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    高収入の案件を受けるには何が必要?報酬の条件を組み立てる材料と注意点

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「報酬の条件を組み立てる材料」を示す図です。外に出している仕事の位置/相手が持っていない判断/終わりの形を並べています。強調しているのは相手が持っていない判断です。

    📘 この記事でわかること

    • 競争にかかわる開発が外部に出されている実態と、人材が不足していると答えた企業の割合が85.1%に上るという状況が示す、条件を組み立てる出発点
    • 契約の運用に残る手間や、意思決定を担う責任者を置いていない企業の状況と、それを条件を組み立てる材料として使う考え方
    • 見積りや品質についての前提をそろえる進め方と、終わりの形を先に決めておく条件の組み立て方の順番

    高収入の案件を受けている人と、そうでない人の違いは、能力の差ではなく材料の差です。相手が外に出している仕事の位置と、相手が持っていない判断、そして終わりの形。この3つをそろえた人から順に、条件は決まっていきます。この記事では、その材料をどう集め、どう使うかを順番に整理します。

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    1. 報酬の条件は材料で決まる

    条件がなかなか上がらないと感じるとき、技術や実績をもう一度見直したくなります。ですが条件の決まり方を見ると、技術の水準そのものより、相手との話し合いの場に何を持ち込めるかが大きく効いています。ここでいう材料とは、相手の状況を言い当てる情報のことで、これをそろえた人から順に、条件は決まっていきます。

    条件は交渉の駆け引きではなく材料の有無で決まる

    交渉というと、話し方や粘り強さを思い浮かべやすいものです。しかし相手が動くのは、話し方が上手だからではなく、示された情報に納得できるからです。ここで言う情報とは、相手の事業がどんな位置に置かれているかを示す材料のことです。

    材料が無いまま条件の話をすると、相手は判断する根拠を持てません。結果として、条件は前例や社内の慣例に沿って決まりやすくなります。逆に材料がそろっていれば、相手は個別の状況に合わせて条件を組み立てやすくなります。

    たとえば、同じスキルを持つ人が2人いても、話す材料を持っている人のほうが早く条件の合意に至ります。差を生んでいるのは経験の量ではなく、相手の状況をどれだけ具体的に言い当てられるかです。

    3つの材料の中身

    この記事で扱う材料は3つです。1つ目は、相手が外に出している仕事の位置。競争にかかわる開発をどこまで外部に任せているかという事実です。2つ目は、相手が持っていない判断。契約の運用や意思決定の体制に残る空白のことです。

    3つ目は、終わりの形です。何をもって仕事が完了したと言えるのかを、始める前に決めておくことを指します。次の章から、この3つを順番に見ていきます。

    材料は個別に使うより、組み合わせて使うほうが効きます。位置と判断と終わりの形がそろって初めて、相手は条件の妥当性を判断できるようになるためです。

    図1:報酬の条件を組み立てる3つの材料
    報酬の条件を組み立てる3つの材料 1 相手が外に出している仕事の位置 競争にかかわる開発をどこまで外部に任せているか 2 相手が持っていない判断 契約の運用や意思決定の体制に残る空白 3 終わりの形 何をもって完了とするかを先に決めておくこと

    図の作成:Remogu編集部。条件を組み立てる材料を整理したもので、統計データではありません

    2. 競争にかかわる仕事が外に出ている

    相手の状況を言い当てるには、まず業界全体の位置を知っておく必要があります。ここではIPAの調査をもとに、開発がどのように外部へ出されているか、そして人材の状況がどうなっているかを見ていきます。

    外部への委託が最も多い形になっている

    IPAの「DX動向2025」によると、競争にかかわる事業では、外部への委託による開発を行っている回答が4割弱で最も多くなっています1。自社の中だけで完結させるより、外部に任せる部分を持つ企業のほうが多いという結果です。

    これは、外部に開発を任せる相手を探している企業が一定数あることを示しています。相手が外部に任せている仕事の中に、条件を組み立てる材料が眠っています。

    国によって人材の状況が違う

    同じ「DX動向2025」では、DXを進める人材の量が不足していると答えた企業の割合の合計が85.1%となっています2。人材の量について、十分ではないと感じている企業がそれだけあるという調査結果です。

    同じ調査の国際比較では、米国で過不足がないと答えた企業の割合の合計が73.6%、ドイツで52.5%となっています3。日本の数字とは問いの立て方が異なるため単純に並べられませんが、余裕を感じている企業の割合という点では、日本より高い水準です。

    この違いは、相手が置かれている環境そのものを表しています。人材が不足している環境ほど、条件について相手と対話する余地は大きくなります。

    外部への委託と人材の状況を並べて見る

    ここまでの数字を、外部への委託の状況と人材の状況に分けて一つの表にまとめます。日本は委託の回答が最も多い形になっている一方で、人材の不足を感じている企業の割合も高い水準にあります。米国とドイツは、過不足がないと答えた企業の割合という別の物差しで示されており、日本の数字とそのまま比べることはできませんが、参考として並べています。相手がどんな環境で開発を進めているかを知る材料として、まず全体の形をつかんでおきます。

