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    雑損控除とは?フリーランスエンジニアの自宅が被災・盗難にあったときの控除と事業用資産の違い

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「フリーランスの雑損控除」を示す図です。雑損控除/災害/盗難/横領/家財を並べています。強調しているのは雑損控除です。

    📘 この記事でわかること

    • 雑損控除の対象は生活に通常必要な資産に限られることと、業務用資産の損失は一定の場合を除き必要経費で扱われること
    • 対象になる損害の原因は災害・盗難・横領に限られることと、詐欺や恐喝で失ったものは対象にならないこと
    • 控除しきれない損失は翌年以後3年間繰り越せることと、支出の領収を証する書類を申告書に添付するか提示すること

    留守にしていた間に、自宅に空き巣が入りました。家財の一部とともに、案件の作業に使っていたノートパソコンも持ち去られていました。片づけが済んでからも、確定申告でこの損害をどう扱えばよいのか、判断がつきませんでした。雑損控除を受けられるかは、損害を受けた資産が生活用か事業用かで分かれます。

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    1. 雑損控除は、災害・盗難・横領で資産に損害を受けたときの所得控除です

    留守にしていた間に家財などを持ち去られる出来事は、暮らしのどこかで起こり得ます。冒頭の場面のような被害と、所得税の制度がどう関わるのかを、ここから確かめていきます。

    災害または盗難もしくは横領によって、対象になる資産に損害を受けたときは、一定の金額の所得控除を受けられます1。これが雑損控除です。

    もっとも、雑損控除は、損害を受ければ誰でも一律に使える制度ではありません。対象になるのは、決められた原因で資産に損害を受けたときに限られます。原因の範囲を先に知ると、自分の被害がどこに当てはまるのかを判断しやすくなります。案件の作業道具と暮らしの道具は、同じ屋根の下にあります。この範囲を、最初に確かめます。

    損害の原因は5つに限られます

    損害の原因として認められるのは、次の5つです7。自然現象の異変による災害、人為による異常な災害、生物による異常な災害、盗難、横領のいずれかにあてはまることが、雑損控除を考える出発点です。

    自然現象の異変による災害には、震災や風水害、冷害、雪害、落雷などが含まれます。人為による異常な災害には火災や火薬類の爆発などが、生物による異常な災害には害虫などが含まれます7。

    残る2つが、盗難と横領です7。空き巣による被害は、盗難にあたります。冒頭の場面で持ち去られたノートパソコンも、原因としては盗難にあてはまります。横領は、盗難とは別に数えられている原因です。

    区分損害の原因
    1震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
    2火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
    3害虫などの生物による異常な災害
    4盗難
    5横領
    表1:損害の原因

    ここまでの5つが、損害の原因として数えられています。ただし、資産を失った経緯がこの5つに似ていても、対象にならない原因もあります。次に、その線引きを見ていきます。

    2. 詐欺や恐喝で失ったものは、対象になりません

    前の節で確かめた原因に、詐欺や恐喝は含まれていません7。似たように資産を失う場面でも、雑損控除の対象にならない原因があります。

    詐欺や恐喝では、雑損控除は受けられません8。資産を失うという結果が同じでも、対象になるかどうかは原因によって分かれます。

    盗難や横領と、詐欺や恐喝は分けて考えます

    冒頭の場面のように、留守中に持ち去られたときは盗難にあたり、雑損控除の対象になる原因のひとつです7。一方、だまし取られたり、脅し取られたりしたときは、詐欺や恐喝にあたり、対象になりません8。

    まずは自分の被害が5つの原因のどれにあたるのか、あるいはどれにもあたらないのかを見極めます。

    次に見るのは、損害を受けた資産が対象になるかどうかです。同じ盗難の被害でも、何を失ったかによって、この先の扱いが変わってきます。

    3. 対象になるのは、事業用の資産でも、生活に通常必要でない資産でもないものです

    雑損控除の対象になる資産は、棚卸資産・事業用固定資産等・「生活に通常必要でない資産」、そのいずれにも当たらない資産です5。冒頭の場面でいえば、暮らしの中で使っていた家財が、これにあたります。

