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    案件の更新で単価が据え置きのとき|条件を見直すための材料と伝え方を解説

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「更新で条件を見直す材料」を示す図です。書かれていない条件/作った後に続く仕事/期限のある手続きを並べています。強調しているのは書かれていない条件です。

    📘 この記事でわかること

    • 契約更新のときに条件が据え置かれやすい理由と、公表されている資料から見直しの材料を3つに整理できること
    • 勧告の内訳から分かる、条件面で最も指摘されやすい点と、その内容を落ち着いて伝えるときの言い方
    • 更新の話を切り出す前に確認しておきたい、期限のある手続きの日付と、条件を整理して話を進める順番

    契約の更新日が近づいても、これといった不満がない限り、前回の条件をそのまま引き継ぐ形で話が進みやすくなります。金額の話を切り出す前に、まず確認しておきたいのは、条件を見直すための材料です。書かれていない条件、契約の後も続いている作業、期限のある手続きは、公表されている資料から具体的に確かめられます。特別な調査をしなくても、資料に載っている事実を並べるだけで、更新の話し合いを組み立てられます。この記事では、その材料の集め方と、伝える順番を整理します。

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    1. 据え置きになるのは材料が無いから

    材料をもたずに更新日を迎える

    契約の更新日が近づくと、これといった不満がない限り、前回の条件をそのまま引き継ぐ形で話が進みやすくなります。確認の言葉を挟むタイミングを逃したまま、更新の手続きだけが先に進んでしまう場面は少なくありません。気づいたときには、条件を見直す機会そのものが過ぎてしまっていることもあります。

    条件を見直すというと、金額の交渉を思い浮かべがちですが、まず必要なのは交渉ではなく材料です。材料とは、書かれていない条件、契約の後も続いている作業、期限のある手続きという、確認できる事実を指します。感覚や印象ではなく、資料で裏づけられる事実を並べることが出発点になります。

    この記事では、公表されている資料をもとに、この3つの材料をどこで確認し、どう伝えるかを順に整理します。金額の水準そのものには触れず、条件を見直す材料に絞って進めます。読み終えたときには、更新の話し合いの前に何を確認すればよいかが具体的になっているはずです。

    公表されている件数の規模

    取引の適正化に関する公正取引委員会の資料では、指導の件数は1,542件です3。指導は勧告よりも軽い措置で、取引条件の確認が十分でないまま進んでいる契約が一定数あることを示しています。件数の規模からも、条件の確認は特別な話ではないことが分かります。

    同じ資料では、勧告の件数は10件です1。指導より重い措置まで進む例は限られますが、条件の確認が不十分なまま契約が進む状況が、公表される数字として存在することが分かります。件数の大小にかかわらず、確認の対象になり得るという点は変わりません。

    件数だけを見ると、更新の際に条件を確認することの意味は伝わりにくいかもしれません。次の項目では、勧告の内訳を見ながら、どの条件が特に指摘されやすいのかを確認します。内訳を知ることで、確認する優先順位も見えてきます。

    図1:更新の前に確認する材料は3つあります
    書かれていない 条件 明示する条件を 確認します 作った後に 続く仕事 運用の改善を 数えます 期限のある 手続き 届出と納税の 期間を確認

    図の作成:Remogu編集部。公表されている資料をもとに整理したもので、統計データではありません

    2. 一番多いのは条件が書かれていないこと

    勧告の内訳を見る

    公正取引委員会が公表している勧告の内訳を見ると、取引条件の明示義務違反が10件、期日における報酬支払義務違反が9件です2。どちらも金額の水準ではなく、条件や期日が書かれているかどうかに関わる指摘です。件数の近さから、両方とも軽視できない区分だと分かります。

    件数だけを比べると、取引条件の明示義務違反がわずかに多い結果です。契約の更新時に何を明示するかが定まっていないまま話が進むと、この区分に該当しやすくなります。更新の場面ほど、明示の抜けが起きやすい局面だといえます。

