案件で困ったときの相談窓口|申出からの流れと注意点を解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 案件で困ったときに申出ができる3つの行政機関があることと、申出のあとに行われる報告徴収や立入検査といった調査の内容
- 指導から勧告、命令・公表に進む段階があることと、命令に違反した場合に定められている50万円以下の罰金
- 申出をしたことを理由に不利益な取扱いを受けない仕組みがあることと、判断に迷うときに相談できる窓口の範囲
クライアントとの間で条件がすれ違ったとき、案件を続けていいのか、声を上げてよいのかで迷う場面があります。フリーランスとして案件に取り組む中で、発注する側とのやり取りに疑問を感じても、相談先が見えないまま日々を過ごしてしまうことは珍しくありません。制度の側には、申出と相談を受け止める窓口がすでに用意されています。困ったときにどこで何が扱われているのかを知っておくことが、案件を続けるための備えになります。
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1. 申し出られる先は3つの行政機関
発注する側の行為に疑問を感じたときの窓口
案件を進める中で、契約の内容と実際の対応がかみ合わないと感じる場面は起こり得ます。報酬の支払いが遅れる、発注の内容が途中で変わる、契約の解除を急に告げられるなど、行き違いの形はいくつもあります。
契約の内容そのものを変えてほしいと自分から伝えるよりも、まず制度の側にどんな受け皿があるかを知っておくほうが、行き違いに向き合いやすくなります。
こうした行き違いのうち、発注する側に法違反と思われる行為があった場合には、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省に対して、その旨を申し出ることができます1。窓口は一つに限られておらず、内容に応じて選べる形になっています。
図の作成:Remogu編集部。案件で行き違いが起こりやすい場面を整理したもので、統計データではありません
3つの窓口が並んでいる理由
申出の窓口が3つ用意されているのは、発注する側との行き違いにはいくつもの切り口があり、どの機関からでも申出の入り口にたどり着けるようにするためだと考えられます。
案件に取り組む本人からすると、まずどこに連絡すればよいのか迷う場面は想像できます。ただし、この3つの機関はいずれも申出の受け皿になっており1、窓口を間違えることを気にして声を上げる機会を逃す必要はありません。
次の章では、申出をしたあとに行政機関がどのような調査を行うのかを見ていきます。窓口に届いた申出が、その後どのように扱われるのかを知っておくと、申出そのものへの見通しが立ちやすくなります。
2. 申出のあとに行われる調査
申出を受けた行政機関が動き出す
申出が行政機関に届いたあと、何も起こらないまま止まってしまうのではないかという不安を持つ場面もあります。案件を続けながら結果を待つ間は、進捗が見えにくいと感じることもあるはずです。
声が届いた先で止まってしまうのではという不安よりも、行政機関の側に定められた次の手続きを知っておくほうが、申出後の見通しを持ちやすくなります。
行政機関は、申出の内容に応じて、報告徴収・立入検査といった調査を行います2。申出をした側が調査の細部を自分で進める必要はなく、行政機関が確認の主体になります。
調査の対象になるのは発注する側の対応
調査が向けられるのは、申出をした側の案件の進め方ではなく、発注する側の対応です。
報告徴収は書類等をもとに事実関係を確かめる手続き、立入検査は現地に赴いて確認する手続きです。いずれも行政機関が主体となって進めるものです2。
この先の段階として、行政機関は指導・助言から勧告、命令・公表へと手続きを進めることができます。次の章では、その段階を順に確認します。
3. 指導から命令・公表までの段階
指導・助言から始まる段階
調査の結果、発注する側の対応に問題があると判断された場合には、次の段階に進みます。いきなり重い措置がとられるわけではなく、まず働きかけから始まります。
行政機関は、発注する側に対して指導・助言のほか勧告を行い、勧告に従わない場合には命令・公表をすることができます3。指導・助言、勧告、命令・公表という順に段階が用意されています。
段階を追って進む仕組みになっているため、申出をした時点で最終的な措置がすぐに決まるわけではありません。どの段階まで進むかは、発注する側がその後どう対応するかによって変わります3。
指導・助言から命令・公表までを並べて確認する
段階が3つに分かれていることは分かっても、それぞれで何が行われるのかは言葉だけでは掴みにくいところがあります。指導・助言は発注する側への最初の働きかけであり、勧告は改善が見られない場合に行われ、命令・公表は勧告に従わない場合に進む段階です3。表で並べておくと、今どの段階の話をしているのかを見失わずに読み進められます。
| 段階 | 行われること |
|---|---|
| 指導・助言 | 発注する側に対して行われる最初の働きかけ3 |
| 勧告 | 指導・助言でも改善が見られない場合に行われる3 |
| 命令・公表 | 勧告に従わない場合に進む段階3 |
