案件のポートフォリオは何を見せるか?伝わる材料の選び方を解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 評価の判断が会話でなく文書で進むことと、そこで材料を届ける相手が組織ではなく人であること
- 相手側の企業に専門の人材が在籍している割合が低いことと、そこから見える材料に添える裏付けの向き
- 意思決定の仕組みが整っていない企業が多いことと、材料をどの順番で並べれば伝わりやすいか
案件のポートフォリオを求められると、代表的な制作物をまとめて送る流れになりがちです。ですが実際に読むのは、会話の場を共有していない相手です。IPAの調査では、要件定義と設計はいまもドキュメントを中心に進められているとしています1。材料を選ぶ基準は、何を作ったかではなく、読む相手がどんな前提で判断するかから逆算して考えるものになります。
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1. 文書を中心に進む前提から材料を選ぶ
会話で説明した内容は、その場にいた相手の記憶にしか残りません。IPAの調査は、要件定義と設計がいまもドキュメントを中心に進められていることを示しています1。ポートフォリオも同じ前提に乗せて考えると、伝える場所の選び方が変わってきます。
口頭でどれだけ丁寧に伝えても、後から読み返す人にとっては断片的な情報にしかなりません。文書という形に残すことで、初めて複数の人が同じ内容を確認できる状態になります。案件のやり取りでも、この順序は変わりません。
判断は会話ではなく文書で進む
打ち合わせの場で好印象を残せたとしても、後日その内容を思い出せるのは自分だけです。判断に関わる人が増えるほど、会話の記憶よりも文書に残った説明のほうが重みを持つようになります。
文書に残すという作業は、手間に見えても近道になります。読み手が何度でも同じ内容を確認できるため、記憶違いによる評価のばらつきを防げます。
読む相手を具体的に思い浮かべる
材料をまとめる前に、実際に読むのが誰かを考えておくと迷いが減ります。担当者なのか、決裁に近い立場の人なのかで、必要になる説明の粒度は変わります。
読む相手の顔が見えない状態で作った資料は、結局どの立場の人にも刺さらない内容になりがちです。読む相手を具体的に想定することが、材料選びの出発点になります。
2. 技術の情報収集が個人に任されている
新しい技術の情報をどう追いかけているか、組織としての仕組みを持たない会社があります。IPAの調査では、技術情報の収集が体系的な仕組みを持たず、個人に任されている企業が多いとしています2。
つまり情報を届ける相手は、組織という大きな塊ではなく、日々情報を追いかけている一人ひとりです。誰に届けるかを考えるとき、この個人という単位を意識しておく必要があります。
情報を追う仕組みが無い組織のほうが多い
研修や購読といった形で技術情報を集める仕組みを整えている会社ばかりではありません。担当者個人の関心や努力に頼っている場面が、実際には多く見られます。
この状態では、社内で共有される情報の量にも偏りが出ます。特定の担当者が持っている知識が、その会社全体の判断材料になっていることも珍しくありません。
個人の発信が届く経路になる
情報収集が個人任せになっている状況は、裏を返せば個人の発信がそのまま届きやすい状況でもあります。制作の経緯や判断の理由を言葉にして残しておくことが、そのまま評価の材料になります。
会社の看板ではなく、個人が積み上げてきた説明の積み重ねが読まれるという前提に立つと、材料の作り方も自然と変わってきます。
図の作成:Remogu編集部。案件のやり取りにおける説明の残り方を整理したもので、統計データではありません。
3. 相手が最も優先しているのは品質
早さや量よりも先に見られている項目があります。IPAの調査は、利用する側の企業がシステムの品質を最も優先する事項として捉えていることを示しています3。
品質という言葉は抽象的に聞こえますが、実際には手順を追える説明や、判断の根拠が残っているかどうかに置き換えられます。作った結果だけでなく、そこに至る進め方が見られています。
品質は結果よりも進め方に表れる
完成した画面や動作だけを見せても、品質の高さは十分に伝わりません。途中でどんな確認を重ねたか、どこで見直しを入れたかという過程のほうが、読み手には判断材料になります。
手順を追える形で説明を残すことは、地味に見えて評価に直結する部分です。品質を最優先に置く相手には、この過程の説明が効いてきます。
材料は品質の裏付けを示す
ポートフォリオに載せる説明は、成果物の紹介にとどめず、なぜその方法を選んだかという裏付けまで含めておくと厚みが出ます。
裏付けのある説明は、読み手が品質を判断する材料として機能します。相手が何を最優先に見ているかを知っておくと、載せる順番も自然と定まります。
出典:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」(2025年4月)をもとに作成
