ダッシュボードが使われないのはなぜ?目的から設計する可視化の作り方

📘 この記事でわかること
- 使われないダッシュボードに共通する「目的があいまい」という原因と、それを見極めるための最初の問いの立て方
- 載せる情報を絞り込む判断基準と、グラフを比較・推移・割合の目的別に使い分ける考え方の整理
- 試作をフィードバックで磨く進め方と、その設計の経験が案件でどのように評価される材料になるか
案件で任されたダッシュボードが、公開してから誰にも開かれていない。原因は機能ではなく、目的の設計にあります。何のために何を見せるのかを最初に決めれば、載せる情報の絞り込みもグラフの選び方も、後から自然に決まります。この記事では、デジタル庁の実践ガイドブックをもとに、使われるダッシュボードを目的から設計する手順を整理します。
1. 使われないダッシュボードは、目的が曖昧です
公開した直後は開かれても、数週間後にはアクセスが止まる。心当たりがあるなら、原因は表示の見た目ではなく、設計の起点にあります。グラフや表をひととおり並べれば完成だと考えがちですが、そこにずれが生まれます。
よくあるのは、依頼された指標をひとつずつ画面に置いていくやり方です。指標そのものは正しくても、並べただけでは意思決定にはつながりません。むしろ指標の数が増えるほど、どこを見ればよいか分からなくなるという逆の効果すら起こります。
ダッシュボードは意思決定の質を上げ行動につなげるためのもの
ダッシュボードは、データをわかりやすく可視化することで意思決定の質を高め、より良い行動につなげるためのものです1。見せることそのものが目的ではなく、判断につながることが目的だと分かると、次に決めるべきことが変わってきます。
グラフの美しさや情報量の多さは、この目的の達成度とは直接結びつきません。むしろ、目的が定まらないまま項目を足していくと、誰の判断にも刺さらない画面ができあがります。目的を一文で言葉にできるかどうかが、最初の分かれ目になります。
目的を一文にできないまま作り始めると、後から関係者に説明を求められたときに答えに詰まります。先に目的を言葉にしておけば、途中で仕様が揺れても、立ち戻る基準として使えます。
利用者の判断や行動に必要な情報を起点にする
では何を載せるかは、誰が何を見て、どう動くのかから逆算します。レビューの観点では、利用者が判断や行動に必要な情報を届けられているかを確認します2。見た目の情報量よりも、利用者が動けるかどうかのほうが、判断材料としての価値を持ちます。
ここを起点に置くと、載せる指標も並び順も、後工程で迷わなくなります。逆に、この起点を飛ばして画面設計から入ると、後から「なぜこの数字が必要なのか」を説明できず、項目を削れないまま情報が積み上がっていきます。
利用者ごとに必要な情報が違う場合は、無理に1画面へまとめようとせず、利用者の役割ごとに見る範囲を分けるという選択肢も生まれます。全員に同じ画面を見せることが、公平とは限りません。
設計で最初に決めておきたいことを、表1に整理しました。目的が定まっていないダッシュボードは、後から手を入れても項目が増える一方になりがちです。誰のためのものかを言葉にし、判断の場面と行動の選択肢まで先に整理しておくと、載せる情報の取捨選択に迷いにくくなります。
まず決めるのは、目的と利用者です
| 決めること | 具体的な問い | 決まらないとどうなるか |
|---|---|---|
| 目的 | このダッシュボードで、何を判断し、どう行動したいのか | 表示のための表示になり、使われなくなる |
| 利用者 | 誰が、どの場面で見るのか | 全員向けの総花的な画面になる |
| 判断の基準 | 何を見たら、次の一手が変わるのか | 情報はあるのに、決められない画面になる |
| 更新の頻度 | いつの情報を、どのくらいの間隔で見せるのか | 古い情報のまま判断してしまう |
図の作成:Remogu編集部。デジタル庁「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」の考え方を整理したもので、統計データではありません
目的が定まると、どの指標を残すかという判断は、担当者の好みではなく、利用者が実際にどう動くかという事実に基づいて下せます。ここまでを言葉にできれば、次の絞り込みの工程に進む準備が整います。
目的と利用者の起点が決まれば、次に迷うのは載せる情報の量です。ここを絞れるかどうかで、ダッシュボードの使われ方は大きく変わります。
