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    技術負債の案件|返済計画は現在位置から書きます

    「差が計画になる」を示す図です。現在位置/ギャップ/目指す水準を並べています。強調しているのはギャップです。

    📘 この記事でわかること

    • 現行システムに手を入れている企業ほど移行先でも同じように作り込む割合が高いという実態と、負債の作り方が引き継がれる理由
    • 移行先システムの形態が過半数の企業でまだ決まっていない現状と、決められない要因が技術の外にあること
    • 現在位置と目指す水準の差を明らかにする自己診断を、一度きりでなく継続して行う必要があるという方向性

    技術負債の解消を求められる案件で、最初に提示を求められるのは金額でも作業計画でもなく、現在地の説明です。声の大きさで優先順位が決まりがちな社内の議論と違い、外部から依頼を受ける立場では、負債をどう可視化し、どこまで戻すかを言葉と図で示す必要があります。経済産業省がまとめたレガシーシステムモダン化委員会の報告書は、この可視化の進め方について具体的な方向性を示しています。返済計画の組み立て方を、報告書の記述に沿って整理します。

    リモートワーク案件特化のエージェント|Remogu(株式会社LASSIC運営) レガシー刷新や技術負債に関わるリモート案件を、条件から探す フルリモートの案件を見る

    1. 返済計画は、現在位置から書きます

    まず、何を根拠にした話かを確認します

    経済産業省のレガシーシステムモダン化委員会は、2024年7月から2025年3月にかけての議論と、2024年12月から2025年2月に実施した市場動向調査を元に、総括レポートをまとめています1。事務局は経済産業省、デジタル庁、独立行政法人情報処理推進機構の3者です2。1つの省庁の取組ではなく、複数の機関が関わってまとめた内容だという点は、資料としての重さを裏づけています。案件で根拠を示すときの土台として、まずここを押さえておきます。

    想定されている読み手には、ユーザー企業やベンダー企業の経営者、役員といった上位の意思決定権者が挙げられています3。現場の作業手順を細かく示す資料ではなく、ビジネス戦略や情報システム戦略の策定、IT投資に関する意思決定のために参照される資料として書かれています。技術負債の可視化に関わる案件では、報告する相手がこの層であることを前提に、資料の粒度と言葉づかいを合わせる必要があります。

    経営層向けの資料である以上、成果物の形も一枚のコード修正報告では収まりません。現状の棚卸し結果、現在位置と目指す水準の差、その差を埋める順序案という3点セットが、意思決定の材料として求められる形です。可視化の案件に参画するときは、この3点をどの粒度でまとめるかを、着手前にクライアントと合わせておくと進めやすくなります。

    測るのは負債の大きさより、位置の差です

    負債の大きさを先に見積もることよりも、現在位置と目指す水準の差を明らかにすることを、報告書は優先しています10。自己診断は一度で終わらせず、継続して行った上で、取るべきアプローチを自律的に検討できる状態を目指す方向性です10。返済計画を立てる案件では、この順序を最初に相手と合わせておくと、後の議論が金額の話に戻りにくくなります。

    図1:現在位置と目指す水準の差
    現在位置 ギャップ ここを診断で明らかにします 目指す 水準 差を測ってから、返済計画の順序を決めます

    図の作成:Remogu編集部。自己診断で明らかにする現在位置と目指す水準の関係を整理したもので、統計データではありません10

    可視化の案件でまず求められるのは、コードを書く力よりも、この差を言葉と図に落とし込む整理力です。現在位置をどう定義し、目指す水準をどこに置くかという合意が曖昧なまま作業に入ると、後から前提がずれて手戻りが発生します。参画の初期段階で、この2点をクライアントと確認しておく進め方が有効です。

    2. 移した先でも、同じ癖が残ります

    標準への切り替えは、選ばれています

    市場動向調査は、メインフレームのシステムを保有していたユーザー企業のうち52%が、メインフレーム以外のシステムに移行していることを示しています4。移行先としては、メインフレームやスクラッチのシステムよりも、標準システムや標準パッケージを選ぶ企業の割合が高くなっています5。個別の内訳は図の中にとどまっているため、ここでは選ばれやすい方向だけを押さえておきます。

