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    オブザーバビリティの案件で障害の原因を説明できる計測設計

    「記録があると説明できる」を示す図です。説明を求められる、記録が残っている。手探り/後追い可/詰められる/説明できるを並べています。強調しているのは説明できるです。

    📘 この記事でわかること

    • 2024年度に総務省へ報告された事故の件数と、そのうち重大な事故がごくわずかである実態
    • 電気通信事業法が事故の報告に定める内容と、記録の有無によって説明の質が変わる4つの立場
    • 自分たちのミス以外にも止まる原因があることと、リモートで説明責任に関わる案件の探し方

    監視ツールを入れ、ダッシュボードも整えた。それでも障害が起きたときに問われるのは、「なぜ止まったか」を説明できるかどうかです。ログを集める作業と、その理由を筋の通った言葉で示す作業は、同じではありません。オブザーバビリティの案件で求められているのは、実は後者の力です。

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    1. 障害は日常的に起き、そのほとんどは重大ではありません

    四半期報告の対象になる事故は、思うより多く起きています

    案件の相談を受けるとき、障害という言葉に身構える人がいます。止めてしまったらどうしよう、という不安です。ですが実際の件数を見ると、少し違う輪郭が見えてきます。

    2024年度に総務省へ四半期ごとの報告があった電気通信事故は6,713件でした1。件数だけを見ると大きな数字ですが、これは日常的に発生し、報告の対象になっている事故の総量です。障害そのものは珍しい出来事ではなく、報告の仕組みに乗ってくる出来事だと捉えたほうが実務に近づきます。

    その中で重大な事故と数えられるのは、ごく少数です

    一方で、同じ2024年度に重大な事故として数えられたのは6件です1。報告を要する事故の件数よりも、その中で重大な事故として数えられた件数のほうが、案件に参画するうえでは意味を持ちます。全体の規模ではなく、際立った少数がどう扱われているかが実務の焦点になるからです。

    件数の大きさに気を取られると、案件そのものを避けたくなるかもしれません。ですが件数の内訳を知っていれば、日常的な事故と重大な事故を混同せずに語れるようになります。案件の相談で件数を尋ねられたときに、この内訳を説明できることは、それ自体が信頼につながります。

    障害の話は、案件の面談でも話題になりやすいテーマです。件数そのものを聞かれるより、件数をどう受け止めているかを聞かれる場面のほうが実務では多くあります。日常的な事故と重大な事故を分けて話せることは、面談での説明力そのものにもつながります。

    図1:2024年度に報告を要した事故と、そのうち重大な事故の件数
    2024年度 報告を要した事故 6,713件 そのうち 重大な事故 6件

    出典:総務省「令和6年度電気通信事故に関する検証報告」(令和8年版情報通信白書収録)をもとに作成

    図1のように、報告を要する件数と重大な事故の件数を並べて見ると、日常的な運用の中で数えられる事故と、特別に扱われる事故の違いが視覚的にも伝わります。

    日常的に起きるものだとして、報告の決まりはあるのでしょうか。

    2. 説明責任は、法律の条文になっています

    電気通信事業法第28条が求めているもの

    障害対応の話をすると、記録や報告は「あればいいもの」として語られがちです。ですが実際には、すでに法律の条文として存在しています。

    電気通信事業法第28条は、総務省令で定める重大な事故が生じたときは、その旨を理由又は原因とともに、遅滞なく総務大臣に報告しなければならないと定めています2。これは電気通信事業者に課された義務であり、案件に参画する立場がそのまま同じ義務を負うわけではありません。ただ、説明という作業が法律の条文になるほど重い位置づけを持っている、という事実は変わりません。

    説明は、後から付け足す作業ではありません

    条文が「遅滞なく」「理由又は原因とともに」と定めていることは、説明が事後の付帯作業ではないことを示しています。原因を示さない報告は、条文が求める報告にはなりません。案件で記録の設計を任されるとき、この条文の考え方を知っているかどうかは、地味ですが差になります。

    案件によっては、記録の設計そのものを任される場面もあります。何を残し、誰にいつまでに知らせるかをあらかじめ決めておくことは、障害が起きてから慌てて考えるよりも、負担がはるかに軽くなります。条文の考え方を知っておくと、この設計の優先順位がつけやすくなります。

