内製化支援の案件で、一人目の外部エンジニアが置いていくもの

📘 この記事でわかること
- 自己診断を提出した企業の約7割がレベル1以上3未満に集中していることと、現在値と目標値の開きが1.53あること
- 1年程度で数字に表れやすい変化と表れにくい変化の境目と、「体制」と「人材育成・確保」で任されやすい作業
- 技術の説明だけでは噛み合わない理由と、抜けたあとも現場が回るために先に残しておく4つの観点
一人目の外部エンジニアとして参画する案件では、動くものを用意するだけでは仕事が終わりません。受け入れ側の組織にどんな仕組みが整っているか、整っていないかによって、任される範囲も、参画中に残しておくべきものも変わります。IPAの自己診断データは、企業のDX推進の現在値と目標値のあいだに1.53の開きがあることを示しています。そして2年連続で提出している大企業を見ると、1年程度では指標に有意な差が出ていません。この記事では、受け入れ側の状態と、抜けたあとも現場が回るために先に決めておく4つの要素を、公表データをもとに整理します。
1. 一人目として入る案件は、仕組みが無い状態から始まります
受け入れ側にも、規模のばらつきがあります
IPAが2026年5月に公表した2025年版のDX推進指標自己診断結果分析レポートには、1,164件の提出がありました1。提出元の内訳は、中小企業が約6割、大企業が約4割です1。一人目の外部エンジニアとして案件に入る先には、こうした中小企業も一定の割合で含まれます。提出企業の規模だけを見ても、社内にどれだけ仕組みが整っているかまでは分かりません。判断の経緯がチャットの履歴にしか残っていない、手順が担当者の頭の中にしかない、といった状態は珍しくありません。仕組みが整っていない組織ほど、一人目として入る人の役割は、コードを書くことよりも前段の整理に比重が置かれます。
整っている組織は、全体のごく一部です
全項目平均値の分布を見ると、「レベル1以上2未満」と「レベル2以上3未満」に位置する企業が約7割を占めます2。全項目平均値がレベル4以上に達している企業は、全体の3%にとどまります2。全体の約7割がこの水準にとどまっている以上、参画先の組織が仕組みの整った状態にあるとは限りません。仕組みが整っている前提で動き方を決めると、参画してから数週間で見立てがずれます。この分布は、仕組みが無いことを問題視するための数字ではなく、参画した時点の状態を把握するための材料です。状態を先に押さえておくと、最初の数週間で取り組む優先順位を誤りにくくなります。同じレベル帯にある組織でも、どの項目で水準が低いかは案件ごとに異なるため、分布そのものを個々の参画先の評価に置き換えないことも大切です。
一人目に求められるのは、コード以外の整理です
一人目の外部エンジニアに求められるのは、動くシステムを用意することだけではありません。要件を言葉にして残すこと、判断の経緯を記録すること、次に読む人にも伝わる形で整えることも、同じくらい重要な役割です。仕組みが無い状態から始まる案件ほど、この整理にかける比重が大きくなります。参画してすぐに機能を積み上げるより、まず現状の水準を確認する方が、後戻りの少ない進め方になります。
出典:IPA「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2025年版)概要版」(2026年5月)をもとに作成
整っていない状態から始まると分かっていれば、最初に据える基準も変わります。次に、目標までの開きがどれくらいあるのかを見ていきます。
2. やりたいことと現状の差は1.53あります
全企業の現在値は1.98、目標値は3.51です
IPAのDX推進指標では、全企業における現在値の平均が1.98、目標値の平均が3.51で、その差は1.53です3。この差は一つの部署や一人の担当者が縮められる大きさではなく、組織全体の取組の積み重ねで動く数字です。一人目の外部エンジニアとして参画する場面では、この開きの大きさを踏まえたうえで、任される範囲を協議する材料になります。数字の大きさを先に共有しておけば、参画期間の中で「どこまでを担当するか」の線引きがしやすくなります。
出典:IPA「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2025年版)概要版」(2026年5月)をもとに作成