    それでも、作り込みは引き継がれます

    標準パッケージに切り替えれば、個別の作り込みからは離れられる、というわけではありません。むしろ、現行システムにカスタマイズを施している企業ほど、移行先のシステムでもカスタマイズを施す割合が高いことを、報告書は示しています6。器を変えても、負債の作り方そのものが引き継がれるという指摘です。可視化の案件では、この癖をどこで断ち切るかという設計が、器の選定と同じくらいの重みを持ちます。

    移行の前後で何が変わり、何が変わらないかを整理すると、次のようになります。システムの形態は標準への切り替えが進んでいます5。一方で、カスタマイズを施す姿勢は移行後も引き継がれる傾向にあります6。表にすると、その対比がはっきりします。

    項目移行前移行後
    システムの形態メインフレームが中心標準システム・標準パッケージが優勢
    カスタマイズの姿勢個別の作り込みが積み重なっている施している企業ほど、移行後も引き継ぐ割合が高い

    標準システムや標準パッケージには、保守を外部に委ねやすくし、将来の入れ替えも進めやすくするという役割が期待されます。ただし、その選定とカスタマイズを重ねる姿勢は別の話です。案件に参画する際は、器を選んだ理由と、作り込みを許容する基準の両方を確認しておくと、後工程の見通しが立てやすくなります。

    作り込みを重ねる姿勢そのものを否定してかかると、現場の反発を招きやすくなります。個別の作り込みは、過去のどこかで業務上の必要があって加えられたものです。可視化の案件では、その作り込みを一律に削る提案ではなく、残すべきものと外せるものを仕分ける基準を一緒に作る進め方のほうが、合意を得やすくなります。

    この傾向をクライアントに伝えるときは、指摘というより確認の形にすると受け止められやすくなります。「移行後も同じ作り込みが残りやすい傾向がある」という事実を先に共有したうえで、今回のプロジェクトではどこまで作り込みを許容するかを、一緒に線引きする進め方です。負債を作った側を責める話にしないことが、協力を得るための前提になります。

    3. 移行先が決まっていない状態が過半数です

    決まっている前提で、話を進めません

    過半数のユーザー企業では、移行先システムの形態がまだ決まっていません7。可視化や返済計画の案件に参画する際、相手先の状況を「移行先は固まっている」と決めつけて話を進めると、前提からずれた提案になります。決まっていない状態こそ多数派だという事実を、最初の確認事項に入れておきます。

    図2:決まっているものと未定のもの
    こちらが多数派です 移行先の形態が まだ決まっていない 形態が 決まっている

    出典:経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」(2025年5月)をもとに作成7

    移行先が決まっていない案件では、可視化の作業自体が意思決定の材料になります。台帳や現行システムの構成を整理した資料は、経営層が移行先を選ぶ場面でそのまま判断材料として使われます。決まっていないからこそ、整理の質がそのまま次の意思決定の速さに直結します。

    移行先が未定の段階で参画する場合、1つの移行先を前提に設計を進めるより、複数の選択肢を並べて比較できる形に資料を組む進め方が有効です。標準パッケージを選ぶ場合と、システムを仕分けたうえで一部を残す場合とでは、必要な作業量も変わります。選択肢ごとの前提を分けて示すことが、経営層の判断を後押しします。

    4. 難しさは技術の外にあります

    挙がる要因は、合意と情報の欠落です

    モダン化の難易度を上げている要因として、経営層と現場の協力が得にくいこと、仕様がブラックボックス化していること、現行踏襲への強いこだわり、業務とITを理解した人材が不足していることが挙げられています8。技術そのものの複雑さよりも、合意形成と情報の欠落に関わる項目が並んでいる点が特徴です。

    直す技術よりも、揃える合意が先です

    移行の技術的な難しさよりも、経営層と現場の足並みをそろえることのほうが、先に立ちはだかる壁になっています。仕様がブラックボックス化している状態は、直す前にまず「何を触っているか」を言語化する作業を要求します。可視化に関わる案件では、コードを読む力と同じくらい、関係者の理解をそろえる進め方が問われます。要因を分類すると、次のようになります。

