【不当な給付内容の変更】フリーランスエンジニアが確かめる仕様変更・やり直しの費用負担と3つの違反例
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 「不当な給付内容の変更」と「不当なやり直し」の意味と、1か月以上の業務委託なら合意があっても違反になること
- 検査基準の後出しや受領後の大幅な修正、中止時の費用不払いという3つの違反例と、仕様変更を理由にした受領拒否との違い
- 3条通知の給付の内容と食い違うときに自分の責任として扱われる仕組みと、変更を求められたときに確かめる3つの点
業務委託で受けた開発の案件で、納品の直前に仕様の変更を求められました。作り直しにかかる手間の費用を求めてよいのか、自分に責任があるとされるのはどんなときかが分かりませんでした。フリーランスに責任がないのに、費用を負担せずに内容を変えさせたり、やり直させたりすることは禁止されています。
▶ あわせて読みたい
・業務委託の振込手数料を差し引かれたら?フリーランスエンジニアが確かめる減額に当たる3つの条件
・【業務委託の報酬】後から減額されたときに禁止されている行為と、その条件
・案件の契約外の作業と無償の依頼|想定例に挙げられている形を解説
1. 不当な給付内容の変更とは|責任のない変更を費用負担なしで求める行為
納品の直前に仕様の変更を求められると、その作業に費用がかかっても言い出しにくいと感じることがあります。まず確かめておきたいのは、こうした場面に当てはまる禁止行為が、公正取引委員会の資料にはっきりと書かれているという点です。
「不当な給付内容の変更」と「不当なやり直し」の中身
公正取引委員会のパンフレットは、フリーランスに責任がないのに、費用を負担せずに給付の内容を変更させたり、給付を受領した後にやり直させたりして、フリーランスの利益を不当に害することを「不当な給付内容の変更・やり直し」と呼んでいます1。
つまり、変更ややり直しそのものが問題なのではありません。フリーランスに責任がないのに、費用を負担させない形で変更ややり直しをさせることが問題です。この線引きを知っておくと、求められた変更を前に何を確かめればよいかが見えてきます。
2つの行為の対象の違い
資料が挙げているのは「給付の内容を変更させる」行為と「給付を受領した後にやり直させる」行為の2つです1。前者は納品前、後者は納品後という違いはありますが、どちらも費用を負担せずに求める点は共通しています。
どちらも根拠になっている考え方は同じで、フリーランスに責任があるかどうかが分かれ目です。
| 行為 | 中身 |
|---|---|
| 不当な給付内容の変更 | 責任がないのに、費用を負担せずに給付の内容を変更させること |
| 不当なやり直し | 責任がないのに、給付を受領した後にやり直させること |
表1のとおり、変更のタイミングが納品の前か後かで名前は分かれますが、フリーランスに責任がないのに費用の負担なく求められている点を確かめる姿勢は同じです。次の節では、この行為がいつ違反として扱われるのかを見ていきます。
2. 合意があっても違反になる1か月以上の業務委託
「相手が了解してくれたのだから問題ない」と考えたくなりますが、フリーランス・事業者間取引適正化等法ではそう扱われません。1か月以上の業務委託になると、発注事業者が避けるべき行為の範囲が法律で決まっています。
了解や合意があっても変わらない違反
公正取引委員会のパンフレットによれば、フリーランスに1か月以上の業務委託をしている発注事業者には7つの禁止行為が定められています1。フリーランスの了解を得たり合意していても、発注事業者に違法性の意識がなくても、これらの行為は法律に違反します1。
つまり、「変更してもよいですよ」と答えた経緯があっても、その変更が費用の負担なく行われているなら、違反に当たる可能性は消えません。
発注側の都合による変更の費用負担
では、発注側の都合で変更ややり直しを求められたときはどうなるのでしょうか。発注側の都合で発注を取り消したり、やり直しをさせたりする場合は、フリーランスが作業に要した費用を発注事業者が負担する必要があります1。
この費用負担の考え方は、次の節で見る違反例のすべてに共通しています。作業に取りかかった後で取り消されたり、大きな修正を求められたりしたときに、その分の費用がどちらの負担になるのかを判断する軸です。
出典:フリーランス・事業者間取引適正化等法(パンフレット)公正取引委員会(2026年9月)をもとに作成
図1のように、発注側の都合による変更とやり直しでは費用の負担先が発注事業者になり、了解や合意があっても1か月以上の委託なら違反になる点は変わりません。次の節では、実際にどんな場面が違反として示されているかを見ていきます。
3. 違反の例:検査基準の後出し・受領後の大幅修正・中止時の費用不払い