    条文の内容を説明できるかどうかは、参画後の信頼にも関わってきます。法律の名前を知っているだけでなく、遅滞なく理由とともに報告するという考え方を、自分の作業に落とし込めるかどうかが実務では問われます。

    義務があるとして、件数そのものはどう動いているのでしょうか。

    3. 重大な事故は減っています。それでも報告は要ります

    2012年度18件から2024年度6件へ

    重大な事故の件数は、増え続けているわけではありません。総務省の資料によると、2012年度は18件でしたが、2024年度は6件まで下がっています3。件数の絶対値よりも、減少という方向性のほうが、この領域を語るうえで重要です。

    重大な事故の件数は、単年度の数字だけでは推移が見えません。総務省の資料が示す2012年度と2024年度の2つの時点を並べると、件数がどのように変化してきたかが分かります。以下の表1は、この2つの時点の件数と、そこから読み取れる傾向をまとめたものです。件数そのものよりも、減少という方向性を確認するための表として見てください。途中の年度の値はグラフからの読み取りのため、この記事では2つの時点のみを扱います。

    時点重大な事故の件数読み取れる傾向
    2012年度18件この期間の起点となる件数
    2024年度6件起点から減少した件数

    表1が示すとおり、重大な事故は10年余りの間に着実に減少してきました。この傾向を知っておくことは、案件で障害の頻度を過度に心配しないための材料にもなります。

    件数が減っても、報告の仕組みは変わりません

    件数が減ったからといって、報告の決まりが緩むわけではありません。減少は結果であり、報告の義務そのものを不要にする理由にはならないからです。案件で問われるのは、件数の推移を知っていることよりも、起きたときにどう説明する体制を持っているかです。

    件数が減っている事実は、油断につながりやすい情報でもあります。減少傾向を知っていることと、実際に説明できる体制を保っていることは別の話です。案件に参画する際は、件数の推移よりも、いま手元にある記録の仕組みを確認しておくほうが実務的です。

    減少という結果だけを見て安心してしまうと、実際に事故が起きたときの初動が遅れる場合があります。件数の推移は油断のための情報ではなく、備えの土台として使うほうが実務的です。

    件数が減っても報告は要るなら、差がつくのは説明の質です。

    4. 記録の有無で、説明の質が変わります

    記録があるかどうかで、同じ障害でも説明のしやすさが変わります

    同じ規模の障害でも、記録が残っているかどうかで説明のしやすさは大きく変わります。ログが残っていれば理由を示せますが、残っていなければ推測に頼るしかありません。

    記録の有無を軸にすると、案件で置かれる立場が見えてきます。記録が無いまま都度対応する立場と、記録があり答えられる立場とでは、同じ障害でも説明にかかる負担がまったく違います。

    記録という言葉を難しく捉える必要はありません。いつ、何が起き、どう対応したかを、後で読める形にしておくことだけでも、説明の負担は大きく変わります。特別な仕組みよりも、続けられる運用のほうが実務では役に立ちます。

    4象限で見る、説明を求められた時の立ち位置

    記録の有無と、説明を求められる場面の重さを組み合わせると、案件で置かれる立場は4つに整理できます。同じ障害であっても、記録が残っているかどうかで、対応する側の負担はまったく違うものになります。以下の表2は、4つの立場それぞれで何が起きやすく、説明のしやすさがどう変わるかをまとめたものです。自分がどの立場に近いかを確認する材料として見てください。

    立場記録の有無説明を求められる場面説明のしやすさ
    手探り記録が無い求められる場面は少ない都度の対応に頼る
    後追い可記録がある求められる場面は少ない後から経緯をたどれる
    詰められる記録が無い強く求められる説明の根拠を示しにくい
    説明できる記録がある強く求められる理由を示して答えられる
    図2:記録の有無と、説明を求められる場面の4象限
    説明を求められるか(上ほど高い) 詰められる 記録なく強く問われる 説明できる 記録があり答えられる 手探り 記録もなく都度対応 後追い可 記録はあるが低頻度 記録が残っているか(右ほど多い)

    図の作成:Remogu編集部。障害後に置かれる立場を整理したもので、統計データではありません

    4つの立場のうち、案件で歓迎されやすいのは「後追い可」と「説明できる」の2つです。記録さえあれば、説明を求められる場面が来ても慌てずに対応できます。逆に記録が無い立場は、障害の規模にかかわらず、説明のたびに時間と労力がかかります。