2. 載せる情報は、利用者の判断に必要なものだけに絞る
目的が決まると、次に手が伸びるのは「念のため載せておく」項目です。ここで絞り込みを怠ると、せっかく定めた目的がぼやけてしまいます。
本当に必要な情報だけに絞り込む
レビューでは、本当に必要な情報だけに絞り込めているかを確認します3。載っている情報が多いほど信頼できる画面に見えるという感覚は、実際の使われ方とは一致しません。
指標を足すたびに、利用者は「これも見るべきか」を判断する手間を負います。項目数を増やすことよりも、判断に効く項目を残すことのほうが、画面全体の価値を左右します。
「とりあえず全部の指標を出しておく」設計は、載せる根拠の説明を後回しにする選択でもあります。載せる指標が増えるほど、なぜそれが必要かを問われたときの答えも増えていきます。
盛りすぎると判断が遅くなる
情報を盛り込みすぎた画面では、利用者はまず「どこを見ればよいか」を探すところから始めます。この探す時間が、本来の判断や行動に使う時間を押し出してしまいます。
絞り込みは、削ることに不安を伴う作業です。それでも、目的と利用者が明確であれば、残す項目の理由を説明できます。説明できない項目は、載せる根拠がまだ弱いというサインとして扱えます。
削ってよいか判断に迷うときは、その指標が無くなったら困る利用者が具体的に思い浮かぶかどうかを基準にできます。特定の顔が浮かばない指標は、いったん外して試作を進める判断がしやすくなります。
公開後にアクセスの少ない項目を定期的に見直す習慣を持てると、絞り込みは一度きりの作業ではなく、運用の一部として続けられます。指標は作った時点で固定するものではなく、利用者の行動の変化に合わせて見直していくものです。
図の作成:Remogu編集部。デジタル庁「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」の考え方を整理したもので、統計データではありません
情報を絞れたら、次はその情報を何のグラフで見せるかという設計に移ります。同じ数値でも、グラフの選び方ひとつで伝わり方は変わります。
3. グラフは、見せたいことに合わせて選ぶ
絞り込んだ情報を並べる段になると、今度は「どのグラフにするか」で手が止まりがちです。ここも好みではなく、見せたいことから逆算できます。
グラフの種類と選び方・設計の原則
情報表現の章では、グラフの種類と選び方や、グラフ設計の原則が整理されています4。見た目の華やかさよりも、伝えたい関係が正しく読み取れるかどうかのほうが、選定の基準になります。
同じ数値であっても、比較を見せたいのか、変化を見せたいのか、全体に対する割合を見せたいのかで、選ぶべきグラフは変わります。目的を決める段階で答えた問いに、そのままつながる選び方です。
グラフの種類を先に決めてから見せたい内容を当てはめようとすると、逆に無理が生じます。目的から見せたい関係を言葉にし、それに合うグラフを後から選ぶという順番を崩さないことが、遠回りに見えて近道になります。
比較・推移・割合で使い分ける
数値の大小を比較したいのか、時間による変化を追いたいのか、全体に対する内訳を示したいのかを先に言葉にすると、迷いなくグラフの向きが決まります。目安を表2に整理しました。
迷ったときは、複数の目的を1枚のグラフに詰め込もうとしていないかを疑ってみます。比較と推移を同時に見せようとして、どちらも中途半端になっている画面は珍しくありません。
1枚のグラフに欲張らず、比較を見せる画面と推移を見せる画面を分けるだけで、どちらも格段に読み取りやすくなります。画面数が増えることを恐れず、目的ごとに分けるという選択肢も持っておけます。
見せたいことで、選ぶグラフは変わります
| 見せたいこと | グラフの向き | 例 |
|---|---|---|
| 数値の大小を比較したい | 高さや長さで差を示す | 部門ごとの件数の違いを並べて見せる |
| 時間による変化を見たい | 横軸に時間を置き、線や面で示す | 週ごとの推移を追う |
| 全体に対する比率を見せたい | 全体を分けて内訳を示す | 構成比の違いを見せる |
この目安は、グラフの正解を決めるものではなく、選ぶ理由を説明できるようにするための土台です。理由を言葉にできれば、後からの変更にも迷わず対応できます。
図の作成:Remogu編集部。デジタル庁「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」の考え方を整理したもので、統計データではありません