    更新の話を切り出す際は、金額そのものよりも、書かれていない条件がないかを先に確認したほうが、話の的が絞りやすくなります。次の表に、指摘されやすい点をまとめます。表を見ながら、自分の契約に当てはめて確認してみると分かりやすくなります。

    指摘されやすい点内容出典
    取引条件の明示義務更新時に条件を明示できているかの確認が不十分な例が最も多く挙げられています2公正取引委員会
    期日における報酬支払義務支払の期日に関する確認が不十分な例です2公正取引委員会
    契約に伴う手間取引のたびに手間や工数がかかる点を課題に挙げる企業が多いという結果です8IPA

    システム開発の契約でも同じ課題がある

    IPAの調査では、システム開発の契約について、取引のたびに手間や工数がかかる点を課題として挙げる企業が多いという結果です8。契約のたびに条件を一から確認し直す負担が、現場の実感として表れています。この負担は、更新の場面でも同じように生じます。

    この結果は、条件が書かれていないことが、更新の場面だけでなく契約全体を通じた課題であることを示しています。書かれていない条件を見直す作業は、一度きりで終わるものではなく、契約のたびに繰り返し発生する作業だといえます。

    書かれていない条件を洗い出す作業は手間がかかりますが、次の項目で扱う「作った後に続く仕事」を数えることと合わせて進めると、確認の抜けを減らせます。二つの材料をまとめて確認したほうが、効率よく進められます。

    3. 作った後に続く仕事を数える

    運用フェーズも計画に含める

    デジタル庁の資料では、運用フェーズも含めて日々改善していくことを前提に、予算・体制・スケジュールを計画する必要があります6。契約を更新する際に見落とされやすいのは、この運用フェーズの作業量です。契約時の想定に、運用が含まれていない場合は特に注意が必要です。

    作った後に続く仕事とは、公開してから発生する改善の作業を指します。契約の条件を更新前と同じにしたままだと、この作業の分だけ、当初の想定より負担が増えている可能性があります。増えた分を言葉にできるかどうかが、更新の話し合いの出発点になります。

    運用フェーズの作業を数えることは、金額の交渉ではなく、条件を更新するための材料集めです。何が増えたのかを言葉にできれば、更新の話に具体性が出ます。抽象的な負担感ではなく、作業の内容として伝えることが大切です。

    段階確認する点出典
    見積りの段階見積りを取るときの留意点が項目として置かれています7デジタル庁
    運用の段階運用フェーズも含めて日々改善していくことを前提に、予算・体制・スケジュールを計画する必要があります6デジタル庁

    見積りの留意点を確認する

    同じ資料には、見積りを取るときの留意点が項目として置かれています7。見積りの段階で確認しておく点が示されていること自体が、条件を後から見直す難しさを裏づけています。最初の段階での確認が、後の見直しを楽にします。

    見積りの留意点は、契約を結ぶ最初の段階で確認するものですが、更新のときにも同じ観点で見直せます。当初の見積りと、今の作業内容にずれがないかを確認する材料になります。ずれが大きいほど、更新で見直す理由がはっきりします。

    作った後に続く仕事と、見積りの留意点を並べて確認すると、更新の際に何を伝えればよいかが具体的になります。次の項目では、期限のある手続きに目を移します。手続きの期限は、更新の交渉とは別に進むため、早めの確認が欠かせません。

    4. 期限のある手続きは別に動く

    取消の届出には期限がある

    国税庁の資料では、登録をやめるには、やめたい課税期間の初日から起算して15日前の日までに届出を出す必要があります4。この期限は、契約の更新日と連動して動くものではありません。更新の交渉が長引いても、この期限だけは独自に進みます。

    更新の話し合いを進める時期と、この届出の期限が近いと、確認が後回しになりやすくなります。期限のある手続きは、更新の交渉とは別のスケジュールとして扱ったほうが、抜けを防げます。カレンダーに別々に記録しておく方法も考えられます。

    手続きの期限を先に押さえておくと、更新の話し合いに集中しやすくなります。金額の計算をする必要はなく、日付だけを確認しておけば十分です。日付という事実だけであれば、確認にかかる手間も大きくありません。