品質の裏付けを重ねてきた経験を活かせる案件を見る →
4. 在籍している専門家は限られている
材料を届ける相手の会社に、どんな専門家がいるかによっても、伝わり方は変わります。総務省の調査では、UI・UXに関わるデザイナーが在籍している企業の割合は日本で20.8%にとどまるとしています4。
AI・データ解析の専門家についても同様の傾向があります。同じ調査では、この専門家が在籍している企業の割合も日本で20.6%だとしています5。
情報を追う専門人材が組織にいるとは限らない
デザインやデータ解析の専門知識を持つ人が社内にいない場合、届いた説明を評価するのは、その分野を専門としない担当者になります。専門用語だけで押し切る説明は、かえって届きにくくなります。
専門家がいない前提に立つと、説明の書き方も変わります。技術の名前を並べるより、何を目的にその技術を選んだかを言葉にしたほうが、読み手に届きます。
在籍している専門家の割合を数字で見る
総務省の令和7年版情報通信白書は、日本と他国の企業を比較した数字を示しています。UI・UXに関わるデザイナーが在籍している企業の割合は、日本で20.8%であるのに対し、他国企業では約55%から約70%に上ります4。AI・データ解析の専門家についても、日本は20.6%、他国は約65%から約80%という開きがあります5。専門家の在籍状況を数字で押さえておくと、説明の詳しさをどこまで求めてよいかの見当がつきやすくなります。
| 専門分野 | 日本企業の割合 | 他国企業の割合 |
|---|---|---|
| UI・UXに関わるデザイナー | 20.8% | 約55%~70% |
| AI・データ解析の専門家 | 20.6% | 約65%~80% |
専門家がいない会社を想定した書き方は、結果として誰にでも伝わりやすい説明になります。
5. 自社主導で開発している企業の割合
情報を扱う体制がどこにあるかも、材料の届き方に関わってきます。総務省の調査では、システム開発を自社主導で行っていると答えた企業は日本で35.7%だとしています6。
同じ調査では、海外の企業について、自社主導での開発を行っていると回答した割合が約80%から90%に達するとしています7。日本と海外とでは、開発を担う体制の置き方に大きな違いがあります。
自社主導で開発する企業は少数派
自社の中に開発の担い手を抱えている会社が少ないという状況は、外部から届く説明を受け止める体制自体が薄いことも意味します。読み手の負担を増やさない説明が、より重要になります。
体制が薄い会社ほど、資料を読み込む時間も限られています。要点を絞った構成にしておくことが、伝わりやすさに直結します。
海外との差を数字で見る
自社主導で開発していると答えた企業の割合は、日本が35.7%です6。海外の企業では、この割合が約80%から90%に達しています7。数字の開きは、説明を受け止める体制がどこにあるかという違いをそのまま表しています。
| 地域 | 自社主導で開発している企業の割合 |
|---|---|
| 日本 | 35.7% |
| 海外 | 約80%~90% |
出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年7月)をもとに作成
自社の中だけで判断が完結しない会社ほど、外部からの説明が判断を後押しする役目を持ちます。材料の作り方も、その前提に合わせて考えることができます。
6. 人材の量が届いていないという前提
体制の薄さは、人の数という面でも指摘されています。IPAの調査では、DXを進める人材の量が不足していると答えた企業の割合の合計が85.1%に上るとしています8。
人の数が届いていないという前提に立つと、読み手に求められる作業量そのものを増やさない配慮が必要になります。長い資料を読み込む余裕がある相手ばかりではありません。
人手が薄いという前提で構成を考える
限られた人数で判断を進めている会社では、資料に目を通す時間そのものが限られています。要点を先に置き、詳細は後ろに回す構成にしておくと、最初の数分で全体像が伝わります。
詳しく書き込むほど丁寧に見えると考えがちですが、読み手の時間が限られている前提では逆効果になることもあります。分量よりも、読む順番を意識した構成のほうが効きます。
少ない体制でも判断できる材料にする
人手が薄い会社ほど、判断の根拠を一箇所にまとめておくことが助けになります。あちこちに散らばった説明を読み手が自分で拾い集める構成は避けたいところです。
少ない体制でも判断できる材料とは、情報量の多さではなく、必要な情報にすぐたどり着ける構成を指します。
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7. 決める人の所在と、材料の並べ方
誰が最終的に判断するのかも、はっきりしないまま資料が回ることがあります。IPAの調査では、CxOクラスの責任者を設置していない企業が約半数に上るとしています9。