では、実際にどんな場面が違反とされたのでしょうか。公正取引委員会の資料には、違反として扱われた例が示されています。
検査基準を後から厳しくして、無償でやり直させた例
違反となる例として、ソフトウェア開発会社がプログラマーにプログラムの作成を委託し、受領後にあらかじめ定めた検査基準を恣意的に厳しくして、発注内容と異なることを理由に無償でやり直しをさせたケースが示されています1。
資料は、受領した後に検査基準を厳しくし、費用を負担せずにやり直させた点を違反としています。
大幅な修正と、中止による取り消しの例
別の例では、内容を確認して台本を受領したのに、取引先の意向で大幅に修正させ、修正作業に伴う追加の費用を支払わなかったケースが違反として示されています1。受領した後の修正であっても、追加の費用を負担しない形は同じ扱いです。
また、イベントの中止を理由に委託を取り消し、準備のために支出した費用を負担しなかったケースも示されています1。前の節で見たとおり、発注側の都合で取り消す場合は、作業に要した費用を負担する必要があります。
| 場面 | 何が問題か |
|---|---|
| 検査基準を受領後に厳しくした | 発注内容と異なるとして無償でやり直させた |
| 台本を受領した後に大幅な修正を求めた | 修正作業に伴う追加の費用を支払わなかった |
| イベントの中止を理由に委託を取り消した | 準備に支出した費用を負担しなかった |
表2の3つの例に共通しているのは、発注事業者側の事情で内容や進め方が変わっているのに、その分の費用がフリーランス側に残っている点です。開発案件を受けるときも、この構図に当てはまっていないかを確かめる材料です。
条件をそろえたうえで参画できるリモート案件を見てみる →
4. 仕様変更を理由にした受領拒否(別の禁止行為)
納品の直前に仕様の変更を求められる場面には、もう一つ別の禁止行為が関わることがあります。受け取ってもらえないという場面です。
当初の仕様で作ったものを受け取らなかった例
受領拒否の違反例として、システム開発会社が取引先からの仕様変更を理由に、あらかじめ定めた納期に、フリーランスが当初の仕様に従って開発したプログラムを受領しなかったケースが示されています1。
納期に間に合わせて仕様どおりに仕上げていても、取引先側の事情で仕様が変わったことを理由に受け取りを拒まれる形です。これは、内容を変えさせる行為とは別の禁止行為として扱われます。
受領拒否と内容変更の違い
仕様変更を理由に受け取らない場合は「受領拒否」、費用を負担せずに内容を変えさせる場合は「不当な給付内容の変更」として、それぞれ別の禁止行為に当たります1。どちらも仕様変更が引き金になっている点は共通していますが、当たる禁止行為の名前と中身は違います。
同じ「仕様変更」という言葉から始まっていても、発注事業者がその後どう動いたかで当てはまる行為が変わります。受け取りを拒んだのか、費用を負担せずに直しを求めたのかを区別して考えることが、次の節で見る自分の責任の有無にもつながります。
出典:フリーランス・事業者間取引適正化等法(パンフレット)公正取引委員会(2026年9月)をもとに作成
図2のとおり、仕様変更をきっかけに起こりうる行為は一つではありません。開発の現場で仕様変更を伝えられたときは、受け取りを拒まれているのか、内容の変更ややり直しを求められているのかを、まず分けて捉えます。
5. 3条通知の「給付の内容」と合わないときの責任
これまで見てきた費用負担の話には、フリーランス側に責任があるかどうかで結論が変わる場面もあります。分かれ目になっているのが「3条通知」に書かれた「給付の内容」です。
受領前に内容を確かめて、合わないと判断されるとき
給付を受領する前に内容を確かめ、3条通知に記載した「給付の内容」と合わないことが合理的に判断されて変更させる場合は、フリーランスに責めに帰すべき事由があるとして、発注事業者が費用を負担せずに変更させても法律上問題とはなりません2。
つまり、3条通知に書かれた「給付の内容」が、責任の有無を考える手がかりです。ここで言う3条通知が何を指しているかを、次に見ていきます。
「給付の内容」に書く事項と支払の起算日
3条通知で明示しなければならない「給付の内容」には、品目・品種・数量(回数)・規格・仕様などを明確に記載する必要があります1。仕様がこの通知にはっきり書かれていれば、受領前に何と照らし合わせるかがはっきりします。
また、フリーランスに責めに帰すべき事由があり、報酬の支払前にやり直しをさせる場合は、やり直した後の物品や情報成果物を受領した日が支払期日の起算日になり、その日から60日以内のできる限り短い期間内で報酬を支払う必要があります2。
出典:フリーランス・事業者間取引適正化等法 公正取引委員会(2024年12月18日)をもとに作成