命令まで進むかどうかは、指導・助言や勧告を受けた発注する側がどのように対応するかにかかっています。この段階が用意されていること自体が、申出のあとに何も変わらないままでは終わらない仕組みを支えています。
次の章では、この命令に違反した場合に定められている措置を確認します。段階の最後に何があるのかを知っておくと、申出から先の見通し全体がつかみやすくなります。
4. 命令に違反した場合の罰金
命令に違反した場合に何が起こるか
指導・助言や勧告を経てもなお改善されず、命令が出されたあとも対応が変わらない場合には、その先の措置が定められています。
命令違反には50万円以下の罰金があります4。段階を踏んでもなお改善されない場合に備えて、罰則という形の措置が制度に組み込まれています。
罰金の有無だけを見ていると、申出をした側に直接何かが変わるわけではないように感じるかもしれません。ただし、命令という重い段階のさらに先に措置が用意されていること自体が、申出から始まる一連の流れに終わりがあることを示しています4。
出典:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月改訂)をもとに作成
一連の流れを振り返る
申出から調査、指導・助言、勧告、命令・公表、そして命令違反への罰金まで、行政機関の側の手続きは段階を追って進みます。どの段階で止まるかは発注する側の対応次第であり、申出をした側が手続きを自分で進める必要はありません。
手続きの細部を自分で追いかけるよりも、こうした段階が制度としてすでに用意されていることを知っておくほうが、申出そのものへの構えが軽くなります。
次の章では、申出をしたこと自体が発注する側からの不利益な扱いにつながらないかという、もう一つの不安に触れます。
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5. 申出をしたことで不利益な扱いを受けない
申出を理由にした不利益な取扱いの禁止
声を上げることで、今の案件や次の案件に響くのではないかという不安を持つ場面は少なくありません。契約を続けている間柄であればなおさら、関係が悪くなることを恐れて言い出せない場合もあります。
発注する側は、行政機関の窓口に申出をしたことを理由に、契約解除や今後の取引を行わないようにするといった不利益な取扱いをしてはなりません5。申出をした事実そのものが、契約解除などの理由にされることを制度が禁じています。
この仕組みがあることの意味
申出をきっかけに関係が悪くなるかもしれないという不安よりも、申出をしたこと自体を理由にした不利益な取扱いが制度で禁じられていることを知っておくほうが、声を上げる場面での構えが変わります。
禁じられているのは、申出をしたことを理由にした契約解除や取引の打ち切りといった扱いです5。申出の内容がどう扱われるかとは別に、申出をしたという行為自体を理由にした不利益は認められていません。
この規定があることは、申出という選択肢を、関係を壊す覚悟なしに取れるようにする役割を持っています。声を上げること自体が、案件を続けられなくなる直接の原因にはなりません。
次の章では、実際に申出をするときの方法と、近くで受け付ける窓口について確認します。
6. 申出の方法と、近くで受け付ける窓口
オンラインでの申出
申出をしようと考えたとき、まず窓口までどう行けばよいのかで迷う場面があります。窓口は、出向く形だけに限られてはいません。
本法の違反があった場合、オンラインなどで申出が可能です6。窓口に足を運ぶ前に、まずオンラインの申出という選択肢があることを知っておくと、動き出すまでの負担が変わります。
近くの窓口でも申出ができる
近くの公正取引委員会、経済産業局、都道府県労働局でも申出が可能です7。窓口が一箇所に集中しているわけではなく、地域の機関でも受け付けられる形になっています。
出向く窓口を選ぶよりも、まずオンラインで申出の形を確かめておくほうが、動き出しやすいと感じる場面もあるはずです。どちらを選んでも、申出という行為そのものは同じ枠組みで扱われます6。
窓口ごとの申出方法を並べて確認する
オンラインでの申出と、近くの行政機関の窓口での申出は、どちらも申出の入り口として用意されています。どちらを選ぶかは案件を進める本人の状況次第であり、窓口の種類によって申出の扱いが変わるわけではありません。ここでは、窓口の種類ごとに申出の方法を並べて整理します。
| 窓口の種類 | 申出の方法 |
|---|---|
| オンライン | オンラインなどで申出が可能です6 |
| 近くの公正取引委員会・経済産業局・都道府県労働局 | 窓口でも申出が可能です7 |
出典:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット(2026年7月改訂)をもとに作成
窓口の形はいくつかありますが、申出そのものにたどり着く道筋は複数用意されています。次の章では、法違反かどうか自分では判断がつかないときに使える相談先と、その範囲を確認します。
7. 法違反かわからないときの相談先と、その範囲
フリーランス・トラブル110番という窓口
ここまでの行政機関への申出は、発注する側に法違反と思われる行為があったと見えている場合の話です。ただ、実際には、今の状況が法違反にあたるのかどうか自分では判断がつかない場面のほうが多いかもしれません。