    4つの立場を並べると分かるのは、記録の有無こそが説明の質を分ける軸だということです。個々の対応の速さよりも、記録を残す仕組みのほうが、後の説明を左右します。

    4象限のどこに立っているかは、案件に参画してからも変わっていきます。最初は手探りの立場でも、記録を残す仕組みを整えることで、後追い可や説明できるの立場に近づいていけます。立場は固定されたものではなく、動かせるものだと捉えておくと気持ちが楽になります。

    記録が揃っても、原因が内側にあるとは限りません。

    5. 止まる原因は、自分たちのミスだけではありません

    組織向け脅威の9位に挙げられるDDoS攻撃

    障害の原因を、設定ミスや対応の遅れといった内側の話に限定してしまうと、案件の実態を見誤ります。IPAが公開する情報セキュリティ10大脅威2026では、組織向けの脅威の9位にDDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)が挙げられています5

    この項目は2016年に初めて選出されてから、2026年版までに7回選出されています5。選出が続いているのは、外側からの要因が一時的な出来事ではなく、繰り返し扱われる論点だということを示しています。

    選出の回数が示しているのは、外側の要因が特殊な事例ではなく、繰り返し向き合うことになる論点だという点です。突発的な出来事として扱うよりも、起こり得る前提として備えておくほうが、説明の準備は整えやすくなります。

    図3:止まる原因は、内側の要因だけではありません
    止まる原因は、外側にもあります 内側の要因 設定ミス・対応遅れなど 外側の要因 DDoS攻撃など 組織向け脅威9位に挙げられています

    出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」をもとに作成

    図3で内側と外側を並べたのは、原因の所在によって対応の仕方が変わることを示すためです。どちらの要因であっても、記録を残す作業自体は変わりません。

    外因が絡む場合の説明の位置づけ

    外側の要因が関わる障害でも、説明責任が消えるわけではありません。原因が内側にあるか外側にあるかを切り分けることと、起きた理由を示すことは、別の作業です。原因の切り分けよりも、記録を残して示せる状態を保つことのほうが、案件に参画する立場では優先されます。

    外因が絡む障害では、参画開始の時点で「どこまでを自分たちの担当範囲とするか」を合意しておくことが役に立ちます。原因の所在をあらかじめ決めておけば、実際に障害が起きたときに、担当範囲を巡って話し合う時間を、理由の説明そのものに充てられます。

    外因が絡む障害の対応経験は、案件の実績として言語化しにくいと感じる場面もあります。ですが「原因の切り分けに関わった」「外部要因を含めて報告資料を整えた」という言い方にすれば、次の案件での説明材料になります。

    外因まで説明できるようになると、利用者の声の見え方も変わります。

    6. 苦情は、事故の基準に達しない場面でも積み上がります

    2025年度の苦情・相談は11,940件

    事故として報告される件数と、利用者から寄せられる苦情や相談の件数は、別の指標です。2025年度に総務省へ寄せられた電気通信サービスの苦情・相談などは11,940件で、前年度から増加しています4

    この件数は事故の報告件数と足し合わせるものではありません。事故として数えられない場面でも、利用者の不満は積み上がっているという、別の実態を示しているからです。

    苦情や相談は、事故として基準に届かない小さな不満の積み重ねから生まれることがあります。数字の大きさよりも、増加という方向性を知っておくことが、案件でどこまで担当領域を広げるかを考えるときの材料になります。

    苦情・相談の件数と、リモートで案件に関わる工程を並べて見ると、説明責任がどの段階に関わってくるかが見えてきます。以下の表3は、検知から報告までの工程ごとに、主な作業内容とリモートでの関わりやすさをまとめたものです。件数の増加そのものよりも、どの工程で説明責任に触れる機会があるかを確認するための表として見てください。

    工程主な作業内容リモートでの関わりやすさ
    検知・観測指標やログの異常を検知する高い
    記録発生時刻や状況を記録に残す高い
    合意クライアントと報告範囲を協議する案件によって異なる
    報告報告書や説明資料を作成する中程度

