生成AIの最先端技術を追いかけ、日本のエンジニアを育てる。世界一、先端的な「AIネイティブ企業」を目指すスタートアップの見据える未来像 ー 株式会社Galirage 森重真純さん

生成AIの社会実装が加速する今、世界一、先端的な「AIネイティブ企業」を目指している株式会社Galirage(ガリレージ)。生成AIを中心に事業展開する同社が、領域の最前線を走れる理由はどこにあるのでしょうか。
Galirageの代表取締役CEOである森重真純さんに、情報のキャッチアップに対するこだわりやエンジニア育成にまつわる思い、Galirageが描く未来像などについて伺いました。
IBMを卒業し、「YouTube100本ノック」から事業をスタート
―森重さんは元日本IBMのデータサイエンティストですが、なぜGalirageを起業するに至ったのでしょうか?
一番大きかったのは、共同創業者で現在取締役CTOを務める髙岡さんの存在です。彼は大学時代の先輩で、お互い次のキャリアに進むタイミングが合致したのをきっかけに、共に起業することを決意しました。
事業内容を決めたのはその後です。たまたま生成AIコンテンツを世に発表する機会があり、そこで大きな反響を得られ、「これはニーズがあるぞ」と手応えを感じたのが決め手です。

株式会社Galirage 代表取締役 森重 真純 氏
慶應義塾大学 大学院 修士課程修了。日本IBMにデータサイエンティストとして入社。その後、株式会社Galirageを創業。学生時代に始めた6年間のフリーランス経験を含めると、100を超えるプロジェクトに参画。上智大学にて非常勤講師として活動。『AIとコミュニケーションする技術(インプレス出版)』の著者。
―「Galirage」という企業名にはどんな思いが込められているのでしょうか?
次世代の「ガリレオ」たり得るクリエイターの人たちが集まって、0→1でものづくりをしながら自分らしく活躍できる、「ガレージ」のような場所にしたいという思いを込めました。
―立ち上げ期は精力的にYouTube動画をアップしていたとか。
創業当初の数ヶ月は「YouTube100本ノック」と称して、ひたすらエンジニア向けの教育系動画を作っていました。今も「生成AIアカデミー」というチャンネル名で、生成AIに特化した動画を定期的に投稿しています。
動画がどんな仕事につながるのかまでは想像できていませんでしたが、始めてみたら何か見えてくるものがあるのではないか、という一心でした。
アメリカ現地に足を運び、生成AI領域の未来を読む
―現在はシステム開発や研修、自社プロダクトの開発・運営など多岐にわたる事業を展開していますが、どんな戦略や相乗効果があるのでしょうか?
まず、キャッシュを生み出す柱となっているのが、BtoB向けのシステム開発と研修です。これらで得た利益を基に、採用活動やメディア運営、自社プロダクトの開発、生成AI領域の研究開発を行っています。
いずれも生成AIに特化し、各事業で得たナレッジやシステムを醸成・連携しているのが強みです。
―生成AIの最新情報をキャッチアップするため、積極的にアメリカの現地に赴くことも多いとか。
CxOのメンバーが現地で得たナレッジを、生成AI戦略の重要な意思決定に活かしています。
日本にいても情報は一定得られますが、直接アメリカのイベントに赴きAIプロダクトの背景やビジョンを現地のエンジニアに聞くと、生成AI領域の先を読めるようになります。
このような取り組みを行っている企業はまだ多くありませんが、社内に与えるインパクトは大きく、投資価値を実感します。
―研究開発は主にどのような内容なのでしょうか?
直近は、RAGの精度改善のための評価や、ドキュメントローダーの研究が主です。今年はすでに論文を三本提出しました(2025年8月時点)。
例えば生成AIのチューニングによる精度改善の手法について、当社が行っているアプローチは大きく三つです。一つは、データ自体の品質改善。手書きの日報などをデジタル化したときに、正しい日本語を検出し、文字起こしするような手法ですね。二つ目は、プロンプトエンジニアリング。あまり整っていないユーザーの質問を、LLMによって整形したりするアプローチが例としてあげられます。三つ目が、Agentic Retrieval。検索方法をAIがプランニングする、高度な検索方法です。
健康的に働き、仕事にワクワクできる組織づくりをする

