外注の案件を受ける側は何を示す?見積りと体制から条件を組み立てる方法
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 頼む側が契約や進め方の型を持たないまま外部委託を進めることが多いという背景と、受ける側が先に示す4つの内容
- 外部サービスの活用は6割強まで進んでいる一方で、使い方の方針を整えている企業は約半数にとどまるという実情
- 決める人が定まらない場面で起きやすいことと、資料に残しておくと後から確かめやすくなる形
外部に開発を任せる案件では、見積りを出しても話が思うように進まないことがあります。原因の多くは、頼む側に契約や進め方の型が整っていないことにあります。受ける側が先に見積りの前提や進め方、直しの範囲、終わりの形を示すと、条件の話がまとまりやすくなります。この記事では、IPAとデジタル庁の資料をもとに、受ける前に示す内容と順番を整理します。
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1. 頼む側が設計を持っていないという前提
案件ごとに契約の手間がかかると感じています
外部に開発を任せる企業の多くは、案件のたびに契約の内容を一から詰め直しています。取引ごとに手間や工数がかかる点を課題として挙げる企業が多いと、IPAの調査は伝えています1。同じような開発でも、契約書の形や見積りの出し方が案件ごとに変わってしまうわけです。
受ける側から見ると、この状態は条件がそのつど変わる不便さに映ります。ただ実際には、頼む側の担当者も型を持たないまま進めていることが多く、悪意があって条件を変えているわけではありません。
契約のたびに条件が変わるという状態は、受ける側の準備の仕方にも影響します。前の案件で通った進め方が、次の案件でもそのまま通じるとは限らないため、案件ごとに前提を確かめ直す手間が生まれます。
契約の型を示す枠組みとして、モデル契約が用意されています。ところが、その存在そのものを知らないと答える企業も多いと、同じ調査は示しています2。契約の型を知らなければ、何を決めて何を決めなくてよいのかも整理しづらくなります。
つまり頼む側の担当者は、契約の型を知らないまま、案件ごとに手探りで条件を組み立てていることが多いのです。受ける側が型がある前提で質問を重ねても、話がかみ合わないことがあります。
この背景を知らずに進めると、受ける側は同じ説明を毎回繰り返すことに負担を感じやすくなります。背景が分かれば、その説明そのものを、受ける側から先に動く理由として捉え直せます。
この前提に立つと、受ける側が取る動き方も変わります。相手の準備が整うのを待つのではなく、次の4つを受ける側から先に言葉にして示す動き方です。見積りの前提、進め方、直しの範囲、終わりの形です。
図の作成:Remogu編集部。受ける側が示す内容を整理したもので、統計データではありません
この4つは、どれも特別な準備がいる内容ではありません。案件を受ける段階で、すでに受ける側の頭の中にある内容を、言葉にして先に示すだけです。
示す順番や言葉の細かさは、案件の規模によって変わってもかまいません。大切なのは、4つのどれかを省かずに、受ける側から先に置くという動き方そのものです。
この4つを、案件を受ける前にどう組み立てるかを、この後の章で順に見ていきます。まずは、外部サービスの活用がどこまで進んでいるかを確かめます。
2. 使うことは決まっているが頼み方が決まっていない
外部の活用は進んでいます
外部のサービスや製品を、一部での利用を含めて6割強の企業が活用していると、IPAの調査は示しています3。開発の一部を外部に任せること自体は、既に広く定着した進め方だと分かります。
一方で、その使い方についての方針を整えている企業は、全体の約半数にとどまります4。活用は進んでいても、どう使うかを決めた文書までは用意していない企業が半数近くあるということです。
この2つを並べると、使うことは決まっているが、頼み方が決まっていないという状態が見えてきます。受ける側にとっては、相手が方針を持っているかどうかで、案件の進み方が変わってくる場面です。
この状態は、頼む側の担当者個人の問題ではなく、活用の広がりに方針の整備が追いついていないという、業界全体に見られる傾向だと捉えられます。
方針がある場合とない場合で、進み方はこう変わります
方針を整えている頼む側は、確認の窓口や見積りの読み方があらかじめ決まっていることが多く、受ける側が示した内容もその形に沿って検討されます。方針が整っていない頼む側では、確認の窓口や決裁の手順がその都度探られるため、同じ内容を示しても検討にかかる時間が変わってきます。次の表は、方針の有無で変わりやすい点を整理したものです。