    リモートで説明責任に関わる工程

    図4:リモートで説明責任に関わる工程の例
    リモートで説明責任に関わる工程の例 検知・観測 記録 合意 報告

    図の作成:Remogu編集部。工程の一般的な流れを整理したもので、案件ごとに手順は異なります

    検知や記録の工程は、リモートでも十分に担える範囲です。合意や報告の工程になるほどクライアントとの対話が増え、稼働のタイミングをすり合わせる場面が出てきます。工程ごとの関わり方をあらかじめ確認しておくと、参画開始後の認識のずれを防げます。

    説明責任に関わる工程は、検知や記録の段階から報告の段階まで広がっています。リモートで参画する案件でも、これらの工程の一部を任される場面は増えています。Remoguで扱う案件は、90%以上がフルリモート可能です6。ただし、任される工程の範囲は案件によって異なります。

    苦情の件数を見て不安になる必要はありません。この数字は、事故報告の基準に届かない小さな出来事も含めて、利用者の声を広く受け止めるための指標だからです。数字の大小よりも、増加という方向性を、担当領域を考える材料として使うほうが実務的です。

    止めないことよりも、止まった理由を示せることのほうが、この領域では評価されます。

    7. まとめ

    ここまでの内容を、5つの要点として整理します。

    • 2024年度に報告を要した事故は6,713件、うち重大な事故は6件です1
    • 電気通信事業法第28条は、事業者に理由又は原因とともに遅滞なく報告するよう定めています2
    • 重大な事故は2012年度18件から2024年度6件へ減少していますが、報告の仕組みは変わりません3
    • 記録の有無が、障害後の説明の質を左右する最大の軸になります
    • 止まる原因は内側だけでなく、DDoS攻撃のような外側の要因も含まれます5

    障害への備えは、監視ツールを導入した時点で終わるものではありません。件数の内訳を知り、条文の考え方を理解し、記録を残す運用を整えるところまでを含めて、案件で求められる準備だと考えておくと実務に近づきます。

    オブザーバビリティの案件を探すときに見るべきは、監視の仕組みそのものよりも、止まった理由を説明できる体制が整っているかどうかです。記録を残す文化がある案件かどうか、参画開始の前に確認してみましょう。件数や条文の名前を覚えることよりも、記録を残す具体的な運用を確認する視点のほうが、実務では役に立ちます。

    8. よくある質問

    ここでは、オブザーバビリティの案件に関わる際によく挙がる質問を、4つ取り上げます。

    どんなツールを覚えればよいですか

    具体的な監視製品の名称やシェアではなく、ログや指標を後から説明できる形で残せるかどうかが、案件で問われる基準になります。個々のツールの操作よりも、記録を残す運用のほうが評価されます。ツールの選定よりも、既存の運用に馴染みながら記録の質を上げていく姿勢のほうが評価されやすい傾向にあります。

    監視とオブザーバビリティは何が違いますか

    監視は異常を検知する仕組みを指し、オブザーバビリティは検知した後になぜ起きたかを説明できる状態を指します。異常に気づけることと、理由を示せることは、別の力です。オブザーバビリティの案件では、後者の力、つまり理由を筋道立てて説明できる力が特に重視されます。

    外部の立場では、どこまで説明する必要がありますか

    電気通信事業法第28条が定める報告義務は電気通信事業者に課されたものであり、外部から参画する立場がそのまま同じ義務を負うわけではありません2。実務では、クライアントと事前に記録の残し方や報告の範囲を協議しておくことが中心になります。合意した範囲を超えて説明を求められないよう、協議の内容をチャットや議事録の記録として残しておくことも実務的です。

    記録が整っていない現場に参画したら、どうすればよいですか

    記録の有無は案件によって差があります。参画開始の早い段階で、何を記録し、誰に報告する体制なのかをクライアントと確認しておくと、後から説明を求められた場面での負担を減らせます。最初から完璧な記録の仕組みを求めるのではなく、小さく始めて少しずつ整えていく進め方が現実的です。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 総務省「令和6年度電気通信事故に関する検証報告」図表Ⅱ-1-2-11(2026年7月24日)
    *2 総務省「令和6年度電気通信事故に関する検証報告」白書の脚注17(2026年7月24日)
    *3 総務省「令和6年度電気通信事故に関する検証報告」図表Ⅱ-1-2-11(2026年7月24日)
    *4 総務省「令和8年版情報通信白書」図表Ⅱ-1-2-12(2026年7月24日)
    *5 IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日)
    *6 Remoguサイト公開情報(案件の90%以上がフルリモート可能)