インフラエンジニアの案件で任される範囲|自動化と監視を持つ条件の違いを整理
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 案件の範囲が、用意する仕事から動かし続ける仕事へ広がっていることと、そこで自動化がどこまで任されるかの見分け方
- 監視の対象を見直す考え方と、外部サービスの更新にどう備えるかを合わせて確認する方法
- 備えが整っている現場とこれからの現場があることと、受ける前に確かめておきたい順番
サーバーを用意して終わり、という話ではなくなってきました。求められているのは、動かし続けながら整える力です。設定を書いたファイルから環境を作り直し、監視の対象を選び直し、増減する構成に合わせて費用を確かめる。任される範囲は、案件によって大きく変わります。
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1. インフラの案件は用意する仕事から動かし続ける仕事へ
一度作って終わりではなく、稼働後も見直しが続く仕事になっている
「インフラの案件」と聞くと、サーバーやネットワークを整えて引き渡すところまでを思い浮かべる方が多いかもしれません。実際の案件では、環境を渡した後の期間の方がずっと長く続きます。稼働を始めてからも、構成を見直し、無駄を減らし、変化に合わせて調整する作業が続きます。
政府のクラウド利用に関する方針でも、運用の段階に入った後も日々改善していくことを前提に、予算や体制、日程を計画する必要があると挙げられています9。用意する仕事だけでなく、その後の運用まで見込んだ計画が求められているということです。
引き渡した後も終わらないという点は、確認する範囲や向き合う相手が増えることも意味します。稼働してから見えてくる課題に、その都度対応していく場面が増えています。
この変化は、任される仕事の内容だけでなく、日々のやり取りの相手にも表れます。稼働前は依頼主とのやり取りが中心でも、稼働後は現場の担当者と直接やり取りする場面が増えていきます。
構成そのものが自動で変わる前提に置き換わっている
これまでは、あらかじめ大きめの構成を組んでおき、そのまま長く使い続けるやり方が主流でした。最近の案件では、状況に応じて構成が自動で増減する仕組みへの置き換えが進んでいます。
ピーク時を想定した構成を綿密に見積もっておく必要がなく、無駄のない構成へと変わっていくと整理されています5。決められた構成を維持するだけでなく、変わり続ける構成に合わせて調整する役割が増えているということです。
構成が自動で変わることに慣れていないと、想定と違う動きに戸惑う場面も出てきます。仕組みがどう増減するのかを、稼働前に把握しておく姿勢が役に立ちます。
用意する力よりも、動かし続けながら整える力の方が、案件で問われる場面が増えています。次の章では、この変化を支える具体的な方法の一つである、設定を書いたファイルから環境を作るやり方を見ていきます。
2. 設定を書いたファイルから環境を作る
環境を再現できる形にしておく理由
環境を手作業で組み上げると、担当した人にしか手順が分からない状態になりがちです。設定を書いたファイルから環境を作る方法では、手順そのものが文書として残ります。この方法によるインフラ作業の効率化が、政府のクラウド利用に関する方針でも挙げられています1。
同じ環境をもう一度作り直せることは、担当者が変わっても引き継ぎやすいという意味も持ちます。案件によっては、既にある設定を読み解き、必要な変更を加えるところから任される場合もあります。ゼロから設定を書く場面だけでなく、既にある設定を理解して直す場面も含めて、任される範囲は広がっています。
設定を書いたファイルは、環境の設計図のような役割も果たします。中身を読めば、どんな考え方で環境が組まれているのかがたどれるので、案件に入って早い段階で全体像をつかみたいときにも役立ちます。
手作業をどこまで自動に置き換えるか
環境を作るだけでなく、日々の運用作業を自動に置き換えることも、方針の中で徹底することが挙げられています2。同じ作業を人が毎回手作業で行うのではなく、決まった手順を自動で流す仕組みに置き換えていく考え方です。
手作業で都度対応する力よりも、自動化の範囲を見極めて仕組みを整える力の方が、任される範囲を広げます。どこまでを自動にしてよいかの見極めは、案件ごとに任され方が変わる部分です。
自動化を進める過程では、想定外の動きが起きたときにすぐ元に戻せるようにしておく工夫も欠かせません。仕組みを整えるだけでなく、うまくいかなかったときの戻し方まで含めて考える視点が求められます。
手作業中心の運用と、設定ファイルから作る運用を比べる