この差は、1年で埋まる大きさではありません
2年連続でこの自己診断を提出している大企業を見ると、全指標の現在値の平均は2024年が2.63、2025年が2.79で、前年との差は0.2程度です4。この差に統計的な有意差は見られず、1年程度では目に見える変化は数字に表れにくいという結果です4。対象はあくまで2年連続で提出している大企業であり、すべての企業に同じ速さで変化が起きるという意味ではありません。参画先で成果を急かされる場面があっても、この開き方の速さを協議の材料にできます。
任される範囲を、開きの大きさで区切ります
1.53という開きを、参画期間の中ですべて埋める目標にすると、範囲が際限なく広がりやすくなります。開きの一部を、参画期間で扱える単位まで切り出し、残りは受け入れ側が引き続き取り組む前提で線を引く方が、進め方が明確になります。範囲を先に区切っておけば、期間の途中で依頼内容が積み上がっても、当初の合意に立ち戻って協議できます。
この開き方の速さを踏まえると、短期で確認できることと、確認できないことを分けておく必要があります。範囲の線引きと期間の見立てを最初に共有しておけば、途中で状況が変わっても、どこまで対応するかを協議し直す土台が残ります。
3. 1年では、数字に出るほどの変化は起きません
数字に出るものと、現場で確認できるものは別です
自己診断の指標に表れる変化と、参画した現場で確認できる変化は、現れる速さが異なります。前章で触れたとおり、2年連続で提出している大企業の指標平均は1年で0.2程度しか動かず、統計的な有意差も見られません4。一方で、取組全体はレベル1以上3未満の水準に集中しており、全社戦略に基づく持続的な実施まで達している企業は少なく、散発的な取り組みにとどまっています7。数字の変化と、現場で確認できる変化を分けて見ておくと、参画した直後の焦りを減らせます。指標が動かない期間でも、現場では手順が1つ整理される、判断の基準が1つ言葉になる、といった変化が積み重なっています。
| 期間の目安 | 自己診断の指標が示す傾向 | 現場で確認できること |
|---|---|---|
| 1年程度 | 2年連続提出企業の現在値は2024年2.63から2025年2.79で、差は0.2程度、統計的な有意差は見られません4 | 仕組みが1つ動き出す、手順が1つ文書に残る、といった単位の変化 |
| 複数年 | 全社戦略に基づく持続的な実施まで達している企業は少なく、取組はレベル1以上3未満に集中しています7 | 複数の仕組みが噛み合い、判断の基準が組織の中で共有され始める |
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急ぐより、残すものを先に選びます
短期間で結果を求められても、数字に表れるほどの変化を1年で作ることは難しい状況です4。だからこそ、参画した早い段階で「何を残すか」を決めておく方が、抜けたあとの現場に効きます。次の一覧は、参画初期に確認しておくと進めやすくなる観点です。
- 現在動いている仕組みのうち、止まると業務に支障が出るものはどれか
- 手順が文書として残っているか、担当者の記憶に頼っているか
- 進める・止めるの判断を、誰がどんな基準で行っているか
- 参画が終わったあと、引き継ぎ先として名前が挙がる人がいるか
これらは参画初日から確認できる項目であり、指標の数字が動くのを待たずに着手できます。次章では、実際に伸びている領域を確認します。
4. 伸びているのは「体制」と「人材育成・確保」です
差が大きい上位5指標の内訳
2024年と2025年の現在値の平均を比べ、差が大きかった経営視点指標の上位5指標のうち、2指標は「推進・サポート体制」、3指標は「人材育成・確保」に関するものです5。体制づくりと人材育成は、いずれも一人目の外部エンジニアが直接関わりやすい作業です。この2領域は、コードの量では測れない部分であり、参画した本人が意識して手を動かさない限り、指標には表れません。次の表に、伸びている領域と、参画時に任されやすい作業を整理します。
| 伸びている領域 | 該当する指標数 | 一人目の外部エンジニアが関わりやすい作業 |
|---|---|---|
| 推進・サポート体制 | 2指標5 | 進め方の型を作る、役割分担を図や文書にまとめる |
| 人材育成・確保 | 3指標5 | 手順書やナレッジを残す、引き継ぎやすい形に整える |