図3のように、3条通知に給付の内容を書いてもらい、受領前にその内容と照らし合わせることが、責任の有無を分ける手がかりです。発注のやり取りの中で、この通知の中身を確かめておく意味はここにあります。
発注の条件がそろったリモート案件を見てみる →
6. 法違反か分からないときの相談先「フリーランス・トラブル110番」
それでも、目の前の状況が法違反に当たるのかどうか、判断に迷うこともあります。
判断に迷ったときの相談窓口
法違反なのかよく分からない場合など、広く取引上のトラブルがある場合は、フリーランス・トラブル110番に相談でき、弁護士による電話・メール相談への対応のほか、和解あっせんも実施しています1。
一人で判断を抱え込まず、状況を整理して伝える窓口があることは、次に変更ややり直しを求められたときの心構えにもつながります。
法律違反と決まる前の相談
相談の対象は「法律に違反している」と確信できる場面だけではありません。取引上のトラブルであれば、法違反かどうかがはっきりしない段階でも相談の対象になります1。
次の節では、変更ややり直しを求められたときに、自分の状況を整理するために確かめておきたい点をまとめます。
7. 変更や作り直しを求められたときに確かめる3点
変更や作り直しを求められた場面では、感情的に受け止める前に、確かめられることがあります。確かめるのは次の3点です。
確かめる3つの点
一つ目は、3条通知の給付の内容(仕様など)に照らして、自分に責任があるかどうかです1。受領前に内容を確かめ、3条通知の記載と合わないことが合理的に判断される場合は、責任ありとして扱われます2。
二つ目は、1か月以上の業務委託かどうかです。1か月以上の委託であれば、了解や合意があっても、発注事業者の禁止行為はそのまま違反に当たります1。
三つ目は、発注側の都合による変更ややり直しであれば、作業に要した費用を負担してもらう話ができるという点です1。判断がつかないときは、フリーランス・トラブル110番のような相談先があることも、あわせて覚えておきます1。
| 確かめること | ポイント |
|---|---|
| 3条通知の給付の内容と合っているか | 合わなければ責任ありとして扱われる |
| 1か月以上の業務委託か | 了解や合意があっても違反になり得る |
| 発注側の都合による変更か | 作業に要した費用の負担を話せる |
確かめる順番
この3つは、上から順に確かめます。
図の作成:Remogu編集部。この記事で確かめる3つの点を整理したもので、統計データではありません
1か月以上の業務委託では、了解や合意をしていても、禁止行為はそのまま違反になります1。発注側の都合で取り消したりやり直させたりする場合は、フリーランスが作業に要した費用を発注事業者が負担する必要があります1。
一方で、受領前に3条通知の「給付の内容」と合わないことが合理的に判断される場合は、費用の負担なしで変更させても法律上問題にはなりません2。だからこそ、発注のときに給付の内容(仕様など)をはっきり書いてもらうことが、後々の判断材料になります1。
フリーランスに責任がないのに、費用を負担せずに内容を変えさせたり、やり直させたりすることは禁止されています。発注のときに仕様を書面で確かめておくことが、あとで責任の有無を分ける手がかりになります。
8. よくある質問
仕様変更に合意していれば、違反にはなりませんか
1か月以上の業務委託では、フリーランスが了解や合意をしていても、発注事業者に違法性の意識がなくても、禁止行為は法律に違反します1。合意の有無ではなく、フリーランスに責任があるかどうかが分かれ目です1。
自分の責任でやり直すとき、報酬の支払期日はどうなりますか
フリーランスに責めに帰すべき事由があり、報酬の支払前にやり直しをさせる場合は、やり直した後の成果物を受領した日が支払期日の起算日です。発注事業者は、その日から60日以内のできる限り短い期間内で報酬を支払う必要があります2。
違反かどうか分からないときの相談先はありますか
法違反なのかよく分からない場合も含め、取引上のトラブルはフリーランス・トラブル110番に相談できます。弁護士による電話・メール相談のほか、和解あっせんも実施しています1。
リモートワーク案件をお探しの方へ
Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
仕様や検査の条件がはっきりした取引を選ぶなら、これからの案件の条件も見てみてください。リモートの案件から探せます。
会員登録無料 / 案件閲覧・相談は無料
※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法(パンフレット)」パンフレット(2026年9月・2026年9月確認)
*2 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」Q&A(令和6年12月18日時点)(2024年12月18日・2026年9月確認)