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    オンライン申請が使われない理由と業務見直しから始める設計

    「業務が変わっていない」を示す図です。業務の流れ/申請の画面/周知の働き掛けを並べています。強調しているのは業務の流れです。先に直す所と添えています。

    📘 この記事でわかること

    • eMAFFのオンライン利用率が令和2年度時点で0.3%にとどまっている実態と、その調査が18制度を対象に行われた範囲
    • 負担軽減が図られると考えられる手続が38事例として整理されていることと、業務改革を先に行う順番の考え方
    • 働き掛けや組織体制について確認する項目と、エンジニアが案件に関われる範囲・案件の探し方

    行政手続のオンライン申請の画面は、この数年で相次いで整備されてきました。それでも総務省の調査では、農林水産省の共通申請サービス「eMAFF」の令和2年度のオンライン利用率が0.3%にとどまり、利用状況は低調で抜本的な見直しが予定されていることが分かりました1。画面を作ることと、使われる仕組みにすることは別の作業だと、この数字が示しています。案件に入るエンジニアが要件定義の前に確認しておきたいのは、この差がどこで生まれるかという業務側の設計です。

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    1. 作ったのに使われない、が数字で残っています

    画面はあります

    行政手続のオンライン申請は、この数年で急速に整いました。入力画面や添付書類のアップロード機能まで用意した制度も増えています。仕組みとしては、申請者が窓口に足を運ばなくても手続きを終えられる状態にあります。

    ところが総務省の調査は、この「できる状態」と「使われている状態」が同じではないことを数字で示しています。農林水産省の共通申請サービス「eMAFF」は、令和2年度のオンライン利用率が0.3%にとどまり、利用状況は低調で抜本的な見直しが予定されています1

    画面があることと、そこへ実際に申請が集まることの間には距離があります。この距離がどこで生まれているかを捉えることが、業務見直しの出発点になります。

    使われているかどうかは別の話です

    eMAFFは、行政手続等のオンライン申請を可能にする共通申請サービスとして整備・運用されています4。整備そのものは着実に進んでいます。

    整備が進んでいるかどうかよりも、利用が進んでいるかどうかのほうが、要件定義の入り口では重みを持ちます。仕組みを作った後に誰が使うかを見落とすと、同じずれが繰り返されます。

    図表1は、オンライン申請ができる状態と、実際に使われている状態のずれを示しています。この差がどこにあるかを最初に捉えることが、案件に入るときの最初の確認事項になります。

    図1:オンライン申請できる状態と、使われている状態のずれ
    オンライン申請できる状態と使われている状態のずれ オンライン申請が できる状態 画面や添付書類の アップロード機能を整備 実際に使われている 状態 0.3% 令和2年度のeMAFF利用率 ここにずれがある

    出典:総務省「行政手続のDX推進に関する調査」(2026年7月)をもとに作成

    2. 調査は18制度を対象にしています

    対象を絞った理由

    総務省の調査は、農林水産関係の行政手続について、申請に係る実態や課題を把握し、行政手続のDX推進に役立てるため、18制度を対象に実施されました2

    対象が明確になっていることは、案件に入るエンジニアにとって見落としやすい前提です。すべての行政手続を横断して調べたわけではなく、範囲を区切って深く見ています。

    範囲が分かっているからこそ、その中のどこに共通した課題があるかを比較できます。範囲を区切ることは精度を落とす作業ではなく、比較を可能にする設計です。

    対象が分かっていることの意味

    図表2は、この調査が対象にした18制度の広がりを示しています。個々の制度名までは公開情報の範囲を超えるため触れませんが、対象がまとまっていること自体が、この後の38事例の話につながります。

    図2:調査の対象範囲(18制度)
    調査の対象範囲は18制度 調査の対象範囲 18制度 123456 789101112 131415161718

    出典:総務省「行政手続のDX推進に関する調査」(2026年7月)をもとに作成

    案件で要件を確認するときも、対象範囲がどこまでかを最初に確かめる姿勢は同じです。範囲を曖昧にしたまま進めるよりも、対象を先に区切ってから中身に入るほうが、後戻りが少なくなります。

    18制度という数字は、調査の粒度を示す手がかりです。次の章で扱う38事例は、この18制度の中から見えてきた、見直しが期待される具体例です。

    3. 負担軽減が図られる手続は38事例あります

    見直しが期待される事例として整理されている

    調査の結果、業務フローやシステムの見直しにより、申請者・審査者の負担軽減が図られると考えられる行政手続が38事例見つかりました3

    これらは「見直しが期待される事例」として整理され、他の制度に横展開できるようまとめられています3

    38という数字が示しているのは、課題の多さではなく、直せる場所が具体的に分かっている数です。要件定義の前にこの一覧を確認すれば、どこから手を付けるかを議論する材料になります。