- 推進・サポート体制:誰が何を担当しているかの一覧を1枚にまとめる
- 推進・サポート体制:進め方の型を1つ決めて、次の案件でも使える形にする
- 人材育成・確保:新しく加わる人が最初に読む手順書を1つ用意する
- 人材育成・確保:質問に答えられる窓口と、答え方の基準を明確にする
技術力だけでは、この2領域は動きません
体制づくりや人材育成は、コードを書く力だけでは進みません。進め方の型や引き継ぎの形を、経営側にも伝わる言葉で残しておく必要があります。たとえば、作業を任せる基準を図にまとめる、新しく加わるメンバーが最初に読む手順書を整えるといった作業は、規模の大きな開発でなくても着手できます。設計や実装の経験に加えて、こうした整理を担える人が、体制づくりの領域では重宝されやすくなります。次章では、経営視点の指標とIT視点の指標の関係を見ていきます。
5. 技術の話だけでは噛み合いません
経営視点の指標が、IT視点の指標を上回っています
大企業、先行企業、DX認定企業、2年連続で提出している企業のいずれにおいても、経営視点の指標がIT視点の指標を上回っています6。これは、DXが進展している企業群に共通して見られる傾向です6。技術側の説明を積み上げるだけでは、経営側の指標が動いていない限り、話は噛み合いません。この傾向がすべての企業に当てはまるとは限りませんが、経営側の関心が技術の詳細よりも先に来る場面は、一人目として入る案件でも起こり得ます。設計の正しさを説明する前に、体制や進め方に対する経営側の見立てを確認しておくと、説明の順番を組み立てやすくなります。
図の作成:Remogu編集部。IPAのデータでみられた「経営視点指標がIT視点指標を上回る」傾向を整理したもので、各指標の具体的な数値ではありません
技術の提案を、経営側の言葉に置き換えます
設計やアーキテクチャの提案を、体制や役割分担の言葉に置き換えて説明できると、経営視点の指標を担う立場との協議が進みやすくなります。たとえば「保守性を高めます」ではなく「担当者が変わっても止まらない状態にします」と伝えると、技術的な背景を知らない立場にも意図が伝わりやすくなります。一人目として入る案件では、この置き換えができるかどうかが、任される範囲の広さを左右します。
設計の選択も、抜けたあとの引き継ぎやすさに影響します
アーキテクチャの選択そのものも、抜けたあとの引き継ぎやすさを左右します。特定の担当者しか全体を把握していない構成よりも、次の担い手が短い時間で全体像をつかめる構成の方が、経営視点の指標が重視する体制づくりとも噛み合います。設計を選んだ理由を言葉で残しておけば、次に入る人が同じ判断を再現でき、選び直すたびに検討をやり直す必要がなくなります。次章では、抜けたあとも現場が回るために、先に残しておく4つの要素を整理します。
6. 抜けた後に回るものを、先に決めて入ります
残す4つを、参画初期に言葉にしておきます
企業の取組はレベル1以上3未満に集中し、全社戦略に基づく持続的な実施まで達している企業は少ない状況です7。取組が散発的にとどまりやすい以上、一人目の外部エンジニアが抜けたあと、積み上げてきたものが個人に紐づいたまま消える場面も起こり得ます。提出企業の約6割を占める中小企業では1、こうした仕組みを共有する担当者自体が少なく、一人目が抱えた情報がそのまま止まりやすい構造があります。参画期間の長さに関わらず、この4つを言葉にして残せているかどうかで、抜けたあとの現場の状態が変わります。次の表に、参画中に残しておく4つの観点を整理します。
| 残すもの | 何を指すか | 確認の仕方 |
|---|---|---|
| 動く仕組み | 実際に稼働しているシステムや自動化の仕組み | 担当者が変わっても、止まらずに動くか |
| 運用の手順 | 日々の運用を回すための手順書やチェックリスト | 手順を見れば、同じ判断が再現できるか |
| 判断の基準 | 進める・止めるを判断するための基準や優先順位 | 基準が、個人の頭の中だけにとどまっていないか |
| 次の担い手 | 引き継ぐ相手が名指しされている状態 | 名前が挙がり、役割が渡っているか |
4つのうち、動く仕組みと運用の手順は、参画中に整えれば形として残ります。判断の基準は、言葉にしないまま参画者の頭の中にとどまりやすく、次の担い手は、名前が挙がっていなければ引き継ぎ自体が始まりません。この2つほど、意識して残す作業が要ります。