    登録後の期間にも定めがある

    同じ資料では、登録した場合、登録の日から2年を経過する日の属する課税期間の末日までは、納税の義務があります5。この期間は届出の期限とあわせて確認しておきたい事実です。登録した時点で、この期間はすでに決まっています。

    この期間は、契約の更新の周期とは別に進みます。更新の話し合いをするタイミングで、この期間がいつ終わるのかを合わせて確認しておくと、後から慌てずに済みます。期間の終わりを把握しておくこと自体が、材料の一つになります。

    期限のある手続きは、更新の条件そのものではありませんが、確認を忘れると影響が及ぶ範囲です。次の項目では、条件を見直す前提として、利用する側が何を優先しているかを確認します。前提を知ることで、伝え方も変わってきます。

    図2:勧告の内訳
    取引条件の明示義務違反 10件 期日における報酬支払義務違反 9件

    出典:公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」(2026年6月)をもとに作成

    5. 品質を最優先という前提を使う

    利用する側が優先する事項

    IPAの調査では、利用する側の企業は、システムの品質を最も優先する事項として捉えています10。条件を見直す話をするときは、この前提を踏まえておくと、話が伝わりやすくなります。品質という共通の関心事から話を始められます。

    品質を優先する前提があるなら、条件の見直しは品質を保つための確認として伝えられます。金額の交渉として伝えるよりも、話の受け止められ方が変わります。同じ内容でも、伝える切り口によって印象が変わります。

    品質という言葉は抽象的に響きますが、書かれていない条件や、続いている作業を具体的に挙げることで、品質を保つための確認だと伝わりやすくなります。抽象的な言葉を、具体的な事実で裏づける進め方です。

    調査の項目結果出典
    利用する側が優先する事項品質を最も優先する事項として捉えています10IPA
    モデル契約の認知モデル契約そのものを知らないとする企業が多いという結果です9IPA

    モデル契約を知らない企業も多い

    同じ調査では、モデル契約そのものを知らないとする企業も多いという結果です9。条件を見直す材料として、モデル契約の存在を前提にできない場面があることになります。前提にできない場合の進め方も、あわせて考えておく必要があります。

    モデル契約を前提にできない場合は、公表されている資料の内容を直接示したほうが、確認が進みやすくなります。資料の名称と発行元を添えて伝える方法です。出どころのはっきりした情報のほうが、話がまとまりやすくなります。

    利用する側の優先事項と、モデル契約についての認識を踏まえておくと、条件を見直す話し合いの進め方が具体的になります。次の項目では、伝え方の形を整理します。材料をどの順番で、どんな言葉で伝えるかを確認します。

    図3:材料がある場合とない場合の違い
    材料が無いまま 前回と同じ条件で 話が進みます 確認の言葉が 出にくくなります 材料をそろえて 書かれていない条件を 先に確認できます 品質を保つ話として 伝わります

    図の作成:Remogu編集部。公表されている資料をもとに整理したもので、統計データではありません

    6. 伝え方の形

    資料の言葉をそのまま使う

    伝え方の形は、資料の言葉をそのまま使うことから始まります。取引条件の明示義務、期日における報酬支払義務という言い方は、公表されている資料の表現と同じです2。言い換えずにそのまま使うことが、伝え方の基本になります。

    独自の言い回しに変えると、根拠のある指摘なのか、個人の受け止め方なのかが伝わりにくくなります。資料の名称と発行元を添えて伝えると、話の出どころがはっきりします。出どころを添えるだけで、話の説得力が変わります。

    モデル契約を知らないとする企業が多いという結果を踏まえると9、モデル契約という言葉を前提にせず、確認したい点を具体的に挙げたほうが伝わります。言葉の前提をそろえることよりも、確認したい事実を先に示すことが大切です。

    材料を並べる順番

    材料を並べる順番も伝わり方に関わります。まず書かれていない条件、次に作った後に続く仕事、最後に期限のある手続きという順で挙げると、確認の話として受け止められやすくなります。順番を変えるだけで、話の印象は大きく変わります。