    項目内容出典
    開発の委託競争にかかわる事業で、外部への委託による開発を行っている回答が4割弱で最多IPA「DX動向2025」
    日本の人材の状況人材の量が不足していると答えた企業の割合の合計は85.1%IPA「DX動向2025」
    米国の人材の状況過不足がないと答えた企業の割合の合計は73.6%IPA「DX動向2025」
    ドイツの人材の状況過不足がないと答えた企業の割合の合計は52.5%IPA「DX動向2025」
    図2:人材の過不足に関する日米独の比較
    人材の過不足に関する日米独の比較 日本:人材の量が不足していると答えた企業の割合の合計 85.1% 米国:過不足がないと答えた企業の割合の合計 73.6% ドイツ:過不足がないと答えた企業の割合の合計 52.5%

    出典:IPA「DX動向2025」(2025年6月)をもとに作成

    外部への委託が多く、人材への不安もある。この2つが重なっている場所に、条件を組み立てる最初の材料があります。次の章では、相手が持っていない判断について見ていきます。

    3. 相手が持っていない判断

    外に出ている仕事の位置が分かったら、次に見るのは相手側の準備の状態です。契約の場面でつまずきやすい点を知っておくと、条件を提案するときの材料になります。

    契約の運用に残る手間

    IPAの「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」では、システム開発の契約について、取引ごとに手間や工数がかかる点を課題として挙げる企業が多くあります4。契約のたびに一から条件を整える負担が、相手側に残っているということです。

    さらに同じ調査では、モデル契約そのものを「知らない」とする企業も多くあります5。契約の型を整理する材料を、相手がまだ持っていない場合があるということです。

    意思決定を担う責任者がいない

    同じ調査では、意思決定を担う責任者(CxOクラス)を置いていない企業が約半数に上ります9。誰が最終的に条件を決めるのかという体制そのものが、整っていない場合があります。

    この2つを重ねると、相手側には契約の運用の手間と、決める人の不在という2つの空白が残っていることが分かります。これが、相手が持っていない判断です。

    契約の運用と意思決定の体制をひとつの表にする

    契約の運用に残る課題と、意思決定の体制の課題は、同じ調査の別の項目として示されています。前者は取引の手間、後者は責任者の有無という体制の話です。どちらも相手側の内部の話であり、外からは見えにくい部分です。この2つを表にして整理します。

    課題内容出典
    契約の運用取引ごとに手間や工数がかかる点を課題として挙げる企業が多いIPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」
    意思決定の体制意思決定を担う責任者(CxOクラス)を置いていない企業が約半数IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」

    契約の運用の手間と、決める人の不在。この2つの空白を言葉にできると、条件の話し合いは具体的になります。次の章では、この空白を埋める見積りの言葉について見ていきます。

    4. 見積りの言葉をそろえる

    相手が持っていない判断を補うために使えるのが、見積りの場面での言葉です。デジタル庁の資料には、見積りを取るときに確認しておく点が示されています。

    見積りの留意点は項目として示されている

    デジタル庁の「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」には、見積りを取るときの留意点が、項目として明記されています6。何を確認すればよいかが、あらかじめ言葉になっているということです。

    この留意点を自分の言葉に置き換えて相手に示すと、話し合いの出発点が具体的になります。感覚的な要望ではなく、確認する項目として提示できるためです。

    提案が方針に沿っているかを確かめる

    同じ資料では、事業者からの提案が方針に沿ったものかどうかを、留意点として置いています7。提案の内容を、決められた方針と照らし合わせて確認するという考え方です。

    この視点を条件の話し合いに持ち込むと、提案の中身を個別の印象ではなく、方針との一致という物差しで見てもらえます。印象で判断されるより、方針との一致で判断されるほうが、条件は具体的になります。

    図3:材料がある場合とない場合の話の進み方
    材料がある場合とない場合の話の進み方 材料がある場合の進み方 位置を示す 留意点を確認 前提がそろう 材料がない場合の進み方 位置が曖昧 確認が後回し 前提が曖昧

    図の作成:Remogu編集部。話の進み方を整理したもので、統計データではありません

    見積りの留意点と、方針との一致という2つの言葉を持っておくと、話し合いは具体的な項目の確認に変わります。次の章では、品質という前提について見ていきます。

    5. 品質が最優先という前提を使う

    条件の話し合いでは、相手が何を優先しているかを知っておくと、提案の組み立て方が変わります。ここでは品質という前提について見ていきます。

    品質は最優先の事項として捉えられている

    IPAの「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」では、利用する側の企業は、品質を最も優先する事項として捉えています8。価格や速さより先に、品質が置かれているということです。

    この前提を知っておくと、条件を示すときに品質をどう守るかという説明を先に置く判断ができます。後から品質の話をするより、先に品質の話をするほうが、相手の優先順位と合います。

