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    国・地方ネットワークの共用化で生まれる案件と、移行の実務で問われるスキルの整理

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「調べて道筋を描く」を示す図です。費用と運用まで見る、現行環境を調べる。機能の実装/現行の調査/移行の道筋を並べています。強調しているのは移行の道筋です。ここが中心と添えています。

    📘 この記事でわかること

    • 国・地方ネットワークの共用化によって2030年頃に目指される3つの将来像と、そこに至るまでの検討の経緯
    • 2つの検証で網羅できたゼロトラスト機能と、「一定程度」にとどまった機微な情報の漏えい対策の内容
    • 移行の実務で担う現行環境の調査・移行設計の仕事内容と、経験を単価協議の材料にする考え方

    公共分野のネットワーク構築や移行を担ってきた技術者にとって、「共用化」という言葉は仕事の中身を変える可能性を持っています。デジタル庁は国・地方ネットワークの将来像を示し、2つの検証を通じて何が実現でき、何が課題として残ったのかを公表しました1。本記事では、共用化で変わること、検証で見えた成果と課題、移行の実務が生む案件を順に整理します。ネットワーク基盤や端末環境で積み上げてきた経験が、この案件でどう活きるのかを見ていきます。

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    1. 共用化で何が変わるのか|2030年頃に置かれた3つの将来像

    将来像の柱は「柔軟かつセキュアな提供」

    将来像として最初に挙げられているのは、行政サービスを柔軟かつセキュアに、安定的に提供することです1。止めないことと守ることを同時に求められる環境は、庁内ネットワークやセキュリティ機器の構築に携わってきた技術者にとって馴染み深い課題です。

    もう一つの柱は、ネットワーク基盤の共用化によって効率性を高めることです2。個別の自治体がそれぞれ環境を用意するより、基盤を共有したほうが運用の負担は下がりやすくなります。

    一人一台とテレワークも将来像に含まれる

    3つ目の将来像として、一人一台のPCで効率的に業務ができ、テレワークなど柔軟な働き方が可能になることが挙げられています3。ネットワークの話でありながら、働き方の柔軟さまで将来像に含まれている点は見落とされがちです。

    この3つの将来像は、2030年頃を目途とした新たな国・地方ネットワークの実現に向けた検討の中に位置づけられています4。遠い未来の構想ではなく、すでに検証と議論が進んでいる案件です。

    検討はすでに報告書と重点計画に反映されている

    根拠となっているのは、令和6年5月31日に公表された検討会報告書です5。将来像は思いつきの方向性ではなく、報告書としてまとめられた検討の成果です。案件に関わるときも、この報告書の存在を押さえておくと、発注側の意図を読み違えにくくなります。

    さらに令和7年6月13日には、重点計画として閣議決定されています6。検討段階から政策として位置づけられる段階に進んだということです。次の章では、この将来像を確かめるために行われた2つの検証の中身を見ていきます。

    図1:2030年頃に置かれた3つの将来像
    柔軟かつセキュアな 提供 基盤の共用化による 効率化 一人一台のPCと テレワーク 2030年頃

    出典:デジタル庁「国・地方ネットワーク」をもとに作成

    2. 2つの検証で何を試したのか|国の環境を試す側と、自治体が提案する側

    国のGSS環境をそのまま試す検証

    検証の1つは、既存の国のGSS環境を一括のパッケージとして自治体に試用してもらう内容です7。GSS、つまり国が整備・運用するガバメントソリューションサービスは、高いセキュリティ性を備えた環境として位置づけられています9。自治体が個別に環境を整えるのではなく、国が用意した環境をそのまま使う形が成り立つのかを確かめる検証です。

    GSS環境が対象とする範囲は、端末やセキュリティ対策まで含めた標準的な業務実施環境です10。ネットワークだけを切り出した検証ではなく、日々の業務がその環境の上でどこまで回るのかまで見ている点が特徴です。

    自治体側から提案する検証

    もう1つの検証は、自治体側からゼロトラストアーキテクチャの考え方を導入できるかを提案する形で行われました8。国が用意した環境を試すのではなく、自治体が自らの環境にゼロトラストの考え方をどう組み込めるかを試す検証です。同じ「共用化」というテーマでも、環境を受け取る側の検証と、環境を組み立てる側の検証という2つの方向性があります。