    金額の話を先に出すと、交渉として受け止められやすくなります。条件の確認から始めると、品質を保つための話し合いとして進めやすくなります。どちらから話すかで、相手の受け止め方が変わってきます。

    Remoguでは、案件の90%以上がフルリモート可能です。参画中の案件についても、条件を整理しながら次の関わり方を確認できます。今の契約を見直すことと、新しい案件を確認することは、どちらも並行して進められます。

    7. 更新の前に動く順番

    更新の前に確認する3つ

    更新の前に動く順番は、まず書かれていない条件を洗い出し、次に作った後に続く仕事を数え、最後に品質を優先する前提を使って伝える、という並びです。順番を決めておくと、更新の話し合いの前に迷わず準備を進められます。

    見積りを取るときの留意点が項目として置かれていることは7、契約の入り口だけでなく、更新の場面でも同じ観点を使えることを示しています。当初の見積りと今の作業を照らし合わせる材料になります。ずれがあれば、それが更新の理由になります。

    期限を先に押さえる

    動く順番の中でも、期限のある手続きだけは先に押さえておく必要があります。登録をやめる場合、やめたい課税期間の初日から起算して15日前の日までに届出を出す必要があります4。この日付だけは、交渉の進み具合に左右されません。

    この期限は更新の交渉とは別に進むため、交渉の進み具合に関わらず、日付だけは早めに確認しておくと安心です。カレンダーに記録しておけば、確認漏れを防げます。

    図4:更新の前に動く順番
    1 条件確認 条件を 洗い出す 2 仕事集計 続く仕事を 数える 3 品質提示 品質を優先し 伝える 4 期限確認 期限の日付を 確認する

    図の作成:Remogu編集部。公表されている資料をもとに整理したもので、統計データではありません

    更新のときに金額の相場を確認したほうがよいですか

    この記事では、金額の相場そのものは扱っていません。確認できるのは、書かれていない条件や、作った後に続く仕事、期限のある手続きといった、資料から裏づけられる材料です。金額を扱わない分、確認できる範囲がはっきりしています。

    金額の水準を知りたい場合でも、まずはこうした材料を整理したうえで、条件の確認として話を進める進め方が考えられます。材料をそろえることが、結果として金額の話にもつながっていきます。

    モデル契約を使えば書かれていない条件を防げますか

    モデル契約を知らないとする企業も多いという結果があります9。存在を前提にできない場面があるため、モデル契約の有無にかかわらず、条件を具体的に確認する進め方が現実的です。前提をそろえることより、事実を確認することを優先します。

    書かれていない条件を防ぐ一つの方法として、資料の言葉をそのまま使って確認する進め方があります2。独自の言い回しに変えないことが、確認をすれ違わせないための工夫になります。言葉をそろえることが、確認の精度を高めます。

    登録をやめる手続きは更新と同じタイミングで進めればよいですか

    登録をやめるには、やめたい課税期間の初日から起算して15日前の日までに届出を出す必要があります4。この期限は更新の話し合いの進み具合とは別に決まっています。交渉の結果を待ってから動くと、間に合わない可能性があります。

    更新の交渉の進み具合に関わらず、この期限だけは早めに確認しておくと、話し合いを落ち着いて進められます。期限を押さえたうえで、条件の見直しに集中できます。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」勧告の件数(2026年6月・2026年8月確認)
    *2 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」違反の中身(2026年6月・2026年8月確認)
    *3 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」指導の件数(2026年6月・2026年8月確認)
    *4 国税庁「インボイス制度において事業者が注意すべき事例集」やめるときの期限(2026年4月・2026年8月確認)
    *5 国税庁「インボイス制度において事業者が注意すべき事例集」戻れない期間(2026年4月・2026年8月確認)
    *6 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」計画の作り方(2026年・2026年8月確認)
    *7 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」見積りの作法(2026年・2026年8月確認)
    *8 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」契約の負担(2025年4月・2026年8月確認)
    *9 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」相手の前提(2025年4月・2026年8月確認)
    *10 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」評価の軸(2025年4月・2026年8月確認)