グラフの向きが決まったら、それで終わりではありません。実際に利用者に見てもらい、伝わり方を確かめる工程が残っています。頭の中で完成度を判断するよりも、実物を見せて反応を確かめるほうが、次に直したい点がはっきりします。
4. 試作とフィードバックで磨く
目的を決め、情報を絞り、グラフを選んでも、初回の設計がそのまま正解になることはめったにありません。ここから先は、直しながら精度を上げる工程です。
プロトタイプで利用者や関係者からフィードバックを得て改善
プロトタイプを用いて利用者や関係者からフィードバックを得て、改善を重ねます5。完成形をいきなり作り込むよりも、粗い試作を早く見せることのほうが、方向のずれに早く気づけます。
フィードバックの内容は、機能の要望だけとは限りません。「この数字を見ても、次に何をすればよいか分からない」という声こそ、目的の設計に立ち戻る合図になります。
試作の段階でよく出るのは、「これは自分に関係がある数字か」という声です。この声が出ること自体が、目的や利用者の範囲を絞り込めているかどうかの点検になります。
一度で完成させない
一度で完成させようとすると、確認のための確認が増え、公開のタイミングを逃しがちです。荒くても目的に沿った試作を早く出し、反応を見ながら削って整えるほうが、結果として使われる画面に近づきます。
小さく見せて直すサイクルを重ねるほど、公開後に大きな作り直しが発生する可能性は下がります。早い段階で気づいたずれほど、直す手間は小さく済みます。
公開前に確かめておきたい観点を、表3に整理しました。作り手の視点だけで見返すと、分かりやすさの欠けに気づきにくいものです。
公開前に、利用者の体験を確かめます
| 確認する観点 | 具体的な問い |
|---|---|
| 初見での理解 | 何も説明せずに見せて、意味が伝わるか |
| 判断への接続 | 見た後に、次の一手が思い浮かぶか |
| 情報の過不足 | 消したい項目はないか、逆に欲しい項目はないか |
| 更新後の見え方 | 期間や条件を変えても、崩れずに読めるか |
表3の観点は、公開の直前だけでなく、機能を追加するたびに見返す価値があります。都度立ち戻ることで、絞り込んだはずの画面が、いつの間にか再び膨らんでいくことを防げます。
図の作成:Remogu編集部。デジタル庁「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」の考え方を整理したもので、統計データではありません
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目的から設計し、絞り込み、試作で磨く。この一連の流れを自分の言葉で説明できることは、画面を作る技術と同じくらい、案件で任される材料になります。
5. データ可視化を設計できる人が、案件で任されます
操作の得意さよりも、目的から設計を組み立てられる経験のほうが、案件で評価されます。グラフツールの使い方は現場ごとに違っても、目的を決め、絞り込み、試作で磨くという順番は共通しているからです。
この順番を自分の言葉で説明できると、初めて参画する現場でも、最初の打ち合わせから的を絞った質問ができます。何を目的にした画面かを最初に確かめる姿勢は、経験の浅さを補う材料にもなります。
目的から設計し改善を回せる人は任されやすい
「なぜこの数字を見せるのか」を言葉にできる人は、クライアントとの協議でも話がかみ合います。作り直しの指示を待つのではなく、目的に立ち戻って自分から改善案を出せることが、任される範囲を広げます。
この記事で整理した「目的を決める」「絞り込む」「試作して直す」という順番は、特定のツールの操作より息が長い経験です。プロジェクトが変わっても、そのまま持ち運べます。
案件によっては、既存のダッシュボードを引き継ぎ、使われていない理由を診断する役割を任されることもあります。そこでも、目的から問い直すという同じ手順が土台になります。
リモート中心でも設計は示せる
目的の整理やフィードバックの反映は、対面でなければ進められない作業ではありません。試作を共有し、コメントで意見を集め、直して見せ直す進め方は、場所を選ばずに続けられます。
Remogu(株式会社LASSIC運営)では、案件の90%以上がフルリモート可能です6。データ活用や可視化に関わる案件でも、場所に縛られずに参画できる環境を選べる余地があります。