    分類挙げられている要因
    合意形成経営層と現場の協力が得にくいこと、現行踏襲への強いこだわり
    情報の欠落仕様がブラックボックス化していること
    体制業務とITを理解した人材が不足していること

    挙げられた要因は、コードの複雑さより合意形成や情報整理に関わるものが中心です。案件で求められる成果物も、コードの修正だけにとどまりません。現状の仕様を図や資料に整理し、経営層と現場の双方が同じ前提で議論できる状態を作ることも、重要な成果物になります。

    ブラックボックス化した仕様を解明する作業は、コードを読む時間だけでなく、現場の担当者へのヒアリングや、過去の変更履歴をたどる時間も含みます。現行踏襲へのこだわりが強い現場ほど、変更の理由を丁寧に確認する進め方のほうが、後の合意形成をスムーズにします。

    技術力だけを磨いてきた立場からすると、合意形成が主戦場になるという話は意外に映るかもしれません。むしろ、コードを正確に読み解く力があるからこそ、現場の説明とコードの実態が食い違う箇所を見つけられます。その発見を経営層と現場の双方に伝わる言葉に変換できるかどうかが、案件の評価を分ける分岐点になります。

    5. 最初に挙がるのは台帳の整備です

    共通認識づくりが、仕分けの前に来ます

    課題を解消する方向性として挙げられている意見には、IT資産台帳の整備促進と一定の強制力、システムの仕分けや需要の分散・平準化、生成AI等の技術活用による現行仕様の解明が並んでいます9。並び順の最初に置かれているのが台帳の整備だという点は、可視化の案件を組み立てる上での手がかりになります。

    台帳から、仕分けと平準化につながります

    台帳が整っていなければ、何を仕分けるかも決められません。仕分けが決まって初めて、需要をどう分散し、平準化するかという次の議論に進めます9。台帳の整備は地味な作業に見えますが、後続のあらゆる判断の土台になっている点で、返済計画の起点にふさわしい位置づけです。

    図3:台帳・仕分け・平準化の関係
    台帳の整備 まず着手する項目 システムの仕分け 台帳をもとに判断 需要の分散・ 平準化

    図の作成:Remogu編集部。課題解消の方向性として挙げられている意見の並び順を整理したもので、統計データではありません9

    課題解消の方向性には、生成AIなどの技術活用による現行仕様の解明も含まれています9。台帳の整備と組み合わせて、仕様を読み解く作業に技術を取り入れる余地がある領域です。

    台帳の整備は、一覧を作って終わりではありません。どの項目を残し、どの項目を統合するかという仕分けの基準を決め、さらに需要をどの時期に寄せるかという平準化の計画まで進んで、初めて次の一手につながります。3つの作業を順番に積み上げる進め方が、報告書の並びからも読み取れます。

    台帳に何を並べるかは、案件ごとに調整が必要です。システムの名称や稼働年数だけでなく、誰が仕様を把握しているか、変更の頻度がどれくらいかといった、人と運用に関わる項目を加えておくと、後の仕分けの精度が上がります。台帳作りの段階で運用側の情報まで拾っておくことが、次工程を短くする近道になります。

    6. 診断は一度では終わりません

    一過性ではなく、継続に位置づけます

    今後の政策の方向性として、企業が自身のDX成熟度やIT資産の全容を自律的に把握できるよう、自己診断の仕組みを整えることが示されています10。自己診断は一過性で終わらせず、継続して行った上で、現在位置と目指す水準の差を明らかにし、取るべきアプローチを自律的に検討できる状態を目指す方向です10。一過性の診断で終える場合と、継続的な診断に位置づける場合を比べると、次のような違いになります。

    観点一過性の診断継続的な診断
    位置づけ一度きりの棚卸しで終わる仕組みとして繰り返し行う
    把握する対象その時点のIT資産の状況DX成熟度とIT資産の全容の変化
    次の行動結果を報告して終える差を踏まえてアプローチを自律的に検討する

