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    案件の報酬が雑所得になるとき、保存が必要な書類は何か|注意点を解説

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「案件の報酬と書類の保存」を示す図です。収入金額/保存の義務を並べています。強調しているのは保存の義務です。金額で決まると添えています。

    📘 この記事でわかること

    • 雑所得に含まれる例と、金額が公的年金等・業務に係るもの・それ以外の3つの区分の合計で示されていること
    • 「業務に係るもの」と呼ばれる範囲と、原稿料や講演料などで支払の際に源泉徴収が行われる場合があること
    • 保存が必要になるかどうかを分ける前々年分の収入金額の基準と、対象になる現金や預貯金の動きに際して作られた書類の条件

    案件で得た報酬をどの区分で申告するかを考えるとき、雑所得という言葉に行き当たる場面があります。雑所得は一つの内訳ではなく、複数の区分が合わさってできています。区分の中身と、書類の保存が必要になる基準を先に押さえておくと、金額が変わる時期になって慌てずに済みます。ここでは、業務に係る雑所得を中心に、含まれる例から保存の対象になる書類の条件まで整理します。

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    1. 雑所得に含まれるものとして何が挙げられているか

    リモートで案件に携わるエンジニアの中には、業務委託の案件のほかに、原稿の執筆や技術記事の寄稿といった形で報酬を得ている人もいます。Remoguで扱う案件も90%以上がフルリモート可能です。働く場所が自由になるほど受け取り方の幅も広がり、その報酬をどの区分で考えればよいか迷う場面が増えます。区分の呼び名の一つが「雑所得」です。

    「副業に係る所得」として挙げられている例

    雑所得には、副業に係る所得として、原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得などが挙げられます。1 いずれも、個人が請け負う形の仕事から生じる収入という点で共通しています。

    シェアリングエコノミーに係る所得のように、単発でも継続でも生じ得る収入は、案件と並行して発生することがあります。名称だけを見ると別々の仕事のようですが、並べてみると「個人が継続的に請け負う仕事から生じる収入」という共通の骨格が見えてきます。

    次の章で見る「業務に係るもの」という呼び方も、この骨格の延長にあります。呼び名がいくつかに分かれているのは、性質の異なる収入を整理して扱うためです。

    この区分を最初に確認する理由

    雑所得という区分を最初に確認しておくと、この先で見る金額の基準や書類の保存条件が、どんな場面に関わる話なのかをつかみやすくなります。区分の呼び名を知らないまま金額の基準だけを追うと、話がどこにつながっているのか見えにくくなります。

    次の章では、雑所得の金額がどのように組み立てられているかを、3つの区分に分けて見ていきます。

    2. 金額は3つに分けて示されている

    雑所得という一つの言葉の中には、性質の異なる収入がまとまっています。金額の組み立て方を知っておくと、案件で得た報酬がどの位置づけになるのかを考えるときの見取り図になります。

    3つの区分の合計であること

    雑所得の金額は、公的年金等・業務に係るもの・それ以外の3つの合計額です。2 案件から得る報酬に関わりが深いのは、このうち「業務に係るもの」です。

    3つに分かれているということは、それぞれの区分ごとに考え方が示されているということでもあります。次に見る「業務に係るもの」の中身を押さえておくと、この先の金額の基準や書類の話が分かりやすくなります。

    業務に係る雑所得は、総収入金額から必要経費を差し引いた金額です。3 この記事で追いかけるのは、この区分の話になります。区分をあらためて一覧にすると、次のとおりです。

    区分区分の説明
    (1) 公的年金等案件の報酬とは別の区分です。この記事では扱いません
    (2) 業務に係るもの副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なもの。総収入金額から必要経費を差し引いた金額になります
    (3) (1)、(2)以外のもの(1)、(2)のいずれにも当たらないものが入る区分です

    業務に係るものの金額の組み立て

    案件ごとの報酬を集計したうえで、その報酬を得るためにかかった費用を差し引く、という組み立てです。報酬の入金と費用の支払いが別の月に起きることもあるため、どの収入とどの費用が対応するのかを案件ごとに追えるようにしておくと、集計の段階で迷いにくくなります。

    3つの区分がどのように合わさって雑所得全体の金額になるのか、図で見ておきます。

    図1:雑所得の金額を構成する3つの区分
    (1) 公的年金等 (2) 業務に係るもの 収入から経費を引いた額 (3) それ以外 雑所得の金額

    図の作成:Remogu編集部。国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」に示された区分の考え方を整理したもので、内訳の割合を示すものではありません

    3. 「業務に係るもの」と呼ばれているのはどれか

    業務に係るものという呼び名は、雑所得の中でも案件の報酬と関わりが深い区分です。どんな収入がこの呼び名に当たるのか、案内の説明を見ておきます。

    副業に係る収入のうち、営利を目的とした継続的なもの

    業務に係るものとは、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なものをいいます。4 単発で終わる収入ではなく、繰り返し生じる収入であることが、この呼び名の軸になっています。