気になる案件を見つけたら、その場でエントリーを決める前に、まず登録して自分の経験に合う条件を確かめられます。設計の考え方を言葉にできる経験は、案件の選び方そのものを広げてくれます。
登録は条件を見比べるための入り口であって、その時点で参画先を決める必要はありません。今の経験がどの案件で活かせるかを、実際の条件と照らして確かめてから、次の一歩を選べます。
自分に合う条件を確かめてから、まず登録する →
6. まとめ
使われるダッシュボードは、見た目の完成度ではなく、目的の明確さから生まれます。画面をきれいに整えることに時間を使うより、目的を一文で言い切れるかどうかに時間を使うほうが、結果として使われる設計に近づきます。この記事で整理した流れを振り返ります。
- 意思決定の質を上げ、行動につなげるという目的を最初に言葉にする
- 利用者の判断や行動に必要な情報だけに絞り込む
- 比較・推移・割合など、見せたいことに合わせてグラフの向きを選ぶ
- プロトタイプを利用者や関係者に見せ、フィードバックを受けて改善を重ねる
この順番で設計を組み立てられることは、画面を作る技術そのものと同じくらい、案件で任される理由になります。まずは自分の経験に近いデータ活用・可視化の案件がどのような条件で並んでいるかを見比べ、登録して条件を確かめるところから始められます。
7. よくある質問
ダッシュボードを設計するとき、まず何を決めればよいですか
最初に決めるのは画面の見た目ではなく、誰が何を判断し、どう行動するために見るのかという目的です。目的が言葉になっていないと、載せる情報もグラフの選び方も基準を失います。表1の4項目を先に埋めることから始められます。特に、利用者が「何を見て、何をするか」を一文で説明できるまで言葉にしておくと、後工程の絞り込みで基準がぶれません。
情報はどこまで載せればよいですか
目的に照らして、利用者の判断や行動に直接必要な情報だけに絞り込みます。載せるかどうか迷う項目は、いったん外して試作を見せ、反応を見てから足し戻すほうが、絞り込んだ状態を保ちやすくなります。「念のため」で残した項目ほど、後から削りにくくなります。載せる前に、その項目が無いと困る利用者を具体的に思い浮かべる習慣が役立ちます。
グラフはどう選べばよいですか
数値の大小を比較したいのか、時間による変化を見せたいのか、全体に対する割合を示したいのかを先に決めます。見せたいことが決まれば、グラフの向きは表2の目安に沿って選べます。複数の見せたいことを1枚に詰め込みたくなったときは、無理に1枚へまとめず、画面を分けるという選択肢も検討できます。特定のツールの機能を覚えることよりも、この選び方の順番を身につけることのほうが、現場が変わっても使い続けられます。
リモート中心でもデータ可視化の案件に関われますか
目的の整理や試作へのフィードバックは、画面越しのやり取りでも十分に進められる工程です。データ活用や可視化に関わる案件でも、場所を選ばずに参画できる条件を探せます。面談や試作の共有もオンラインで進められる工程が中心のため、これまで積み上げてきた設計の経験を言葉で示せれば、参画への入り口はリモートでも開かれています。まずは登録して、自分の経験に合う案件の条件を確かめられます。
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Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 デジタル庁「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」(2024年9月3日)
*2 デジタル庁「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」(2024年9月3日)
*3 デジタル庁「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」(2024年9月3日)
*4 デジタル庁「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」(2024年9月3日)
*5 デジタル庁「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」(2024年9月3日)
*6 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能