    環境を受け取るか、環境を組み立てるか。この違いは、移行の案件に関わるときの役割にもそのまま重なります。前者は国の標準環境をどう自治体の業務に合わせるかという調整の仕事になりやすく、後者は自治体の現行環境をゼロトラストの考え方でどう再構成するかという設計の仕事になりやすいという違いがあります。

    2つの検証を目的・対象で比較する

    2つの検証を「共用化」という言葉でまとめてしまうと、案件として何が求められているのかが伝わりにくくなります。目的・対象・確かめたことを並べると、国の環境を試す検証と、自治体側から提案する検証とでは、出発点も確かめ方も異なることが分かります。次の表は、この2つの検証を目的・対象・確かめたことの3つの観点で整理したものです。

    検証目的対象確かめたこと
    国のGSS環境を試す検証既存の国の環境を自治体でそのまま使えるか確かめる国が整備・運用するGSS環境9標準的な業務実施環境としての実用性10
    自治体が提案する検証自治体側からゼロトラストの考え方を組み込めるか確かめる自治体の現行環境ゼロトラストアーキテクチャ導入の可否8
    図2:2つの検証の違いと、それぞれで確かめたこと
    国のGSS環境を 試す検証 GSS環境の実用性を確認 自治体が提案 する検証 ゼロトラスト導入の可否を確認

    出典:デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」をもとに作成

    3. 検証で分かったことと、残ったこと|網羅できた機能と「一定程度」の対策

    ゼロトラストの機能は網羅できた

    検証の結果、自治体に求められるゼロトラストセキュリティ機能は網羅できたという結果が示されています11。ネットワーク設計や機器選定に携わってきた技術者からすると、素直に前向きに受け止められる内容です。あわせて、論理分離という方式であっても現行業務の実施は可能であることも確認されています12

    漏えい対策は「一定程度」にとどまった

    一方で、機微な情報に対する情報漏えい対策については、一定程度という結果にとどまっています13。「網羅」という言葉で語られた機能面とは対照的に、漏えい対策は言い切れる段階まで届いていないというのが、この検証の正直な結果です。ここを「有効」と言い換えてしまうと、実際の検証結果よりも前向きに伝えることになってしまいます。

    機能を作る仕事よりも、この「一定程度」をどう詰めていくかという仕事のほうが、これからの案件では重心になっていきます。何が網羅できていて、何が一定程度にとどまっているのかを切り分けて把握できる経験は、移行案件に関わるときの強みになります。

    分かったことと残ったことを整理する

    ここまでの内容を並べると、検証で分かったことは「機能面は網羅できる」「論理分離でも業務は継続できる」の2点、残った課題は「機微な情報の漏えい対策」の1点に集約されます。

    次の表は、検証で分かったことと残った課題を、機能・分離・漏えい対策・端末の4つの観点で整理したものです。端末については次の章で詳しく扱いますが、ここではまず全体像を押さえておきます。

    観点検証で分かったこと残った課題
    ゼロトラストの機能求められる機能を網羅できた11機能面での大きな課題は挙がっていない
    環境の分離方式論理分離でも現行業務の実施は可能12方式ごとの費用差は次章以降の論点になる
    機微な情報の漏えい対策一定程度という結果にとどまった13言い切れる水準までは届いていない
    端末からの業務実施不正アクセス時のアカウント・閉域SIMの無効化を確認14庁舎外・持ち込み端末の可否は次章で扱う
    図3:検証の結果を「網羅できた」と「一定程度」に分ける
    網羅できた ゼロトラスト機能 論理分離での業務継続 一定程度 機微な情報の 漏えい対策

    出典:デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」をもとに作成

    4. 端末と働き方の検証|持ち込み端末や庁舎外からの業務をどう確かめたか

    端末側の安全対策を確認

    端末側の対策としては、不正アクセスが起きた際にアカウントや閉域SIMを無効化する対応が確認されています14。ネットワークの外側をどれだけ固めても、端末という入口が空いていれば意味がありません。

    庁舎外・持ち込み端末からの業務も検証対象

    さらに、BYOD端末、つまりスマートフォンやタブレットといった持ち込み端末からの業務実施が可能かどうかも確認されています15。庁舎の中でしか業務ができない環境から、庁舎の外からでも業務が回る環境へ。この変化は、場所を問わない働き方の実現や業務利便性の向上に資するという整理につながっています16