| 観点 | 方針が整っている場合 | 方針が整っていない場合 |
|---|---|---|
| 確認の窓口 | あらかじめ決まっている | 都度探す必要がある |
| 見積りの読まれ方 | 決まった形式に沿って検討される | 都度基準を作りながら検討される |
| 変更が起きたとき | 決裁の手順に沿って進む | 誰の判断か探るところから始まる |
この違いを割合で見ると、活用の広がりに対して方針の整備が追いついていない様子がより分かりやすくなります。次の図は、外部サービスを活用している企業の割合と、使い方の方針を整えている企業の割合を並べたものです。
出典:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」(2025年4月)をもとに作成
帯の長さの差が、活用の広がりと方針の整備との開きを表しています。受ける側は、この開きがある前提で相手に接することになります。
方針が整っていない相手には、方針そのものを求めるのではなく、受ける側が示す内容を、相手の方針の代わりに使える形にしておくと、検討が前に進みやすくなります。
逆に、方針が整っている相手であれば、その方針に沿った形で見積りや進め方を合わせる方が、検討の時間を短くできます。相手の状態を確かめてから示し方を選ぶという順番になります。
次の章では、この開きを踏まえて、受ける側が見積りの前提をどう示せばよいかを見ていきます。
3. 見積りの前提を先に示す
見積りには、留意点を置く場所があります
見積りを取るときの留意点は、あらかじめ項目として置かれています5。これはデジタル庁がまとめた、クラウドサービスの利用に関する基本方針の中の記述です。頼む側に向けた文書ですが、受ける側が同じ言葉で先に示すと、検討がかみ合いやすくなります。
もう一つの留意点は、提案の内容です。事業者からの提案が、方針に沿ったものかどうかに留意する必要があると、同じ資料は述べています6。見積りの前提や範囲だけでなく、提案そのものが相手の方針と合っているかどうかも、確認の対象になるということです。
受ける側から見ると、この2つの留意点は、見積りを出す前に自分の側で確かめておける内容でもあります。対象と範囲、そして提案の向きが相手の方針とずれていないかを、先に点検しておく形です。
受ける側が示す見積りの前提には、少なくとも次の要素が含まれます。何を対象にした見積りか、どこまでの作業を含むか、確認や検討にどれくらいの期間を見込むか、といった内容です。
前提が整理されていると、頼む側は自分たちの方針と照らし合わせて検討できます。前提があいまいなまま金額だけを示すと、方針との照合ができず、確認のやり取りが増えてしまいます。
前提を示してある場合と、示していない場合とでは、案件の進み方そのものが変わります。次の図は、その違いを整理したものです。
図の作成:Remogu編集部。前提を示す場合と示さない場合の進み方の違いを整理したもので、統計データではありません
前提を示してある場合は、検討から合意まで一方向に進みやすくなります。前提が示されていない場合は、確認が行き来しやすく、合意までの時間が読みにくくなります。
見積りの前提として示す項目
見積りの前提として示す項目は、対象範囲・確認の方法・スケジュールの前提の3つに整理できます。それぞれ何を示すか、示さなかった場合に起きやすいことを次の表にまとめました。
| 項目 | 示す内容 | 示さないと起きやすいこと |
|---|---|---|
| 対象範囲 | どこまでの作業を含むか | 作業の線引きを巡るやり取りが増える |
| 確認の方法 | 誰がどの段階で確認するか | 確認の担当者を探すところから始まる |
| スケジュールの前提 | 確認や検討にかかる期間の見込み | 想定より時間がかかり計画がずれる |
この3つの項目は、案件の規模にかかわらず共通して示せる内容です。案件が小さくても大きくても、対象範囲と確認の方法、スケジュールの前提という骨組みは変わりません。
見積りの前提を先に示せる案件をチェックする →
前提を先に示す動き方が整理できたところで、次の章では、本番を終えた後も続く前提で、体制をどう示すかを見ていきます。
4. 本番のあとも続く前提で体制を示す
運用に入ってからも計画は続きます
運用フェーズも含めて日々改善していくことを前提に、予算・体制・スケジュールを計画する必要があると、デジタル庁の資料は述べています7。本番稼働の後も改善が続く前提に立つと、体制の話は作って終わりにはなりません。
受ける側が体制を示すときは、本番稼働までの体制だけでなく、稼働後の確認や修正をどの頻度でどのように行うかまで含めて言葉にします。
