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    【案件と価格転嫁】協議をしないまま据え置く行為の扱いを解説

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「案件で費用の上昇を反映する」を示す図です。協議する/据え置くを並べています。強調しているのは据え置くです。扱いが変わると添えています。

    📘 この記事でわかること

    • 定期的な協議の場を設けている発注者が全体の27.1%にとどまることと、指針を知っているかどうかで結果に差が出ている実態
    • 協議をしないまま取引価格を据え置くことや、理由を回答せず据え置くことが、同じ扱いを受けているという整理
    • 公表された発注者の数が令和4年度から令和6年度にかけて減っていることと、要請受諾率という言葉が指す中身

    報酬の交渉は、当事者どうしの駆け引きの結果として語られがちです。しかし公正取引委員会の調査は、協議の場そのものが用意されているかどうかを継続して確かめています。費用が上がっても取引価格が動かない背景には、話し合いの手前で止まっている実情があります。この記事では、協議の有無がどのように扱われているかを、公表されている調査結果から整理します。

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    1. 定期的な協議の場を設けた側の割合

    取引価格の見直しは、双方が机を挟んで話し合う場があって初めて動き出します。公正取引委員会の特別調査は、この協議の場そのものが実際にどれだけ用意されているかを、発注者の側に確かめています。

    調査が数えているのは「協議の場があるか」という一点です

    調査が見ているのは、価格が上がったか下がったかという結果だけではありません。すべての受注者に対して、定期的に協議する場を設けているかどうかという、入口の部分を数えています。結果より先に、機会があるかどうかを確かめる作り方です。

    この視点は、費用が上昇した理由の説明が十分だったかという内容面の話とは別です。内容が整っていても、話し合う場自体が用意されていなければ、調査の数字には届きません。まず場があるかどうかが、最初の分かれ目になります。

    27.1%という数字をどう読むか

    同調査によれば、すべての受注者と定期的な協議の場を設けている発注者の割合は27.1%です1。四者のうち協議の場を持っているのは一者程度という水準です。

    残りの発注者が協議をまったく行っていないと決めつけることはできません。個別の要請があったときだけ応じる、必要に応じて場を持つといった形も含まれます。ただし「定期的に」という条件を満たしている発注者は、全体の一部にとどまっています。

    この割合が意味するのは、協議の有無が発注者ごとにばらついているという実情です。受注者から見れば、取引先が定期的な場を持つ側かどうかは、費用の話を切り出すときの前提として押さえておきたい点になります。

    図1:協議が始まらない場所
    協議の場の有無 定期的な協議の場を設けている発注者の割合 27.1% 定期的な協議の場を 設けた発注者 それ以外の発注者 定期的な場としては 数えられていない

    出典:公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」(2025年12月)をもとに作成

    2. 指針を知っていたかどうかで差が出ている

    協議の有無と並んで、同調査が示しているのが「知っているかどうか」による差です。制度の名前を知っているだけで、結果が変わって見えます。

    知っている側と知らない側で、引き上げられた割合に差があります

    同調査は、労務費転嫁指針を知っていた発注者のほうが、知らなかった発注者よりも取引価格が引き上げられた割合が高いと整理しています2。指針の内容そのものより、知っているという前提の有無が結果に表れています。

    指針は費用の転嫁について発注者側に求める内容を示したものです。中身を細かく覚えていなくても、そうした指針が存在すると知っているだけで、協議に臨む姿勢が変わる可能性があります。

    差は年々広がっています

    知っていた側と知らなかった側の差は、令和7年度調査で16.5ポイントに拡大したと同調査は述べています3。差が縮まるのではなく、広がる方向に動いている点が特徴です。

    受注者の立場から見ると、取引先が指針を知っているかどうかを確かめる手立ては多くありません。ただし、指針の存在そのものを受注者側が話題にすることは、協議の入口を開く材料になり得ます。

    慣れや経験のほうが結果を左右すると思われがちですが、同調査が示すのは指針を知っているかどうかという単純な前提のほうが差になっている、という構図です。

    図2:知っていた側との差
    指針の認知による差 16.5ポイントの差(令和7年度) 指針を知っていた発注者 指針を知らなかった発注者 引き上げられた割合

    出典:公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」(2025年12月)をもとに作成

    取引条件を確かめる視点は、次にどの案件で稼働するかを考えるときにも役立ちます。Remoguでは、案件の90%以上がフルリモート可能です。場所に縛られない働き方を探しているなら、公開されている案件を確かめてみることから始められます。

    3. 協議を経ない据え置きの位置づけ

    協議の有無を数えるだけでなく、同調査は「協議をしないまま据え置く」という行為そのものにも言及しています。

    協議をしないまま従来どおりに続ける行為

    同調査は、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くことを取り上げています4。話し合いの結果として価格が変わらなかったのではなく、話し合いそのものが行われていない状態を指しています。