    端末の検証が案件に意味すること

    端末や庁舎外からの業務まで検証範囲に含まれているということは、移行の案件でも端末とリモートアクセスの設計が切り離せない領域として扱われるということです。ネットワーク機器だけを見てきた経験よりも、端末側のセキュリティ対策まで含めて設計してきた経験のほうが、これからの案件では強みになりやすいといえます。

    庁舎に縛られない働き方を前提にした検証が進んでいるという事実は、リモートでの参画を軸にする働き方にとって追い風になります。次の章では、この検証の先にある段階、つまり基盤だけの共用化という論点に話を進めます。

    5. 次の段階で論点になること|基盤だけの共用化と、比較の軸

    検証はすでに次の予算がついて続いている

    令和8年度以降の検証事業には、令和7年度補正予算として2.0億円が充てられています17。検証は1回で終わる調査ではなく、予算を伴って継続していく取り組みだということです。

    基盤だけの共用化という新しい論点

    次の段階として、GSSネットワーク基盤のみの共用化に関する技術面などの実現可能性が検証される予定です18。これまでの検証が「環境全体」を対象にしていたのに対し、この論点は「基盤だけ」を切り出して共用化できるかを問うものです。全体を動かす仕事よりも、基盤という一段深い層の設計に踏み込む仕事が生まれるということです。

    基盤だけを切り出すという発想は、全体を一括で移行するよりも技術的な難易度が上がる場面が出てきます。ネットワーク基盤の構成や依存関係を正確に把握できる経験は、この論点が案件化したときにそのまま強みになります。

    実現案は複数の軸で比較される

    候補となる実現案は、機能・コスト・運用体制・自治体メリットなどの観点から比較検討されます19。機能面がそろっているだけでは案件は決まらず、コストと運用体制まで含めた比較が行われるということです。技術的な実現性だけを語れる経験よりも、コストや運用体制まで踏み込んで説明できる経験のほうが、この比較の場面では評価されやすくなります。

    次の図は、この比較の軸と、移行に向けて必要になる調査を並べたものです。図を見ながら、次の章で移行の実務そのものに話を進めます。

    図4:比較の軸と、移行で必要になる調査
    機能 コスト 運用体制 移行に向けた現行環境の調査

    出典:デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」をもとに作成

    6. 移行の実務が案件の中心になる|現行環境の調査から道筋を描くまで

    現行環境の調査が最初の仕事になる

    移行に向けては、自治体の現行環境を調査し、移行プロセスを通じて課題を洗い出す作業が必要になります20。新しい環境を作る仕事というよりも、今ある環境を正確に把握し直す仕事が最初に来るということです。現行環境の構成やドキュメントを読み解き、抜けている情報を洗い出せる経験は、この段階でそのまま活きます。

    機能を新しく作る仕事よりも、現行環境を調べて道筋を描く仕事のほうが、これからの案件では中心になっていきます。

    導入コストへの懸念が案件の背景にある

    自治体側からは、導入コストへの懸念や、財政措置などの検討を求める意見が挙がっています21。共用化によって効率化が期待される一方で、実際に導入する側の負担感は無視できないということです。コストへの懸念を理解したうえで提案できる経験は、単なる技術説明より一歩先の価値になります。

    さらに、為替や物価の変動によるライセンス料やサービス利用料の高騰への懸念も挙がっています22。技術面の話だけでなく、費用が将来どう動くかという視点まで含めて説明できることが、移行の提案では求められます。技術と費用、両方の言葉で話せる経験のほうが、片方だけの経験より案件では評価されやすくなります。

    現行環境の調査から道筋を描くという仕事

    これからの案件は「新しい機能を作る仕事」ではなく、「現行環境を調べて、移行の道筋を描く仕事」が中心になっていきます。ネットワーク構築や端末環境の整備で積み上げてきた経験は、この道筋を描くための材料そのものです。次の表は、現行環境の調査・移行設計・端末とセキュリティという3つの関わり方について、求められる経験と単価の考え方を整理したものです。