    資産は、大きく3つに分けて考えられます。暮らしのために持つ資産と、案件のような仕事のために持つ資産、そして趣味や娯楽のために持つ資産です。雑損控除の対象になるのは、このうち暮らしのための資産だけです。

    図1:資産の3つの区分
    資産の3つの区分と対象の範囲 資産の3つの区分 生活用の資産 家財など 対象 事業用の資産 棚卸資産・ 固定資産等 対象外 生活に通常 必要でない資産 別荘や貴金属等 対象外

    図の作成:Remogu編集部。資産を生活用・事業用・生活に通常必要でない資産の3つに整理したもので、統計データではありません

    「生活に通常必要でない資産」は、別荘や高額な貴金属などです

    「生活に通常必要でない資産」とは、別荘のように趣味や娯楽、保養、鑑賞のために持つ不動産をいいます。貴金属や書画、骨董のうち、1個または1組の価額が30万円を超えるものも、これにあたります6。

    これらは、雑損控除の対象になる資産には含まれません5。同じ盗難でも、失ったのが日常づかいの家財か、こうした資産かによって、話が変わってきます。

    対象になる資産の持ち主にも条件があります

    対象になる資産には、持ち主についての条件もあります。納税者本人か、納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額等が58万円以下の人であることが必要です4。

    この58万円は、資産を持つ配偶者や親族本人の総所得金額等です。この金額は、令和8年12月1日に施行される改正で、令和8年分から62万円以下になります4。

    では、案件の作業に使っていたパソコンのような機器は、どちらに当たるのでしょうか。

    4. 業務用の機器の損失は、必要経費の側で扱います

    冒頭の場面で持ち去られたノートパソコンのように、案件の作業に使っている機器が事業用の資産なら、雑損控除の対象からは外れます5。

    雑損控除の対象からは外れますが、扱いがなくなるわけではありません。業務用資産の取壊しや除却、滅失による損失、そして修繕にかかった費用は、一定の場合を除き必要経費になります11。

    図2:同じ盗難でも、資産の種類で扱いが分かれます
    盗難による損害の扱いが分かれる2つの枝 盗難などの損害 家財 雑損控除 業務用の機器 必要経費

    図の作成:Remogu編集部。盗難などの損害を受けたときの扱いを整理したもので、統計データではありません

    必要経費になるのは、「一定の場合を除き」という条件付きです

    業務用の資産の損失が、そのままいつでも必要経費になるとは限りません。資料も、「一定の場合を除き」と条件を付けたうえで必要経費になるとしています11。

    資料のこの箇所には、「一定の場合」の中身は書かれていません。案件の作業に使っていたパソコンのような機器も、業務用の資産として使っていたのなら、この必要経費の枠組みで考えることになります。

    家財と業務用の機器とで、申告の扱いが分かれます

    同じ盗難でも、失ったのが家財か業務用の機器かで、確定申告のどこで扱うかが変わります。家財のような生活用の資産は雑損控除の対象です5。一方、業務用の機器は必要経費として扱います11。

    対象になる資産と、その原因が分かったところで、次に気になるのは、雑損控除でどれくらい差し引けるかです。

    5. 控除額は2つの計算のうち多い方で、控除しきれない分は3年間繰り越せます

    雑損控除で差し引ける金額は、2つの計算のうち、金額が多い方です3。

    計算は2つあり、多い方を使います

    1つ目の計算は、損害の金額と、災害等に関連する支出の金額を合わせるところから始まります。そこから保険金等で補われた額を差し引き、さらに総所得金額等の10%にあたる額を差し引いた額です3。

    2つ目の計算は、災害関連支出の金額から保険金等の額を差し引き、そこから5万円を差し引いた額です3。雑損控除の金額は、この2つの計算のうち、金額が大きい方です。

    計算中身
    (1)損害金額と災害等関連支出の金額の合計から保険金等の額を差し引き、総所得金額等の10%にあたる額をさらに差し引いたもの
    (2)災害関連支出の金額から保険金等の額を差し引き、5万円を差し引いたもの
    表2:2つの計算