―組織は正社員が11名、業務委託のメンバーが約100名と伺っています。組織運営の方針や思いについても教えてください。
根底にある運営方針は、メンバー一人ひとりが健康的に過ごし、仕事にワクワクしている状態を大切にすることです。単なる作業として仕事を進めるのではなく、目の前にある新しいものごとを楽しんでほしいです。
また、ジョインしたら基本的に業務委託からスタートしてもらうことがほとんどです。カルチャーマッチはもちろん、実現したいキャリアや成長したい方向と当社の業務が合致した場合は、正社員としてコアメンバーになってもらう形を採っています。
―現在は生成AIエンジニアやPMを募集されていますが、どのようなスキルセットが求められますか?
必須条件は三つです。一つは、自分を大切にできること。他人のために無理をせず、自分の意思や目的を持って仕事に取り組んでほしいです。もう一つは、ものづくりや創造的な活動にワクワクできること。AIという最先端技術を扱う以上は、貪るように新しい技術を学び、楽しめる人だとうれしいです。
最後の一つは、「大人」であること。「大人」の定義は人によって異なりますが、仕事を進めていく上で常に大人としてどうすべきかを考えられるのは、大切なことだと考えています。
―応募を検討している方に向けて、技術的にチャレンジングな部分についても簡単に教えてください。
例えば大規模システムにおける生成AIシステム開発の場合は、サーバー障害が起きた際の可用性を担保するためのテストなどが、チャレンジングなポイントとしてあります。
あとはRAGの精度改善のほか、AIエージェントやマルチエージェント、MCPと呼ばれる技術などの領域も難しいですが、面白くやりがいがあります。
今の日本には生成AIエンジニアが一人でも多く必要
―森重さんはエンジニアの育成に力を入れているそうですが、どのような思いがあるのでしょうか?
品質の高いアウトプットを出すために、「社内のエンジニアの育成」を大切にしています。同時に「自分がここで働く意味」を見出してもらう意味で、育成支援だけでなく、コミュニティ形成も欠かせません。これらは経営的観点からの話です。
同時に、「社外のエンジニアの育成」も重要だと考えています。今の日本はアメリカに比べると、生成AIによる生産性向上がかなり遅れているという課題があると考えています。海外のLLMやプロダクトに対する依存度が高くなり日本のお金が外資に流れていけば、日本はどんどん貧しくなるでしょう(いわゆるデジタル赤字の問題)。
本気で社会を変えていく上で、Galirage単体が与えられるインパクトには限界があり、社外のエンジニア育成(産業全体の知識水準の向上)にも力を入れているんです。YouTubeやブログで無料教材を提供しているのはこのような想いからです。
・YouTube:https://www.youtube.com/@masumi_engineer
・Zenn:https://zenn.dev/umi_mori
―著書『AIとコミュニケーションする技術 プロンプティング・スキルの基礎と実践』を執筆された背景にも、同様の思いがあるのでしょうか。
先述した通り、産業全体の知識水準を向上させるために、世の中に一人でも多くの「AIリテラシーの高い人材」を増やしたいという想いを強く持っています。10年は廃れない名著を目指し、AIを取り扱う上で普遍的かつ重要な要素を詰め込みました。実際、プロンプティング ――「人がAIに指示をする」技術は、AIに触れる人全員が身につけておくべき教養です。
AIを活用してより生産性の高い活動ができれば、多くの方にとって有益なはずです。ぜひ従来型の働き方から新しい働き方へと、勇気を持って踏み出すきっかけにしていただけたらと思います。
「AIネイティブ企業」のモデルケースとしてAIXを前進させる
―現在Galirageは3期目に入りました。今後の会社の展望についてお聞かせください。
Galirageは、世界一、先端的な「AIネイティブ企業」を目指しています。「社内でものすごくAIを活用していて、どこよりも生産性が高い」モデルケースとして、大企業のAIXを前進させるような存在になろうとしています。
その上で、今の忙しすぎる社会における「時間貧困」を解消する、自分のやりたい仕事に没入してウェルビーイングを担保するといった理想も数多く持っています。まずは第一歩として、自分たちが圧倒的な先端企業になります。
―貴重なお話をありがとうございました。最後に、Remogu(リモグ)を利用してフリーランスエンジニアの方を採用された感想についてもお伺いできますか?
カルチャーマッチを見極めてくれるのが、とてもありがたいです。
いつもRemoguさんが「Galirageらしい人」と引き合わせてくれていることに感謝しております。