体制を示さないまま進めると、本番稼働の直後は問題がなくても、稼働後にどのような対応が受けられるのかが、頼む側にとって見えない状態のままになります。
品質は利用する側が最も重く見ている点です
利用する側の企業は、システムの品質を最も優先する事項として捉えていると、IPAの調査は示しています10。体制を示すときは、進め方の速さだけでなく、品質をどう確かめるかという説明が欠かせません。
品質の確認方法を体制の説明に含めておくと、頼む側が最も重く見ている点に、受ける側から先に応える形になります。
稼働後の体制を示す際は、確認の頻度、修正の受け方、連絡の窓口という3つを言葉にしておくと、頼む側の検討材料になります。
体制の説明を先に示しておくと、頼む側は運用フェーズに入ってからの相談先を、案件を任せる前の段階で把握できます。
体制の話を後回しにすると、本番稼働の前は問題がなくても、稼働後に確認や修正が必要になった時点で、誰に何を頼めばよいのかを探すところから始まってしまいます。
次の章では、この体制を確かめる決裁の担当者がいない場合について見ていきます。
5. 決める人がいない場合
決裁を担う責任者がいない場面があります
意思決定を担う責任者を設置していない企業が、約半数に上ると、IPAの調査は伝えています8。決める人がはっきりしないまま案件が進むと、受ける側が示した内容がどこで検討されているのか、見えにくくなります。
決める人が定まっていない場面では、受ける側が示した資料が複数の担当者の間を回ることになりやすく、返答までの時間も読みにくくなります。
受ける側としては、決める人が誰かをたずねること自体が、案件の進み方を確かめる手がかりになります。返答が来るまでの時間の見立ても、そこから立てやすくなります。
決める人が複数いる場合も、同じことが言えます。誰がどの範囲を決めるのかを先に確かめておくと、資料を届ける相手を絞りやすくなります。
決める人がいる場合といない場合の違い
決める人がいる場合といない場合とでは、受ける側が示した内容の伝わり方が変わります。次の表は、確認の速さ・修正の判断・記録の残り方という3つの観点で整理したものです。
| 観点 | 決める人がいる場合 | 決める人がいない場合 |
|---|---|---|
| 確認の速さ | 短い時間で返答が来る | 複数の担当者の間を資料が回る |
| 修正の判断 | その場で方針が示される | 判断の持ち主を探す必要がある |
| 記録の残り方 | 決裁の記録として残る | 口頭のやり取りのまま残らないことがある |
決める人がいない場面ほど、受ける側が示す内容を、口頭ではなく残る形にしておく意味が大きくなります。
口頭でのやり取りだけに頼ると、担当者が変わった時点で、それまでの内容が引き継がれないことがあります。資料として残しておけば、新しく加わった担当者にも同じ前提を渡せます。
要件定義と設計は、いまもドキュメントを中心に行われていると、同じ調査は示しています9。決める人がその場にいなくても、ドキュメントの形で示しておけば、後から確認する担当者にも同じ内容が伝わります。
次の章では、この文書という形に、何を残しておけばよいかを具体的に見ていきます。
6. 資料に残す形
ドキュメントに残すと、後から確かめられます
要件定義と設計がドキュメントを中心に行われている以上9、受ける側が示す前提や体制も、口頭ではなく文書という形にしておくと、後から確かめる担当者にも同じ内容が伝わります。
モデル契約という契約の型を知らない企業が多い場面では2、契約書の条文だけに頼るよりも、見積りの前提・進め方・直しの範囲・終わりの形を、案件ごとに言葉で書き添えておく方が、双方の理解を近づけます。
契約書という一つの文書だけに条件を詰め込もうとすると、かえって読みづらくなることがあります。見積りの前提や体制は、契約書とは別の資料として言葉にしておく方が、後から確かめやすくなります。
受ける側がこの資料を用意しておくと、契約書に書かれていない細かな前提についても、後から相手と確かめ合う共通の土台になります。
残す資料に含める言葉
資料に残す内容は、対象範囲、確認の方法、修正を受け付ける範囲、区切りとなる状態の4つに整理できます。金額の計算式ではなく、何を対象にどこまで進めるかという言葉で書きます。
この4つは、次の章で示す受ける前に示す順番の土台にもなります。資料として残しておけば、担当者が変わっても同じ前提を確認できます。
4つのうち、どれか一つだけを厚く書いて他を省くと、受ける側の意図とは違う形で相手に伝わることがあります。分量よりも、4つがそろっているかどうかを先に確かめます。