手作業が中心の運用と、設定ファイルから作る運用とでは、同じ「環境を整える」という仕事でも、日々の進め方が変わります。次の表で、主な違いを比べてみます。
表に挙げた四つの観点は、どれも案件に入った直後に確認しておきたい項目です。今の現場がどちらに近いかを知っておくと、任される作業の見通しが立てやすくなります。
| 観点 | 手作業が中心の運用 | 設定ファイルから作る運用 |
|---|---|---|
| 環境を作る作業 | その都度手順を人が実行する | ファイルの内容から環境を再現する |
| 変更を反映する作業 | 担当者が個別に手を動かす | ファイルを直して同じ手順で流す |
| 手順の残り方 | 担当者の記憶や個人のメモに残る | ファイルそのものが手順として残る |
| 引き継ぎのしやすさ | 前任者への確認が必要になりやすい | ファイルを読めば流れをたどれる |
図の作成:Remogu編集部。役割の重心が移っていく様子を整理したもので、統計データではありません
3. 何を見て異常と判断するか
監視の対象を絞り込む考え方
監視の画面に数値が並んでいても、そのすべてが異常の判断に役立つとは限りません。方針の中でも、監視の対象を見直すことが挙げられています3。対象を絞り込むと、通知の数が減り、本当に確認が必要な変化に気づきやすくなります。
逆に対象を広げすぎると、通知が多くなりすぎて、重要な変化が埋もれてしまいます。案件に入って最初に確認したいのは、今どの対象を監視していて、その対象が何のために選ばれているかという点です。監視の設定を見れば、その現場が何を大事にしているかが見えてきます。
監視の対象を選ぶときは、数値そのものよりも、その数値が何を表しているかを理解しておくことが大切です。意味を理解しないまま対象を減らすと、必要な変化まで見落としてしまうことがあります。
外部のサービス側の更新にどう備えるか
クラウド事業者が管理するサービスは、事業者側の都合で更新されることがあります。方針では、この更新のたびに行う確認テストを最適化することが挙げられています8。確認テストを毎回同じやり方で最初から作り直すのではなく、繰り返し使える形に整えておく考え方です。
更新の頻度が高いサービスほど、この整え方が任される範囲に関わってきます。監視の対象を絞り込む力よりも、更新のたびに何を確認するかを設計する力の方が、長く続く運用では問われやすくなります。
更新の連絡が来てから慌てて確認するのではなく、あらかじめ確認する項目を決めておくと、限られた時間の中でも落ち着いて対応できます。
見直し前の監視と、見直し後の監視を比べる
監視の対象を見直す前と後とでは、日々の確認作業の負担が大きく変わります。次の表で、主な違いを比べてみます。
どの観点も、案件に入ってから実際に触れる場面が多い項目です。今の監視がどちらの状態に近いかを聞いておくと、日々の作業量を見積もりやすくなります。
| 観点 | 見直し前の監視 | 見直し後の監視 |
|---|---|---|
| 監視の対象 | 取得できる数値をすべて対象にする | 異常の判断に必要な対象に絞る |
| 通知の頻度 | 細かい変化にも通知が届く | 確認が必要な変化だけ届く |
| 確認する人の負担 | 通知の量が多く見きれない | 優先度をつけて確認できる |
| 更新時の対応 | そのつど確認手順を組み直す | 決めておいた手順で確認する |
図の作成:Remogu編集部。運用の進め方の違いを整理したもので、統計データではありません
自動化と監視の任され方をRemoguの案件で確かめる →
4. 必要な分だけ増減する構成
ピーク時に合わせた余裕を持たない考え方
これまでは、アクセスが最も多くなる時間帯に合わせて、大きめの構成をあらかじめ用意しておくやり方が一般的でした。方針では、ピーク時を想定した大きな構成を通常時に使わないことが挙げられています4。
普段は必要な分だけの構成で動かし、アクセスが増える時間帯だけ構成を大きくする考え方です。あらかじめ大きな構成を組んでおくよりも、必要な分だけ増減する構成の方が、無駄なく動かせます。
この考え方に沿った構成では、増減の条件をどう決めるかが任される範囲に関わってきます。条件が緩すぎると増減が頻繁になり、条件が厳しすぎると増減が間に合わないこともあります。
増減の条件は、一度決めたら終わりではなく、実際の動きを見ながら調整していくものです。想定より頻繁に増減しているときは、条件そのものを見直す必要が出てきます。
増減する仕組みと利用料の確認をセットにする
構成が自動で増減するようになると、利用料も月ごとに変わりやすくなります。方針では、利用料を定期的に確認することも挙げられています6。増減する仕組みを整えるだけでなく、その結果として利用料がどう動いたかを確認し、条件を見直す作業も含めて任される案件が増えています。