決裁の仕組みが定まっていない会社では、資料が複数の担当者の手を経て回っていくことになります。誰か一人に向けて書くのではなく、複数の立場で読まれても伝わる構成にしておくことが助けになります。
決める人がはっきりしない前提に立つ
責任者が定まっていない会社では、資料を最初に受け取る担当者と、実際に判断を下す人が別であることもあります。要点を冒頭にまとめておくと、担当者から先の人へも伝わりやすくなります。
同じ調査では、システム開発の契約で取引ごとに手間や工数がかかる点を課題として挙げる企業が多いとしています10。資料のやり取り自体に手間がかかっている会社も多いという前提です。
受け取る側の内部事情を数字で見る
受け取る側の内部事情を3つの数字で並べると、材料の作り方が見えてきます。DXを進める人材の量が不足していると答えた企業の割合の合計は85.1%です8。CxOクラスの責任者を設置していない企業は約半数に上ります9。システム開発の契約では、取引ごとに手間や工数がかかる点を課題に挙げる企業が多くあります10。どれも、資料を読む側の余裕の少なさを表す数字です。
| 受け取る側の内部事情 | 内容 |
|---|---|
| DXを進める人材の量 | 不足していると答えた企業の割合の合計は85.1%です |
| 決裁の仕組み | CxOクラスの責任者を設置していない企業が約半数に上ります |
| 契約の運用 | 取引ごとに手間や工数がかかる点を課題に挙げる企業が多くあります |
図の作成:Remogu編集部。決裁の仕組みが定まっていない会社を想定した手順を整理したもので、統計データではありません。
資料の作り方を整えることは、案件に参画したあとの働き方にもつながります。案件の90%以上がフルリモート可能です。場所に縛られず、積み上げてきた経験を活かせる案件かどうかを確かめることが、次の一歩になります。
材料の並べ方は、読む人の余裕の少なさに合わせて決めるものです。結論を先に置き、根拠を後ろに添える順番にしておくと、どんな体制の会社にも届きやすくなります。
案件の経験がまだ少ない場合、ポートフォリオは何を書けばよいですか
経験がまだ少ない場合は、完成させた分量よりも、どんな手順で確認を重ねたかを書くと伝わりやすくなります。システムを利用する側の企業は品質を最も優先する事項として捉えているとされているので3、進め方の説明が経験の少なさを補う材料になります。
副業として関わっている案件しかない場合はどう書けばよいですか
副業で関わった案件であっても、文書として記録に残しておけば、読み手にとっては十分な材料になります。要件定義や設計がいまもドキュメントを中心に進められている前提を踏まえると1、稼働の形態よりも、残した説明の質のほうが判断材料として重く見られます。
地方に住んでいることは、ポートフォリオの評価に影響しますか
住んでいる場所は、文書として届く説明の質には関係しません。利用する側の企業が品質を最も優先する事項として捉えているとされている以上3、見られるのは進め方の説明であり、場所の違いが材料の評価を左右する項目ではありません。
週3日など稼働の条件が絡む場合、材料の書き方は変わりますか
稼働条件そのものよりも、限られた時間の中でどう進めたかという工夫を書き添えると、決裁の仕組みが定まっていない会社にも伝わりやすくなります9。条件そのものは、クライアントと協議しながら詰めていく部分になります。
リモートワーク案件をお探しの方へ
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」引き継ぎの材料(2025年4月・2026年9月確認)
*2 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」知識の持ち方(2025年4月・2026年9月確認)
*3 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」評価の軸(2025年4月・2026年9月確認)
*4 総務省「令和7年版 情報通信白書(デジタル活用の動向)」設計する人の不在(2025年7月・2026年9月確認)
*5 総務省「令和7年版 情報通信白書(デジタル活用の動向)」専門家の不在(2025年7月・2026年9月確認)
*6 総務省「令和7年版 情報通信白書(デジタル活用の動向)」内製の実際(2025年7月・2026年9月確認)
*7 総務省「令和7年版 情報通信白書(デジタル活用の動向)」外との差(2025年7月・2026年9月確認)
*8 IPA「DX動向2025」人の足りなさ(2025年6月・2026年9月確認)
*9 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」決める人(2025年4月・2026年9月確認)
*10 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」契約の負担(2025年4月・2026年9月確認)