    この整理では、費用が上がったのに価格を反映しなかったこと自体よりも、協議という手続きを経なかったことに焦点が当たっています。結論よりも過程が問われる作りになっています。

    「反映しない」ではなく「話し合わない」ことが問題にされる

    受注者の立場では、価格が変わらなかった結果だけを見てしまいがちです。しかし同調査が扱っているのは、結果に至るまでのやり取りがあったかどうかという過程です。

    同調査は、こうした据え置きを独占禁止法上の問題となるおそれがある行為として整理しています4。断定した違反の認定ではなく、そのおそれがある行為として位置づけられている点は、そのまま押さえておきたいところです。

    取引の相手方が複数いる場合、すべての相手と同じように協議しているとは限りません。同調査が数えているのは、受注者全体に対しての姿勢であり、個別の相手ごとの対応まで細かく判定するものではありません。

    4. 理由を回答せず据え置く場合も同じ扱い

    協議をしない据え置きだけでなく、理由を回答しない据え置きも、同じ枠組みで扱われています。

    書面やメールで回答しないまま据え置くケース

    同調査は、価格転嫁をしない理由を書面や電子メールなどで取引の相手方に回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置くことも取り上げています5。協議の場があったとしても、その後の回答が残っていなければ同じ扱いになります。

    理由が口頭で伝えられたとしても、書面や電子メールのように残る形になっていなければ、後から確かめることが難しくなります。同調査が回答の手段に触れているのは、この点を意識してのことだと読み取れます。

    二つの型を並べて比較します

    ここまでに挙げた二つの型は、どちらも独占禁止法上の問題となるおそれがある行為として整理されています。片方は協議そのものの有無、もう片方は協議のあとの回答の有無に関わる点が違いです。

    受注者の側でできることは、相談の内容や回答の経過を、自分の手元にも残しておくことです。決めた内容を残る形にしておくことは、あとから状況を振り返る材料になります。

    二つの型を表に整理すると、次のようになります。

    据え置きの型内容位置づけ
    協議をしない据え置き価格の交渉の場で明示的に協議しないまま、従来どおりの取引価格を続けること独占禁止法上の問題となるおそれがある行為として整理されています
    理由を回答しない据え置き価格転嫁をしない理由を書面や電子メールなどで回答しないまま、従来どおりの取引価格を続けること同じく独占禁止法上の問題となるおそれがある行為として整理されています

    5. 発注する側から出ている意見

    受注者側の受け止めだけでなく、同調査は発注者側の意見も紹介しています。協議に対する姿勢は一様ではありません。

    呼びかけはしないが、要請があれば応じるという意見

    同調査は、発注者側から進んで価格協議の呼びかけはしないものの、受注者から価格転嫁の要請があれば協議に応じるとする発注者が存在すると紹介しています6。働きかけの起点が受注者側に置かれている運用です。

    この運用では、受注者が声を上げなければ協議自体が始まりません。定期的な場を待つだけでなく、費用の状況を伝えることが協議の入口になり得る、という読み方ができます。

    値上げの相談がなければ動かないという意見と、原資がないという意見

    同調査は、値上げの相談がなければ協議を行っていないという発注者の意見も紹介しています7。協議の場は、受注者からの働きかけがあって初めて動くという運用です。

    同調査はまた、取引価格の引き上げを受け入れる原資がないとした発注者も存在したと紹介しています8。協議の場があっても、受け入れの可否は発注者側の事情に左右される場合があります。

    三つの意見に共通しているのは、協議の起点や結果が発注者側の姿勢によって変わるという点です。受注者の側では、この違いをあらかじめ見込んでおくことが、費用の話を切り出すときの心構えになります。

    三つの意見を表に整理すると、次のようになります。

    意見の内容読み取れること
    要請があれば協議に応じるとする発注者も存在する働きかけの起点が受注者側に置かれている場合があります
    値上げの相談がなければ協議を行っていない協議の場は自動的には開かれない場合があります
    引き上げを受け入れる原資がないとする発注者も存在した受け入れの可否が発注者の事情に左右される場合があります

    発注者ごとに協議への姿勢が違うという実情は、案件を選ぶ段階でも意識しておきたい点です。Remoguに掲載されている案件を確認しながら、自分に合う条件を探していくことができます。

    6. 名前が公表された件数の推移

    協議を経ない据え置きが確認された場合、その発注者の名前が公表される仕組みがあります。

    令和4年度から令和6年度にかけての推移

    同調査によれば、協議を経ない据え置きが認められた発注者の名前は、令和4年度13名、令和5年度10名、令和6年度3名と公表されています9。三年続けて数が減っています。