利用料の変化を確認する作業は、数字を眺めるだけでは終わりません。なぜ増えたのか、なぜ減ったのかを構成の変化と照らし合わせて考えることで、次の調整に活かせます。
構成を組む力だけでなく、組んだ結果を確認し続ける力が求められる。これは、この記事全体を通じて繰り返し出てくる考え方です。
5. 夜間のまとめ処理と更新の確認
まとめて処理する仕事の要否を見直す
日中に発生した処理を、夜間にまとめて片づける仕組みを持つ現場があります。方針では、この夜間のまとめ処理の必要性を見直すことが挙げられています7。処理をまとめて夜間に回す理由が薄れている場合、日中に近い時間で処理する形に組み替える案件もあります。
まとめて処理する仕組みをそのまま維持するのではなく、必要性から問い直す視点が求められています。この見直しには、処理の内容だけでなく、処理を待っている人や次の作業への影響も含めて確認する視点が要ります。
見直しの結果、処理の時間帯を変えるだけで済むこともあれば、処理そのものの組み方を変える必要が出てくることもあります。任される範囲は、この見直しがどこまで進んでいるかによって変わってきます。
更新のたびに何を確認しているか
事業者側が管理するサービスが更新されるたびに、動作を確認するテストが必要になります。方針では、この確認テストを最適化することが挙げられています8。確認テストの内容が毎回同じであれば、繰り返し使える形にしておくことで、更新のたびにかかる時間を減らせます。
夜間のまとめ処理を見直す視点と、更新の確認を整える視点は、どちらも「毎回同じ作業を繰り返さない」という点でつながっています。どちらも地味な作業に見えますが、案件に入ってからの日々の負担を大きく左右します。
確認テストの内容を整理しておくと、更新の連絡が来たときに何を確認すればよいかがすぐに分かります。毎回一から考え直す状態から抜け出せます。
夜間のまとめ処理と更新確認の、見直し前後を比べる
夜間のまとめ処理と、更新のたびに行う確認テスト。この二つについて、見直し前と後の違いを表にまとめました。
表の内容は、どちらも「同じ作業を毎回繰り返すかどうか」という観点で整理しています。案件に入る前に、この二つがどちらの状態にあるかを確認しておくと安心です。
| 観点 | 見直し前 | 見直し後 |
|---|---|---|
| 夜間のまとめ処理 | 毎晩同じ時間にまとめて処理する | 必要性を確認し、処理する時間や範囲を見直す |
| 更新時の確認 | そのつど手順を新しく組み立てる | 繰り返し使える手順で確認する |
| 日々の負担 | 決まった作業に時間を取られやすい | 確認する内容が絞られ、負担が減る |
図の作成:Remogu編集部。監視対象の見直しによる変化を整理したもので、統計データではありません
6. 止まったときの備え
備えが整っている現場と、これからの現場がある
障害が起きたときにどう動くか、あらかじめ決めている現場もあれば、まだ決まっていない現場もあります。IPAの調査では、ITのリスク管理と業務継続の計画は、全体の5〜6割程度の企業が整備していると示されています10。
逆に言えば、整備がこれからという現場に入ることも珍しくありません。備えが整っているかどうかを確かめずに案件を受けると、止まったときにどう動けばよいか分からず戸惑う場面が出てきます。
備えの有無は、案件の説明だけでは分かりにくいこともあります。実際に確認するには、過去に止まったときどう対応したかを聞いてみるのも一つの方法です。
備えが整っている現場では、決められた手順に沿って動く役割になります。整っていない現場では、手順を一緒に作っていく役割を任されることもあります。
稼働後の計画に、備えの検討がどう組み込まれているか
運用の段階に入った後も日々改善していくことを前提に、予算や体制、日程を計画する必要があると方針で挙げられています9。この計画の中に、止まったときの備えをどう検討するかも含まれます。
備えを整える作業は、一度決めて終わりではなく、稼働後の計画の一部として繰り返し見直されるものです。案件に入る前に、この見直しがどの頻度で行われているかを確かめておくと、任される範囲がつかみやすくなります。
稼働後の計画を確認するときは、誰がその計画を見直しているのか、どのくらいの間隔で見直しているのかも合わせて聞いておくと、備えの実態がつかみやすくなります。
備えが整っているかどうかよりも、備えを見直す機会が用意されているかどうかの方が、長く関わる案件では意味を持ちます。
止まったときの備えも踏まえた案件をチェックする →
7. 受ける前に確かめる順番
自動化の範囲を確かめる
