの手がかりになります。
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出典・参考情報
*1 国土交通省「令和6年度 建築分野におけるBIMの活用・普及状況 実態調査」建築BIM推進会議 設計・施工等の13団体へのアンケート(2025年1月)
*2 国土交通省「令和6年度 建築分野におけるBIMの活用・普及状況 実態調査」建築BIM推進会議 設計・施工等の13団体へのアンケート(2025年1月)
*3 国土交通省「令和6年度 建築分野におけるBIMの活用・普及状況 実態調査」建築BIM推進会議 設計・施工等の13団体へのアンケート(2025年1月)
*4 国土交通省「令和6年度 建築分野におけるBIMの活用・普及状況 実態調査」建築BIM推進会議 設計・施工等の13団体へのアンケート(2025年1月)
*5 国土交通省「令和6年度 建築分野におけるBIMの活用・普及状況 実態調査」建築BIM推進会議 設計・施工等の13団体へのアンケート(2025年1月)
*6 国土交通省「令和6年度 建築分野におけるBIMの活用・普及状況 実態調査」建築BIM推進会議 設計・施工等の13団体へのアンケート(2025年1月)
*7 国土交通省「令和6年度 建築分野におけるBIMの活用・普及状況 実態調査」建築BIM推進会議 設計・施工等の13団体へのアンケート(2025年1月)
*8 国土交通省「令和6年度 建築分野におけるBIMの活用・普及状況 実態調査」建築BIM推進会議 設計・施工等の13団体へのアンケート(2025年1月)
*9 国土交通省「令和6年度 建築分野におけるBIMの活用・普及状況 実態調査」建築BIM推進会議 設計・施工等の13団体へのアンケート(2025年1月)
*10 Remoguサイト公開情報(フルリモート可能案件の割合)