    継続的な診断という位置づけは、案件の形にも影響します。一度きりの棚卸しで契約が終わるのではなく、一定の周期で差分を測り直す関わり方が想定しやすくなります。可視化の提案には、初回の診断だけでなく、次回以降の測り方まで含めておくと、方向性に沿った内容になります。

    測り方を仕組みにするには、初回の診断で使った定義や集計方法を、次回以降も同じ基準で再現できる形に残しておく必要があります。診断のたびに項目の切り方が変わると、差分そのものが比較できなくなります。定義を固定し、変化した部分だけを追えるようにする設計が、継続的な診断を支えます。

    初回の診断書をそのままテンプレートとして残しておくことも、有効な進め方です。同じ章立て、同じ集計の切り口で次回の結果を並べれば、経営層は数値の意味を毎回学び直す必要がなくなります。継続を前提にした資料は、1回目から2回目以降の使い回しを見据えて設計しておくと、次の依頼にもつながりやすくなります。

    図4:診断を継続して回す仕組み
    自己診断 起点であり終点 ギャップの 把握 アプローチの 検討

    図の作成:Remogu編集部。自己診断を継続的に行う仕組みの関係を整理したもので、統計データではありません10

    最初の一枚に、差を示す図を置きます

    技術負債の可視化に関わる案件では、負債の大きさを声高に語ることよりも、現在位置と目指す水準の差を、継続して測り続ける仕組みを提案できるかどうかが問われます10。返済計画の一枚目に置くべきは、金額の見積もりではなく、この差を示す図です。Remoguでは、案件の90%以上がフルリモート可能です11。まずは、台帳の整備から着手できる案件を確認するところから始めてみましょう。

    7. よくある質問

    技術負債の可視化に関わる案件では、何を最初に確認しますか

    想定される読み手が経営者や役員といった上位の意思決定権者であるかどうかを、最初に確認します3。現場向けの手順書ではなく、投資判断の材料として扱われる場面が多いため、資料の粒度と説明の重さをそこに合わせます。専門用語を並べるより、投資判断につながる言葉に置き換える準備をしておくと、案件の初回打ち合わせがスムーズになります。

    移行先のシステムは、案件に入る時点で決まっていますか

    決まっていない場合が過半数です7。移行先が固まっている前提で提案を進めると、途中で組み立て直しになりやすいため、まず状況を確認するところから始めます。決まっていない状態を前提にした比較資料をあらかじめ用意しておくと、状況が変わっても提案の骨格を崩さずに進められます。

    標準パッケージへの移行が進めば、作り込みの負債はなくなりますか

    なくなるとは限りません。現行システムにカスタマイズを施している企業ほど、移行先でもカスタマイズを施す割合が高いことが示されています6。器を変える提案と合わせて、作り込みの理由を仕分ける視点が必要です。標準への移行そのものをゴールに置かず、作り込みの基準を見直すところまでを一連の作業として提案すると、負債の作り方まで踏み込んだ内容になります。

    台帳の整備は、誰が担当する仕事ですか

    課題解消の方向性としてIT資産台帳の整備促進が挙げられていますが、担当の割り振り方までは示されていません9。案件に入る際は、既存の台帳の有無を確認するところから、役割分担の相談を始めます。

    生成AIは、技術負債の可視化にどう関わりますか

    課題解消の方向性の一つとして、生成AI等の技術活用による現行仕様の解明が挙げられています9。台帳の整備と組み合わせて、仕様を読み解く作業を効率化する使い方が想定されています。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」2025年5月28日(2025年5月)
    *2 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」2025年5月28日(2025年5月)
    *3 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」2025年5月28日(2025年5月)
    *4 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」2025年5月28日(2025年5月)
    *5 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」2025年5月28日(2025年5月)
    *6 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」2025年5月28日(2025年5月)
    *7 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」2025年5月28日(2025年5月)
    *8 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」2025年5月28日(2025年5月)
    *9 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」2025年5月28日(2025年5月)
    *10 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」2025年5月28日(2025年5月)
    *11 Remoguサイト公開情報(案件の90%以上がフルリモート可能)