案件の話を受ける前に、まず確かめておきたいのが自動化の範囲です。運用作業の自動化を徹底することが方針でも挙げられていますが2、その徹底の度合いは案件によって差があります。
どこまでが自動の仕組みで動いていて、どこからが人の手で確認する範囲なのか。この線引きを事前に聞いておくと、稼働してから戸惑う場面を減らせます。
自動化の範囲を聞くときは、今困っている作業があるかどうかも合わせて尋ねてみると、任される範囲の実像がつかみやすくなります。
監視の範囲を確かめる
次に確かめたいのが、監視の対象です。監視の対象を見直すことが挙げられているとおり3、案件によって監視している範囲や、通知が届く条件は異なります。
どの数値を見て異常と判断しているのか、その判断を誰が下しているのかを聞いておくと、任される役割の重さが見えてきます。自動化の範囲と監視の範囲、この二つを確かめる順番を押さえておけば、受ける前の不安の多くは解消できます。
監視の範囲を聞くときは、通知が来たときに自分がどこまで対応するのかも確認しておくと、稼働後の負担を見積もりやすくなります。
二つの範囲を確かめたら、最後に、稼働後の見直しがどんな頻度で行われているかも聞いておくと安心です。夜間のまとめ処理の見直しや、利用料の確認、更新時のテストなど、繰り返し発生する作業がどこまで整理されているかで、日々の負担は変わってきます。
用意する仕事だけでなく、動かし続ける仕事まで含めて、任される範囲を事前に確かめる。この記事で見てきた考え方は、次に受ける案件を選ぶときの手がかりになります。
図の作成:Remogu編集部。確認する順番を整理したもので、統計データではありません
自動化の範囲はどこで確認すればよいですか
案件の詳細や面談の場で、運用作業のどこまでが自動化されているかを聞いておくと安心です2。徹底の度合いは案件によって差があるため、事前の確認が役立ちます。
監視や異常の判断は、どこまで自分で決めてよいのですか
監視の対象は案件ごとに見直されており3、判断の権限も現場によって異なります。まず今の監視対象と、通知が届いたときに誰が判断するのかを確認しておくと役割がつかみやすくなります。
夜間のまとめ処理や更新の確認は、案件によってどのくらい違いますか
夜間のまとめ処理の必要性は、方針の中で見直しの対象として挙げられています7。更新のたびに行う確認テストも、最適化が進んでいるかどうかで負担が変わります8。案件に入る前に、この二つがどこまで整理されているかを聞いておくと安心です。
備えが整っていない現場に入ることもありますか
あります。ITのリスク管理と業務継続の計画は、全体の5〜6割程度の企業が整備している段階です10。整っていない現場では、備えを一緒に作っていく役割を任されることもあります。
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任される範囲の確かめ方が分かれば選びやすくなります。インフラの案件を見てみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」手作業を減らす(2026年・2026年8月確認)
*2 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」人の時間(2026年・2026年8月確認)
*3 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」増えたまま(2026年・2026年8月確認)
*4 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」常時の余裕(2026年・2026年8月確認)
*5 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」見積りの前提(2026年・2026年8月確認)
*6 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」見ることから(2026年・2026年8月確認)
*7 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」時間帯の前提(2026年・2026年8月確認)
*8 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」テストの費用(2026年・2026年8月確認)
*9 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」計画の作り方(2026年・2026年8月確認)
*10 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」止まる備え(2025年4月・2026年8月確認)