    関わり方求められる経験単価を協議するときの考え方
    現行環境の調査既存のネットワーク構成やドキュメントを正確に読み解く経験20抜けている情報や課題を洗い出す精度が評価の材料になる
    移行設計機能・コスト・運用体制を横断して比較検討を進めた経験19技術説明だけでなくコスト面まで含めて話せることが材料になる
    端末とセキュリティ端末側の対策やリモートアクセスの設計に携わった経験14庁舎外からの業務を前提にした設計経験が材料になる

    7. リモートでの進め方と、よくある質問

    リモートでの進め方は経験の棚卸しから

    これからの案件は現行環境の調査から移行の道筋を描く仕事が中心になっていきます。ネットワーク構築や端末環境の整備、庁舎外からの業務を見据えた設計まで、公共分野に限らず積み上げてきた経験は、そのまま材料になります。まず取り組みたいのは、これまでの仕事のどの部分が現行環境の調査や移行設計に近いのかを棚卸しすることです。

    Remoguでは、案件の90%以上がフルリモート可能です。場所に縛られず、これまで培ってきたネットワークや端末環境の知見を活かせる案件を探せる環境が整っています。まずは登録して、自分の経験に近い条件の案件がどれくらいあるかを確かめてみることが、次の一歩になります。

    共用化の検証に関わった自治体でなければ、この案件には参加できませんか

    検証に直接関わった自治体かどうかは、案件への参加条件にはなりません。将来像や検証結果は公表された内容であり、そこから移行の実務にどう関わるかは、自治体やプロジェクトごとに異なります。大切なのは、ネットワーク基盤や端末環境をどれだけ正確に把握し、移行の道筋を描けるかという経験そのものです。まずは自分の経験を整理し、Remoguで自分に近い条件の案件を探してみることが、次の一歩になります。

    ネットワーク設計の経験はあるが、公共分野の実務経験がない場合でも案件に関われますか

    公共分野の実務経験がなくても、ネットワーク基盤の構成把握や、端末とセキュリティ対策の設計といった経験そのものは、この領域の案件でも土台になります。検証で確認されたのは、論理分離での業務継続12や、端末側の不正アクセス対応14など、ネットワーク・端末に関わる技術者であれば見覚えのある内容です。

    分野の壁よりも、現行環境を正確に読み解ける力や、端末まで含めて設計できる経験のほうが評価の材料になります。まずはRemoguに登録し、これまでの経験がどんな案件で活かせそうか、掲載されている案件から確かめてみましょう。

    リモートで公共分野の移行案件に参画するとき、費用面の話にも対応する必要がありますか

    移行の提案では、機能面だけでなくコストや運用体制まで含めた比較検討が行われます19。導入コストへの懸念や、利用料の高騰への懸念も自治体側から挙がっているため21、技術の説明だけで完結しない場面は起こり得ます。ただし、費用面の判断そのものは発注者側や関係者との協議で決まるものであり、技術者が一人で背負う話ではありません。

    技術とコスト、両方の視点を持って説明できる経験は、単価を協議する場面でも強みになります。まずは自分の経験を言葉にして、Remoguでどんな条件の案件と出会えるかを確かめてみることをおすすめします。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 デジタル庁「国・地方ネットワーク」将来像1(2026年3月)
    *2 デジタル庁「国・地方ネットワーク」将来像2(2026年3月)
    *3 デジタル庁「国・地方ネットワーク」将来像3(2026年3月)
    *4 デジタル庁「国・地方ネットワーク」時間軸(2026年3月)
    *5 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」根拠1(2026年3月)
    *6 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」根拠2(2026年3月)
    *7 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」検証1(2026年3月)
    *8 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」検証2(2026年3月)
    *9 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」GSSの位置(2026年3月)
    *10 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」環境の範囲(2026年3月)
    *11 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」検証の結果(2026年3月)
    *12 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」分離の扱い(2026年3月)
    *13 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」残った課題(2026年3月)
    *14 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」端末の対策(2026年3月)
    *15 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」働き方の検証(2026年3月)
    *16 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」効果の整理(2026年3月)
    *17 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」予算の規模(2026年3月)
    *18 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」次の論点(2026年3月)
    *19 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」比較の軸(2026年3月)
    *20 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」移行の実務(2026年3月)
    *21 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」自治体の声(2026年3月)
    *22 デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」費用の懸念(2026年3月)