    継続的かどうかという軸は、収入の生じ方に注目した見方です。一つの案件が長く続く場合も、複数の案件が入れ替わりながら続く場合も、この軸で見ることになります。

    たとえば、技術記事の寄稿や、単発の案件のように見えても実質的に繰り返し依頼を受けている仕事は、この「継続的」という軸に照らして考えられる収入です。

    区分の当てはめは本人と所轄税務署が確かめるもの

    ここで挙げた説明は、国税庁の案内が示す「業務に係るもの」の定義です。個々の収入がこの定義に当てはまるかどうかは、収入の内容に応じて、本人と所轄税務署が確かめるものです。

    定義の輪郭を先に知っておくと、この先で見る金額の基準や書類の保存条件が、どの範囲の収入に関わる話なのかをつかみやすくなります。

    自分が携わる案件の報酬がどんな性質を持つのかを考えることは、案件そのものの内容を見直すきっかけにもなります。

    4. 支払の際に源泉徴収が行われる場合がある

    業務に係る雑所得の中には、支払う側があらかじめ一定額を差し引いて支払う仕組みが関わるものもあります。

    原稿料や講演料などに関わる源泉徴収

    原稿料や講演料などは、原則として支払の際に源泉徴収が行われます。5 報酬を受け取る段階で、すでに一定額が差し引かれた金額になっている場合があるということです。

    この源泉徴収は、支払う側が行う手続きです。受け取る側は、支払われた金額が源泉徴収後の金額であるかどうかを、支払通知や明細で確かめることになります。

    「原則として」という言葉が添えられているとおり、源泉徴収の扱いは支払の内容によって変わります。個々の支払いがどう扱われるかは、支払通知や契約の内容を確かめることになります。

    確かめる先は、契約書の報酬の条項と、実際に届く支払通知や明細の2つです。契約書には報酬の額とその支払い方が書かれ、支払通知や明細には実際に差し引かれた内容が表れます。この2つが結び付いていれば、振り込まれた金額が何を差し引いた後の金額なのかを、後から振り返ったときにもたどれます。

    案件の報酬とあわせて考えるときの注意点

    案件の報酬と、原稿料や講演料のような源泉徴収が関わる収入とが同じ年に生じることもあります。それぞれの支払い方の違いを知っておくと、収入の全体像を整理しやすくなります。

    次の章では、保存が必要になるかどうかを分ける、収入金額の基準を見ていきます。

    5. 保存が必要になるかどうかは前々年分の収入金額で決まる

    ここまでで、雑所得の中身と、業務に係るものの範囲を見てきました。ここからは、書類の保存が必要になるかどうかを分ける基準を見ていきます。

    前々年分の収入金額が300万円を超える場合

    令和4年分以後の所得税において、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える方は、現金預金取引等関係書類を保存する必要があります。6

    基準になっているのは、申告する年ではなく、その前々年分の収入金額です。今年の収入がどうであっても、確かめる対象は前々年分になります。

    前々年分という基準があることで、収入の増減が大きい年でも、保存が必要かどうかを事前に見通せるようになっています。

    もう一つ見落としやすいのは、基準が置かれているのが「収入金額」であることです。必要経費を差し引いた後の金額ではなく、差し引く前の金額で見ることになります。案件の報酬を受け取るために機材や通信の費用がかかっていたとしても、この基準の判定では、それらを差し引く前の金額を見ます。

    収入金額の水準ごとに必要になること

    前々年分の業務に係る雑所得の収入金額には、300万円という基準と、1,000万円という基準があります。300万円を超えると書類の保存が必要になり6、1,000万円を超えて確定申告書を提出する場合には書類の添付も必要になります8

    前々年分の収入金額必要になること
    300万円以下現金主義の特例の対象になります
    300万円超現金預金取引等関係書類を保存する必要があります
    1,000万円超(確定申告書を提出する場合)総収入金額や必要経費の内容を記載した書類の添付が必要になります

    収入金額の水準によって必要になることを、図でも確かめておきます。

    図2:前々年分の収入金額で変わる扱い
    前々年分の業務に係る雑所得の収入金額 300万円以下 (現金主義の特例) 300万円超 1,000万円以下 1,000万円超 (添付も必要) 保存の必要はありません 書類の保存が必要です 保存に加え添付も必要 な場合があります

    出典:国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」をもとに作成

    6. 対象になるのは現金や預貯金の動きに際して作られた書類

    保存や添付が必要になるとわかったら、次に確かめたいのは、具体的にどんな書類が対象になるかです。

    現金預金取引等書類の条件

    現金預金取引等書類とは、その業務に関して作成または受領した請求書、領収書その他これらに類する書類のうち、現金の収受もしくは払出しまたは預貯金の預入もしくは引出しに際して作成されたものをいいます。7

    条件は2つ重なっています。一つは、その業務に関して作成または受領した書類であること。もう一つは、現金や預貯金の動きに際して作成されたものであることです。

    2つが重なっているという点が大事なところです。業務に関する書類であっても、現金や預貯金の動きに際して作られたものでなければこの条件には当たりませんし、現金の動きに関わる書類でも、その業務に関するものでなければ当たりません。請求書や領収書を、案件ごとに、入金や支払いの記録と並べて残しておくと、この2つの条件を後から確かめやすくなります。