フリーランス・トラブル110番は、フリーランスと発注事業者等との間の取引上のトラブルについて、弁護士にワンストップで相談できる窓口です8。行政機関への申出とは別に、判断がつかない段階から使える相談先が用意されています。
支援してもらえる範囲とできないこと
相談者の希望により、行政機関への申出の支援として、申出書の書き方や論点の整理などを支援します9。申出をするかどうかを決める前の段階でも、話を整理する助けとして使える窓口です。
ただし、申出書の作成代行、提出代行はできません10。窓口が担うのは書き方や論点の整理までであり、手続きそのものを代わりに進める役割は持っていません。
判断がつかないことよりも、判断がつかない段階から相談できる窓口があることを知っておくほうが、次にどう動くかを決めやすくなります。相談してから申出に進むかどうかを決めても遅くはありません。
図の作成:Remogu編集部。相談や申出の前に整理しておくと役立つ観点をまとめたもので、統計データではありません
行政機関への申出とフリーランス・トラブル110番の違いを確認する
行政機関への申出と、フリーランス・トラブル110番への相談は、役割が分かれています。前者は発注する側に法違反と思われる行為があると見えている場合の申出先であり、後者は判断がつかない段階からでも使える相談先です。ここでは、それぞれで扱われる内容とできないことを並べて整理します。
| 窓口 | できること | できないこと |
|---|---|---|
| 行政機関への申出 | 法違反と思われる行為の申出1 | |
| フリーランス・トラブル110番 | 取引上のトラブルの相談8、申出書の書き方や論点整理の支援9 | 申出書の作成代行、提出代行10 |
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案件を始めたばかりでも、行政機関への申出はできますか
申出の対象になるかどうかは、経験の長さではなく、発注する側の対応に法違反と思われる行為があるかどうかで判断されます1。案件を始めたばかりであることを理由に、申出の入り口が変わるわけではありません。
案件を掛け持ちしている場合でも対象になりますか
フリーランス・トラブル110番は、フリーランスと発注事業者等との間の取引上のトラブルを扱う窓口として案内されています8。案件を一つに絞っているかどうかを相談の条件として挙げている記載はありません。
地方に住んでいても、近くに窓口はありますか
近くの公正取引委員会、経済産業局、都道府県労働局でも申出が可能です7。窓口が特定の地域だけに置かれているわけではなく、地域の機関でも申出を受け付ける形になっています。
稼働日数が少ない案件でも、申出や相談の対象になりますか
稼働日数の多さや少なさを申出や相談の条件として挙げている記載はありません。フリーランス・トラブル110番は、取引上のトラブルそのものを扱う窓口として案内されています8。
専門知識がまだ十分でなくても、相談してよいのでしょうか
フリーランス・トラブル110番は、判断がつかない段階からでも使える相談先として案内されています8。申出書の書き方や論点の整理も支援の対象に含まれるため9、状況を自分の中だけで整理しきれていない段階でも利用できます。
制度の側にどんな受け皿が用意されているかを知っておくことは、案件を続けながら自分の判断を保つための備えになります。困ったときに慌てて動くのではなく、知っておいた上で、必要なときに一歩を選べる状態を作っておくことが大切です。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」申し出られる先(2026年7月・2026年9月確認)
*2 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」調査の入り方(2026年7月・2026年9月確認)
*3 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」段階が上がる(2026年7月・2026年9月確認)
*4 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」罰金の額(2026年7月・2026年9月確認)
*5 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」申出の保護(2026年7月・2026年9月確認)
*6 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」申出の方法(2026年7月・2026年9月確認)
*7 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」近い窓口(2026年7月・2026年9月確認)
*8 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」相談の窓口(2026年7月・2026年9月確認)
*9 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」支援の中身(2026年7月・2026年9月確認)
*10 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」できないこと(2026年7月・2026年9月確認)