    件数が減っている理由を同調査は明らかにしていません。協議の場が増えたためなのか、公表という仕組みが知られてきたためなのか、複数の見方が成り立ちます。

    件数が読者にとって意味すること

    名前が公表される仕組みがあること自体が、協議を経ない据え置きが放置される話ではないことを示しています。件数が3名まで減っていても、仕組みが働き続けている点は変わりません。

    受注者の側で押さえておきたいのは、この仕組みの存在を知っておくことです。個別の状況が公表対象に当たるかどうかを自分で判定することまでは、この記事の範囲ではありません。

    数字の増減を追いかけることよりも、協議の有無と回答の有無を自分の取引の中で確かめておくことのほうが、日々の進め方には直結します。

    図3:公表された件数の推移
    公表件数の推移 13名 10名 3名 令和4年度 令和5年度 令和6年度

    出典:公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」(2025年12月)をもとに作成

    7. 要請受諾率という言葉と、確かめる項目

    ここまで見てきた協議の有無に加えて、同調査はもう一つ、要請受諾率という言葉を使っています。

    要請受諾率とは何を表す数字か

    同調査は、要請受諾率を、発注者が受注者の価格転嫁の要請額に対して受諾した金額の割合と定義しています10。要請した額そのものではなく、実際に受け入れられた金額との比率を表す言葉です。

    この言葉が指しているのは金額の割合であり、協議の有無や回答の有無とは別の切り口です。協議が行われていても、要請額の全部が受け入れられるとは限りません。

    図4:確かめる項目
    要請受諾率の考え方 受注者が求めた引き上げ額 発注者が受諾した金額 要請受諾率 =受諾した金額÷要請額

    出典:公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」(2025年12月)をもとに作成

    確かめておきたい項目

    ここまでの内容を踏まえると、受注者の側で確かめておきたいのは、協議の場があるかどうか、回答が書面や電子メールなどの残る形になっているかどうか、据え置きの理由が示されているかどうかという点です。

    これらは同調査が扱っている論点の範囲であり、個別の取引が問題に当たるかどうかを判定するものではありません。明示された条件を確かめ、決めた内容を残る形にしておくところまでが、この記事で扱える範囲です。

    確かめておきたい項目を表に整理すると、次のようになります。

    確かめておきたい項目確認の視点
    定期的な協議の場があるか費用の上昇分を伝える機会が用意されているか
    回答が書面や電子メールで残っているかやり取りの経過を残る形にしているか
    据え置きの理由が示されているか理由の有無と内容を確かめられる状態か

    初めて参画する案件でも、この内容は関係がありますか

    関係があります。同調査が数えているのは発注者の対応であり、受注者がその案件に初めて参画しているかどうかで区分されているものではありません。協議の有無や回答の有無という切り口は、参画の経験にかかわらず同じように当てはまります。

    副業として引き受けている案件でも同じ扱いですか

    同調査は受注者の働き方の形態によって区分を設けているものではなく、取引全体を対象にしています。副業として引き受けている案件であっても、協議の場の有無や回答の有無という論点は同じように確かめられます。

    地方に拠点を置いていても違いはありますか

    同調査は拠点の所在地による差を示していません。協議の有無や回答の有無という論点は、拠点の場所にかかわらず確かめられる内容です。

    稼働日数が少ない案件でも考え方は同じですか

    同調査は稼働日数によって区分を設けているものではなく、取引価格の据え置きという行為そのものを対象にしています。週の稼働日数にかかわらず、協議の有無や回答の有無という論点は同じように確かめられます。

    価格転嫁が反映されないと感じたとき、何を確認すればよいですか

    確認できるのは、協議の場が実際にあったかどうか、理由の回答が残る形で示されているかどうかという点です。決めた内容や経過を自分の手元にも残しておくことが、あとから状況を振り返るときの材料になります。個別の状況が問題に当たるかどうかの判定は、この記事の範囲を超えます。

    協議の有無や回答の有無という単純な切り口は、取引先を見極めるときの手がかりになります。同じ基準で案件を選べる環境を探しているなら、Remoguに掲載されている案件を確かめてみることから始められます。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」向こうからは来ない(2025年12月・2026年9月確認)
    *2 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」知識が差になる(2025年12月・2026年9月確認)
    *3 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」差の大きさ(2025年12月・2026年9月確認)
    *4 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」協議のない据え置き(2025年12月・2026年9月確認)
    *5 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」理由の回答義務(2025年12月・2026年9月確認)
    *6 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」言えば動く(2025年12月・2026年9月確認)
    *7 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」黙っていると進まない(2025年12月・2026年9月確認)
    *8 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」通らない側の事情(2025年12月・2026年9月確認)
    *9 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」公表の実績(2025年12月・2026年9月確認)
    *10 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」指標の意味(2025年12月・2026年9月確認)