    対象になる書類の種類と、作成・受領のきっかけになる動きを、一覧で確かめておきます。

    書類の種類作成・受領のきっかけ
    請求書現金の収受
    領収書その他これらに類する書類現金の払出
    同上預貯金の預入
    同上預貯金の引出

    1,000万円を超える場合に必要になる添付書類

    前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える方が確定申告書を提出する場合には、総収入金額や必要経費の内容を記載した書類の添付が必要になります。8

    保存する書類と、添付する書類は役割が違います。現金預金取引等書類は普段から保存しておくもの、総収入金額や必要経費の内容を記載した書類は、確定申告書を提出する場面で添付するものです。

    業務に関して作成・受領した書類と、現金や預貯金の動きに際して作成された書類の関係を、図で整理します。

    図3:保存の対象になる書類の条件
    業務に関して作成または 受領した書類(請求書・ 領収書など) 現金の収受・払出や 預貯金の預入・引出に 際して作成された書類 現金預金取引等書類(保存の対象)

    出典:国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」をもとに作成

    自分が携わる案件で、請求書や領収書をどのように残しているかを見直す機会にもなります。

    7. 収入金額が小さい場合の特例と、損失の扱い

    最後に、収入金額が小さい場合に使える特例と、損失が生じた場合の扱いを見ておきます。

    前々年分の収入金額が300万円以下の場合の特例

    前々年分の収入金額が300万円以下である方は、その年において収入した金額および支出した費用の額とすることができます(現金主義の特例)。9

    収入や費用の額をどう数えるかについて、通常の考え方とは別の数え方が用意されているということです。

    この特例を受けるには、確定申告書にこの特例を受ける旨を記載しなければなりません。10 特例は自動的に適用されるものではなく、記載という条件が伴います。

    損失が生じた場合の扱い

    雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得の金額と損益通算はできません。11 雑所得の中で損失が生じても、その損失を他の所得の金額から差し引くことはできないということです。

    この扱いは、雑所得の金額を他の所得と切り離して考えることになるという意味でもあります。案件の報酬と、それを得るためにかかった費用を、区分をまたがずにその区分の中で見ておくと、年をまたいだときにも数字を追いやすくなります。

    現金主義の特例を受けるまでの順番を、図で確かめておきます。

    図4:現金主義の特例を受けるまでの順番
    1 前々年分の収入金額が 300万円以下であることを確認 2 収入した金額と支出した 費用の額で数える 3 確定申告書にこの特例を 受ける旨を記載

    出典:国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」をもとに作成

    前々年分の収入金額を先に確かめておくことと、現金や預貯金の動きに際して作られた書類を残しておくこと。この2つを押さえておけば、金額が変わる場面になっても慌てずに対応できます。案件を通じて得る収入の性質を理解したうえで、自分に合う案件を探してみるのも、次の一歩になります。

    前々年分に収入がなかった場合はどう考えればよいですか

    保存が必要になるかどうかを分けるのは、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額です。6 基準となる300万円という金額を超えていなければ、この基準による保存の必要は生じません。

    業務に係る雑所得かどうかは自分で決めてよいのですか

    業務に係るものとは、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なものをいいます。4 個々の収入がこの定義に当てはまるかどうかは、収入の内容に応じて、本人と所轄税務署が確かめるものです。

    現金主義の特例は届け出るだけで受けられますか

    前々年分の収入金額が300万円以下である方は、その年において収入した金額および支出した費用の額とすることができます。9 ただし、この特例を受けるには、確定申告書にこの特例を受ける旨を記載しなければなりません。10 記載という条件を伴う点は、あわせて確認しておきたいところです。

    保存と添付は、両方とも必要になることがありますか

    書類の保存と書類の添付は、別の基準で示されています。令和4年分以後の所得税において、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える方は、現金預金取引等関係書類を保存する必要があります。6 また、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える方が確定申告書を提出する場合には、総収入金額や必要経費の内容を記載した書類の添付が必要になります。8 それぞれの基準に当てはまるかどうかを、分けて確かめることになります。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」何が含まれるか(2025年4月・2026年9月確認)
    *2 国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」3つに分かれる(2025年4月・2026年9月確認)
    *3 国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」計算の枠組み(2025年4月・2026年9月確認)
    *4 国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」業務に係るものの意味(2025年4月・2026年9月確認)
    *5 国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」支払の際の扱い(2025年4月・2026年9月確認)
    *6 国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」保存が必要になる線(2025年4月・2026年9月確認)
    *7 国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」対象になる書類(2025年4月・2026年9月確認)
    *8 国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」添付が必要になる線(2025年4月・2026年9月確認)
    *9 国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」300万円以下の場合の特例(2025年4月・2026年9月確認)
    *10 国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」特例の条件(2025年4月・2026年9月確認)
    *11 国税庁「雑所得とは(タックスアンサー)」損失の扱い(2025年4月・2026年9月確認)