図の作成:Remogu編集部。参画時に残すものの優先順位を整理したもので、統計データではありません
抜けた後も回る仕組みづくりを担うリード案件を見る →
4つを言葉にしておけば、参画する期間の長さに関わらず、抜けたあとの現場に積み上げが残ります。全企業の現在値と目標値には1.53の開きがあり3、これは一人だけで埋める数字ではなく、組織が時間をかけて縮めていく数字です。一人目として入る立場でできるのは、その途中で「何を残すか」を決めて、次に引き継げる形にすることです。ここからは、よくある質問に答えます。
7. よくある質問
一人目の外部エンジニアとして案件に入るとき、最初に何を確認すればよいですか
動く仕組み、運用の手順、判断の基準、次の担い手の4つが、それぞれどこまで言葉になっているかを確認します。すべてが揃っている参画先はまれです。揃っていない部分から、優先して手をつける計画を立てられます。全項目平均値がレベル4以上に達している企業は全体の3%にとどまるため2、仕組みの一部が未整備であることを前提に進める方が現実的です。確認した結果は、参画開始時点の記録として残しておくと、後から振り返るときの比較材料にもなります。
成果は、どのくらいの期間で見えるようになりますか
2年連続でこの自己診断を提出している大企業では、1年程度で指標に表れる変化は0.2程度にとどまり、統計的な有意差も見られません4。数字に表れる変化と、現場で確認できる変化を分けて見ておくと、短期間で成果を求められた場合にも説明しやすくなります。参画初期は、指標に表れにくい整理の作業から着手し、成果の説明は現場で確認できる変化を軸にする進め方が現実的です。何をもって進捗とするかを事前にすり合わせておくと、期間の途中で評価の基準がずれる事態を避けやすくなります。
経営層とのやり取りで、意識すべきことはありますか
大企業や先行企業を含む複数の企業群で、経営視点の指標がIT視点の指標を上回っています6。技術の提案を、体制や役割分担といった経営側の言葉に置き換えて説明できると、協議が進みやすくなります。技術的な正しさだけを根拠にすると、経営側の判断基準とかみ合わない場面があることを踏まえておくと、説明の組み立て方を事前に用意しやすくなります。
このデータは、内製化がどれくらい進んでいるかを示していますか
示していません。IPAの自己診断結果分析レポートが測っているのは、DX推進の成熟度であり、内製化の状況そのものではありません3。この記事では、受け入れ側の組織がどんな状態にあるかを把握する材料としてこのデータを使っており、内製化がどれだけ進んでいるかを判定するものではない点に注意してください。
Remoguでは、どんな案件でこうした経験を活かせますか
Remoguの案件は、90%以上がフルリモート可能です8。一人目としてリード役を担う案件では、仕組みづくりや引き継ぎの設計まで任される場面があり、この記事で整理した4つの観点をそのまま活かせます。動く仕組みを用意する力に加えて、運用の手順や判断の基準を言葉にして残す作業を担える人は、受け入れ側にとって次の担い手を見つけやすくする存在にもなります。案件の内容や条件は、時期によって異なります。
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出典・参考情報
*1 独立行政法人情報処理推進機構「DX推進指標」自己診断結果 分析レポート(2025年版)概要版(2026年5月)
*2 独立行政法人情報処理推進機構「DX推進指標」自己診断結果 分析レポート(2025年版)概要版(2026年5月)
*3 独立行政法人情報処理推進機構「DX推進指標」自己診断結果 分析レポート(2025年版)概要版(2026年5月)
*4 独立行政法人情報処理推進機構「DX推進指標」自己診断結果 分析レポート(2025年版)概要版(2026年5月)
*5 独立行政法人情報処理推進機構「DX推進指標」自己診断結果 分析レポート(2025年版)概要版(2026年5月)
*6 独立行政法人情報処理推進機構「DX推進指標」自己診断結果 分析レポート(2025年版)概要版(2026年5月)
*7 独立行政法人情報処理推進機構「DX推進指標」自己診断結果 分析レポート(2025年版)概要版(2026年5月)
*8 Remoguサイト公開情報(案件の90%以上がフルリモート可能)