資料の形式は特別なものである必要はありません。箇条書きの短い文書でも、対象範囲や確認の方法が言葉になっていれば、後から確かめる材料として十分に働きます。文章の量よりも、対象範囲・確認の方法・修正の範囲・終わりの形という4つが漏れていないかを確かめることが大切です。
資料に残す形が整った案件をチェックする →
資料という形にしておくことは、頼む側だけでなく、受ける側自身が案件を振り返るときの手がかりにもなります。
次の章では、ここまでの内容を、受ける前に示す順番として整理します。
7. 受ける前に示す順番
示す順番はこう整理できます
ここまで見てきた内容を、受ける前に示す順番として整理します。まず見積りの前提を示します5。次に進め方を示し、直しの範囲を言葉にし、最後に本番後も続く体制を示します7。
順番を追って示すと、頼む側は前の内容と照らし合わせながら検討できます。前提を示さないまま体制の話に進むと、何のための体制なのかが伝わりにくくなります。
逆の順番で、体制や直しの範囲を先に細かく示しても、見積りの前提が抜けていれば、頼む側は何と照らし合わせて読めばよいのか分からなくなります。
図の作成:Remogu編集部。受ける前に示す内容の順番を整理したもので、統計データではありません
案件によって、この順番のどこかを先方から先に尋ねられることもあります。その場合も、示す内容そのものは変わりません。
受ける側が示す内容を整理しておくと、案件を選ぶ段階でも条件を確かめやすくなります。Remoguが扱う案件は、90%以上がフルリモートで進められます。登録すると、自分の経験に近い案件でどんな前提が示されているかを確かめられます。
示す順番と資料の形が整っていれば、頼む側が変わっても、受ける側が示す内容そのものは変わりません。案件ごとに一から組み立て直す手間も減ります。
見積りの前提はどこまで詳しく示せばよいですか
対象範囲、確認の方法、想定する期間の3つを言葉にしておけば十分です。金額の計算式まで示す必要はなく、何を対象にどこまで進めるかが伝われば、頼む側は自分たちの方針と照らし合わせて検討できます。案件の規模が変わっても、この3つの骨組みは変わりません。
体制を示すときに何を書けばよいですか
本番稼働までの体制だけでなく、稼働後にどんな頻度で確認や修正を受け付けるかまで書きます。品質の確認方法も含めておくと、頼む側が重く見ている点に応える形になります。
決める人がはっきりしない案件では、どう進めればよいですか
資料をドキュメントの形で残しておくことが手がかりになります。担当者が変わっても、同じ前提を確認できる状態にしておけば、決裁が進んだところで検討に戻れます。急いで結論を求めるより、資料を残して待つ方が、後から振り返りやすくなります。
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出典・参考情報
*1 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」契約の負担(2025年4月・2026年8月確認)
*2 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」相手の前提(2025年4月・2026年8月確認)
*3 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」利用の広さ(2025年4月・2026年8月確認)
*4 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」方針の有無(2025年4月・2026年8月確認)
*5 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」見積りの作法(2026年・2026年8月確認)
*6 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」提案を読む(2026年・2026年8月確認)
*7 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」計画の作り方(2026年・2026年8月確認)
*8 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」決める人(2025年4月・2026年8月確認)
*9 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」引き継ぎの材料(2025年4月・2026年8月確認)
*10 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」評価の軸(2025年4月・2026年8月確認)