    控除しきれないときは、翌年以後に繰り越します

    損失額が大きく、その年の所得金額から控除しきれないときは、翌年以後3年間に繰り越して、各年の所得金額から控除できます10。

    ただし、東日本大震災や、令和5年4月1日以後に生じた特定非常災害による損失なら、繰り越しの期間は5年間です10。

    図3:控除しきれない分は、翌年以後3年間に繰り越します
    繰り越しの年 損失の年 繰越1年目 繰越2年目 繰越3年目 翌年以後3年間

    出典:国税庁の資料をもとに作成。繰り越せる年数を示したもので、金額の例ではありません

    次の節では、雑損控除を受けるときに、申告書に何を書き、何を付けるのかを見ます。

    6. 申告書に雑損控除の事項を書き、領収を証する書類を添付します

    控除額の計算と繰越を確かめたら、次は申告の手続きです。

    申告書に事項を書き、書類を添付するか提示します

    雑損控除を受けるには、確定申告書に雑損控除に関する事項を記載し、災害等に関連したやむを得ない支出の金額の領収を証する書類を添付するか提示します9。記載することと、書類を添付するか提示することの両方が要ります。

    災害にあったときは、雑損控除以外の方法も選べます

    災害にあったときは、雑損控除とは別の制度もあります。

    災害にあった場合、その年の所得金額の合計額が1,000万円以下の人は、雑損控除とは別に災害減免法による所得税の軽減免除があり、どちらか有利な方法を選べます2。

    次の節では、申告の前に確かめる3つを見ます。

    7. 申告の前に、3つを確かめます

    ここまで、雑損控除の対象になる資産と原因、控除額の計算、繰り越しの期間を順に確かめてきました。最後に、申告書を書く前に確かめる3つを整理します。

    控除額は、第5節で見た2つの計算で決まります3。ここで確かめる3つは、それとは別に、申告の前に確かめる点です。

    3つを順番に確かめます

    1つ目に確かめるのは、資産の区分です。損害を受けた資産が、暮らしのための資産か、案件の作業に使う資産かを見ます5。冒頭の場面でいえば、家財と業務用のノートパソコンが、それぞれの例です。

    2つ目に確かめるのは、損害の原因です。災害・盗難・横領のいずれかにあてはまるかを見ます7。詐欺や恐喝であれば、対象になりません8。

    3つ目に確かめるのは、添付する書類です。災害等に関連したやむを得ない支出の領収を証する書類があるかを見ます9。

    確かめる項目中身
    資産の種類生活用の資産か、事業用の資産かです。
    損害の原因災害・盗難・横領のいずれかで、詐欺や恐喝ではありません。
    添付する書類災害等に関連したやむを得ない支出の領収を証する書類です。
    表3:確かめること
    図4:申告の前に確かめる順番
    申告の前に確かめる順番 1 資産の種類を確かめます 生活用の資産か、事業用の資産か 2 損害の原因を確かめます 災害・盗難・横領か、詐欺や恐喝ではないか 3 添付する書類を確かめます 支出の領収を証する書類の有無

    図の作成:Remogu編集部。申告の前に確かめる事柄の順番を整理したもので、統計データではありません

    図の順に、資産の種類、損害の原因、添付する書類を確かめます。

    最後に、資産を書き出して整理します

    雑損控除の対象になる資産は、事業用固定資産等や、生活に通常必要でない資産のいずれにも当たらない資産です5。業務用資産の損失は、第4節で見たとおり必要経費の側で扱います11。

    損害の原因は、災害・盗難・横領に限られます7。だまし取られたり、脅し取られたりしたときは、対象になりません8。

    雑損控除を受けられるかは、損害を受けた資産が生活用か事業用かで分かれます。失ったものを、生活用と業務用に分けて書き出します。

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    出典・参考情報

    *1 国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」[令和8年4月1日現在法令等](2026年・2026年9月確認)
    *2 国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」(2026年・2026年9月確認)
    *3 国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」(2026年・2026年9月確認)
    *4 国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」(2026年・2026年9月確認)
    *5 国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」(2026年・2026年9月確認)
    *6 国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」(2026年・2026年9月確認)
    *7 国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」(2026年・2026年9月確認)
    *8 国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」(2026年・2026年9月確認)
    *9 国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」(2026年・2026年9月確認)
    *10 国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」(2026年・2026年9月確認)
    *11 国税庁「No.2210 必要経費の知識」[令和8年4月1日現在法令等](2026年・2026年9月確認)