    表1が示す扱い方

    表1は、この38事例がどう扱われているかを整理したものです。件数・対象・整理のされ方・使いみちの四つの観点でまとめています。

    項目内容
    件数38事例
    対象業務フローやシステムの見直しにより、申請者・審査者の負担軽減が図られると考えられる行政手続
    整理のされ方「見直しが期待される事例」として整理
    使いみち他の制度への横展開

    一つひとつの事例の中身までは公開情報の範囲を超えますが、対象が「業務フローやシステムの見直し」である点は共通しています。仕組みを直す前に、まず業務の流れを見直す発想が土台にあります。

    案件に入るエンジニアにとって、この38事例は「作る前に何を疑うか」の一覧に近い存在です。要件通りに画面を作ることよりも、その要件が業務の実態に合っているかを確かめることのほうが、手戻りを防ぎます。

    4. 順番は「業務改革の上でデジタル技術」です

    先に業務改革、その上でデジタル技術

    報告書は、業務改革に取り組んだ上で、デジタル技術を活用した行政サービスの効率化と利便性向上を図り、DXを推進することが不可欠だとしています5

    ここで示されている順番は、デジタル技術が先ではなく、業務改革が先だという点です。画面や機能を用意することは、業務改革の後に来る工程として位置づけられています。

    この順番を飛ばして技術の導入から始めると、既存の業務のやり方をそのまま画面に写しただけになりやすく、結局は使われない仕組みが残ります。図表1で見た0.3%という数字は、この順番の逆転が起きたときに現れる姿の一つと言えます。

    案件で置き換えるとどうなるか

    図表3は、この順番を業務改革からデジタル技術活用へと並べたものです。

    図3:業務改革からデジタル技術活用への順番
    業務改革からデジタル技術活用への順番 1 業務改革に 取り組む 2 デジタル技術を 活用する 3 効率化・利便性 向上を図る

    出典:総務省「行政手続のDX推進に関する調査」(2026年7月)をもとに作成

    案件で要件を受け取るときも、この順番を意識しておく余地があります。仕様書に書かれた機能を実装することよりも、その機能が業務改革のどの段階に位置するかを確かめることのほうが、後の手戻りを減らします。

    業務改革を経ていない要件は、途中で仕様が変わることがあります。この順番を早い段階で意識しておくと、要件の変更にも落ち着いて対応しやすくなります。

    5. 使われるかどうかは、働き掛けと効果を分けて見ます

    三つの指標を分けて見る

    報告書は、オンライン申請の利用を推進する取組を、働き掛けの状況・利用状況・効果の発現状況という三つの観点に分けて整理しています7

    この三つは似ているようで、確かめる中身が違います。働き掛けの状況は周知や案内をどれだけ行っているかを、利用状況は実際にオンラインで申請された広がりを、効果の発現状況は見直しによる効果が表れているかを、それぞれ別に見る観点です。

    一つの指標だけで「使われているかどうか」を判断すると、原因を取り違えます。周知は十分でも利用が伸びない場合と、周知そのものが行き渡っていない場合とでは、次に打つ手が変わります。

    分けて見る効果

    表2は、この三つの指標が何を確認するためのものかを整理したものです。

    指標何を確認するか
    働き掛けの状況周知や案内をどれだけ行っているか
    利用状況実際にオンラインで申請された広がり
    効果の発現状況見直しによる効果が表れているか

    案件で要件を確認するときも、指標を一つにまとめて語るよりも、三つを分けて確認するほうが、どこに手を入れる提案かが明確になります。

    三つの観点を分けて見る発想は、要件定義の場面でそのまま使えます。周知の課題なのか、機能の課題なのか、効果測定の設計そのものが甘いのかを、最初に切り分けておくと、提案の的が絞れます。

    6. 組織体制の側にも確認する項目があります

    技術だけでなく体制も見られている

    報告書は、手続のDX推進のための組織体制の状況も確認しています8。技術的な仕組みだけでなく、それを動かす体制の側にも目が向けられています。

    ユーザーニーズの把握状況やプロジェクトの監理は、この組織体制の確認に含まれる項目です8。画面の使い勝手を良くする工夫よりも、そもそも使う人のニーズを把握できているかどうかのほうが、根本的な確認事項になります。

    体制が整っていない状態で技術だけ導入すると、運用が始まった後に誰がニーズを拾うのかが曖昧になります。組織体制の確認は、技術導入の前提条件を確かめる作業です。

    四つの確認項目

    図表4は、組織体制の側で確認される項目を、働き掛け・進捗・ユーザーニーズ・監理の四つに分けて示しています。

    図4:組織体制の確認項目(働き掛け・進捗・ユーザーニーズ・監理)
    組織体制の確認項目 組織体制の 確認 働き掛け 進捗 ユーザーニーズ 監理

    出典:総務省「行政手続のDX推進に関する調査」(2026年7月)をもとに作成

    案件に入るエンジニアが技術面だけを見ていると、この体制側の項目は見落とされがちです。仕様を実装する立場であっても、体制側の状況を尋ねておくと、後の運用フェーズでの手戻りを避けやすくなります。