    リスク管理と業務継続の整備状況

    同じ調査では、ITのリスク管理と業務継続計画について、全体の5〜6割程度の企業が整備しています10。整備している企業がある一方で、整備がまだ進んでいない企業も一定数残っています。

    この数字は、リスク管理や業務継続の話ができる人を、相手側が常に持っているわけではないことを示しています。ここも、相手が持っていない判断のひとつです。

    品質とリスク管理の前提をひとつの表にする

    品質を最優先とする前提と、リスク管理・業務継続計画の整備状況は、同じ調査の別の設問として示されています。前者は優先順位についての回答、後者は整備の有無についての回答であり、意味が異なる数字です。この2つを表にして、条件の話し合いで使える前提として整理します。

    前提内容出典
    優先する事項利用する側の企業は品質を最も優先する事項として捉えているIPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」
    リスク管理と業務継続全体の5〜6割程度の企業が整備しているIPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」

    品質を優先する前提と、リスク管理の整備状況。この2つを知っておくと、提案の順番を相手に合わせて組み立てられます。次の章では、終わりの形を先に決める考え方を見ていきます。

    6. 終わりの形を先に決める

    材料をそろえても、終わりの形が曖昧なままでは、条件の話は堂々巡りになります。ここでは、始める前に何を決めておくかを見ていきます。

    モデル契約を知らない相手もいる

    IPAの調査では、モデル契約そのものを「知らない」とする企業も多くあります5。何をもって完了とするかという型を、相手がまだ持っていない場合があるということです。

    型を持っていない相手に対しては、こちらから終わりの形を言葉にして示すほうが、話は早く進みます。相手の型を探すより、こちらから形を示すほうが、条件は具体的になります。

    運用の手間を減らす言葉にする

    同じ調査では、取引ごとに手間や工数がかかる点を課題として挙げる企業が多くあります4。毎回一から条件を整える負担は、相手にとっても軽くしたい部分です。

    終わりの形を先に決めておくと、次の取引でも同じ形を使い回せます。1回ごとに一から話し合うより、決めた形を繰り返し使うほうが、双方の負担は小さくなります。

    終わりの形を先に決めておくことは、相手の負担を減らすことでもあります。次の章では、これまでの材料をどの順番で使うかをまとめます。

    7. 条件を組み立てる順番

    ここまで見てきた材料を、実際の話し合いでどう使うかを順番に整理します。

    材料を順番に並べる

    最初に、相手が外に出している仕事の位置を言葉にします。次に、相手が持っていない判断、たとえば意思決定を担う責任者(CxOクラス)を置いていない企業が約半数に上るという状況9を踏まえ、判断の空白を探します。

    続いて、見積りの留意点を、デジタル庁の資料にある言葉6を借りて確認します。最後に、終わりの形を決めます。この順番を守ると、材料を一つずつ確かめながら話を進められます。

    順番を飛ばして終わりの形だけを先に主張すると、相手は根拠のない要求として受け取ります。位置と判断を先に示すほうが、終わりの形の提案は受け止められやすくなります。

    図4:条件を組み立てる順番
    条件を組み立てる順番 1 位置を言葉にする 2 判断の空白を探す 3 見積りをそろえる 4 終わりの形を決める

    図の作成:Remogu編集部。条件を組み立てる進め方を整理したもので、統計データではありません

    登録して自分の条件を確かめる

    材料は、案件ごとに内容が変わります。自分が今関わっている、あるいはこれから関わろうとしている案件に当てはめて、材料を具体的に言葉にしてみることが最初の一歩です。

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    報酬の条件は自分の経験だけで決まりますか

    経験だけでは決まりません。相手の状況を示す材料をどれだけそろえられるかが、条件の決まり方に大きく関わります。経験があっても、材料を言葉にしなければ、相手には伝わりません。

    材料はどこで確認すればよいですか

    この記事で扱ったIPAやデジタル庁の資料のように、公開されている調査や方針の資料が手がかりになります。案件ごとの詳しい状況は、実際に案件情報を確認しながら、自分の経験と照らし合わせて確かめていきます。

    条件の話し合いは誰と進めればよいですか

    案件によって異なりますが、意思決定を担う責任者が明確でない場合もあります9。誰が最終的に判断するのかを、話し合いの早い段階で確認しておくと、後戻りが少なくなります。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 IPA「DX動向2025」外に出る仕事(2025年6月・2026年8月確認)
    *2 IPA「DX動向2025」人の足りなさ(2025年6月・2026年8月確認)
    *3 IPA「DX動向2025」国ごとの差(2025年6月・2026年8月確認)
    *4 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」契約の負担(2025年4月・2026年8月確認)
    *5 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」相手の前提(2025年4月・2026年8月確認)
    *6 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」見積りの作法(2026年・2026年8月確認)
    *7 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」提案を読む(2026年・2026年8月確認)
    *8 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」評価の軸(2025年4月・2026年8月確認)
    *9 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」決める人(2025年4月・2026年8月確認)
    *10 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」止まる備え(2025年4月・2026年8月確認)