    技術と体制は別々に動いているものではなく、同じ取組の両輪です。次の章では、この構造の中でエンジニアがどこまで関われるかを見ていきます。

    7. エンジニアが関われる範囲と、案件の探し方

    業務見直しが前提にある

    報告書全体の章立ては、オンライン利用の前提となる業務見直しを一つの柱としています6。技術の話に入る前に、業務そのものが見直されているかを確認する構成になっています。

    要件定義から関わる案件では、この前提を確認する役割が求められる場面があります。画面設計や実装だけでなく、「この業務フローは見直された上での要件か」を問い直す立場です。

    業務見直しが済んでいない要件をそのまま実装すると、図表1で見た0.3%のような結果を繰り返す恐れがあります。技術力だけでなく、業務の背景を確かめる姿勢が、この分野の案件では評価されやすくなります。

    関われる範囲を自分の言葉にする

    表3は、案件に関わる立場ごとに、確認しておきたい項目を整理したものです。

    立場確認しておきたい項目
    要件定義を担当する立場業務フローが見直された上での要件かどうか
    画面・システムを設計する立場オンライン利用の前提となる業務見直しの有無
    案件を探す立場案件の90%以上がフルリモート可能です9

    案件を探すときは、行政のDXや業務改革に関わる案件がどこにあるかを知ることが最初の一歩になります。Remoguは、リモートで働くエンジニアと案件をつなぐマッチングサービスで、案件の90%以上がフルリモート可能です9

    自分の経験が、要件定義の前段階に関われる案件に合うのか、実装フェーズが中心の案件に合うのかは、案件によって異なります。まずは自分の経験に近い案件がどのようなものか、確かめてみることから始められます。

    利用率が低いのは周知が行き届いていないからなのか、業務が合っていないからなのか

    報告書は、働き掛けの状況・利用状況・効果の発現状況を分けて整理しています7。周知の課題なのか、業務フロー側の課題なのかは、この三つを個別に確認しないと切り分けられません。一つの理由に決めつけず、指標ごとに確認する見方が土台になります。

    業務見直し(BPR)は誰が担い、エンジニアはどこから関わるのか

    報告書は業務改革に取り組んだ上でデジタル技術を活用する順番を示しています5。業務見直しそのものは業務側が主導する場面が多いものの、エンジニアは要件定義の前段階からこの順番を確認する立場で関わることができます。

    横展開できる事例はどう扱われるのか

    見直しが期待される38事例は、他の制度への横展開を想定して整理されています3。個別の制度名を超えて、共通する見直しの型として参照できる位置づけです。

    使われているかどうかは何で測るのか

    報告書は働き掛けの状況・利用状況・効果の発現状況という三つの観点で確認しています7。オンライン利用率だけでなく、周知の広がりや見直しの効果まで含めて測る発想です。

    業務見直しの背景を理解した上で案件に向き合うと、要件の裏側にある狙いが見えやすくなります。まずはRemoguで、自分の経験が活きる案件がどのようなものか、確かめてみることから始めてみましょう。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 総務省「行政手続のDX推進に関する調査」行政評価局 農林水産関係 結果に基づく勧告・通知(令和8年7月31日)(2026年7月)
    *2 総務省「行政手続のDX推進に関する調査」行政評価局 農林水産関係 結果に基づく勧告・通知(令和8年7月31日)(2026年7月)
    *3 総務省「行政手続のDX推進に関する調査」行政評価局 農林水産関係 結果に基づく勧告・通知(令和8年7月31日)(2026年7月)
    *4 総務省「行政手続のDX推進に関する調査」行政評価局 農林水産関係 結果に基づく勧告・通知(令和8年7月31日)(2026年7月)
    *5 総務省「行政手続のDX推進に関する調査」行政評価局 農林水産関係 結果に基づく勧告・通知(令和8年7月31日)(2026年7月)
    *6 総務省「行政手続のDX推進に関する調査」行政評価局 農林水産関係 結果に基づく勧告・通知(令和8年7月31日)(2026年7月)
    *7 総務省「行政手続のDX推進に関する調査」行政評価局 農林水産関係 結果に基づく勧告・通知(令和8年7月31日)(2026年7月)
    *8 総務省「行政手続のDX推進に関する調査」行政評価局 農林水産関係 結果に基づく勧告・通知(令和8年7月31日)(2026年7月)
    *9 Remoguサイト公開情報(フルリモート可能案件の割合)